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澄切
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すみき
……
実は三
日余り、
仙境霊地に
心身共に
澄切つて、
澄切つた
胸さきへ
凡俗の
気が
見透くばかり。
其骨の
尖角の間から洩るる大空が、気味の悪いほどに
澄切っているのは、
軈て真黒な雪雲を運び出す
先触と知られた。人馬の交通を
遮るべき厳寒の時節も
漸く迫り来るのである。
彼は
慌しく
窓を
開いて、
呼吸のありたけを
口から
吐出すが
如くに
月を
仰ぐ、と
澄切つた
山の
腰に、
一幅のむら
尾花を
殘して、
室内の
煙が
透く。それが
岩に
浸込んで
次第に
消える。
唯其の
時は、
爪一つ
指の
尖も、
人目には
漏れないで、
水底に
眠つたやうに、
面影ばかり
澄切つて
居たのに、——こゝでは、
散乱れた、三ひら、五ひらの
卯の
花が、
凄く
動く
汽車の
底に
空模樣は、その
癖、
星が
晃々して、
澄切つて
居ながら、
風は
尋常ならず
亂れて、
時々むく/\と
古綿を
積んだ
灰色の
雲が
湧上る。とぽつりと
降る。
降るかと
思ふと、
颯と
又暴びた
風で
吹拂ふ。
珊瑚が
散つて、
不知火を
澄切つた
水に
鏤めたやうである。