かた)” の例文
と、すごい力をからだ中にこめたブル、いきなり、ジョージをかたの上までグッとさしあげると、そのまま下へ力いっぱい投げつけた。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
ものやさしくかたうごくと、らふが、くだん繪襖ゑぶすまあなのぞく……が、洋燈ランプしんなかへ、𤏋ぱつはひつて、ひとつにつたやうだつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
からになつた渡船とせんへ、天滿與力てんまよりきかたをいからしてつた。六甲山ろくかふざんしづまうとする西日にしびが、きら/\とれの兩刀りやうたう目貫めぬきひからしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かたつかんで、ぐいとった。そので、かおさかさにでた八五ろうは、もう一おびって、藤吉とうきち枝折戸しおりどうちきずりんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
少年しょうねんは、マントのしたかたからかけた、新聞しんぶんたばから、一まいくと、もんけてぐちへまわらずに、たけ垣根かきねほうちかづきました。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大石おおいし先生。でもからだは、ちっちゃあい人。小林でもわたしはのっぽだけど、ほんとに、ちっちゃあい人よ。わたしのかたぐらい」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
と、清兵衛せいべえを引き起こそうとするのを見た朝月は、いきなり一人ひとりかたさきをくわえ、空中にほうり上げ、さらに二人ふたりをけつぶした。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
世間の噂では、「ロボのくび金環かなわがついている。」とか、また、「かれのかたには悪魔あくま仲間なかまである印としてさかさ十字の斑点はんてんがある。」
叔母のかたをばんでいるうち、夜も大分だいぶけて来たので、源三がついうかりとして居睡いねむると、さあ恐ろしい煙管きせる打擲ちょうちゃくを受けさせられた。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套がいとうて、白いきれでつつんだ荷物にもつを、二つに分けてかたけた、赤髯あかひげのせなかのかがんだ人でした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
プロムナアド・デッキの手摺てすりりかかって海につばいていると、うしろからかたたたかれ、振返ふりかえると丸坊主まるぼうずになりたての柴山でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
わたしは親方のかたに上って、屋根にいてあるえだたばの中を探してみた。二度も三度もんでみた。けれどもなんの返事もなかった。
夕方、べつにする仕事も見つからなくて、寒い塾庭を一人でぶらついていると、大河無門がうしろからかれのかたをたたいて言った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
おつたはやゝ褐色ちやいろめた毛繻子けじゆす洋傘かうもりかたけたまゝ其處そこらにこぼれた蕎麥そば種子まぬやう注意ちういしつゝ勘次かんじ横手よこてどまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ノッポは光吉こうきちのあだ名だった。かれは成績せいせきも級一番だが、体格たいかくもだんぜんずばぬけていた。ちびの内藤ないとうなぞは、かれのかたくらいしかない。
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
バッタが驚ろいた上に、枕の勢で飛び上がるものだから、おれのかただの、頭だの鼻の先だのへくっ付いたり、ぶつかったりする。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けてたびをしてある飴屋あめやさんは、何處どことほいところからかついでかたけて、ふえき/\出掛でかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
はしうへかはうへにぎはひを人達ひとたち仲見世なかみせ映画街えいぐわがいにもおとらぬ混雑こんざつ欄干らんかんにもたれてゐる人達ひとたちたがひかたあはすばかり。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
王子は、それを、家来けらいたちにめいじて、かたにかついではこばせました。ところが、まもなく、家来のひとりが、一本の木につまずきました。
が、すすりきはじめたおくさんのかたをかけると、また心をとりなほしながら、力つよく、なぐさめるやうにその耳元にささやいた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
とう寝椅子ねいすに一人の淡青色たんせいしょくのハアフ・コオトを着て、ふっさりとかみかたへ垂らした少女が物憂ものうげにもたれかかっているのを認め、のみならず
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
戸塚の三次は、何も言わずにズイとはいりこんで、パラリ、手拭を取りながら、そいつをかたっけて、じろりとお妙を見た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
このひとすぐれた才子さいしでありましたが形恰好なりかつこうすこへんで、せいたかかたて、見苦みぐるしかつたので、人々ひと/″\わらつてゐました。
そのくるまにはちいさな男の子がっていました。男の子はくるまのみすをかたにかついで、たいくつそうにきょろきょろそとのけしきをながめていました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かたや胸の歯形をたのしむようなマゾヒズムの傾向けいこうもあった。かべ一重の隣家をはばかって、蹴上けあげの旅館へ寺田を連れて行ったりした。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それとればにはかかたすぼめられてひとなければあはたゞしく片蔭かたかげのある薄暗うすくらがりにくるまわれせていこひつ、しづかにかへりみればれも笹原さゝはらはしるたぐひ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
果して、窓は開いて、ジナイーダが姿を見せた。白い服を着ていたが、彼女自身も、顔からかた、そして両手まで、真っ白なほど青ざめていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
近くの街の屋根瓦の重畳ちょうじょうは、おどってし寄せるように見えて、一々は動かない。そして、うるさいほどかたの数をそびやかしている高層建築と大工場。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
七月七日は、七夕たなばたちなみ、玉礀ぎょっかん暮鐘ぼしょうの絵を床に、紹鴎じょうおうのあられ釜を五徳ごとくにすえ、茶入れは、初花はつはなかたつきが用いられた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「へつ、弱蟲よわむし! そんなら貴樣きさまらには、なにができる。命知いのちしらず!」そしてかたをそびやかして睨視にらめつけました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
くさなか半身はんしんぼつして、二人ふたりはいひあらそつてゐた。をとこはげしくなにかいひながら、すぶるやうにをんなかた幾度いくど小突こづいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
逆にねじあげたら、その男のかたの骨はたちまちくだけただろう。危い目にっていたのは、妹でなくてその男だったのだ。殺すわけはないではないか
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして、みんなで、腕とかたとを組んで、長く一列にならんで、王子のお城のあるという海べへ浮びあがっていきました。
越後の西北は大洋おほうみたいして高山かうざんなし。東南は連山れんざん巍々ぎゝとして越中上信奥羽の五か国にまたがり、重岳ちようがく高嶺かうれいかたならべて十里をなすゆゑ大小のけものはなはだおほし。
げようなんて、そんなことは考えてませんよ。あっ、そんなにかたをつっつかねえでくだせえ。おいら、いまにきずだらけになってしまいますぜ」
あいちやんは、さも不思議ふしぎさうに自分じぶんかた左顧右盻とみかうみしてゐました。『可笑をかしな時計とけい!』つてまた、『わかつて、それでときわからないなンて!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
定得意ぢやうとくいとなし居る身の上なればおつね勿論もちろんちう八が云事にてもそむく事なく主人の如くにつか毎日まいにちつねかたなどもみ機嫌きげん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をんなかたほヽをよせると、キモノの花模様はなもやうなみだのなかにいたりつぼんだりした、しろ花片はなびら芝居しばゐゆきのやうにあほそらへちら/\とひかつてはえしました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「ここは、とてもさむいや。」と、少年は思って、もうなくなっているとは知らず、おかあさんのかたにぼんやり片手かたてをかけたまま、しばらく立っていた。
といって、林太郎のかたをだいてやりました。と、林太郎はおきぬねえちゃんのからだへ、大きなおでこをおしつけて、うーん、うーんとむせびながら
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
かみはひっつめにって、くろかたマントをしていらっしゃる、もうそれだけで、先生せんせいうやま気持きもちがおこると一しょに、先生せんせいがどことなくきになるのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
食卓テーブル對端むかふには、武村兵曹たけむらへいそうほか三名さんめい水兵すいへい行儀ぎようぎよくならび、此方こなたには、日出雄少年ひでをせうねんなかはさんで、大佐たいさわたくしとがみぎひだりかたならべて、やが晩餐ばんさんはじまつた。
彼は友人とかたをたたいて談笑しつつ去ったが、おそらく彼の脳髄のうずいはただ試験の答案をもってのみたされて、母の苦心に考えを向ける余地はなかったろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かたいからせ炯々けいけいと眼を光らせた子路の姿が遠くから見え出すと、人々は孔子をそしる口をつぐむようになった。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
たけは七八すんかたにはれい透明とうめい羽根はねをはやしてりましたが、しかしよくよくればかおは七十あまりの老人ろうじんかおで、そしてに一じょうつえをついてりました。
さてなにがしぼくしたが我家わがやをさしてかへみちすがらさき雲飛うんぴが石をひろつた川とおなじながれかゝつて居るはしまで來ると、ぼくすこかたやすめるつもりで石を欄干らんかんにもたせてほつ一息ひといき
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あさ須原峠のけんのぼる、偶々たま/\行者三人のきたるにふ、身には幾日か風雨ふううさらされてけがれたる白衣をちやくし、かたにはなが珠数じゆづ懸垂けんすゐし、三個の鈴声れいせいに従ふてひびきた
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
投者の球正当の位置に来れりと思惟しいする時は(すなわち球は本基の上を通過しかつ高さかたより高からずひざより低くからざる時は)打者必ずこれをたざるべからず。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
院長いんちょうかたちぢめて溜息ためいきをしながらく、そうして玄関げんかんとおりながら、ニキタにむかってうた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
与平はシャツを着て、着物をかたに羽織ると、炉端ろばたに上って安坐あぐらを組んで煙草たばこを吸った。人が変ったように千穂子が今朝けさもどって来てからと云うもの、むっつりしている。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)