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矢張
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やつぱ
ふりがな文庫
“
矢張
(
やつぱ
)” の例文
仕方
(
しかた
)
がない
矢張
(
やつぱ
)
り
私
(
わたし
)
も
丸木橋
(
まるきばし
)
をば
渡
(
わた
)
らずはなるまい、
父
(
とゝ
)
さんも
踏
(
ふみ
)
かへして
落
(
おち
)
てお
仕舞
(
しまい
)
なされ、
祖父
(
おぢい
)
さんも
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
であつたといふ
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それよ——
矢張
(
やつぱ
)
り……
然
(
さ
)
うだ——
忘
(
わす
)
れもしねえ。……
矢張
(
やつぱ
)
り
同
(
おな
)
じやうな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
はしつけが、
私等
(
わしら
)
にや
其
(
そ
)
の
撫子
(
なでしこ
)
が
早
(
は
)
や
分
(
わか
)
んねえだ。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「だつて、昔から
誰
(
たれ
)
も行かない森だもの、入つて行くのは気味が悪いから……」といつて、
矢張
(
やつぱ
)
り誰一人、森へ入つて行かなかつたのです。
馬鹿七
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
「
織屋
(
おりや
)
、
御前
(
おまへ
)
さうして
荷
(
に
)
を
脊負
(
しよ
)
つて、
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
て、
時分
(
じぶん
)
どきになつたら、
矢張
(
やつぱ
)
り
御膳
(
ごぜん
)
を
食
(
た
)
べるんだらうね」と
細君
(
さいくん
)
が
聞
(
き
)
いた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
成程
(
なるほど
)
、へえゝ。婆「パノラマを
往
(
い
)
つて
御覧
(
ごらん
)
なさいまし。岩「
地獄
(
ぢごく
)
へパノラマが……。婆「
大層
(
たいそう
)
立派
(
りつぱ
)
に
出来
(
でき
)
ましたよ。岩「
矢張
(
やつぱ
)
りあの
浅草
(
あさくさ
)
の公園に
在
(
あ
)
るやうな戦争の
図
(
づ
)
かえ。 ...
明治の地獄
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
實は田舍に母親もありますし、その方の世話もしなければなりませんから、
矢張
(
やつぱ
)
り私はお金で買はれた
玩弄
(
おもちや
)
になつて、花が咲かうが、花が散らうが、目を
潰
(
つぶ
)
つて暮しませう。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
でも子供でしたから、
矢張
(
やつぱ
)
りくれるものはもらはずには居られなかつたからです。
あひるさん と つるさん
(新字旧仮名)
/
村山籌子
(著)
さう言つたが、多吉は
矢張
(
やつぱ
)
りそれなり口を
噤
(
つぐ
)
んだ。
間隔
(
あひだ
)
は七八間しかなかつた。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
しばらくして、もう
煮
(
に
)
えたらうと一つ
取出
(
とりだ
)
して
囓
(
かぢ
)
つてみました。
固
(
かた
)
い。まるで
石
(
いし
)
のやうです。も
少
(
すこ
)
したつて、また
取出
(
とりだ
)
してみました。
矢張
(
やつぱ
)
り
固
(
かた
)
い。いくら
煮
(
に
)
ても
石
(
いし
)
のやうで
食
(
た
)
べられません。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
皆な
新橋辺
(
しんばしあたり
)
のぢやありませんか——
婦人
(
をんな
)
は
矢張
(
やつぱ
)
り日本風の
温柔
(
おとなし
)
いのが
可
(
い
)
いなんて申してネ、自分が以前
盛
(
さかん
)
に西洋風を
唱
(
とな
)
へたことなど忘れて仕舞つて私にまで
斯様
(
こんな
)
丸髷
(
まるまげ
)
など
結
(
ゆ
)
はせるんですもの
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
膃肭臍と女医者、大層な
違
(
ちがひ
)
ぢや、
矢張
(
やつぱ
)
り
邸
(
やしき
)
にゐるお蔭だと男爵は思つた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
矢張
(
やつぱ
)
りロダン先生が
此処
(
ここ
)
で仕事をされるのであると思つた時自分の胸は
轟
(
とゞろ
)
いた。
半
(
なかば
)
から腕の切り放されてある裸体の女は云ひ様もない清い
面貌
(
おもわ
)
をして今や白𤍠の様な
生命
(
いのち
)
を与へられやうとして居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「あゝ
矢張
(
やつぱ
)
り」
銭形平次捕物控:298 匕首の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
早
(
は
)
や
壁
(
かべ
)
も
天井
(
てんじやう
)
も
雪
(
ゆき
)
の
空
(
そら
)
のやうに
成
(
な
)
つた
停車場
(
ステエシヨン
)
に、しばらく
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
ましたが、
餘
(
あま
)
り
不躾
(
ぶしつけ
)
だと
己
(
おのれ
)
を
制
(
せい
)
して、
矢張
(
やつぱ
)
り
一旦
(
いつたん
)
は
宿
(
やど
)
に
着
(
つ
)
く
事
(
こと
)
にしましたのです。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
矢張
(
やつぱ
)
り
物質的
(
ぶつしつてき
)
の
必要
(
ひつえう
)
かららしいです。
先
(
さき
)
が
何
(
なん
)
でも
餘程
(
よほど
)
派出
(
はで
)
な
家
(
うち
)
なんで、
叔母
(
をば
)
さんの
方
(
はう
)
でもさう
單簡
(
たんかん
)
に
濟
(
す
)
まされないんでせう」と
何時
(
いつ
)
にない
世帶染
(
しよたいじ
)
みた
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「へえ、その
方
(
かた
)
も
矢張
(
やつぱ
)
り
叛反
(
むほん
)
をおしやした。争はれんもんどすなあ。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして女教師の福富も
矢張
(
やつぱ
)
り、遣るだらうか、女だから遣らないだらうかという疑問を起した。或時二人
限
(
きり
)
ゐた時、直接訊いて見た。福富は
真顔
(
まがほ
)
になつて、そんな事はした事はありませんと言つた。
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
集金
(
あつめ
)
に
行
(
ゆ
)
くうちでも
通新町
(
とほりしんまち
)
や
何
(
なに
)
かに
隨分
(
ずいぶん
)
可愛想
(
かあいさう
)
なのが
有
(
あ
)
るから、
嘸
(
さぞ
)
お
祖母
(
ばあ
)
さんを
惡
(
わ
)
るくいふだらう、
夫
(
そ
)
れを
考
(
かんが
)
へると
己
(
お
)
れは
涙
(
なみだ
)
がこぼれる、
矢張
(
やつぱ
)
り
氣
(
き
)
が
弱
(
よわ
)
いのだね、
今朝
(
けさ
)
も三
公
(
こう
)
の
家
(
うち
)
へ
取
(
と
)
りに
行
(
い
)
つたら
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
貴嬢
(
あなた
)
にしても
矢張
(
やつぱ
)
り御屈托で
在
(
いら
)
つしやらうと遠慮しましてネ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「それじや
矢張
(
やつぱ
)
り、
横
(
よこ
)
だあ」
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
膚
(
はだ
)
を
蔽
(
おほ
)
うたとも
見
(
み
)
えないで、
美
(
うつくし
)
い
女
(
をんな
)
の
顏
(
かほ
)
がはらはらと
黒髮
(
くろかみ
)
を、
矢張
(
やつぱ
)
り、
同
(
おな
)
じ
絹
(
きぬ
)
の
枕
(
まくら
)
にひつたりと
着
(
つ
)
けて、
此方
(
こちら
)
むきに
少
(
すこ
)
し
仰向
(
あをむ
)
けに
成
(
な
)
つて
寢
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
ます。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それから
是
(
これ
)
も
安之助
(
やすのすけ
)
と
共同
(
きようどう
)
して
失敗
(
しつぱい
)
した
仕事
(
しごと
)
であるが、
叔母
(
をば
)
の
云付
(
いひつ
)
けで、
障子
(
しやうじ
)
を
張
(
は
)
らせられたときには、
水道
(
すゐだう
)
でざぶ/\
枠
(
わく
)
を
洗
(
あら
)
つたため、
矢張
(
やつぱ
)
り
乾
(
かわ
)
いた
後
(
あと
)
で、
惣體
(
そうたい
)
に
歪
(
ゆがみ
)
が
出來
(
でき
)
て
非常
(
ひじやう
)
に
困難
(
こんなん
)
した。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
何
(
なん
)
と……
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
を
昨年
(
さくねん
)
も
見
(
み
)
た。……
篤志
(
とくし
)
の
御方
(
おかた
)
は、
一寸
(
ちよつと
)
お
日記
(
につき
)
を
御覽
(
ごらん
)
を
願
(
ねが
)
ふ。
秋
(
あき
)
の
半
(
なかば
)
かけて
矢張
(
やつぱ
)
り
鬱々
(
うつ/\
)
陰々
(
いん/\
)
として
霖雨
(
ながあめ
)
があつた。
三日
(
みつか
)
とは
違
(
ちが
)
ふまい。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
何
(
ど
)
うかしたか、お
浦
(
うら
)
。はてな、
今
(
いま
)
転
(
ころ
)
んだつて、
下
(
した
)
へは
落
(
おと
)
さん、
怪我
(
けが
)
も
過失
(
あやまち
)
も
為
(
し
)
さうぢやない。
何
(
なん
)
だか
正体
(
しやうたい
)
がないやうだ。
矢張
(
やつぱ
)
り
一時
(
いちじ
)
に
疲労
(
つかれ
)
が
出
(
で
)
たのか。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
丁
(
ちやう
)
ど
今頃
(
いまごろ
)
だで——それ/\、それよ
矢張
(
やつぱ
)
り
此
(
こ
)
の
道
(
みち
)
だ。……
私
(
わし
)
と
忠蔵
(
ちうざう
)
がお
供
(
とも
)
でやしたが、
若奥様
(
わかおくさま
)
がね、
瑞巌寺
(
ずゐがんじ
)
の
欄間
(
らんま
)
に
舞
(
ま
)
つてる、
迦陵頻伽
(
かりようびんが
)
と
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
でや
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「お
姉上
(
あねうへ
)
。」——いや、
二十幾年
(
にじふいくねん
)
ぶりかで、
近頃
(
ちかごろ
)
も
逢
(
あ
)
つたが、
夫人
(
ふじん
)
は
矢張
(
やつぱ
)
り、
年上
(
としうへ
)
のやうな
心持
(
こゝろもち
)
がするとか
言
(
い
)
ふ。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
所々
(
ところ/″\
)
で、——
釣臺
(
つりだい
)
に
附
(
つ
)
いてくれました
主人
(
あるじ
)
が
聲
(
こゑ
)
を
掛
(
か
)
けて
教
(
をし
)
へますのを、あゝ、
冥途
(
めいど
)
へ
行
(
ゆ
)
く
路
(
みち
)
も、
矢張
(
やつぱ
)
り、
近所
(
きんじよ
)
だけは
知
(
し
)
つた
町
(
まち
)
を
通
(
とほ
)
るのかと
思
(
おも
)
ひました。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とのそ/\
帰
(
かへ
)
る……
矢張
(
やつぱ
)
りお
浦
(
うら
)
を
攫
(
さら
)
はれた
為
(
ため
)
に、
気
(
き
)
が
違
(
ちが
)
つたと
思
(
おも
)
ふらしい。いや、
是
(
これ
)
だから
人間
(
にんげん
)
の
来
(
く
)
るのは
煩
(
うるさ
)
い!
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と、
其
(
そ
)
のきいちやんの
處
(
ところ
)
へ
來
(
き
)
て、
右
(
みぎ
)
の
鍋下
(
なべした
)
だが、「
何
(
なん
)
だらう、きいちやん
知
(
し
)
つてるかい。」と
矢張
(
やつぱ
)
り
分
(
わか
)
らない
女房
(
かみさん
)
が
聞
(
き
)
くと、これが
又
(
また
)
「
知
(
し
)
らない。」と
言
(
い
)
ふ。
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夜
(
よ
)
もやゝ
更
(
ふ
)
けて、
食堂
(
しよくだう
)
の、
白
(
しろ
)
く
伽藍
(
がらん
)
としたあたり、ぐら/\と
搖
(
ゆ
)
れるのが、
天井
(
てんじやう
)
で
鼠
(
ねずみ
)
が
騷
(
さわ
)
ぐやうである。……
矢張
(
やつぱ
)
り
旅
(
たび
)
はもの
寂
(
さび
)
しい、
酒
(
さけ
)
の
銘
(
めい
)
さへ、
孝子正宗
(
かうしまさむね
)
。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
で、
其
(
それ
)
で
矢張
(
やつぱ
)
り、お
前樣
(
まへさま
)
に
私
(
われら
)
がしましたやうに、
背後
(
うしろ
)
から
呼留
(
よびと
)
めまして、
瓦斯
(
がす
)
の五
基目
(
だいめ
)
も、
足
(
あし
)
もとの十九の
數
(
かず
)
も、お
前樣
(
まへさま
)
に
今
(
いま
)
われらが
言
(
い
)
うた
通
(
とほ
)
りの
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
します。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
お
秋
(
あき
)
が
納戸
(
なんど
)
に
居
(
ゐ
)
た
姿
(
すがた
)
を、
猛然
(
まうぜん
)
と
思出
(
おもひだ
)
すと、
矢張
(
やつぱ
)
り
鳴留
(
なきや
)
まぬ
猫
(
ねこ
)
の
其
(
そ
)
の
聲
(
こゑ
)
が、
豫
(
かね
)
ての
馴染
(
なじみ
)
でよく
知
(
し
)
つた。お
秋
(
あき
)
が
撫擦
(
なでさす
)
つて、
可愛
(
かはい
)
がつた、
黒
(
くろ
)
、と
云
(
い
)
ふ
猫
(
ねこ
)
の
聲
(
こゑ
)
に
寸分
(
すんぶん
)
違
(
たが
)
はぬ。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
清々
(
すが/\
)
しいの、
何
(
なん
)
のつて、
室内
(
しつない
)
には
塵
(
ちり
)
一
(
ひと
)
ツもない、あつても
其
(
それ
)
が
矢張
(
やつぱ
)
り
透通
(
すきとほ
)
つて
了
(
しま
)
ふんですもの。
壁
(
かべ
)
は
一面
(
いちめん
)
に
玉
(
たま
)
の、
大姿見
(
おほすがたみ
)
を
掛
(
か
)
けたやうでした、
色
(
いろ
)
は
白
(
しろ
)
いんですがね。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
嘗
(
かつ
)
て、
木下
(
きのした
)
さんの
柏木
(
かしはぎ
)
の
邸
(
やしき
)
の、
矢張
(
やつぱ
)
り
庭
(
には
)
の
池
(
いけ
)
の
蛙
(
かへる
)
を
捉
(
とら
)
へて、
水掻
(
みづかき
)
の
附元
(
つけもと
)
を(
紅
(
あか
)
い
絹絲
(
きぬいと
)
)……と
言
(
い
)
ふので
想像
(
さうざう
)
すると——
御容色
(
ごきりやう
)
よしの
新夫人
(
しんふじん
)
のお
手傳
(
てつだ
)
ひがあつたらしい。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
聞
(
き
)
かつせえまし、
肩
(
かた
)
から
胸
(
むね
)
の
辺
(
あたり
)
まで、
薄
(
うつす
)
らと
見
(
み
)
えるだね、
試
(
ため
)
して
見
(
み
)
ろで、やつと
引
(
ひ
)
き
揚
(
あ
)
げると、
矢張
(
やつぱ
)
り
網
(
あみ
)
に
懸
(
かゝ
)
つて
水
(
みづ
)
を
離
(
はな
)
れる……
今度
(
こんど
)
は、ヤケにゆつさゆさ
引振
(
ひつぷる
)
ふと
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「それ/\、お
冠
(
かんむり
)
の
通
(
とほ
)
り、
嘴
(
くちばし
)
が
曲
(
まが
)
つて
來
(
き
)
ました。
目
(
め
)
をくる/\……でも、
矢張
(
やつぱ
)
り
可愛
(
かはい
)
いねえ。」
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
東京
(
とうきやう
)
に
居
(
ゐ
)
て、
京都
(
きやうと
)
の
藝妓
(
げいこ
)
に、
石山寺
(
いしやまでら
)
の
螢
(
ほたる
)
を
贈
(
おく
)
られて、
其處等
(
そこら
)
露草
(
つゆぐさ
)
を
探
(
さが
)
して
歩行
(
ある
)
いて、
朝晩
(
あさばん
)
井戸
(
ゐど
)
の
水
(
みづ
)
の
霧
(
きり
)
を
吹
(
ふ
)
くと
云
(
い
)
ふ
了簡
(
れうけん
)
だと
違
(
ちが
)
ふんです……
矢張
(
やつぱ
)
り
故郷
(
ふるさと
)
の
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
れた
所爲
(
せゐ
)
だ
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
晝間
(
ひるま
)
あのお
春
(
はる
)
が
納戸
(
なんど
)
に
絲
(
いと
)
を
繰
(
く
)
つて
居
(
ゐ
)
る
姿
(
すがた
)
を
猛然
(
まうぜん
)
と
思出
(
おもひだ
)
すと、
矢張
(
やつぱ
)
り
啼留
(
なきや
)
まぬ
猫
(
ねこ
)
の
其
(
そ
)
の
聲
(
こゑ
)
が、
豫
(
かね
)
ての
馴染
(
なじみ
)
でよく
知
(
し
)
つた、お
春
(
はる
)
が
撫擦
(
なでさす
)
つて
可愛
(
かはい
)
がつた
黒
(
くろ
)
と
云
(
い
)
ふ
猫
(
ねこ
)
の
聲
(
こゑ
)
に
寸分
(
すんぶん
)
違
(
ちが
)
はぬ。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
つい
近
(
ちか
)
くは、
近
(
ちか
)
く、
一昔前
(
ひとむかしまへ
)
は
矢張
(
やつぱ
)
り
前
(
まへ
)
、
道理
(
だうり
)
に
於
(
おい
)
て
年
(
とし
)
を
隔
(
へだ
)
てない
筈
(
はず
)
はないから、
十
(
とを
)
から三十までとしても、
其
(
そ
)
の
間
(
あひだ
)
は
言
(
い
)
はずとも二十
年
(
ねん
)
經
(
た
)
つのに、
最初
(
さいしよ
)
逢
(
あ
)
つた
時
(
とき
)
から
幾歳
(
いくとせ
)
を
經
(
へ
)
ても
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今時分
(
いまじぶん
)
、こんな
處
(
ところ
)
へ、
運動會
(
うんどうくわい
)
ではありますまい。
矢張
(
やつぱ
)
り
見舞
(
みまひ
)
か、それとも
死體
(
したい
)
を
引取
(
ひきとり
)
に
行
(
ゆ
)
くか、どつち
道
(
みち
)
、
頼
(
たの
)
もしさうなのは、
其
(
その
)
お
媼
(
ばあ
)
さんの、
晃乎
(
きらり
)
と
胸
(
むね
)
に
架
(
か
)
けた、
金屬製
(
きんぞくせい
)
の
十字架
(
じふじか
)
で。——
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……
遙
(
はるか
)
に
聲
(
こゑ
)
が
消
(
き
)
えると、
戸外
(
おもて
)
が
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
だのに、もう
寂寞
(
しん
)
として、
時々
(
とき/″\
)
びゆうと
風
(
かぜ
)
が
騷
(
さわ
)
ぐ。
何
(
なん
)
だか、どうも、さつきから
部屋
(
へや
)
へ
氣
(
き
)
がこもる。
玄關境
(
げんくわんざかひ
)
のふすまを
開
(
あ
)
けたが、
矢張
(
やつぱ
)
り
息
(
いき
)
がこもる。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
が、
矢張
(
やつぱ
)
り
石
(
いし
)
を
投
(
な
)
げるか、
何
(
ど
)
うか、
頻
(
しきり
)
に
樣子
(
やうす
)
が
見
(
み
)
たく
成
(
な
)
つたもんですからね。
御苦勞樣
(
ごくらうさま
)
な
坂
(
さか
)
の
下口
(
おりくち
)
で
暫時
(
しばらく
)
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
て、
遣過
(
やりす
)
ごしたのを、
後
(
あと
)
からついて
上
(
あが
)
つて、
其處
(
そこ
)
へ
立
(
た
)
つて
視
(
なが
)
めたもんです。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
矢張
(
やつぱ
)
り
当日
(
たうじつ
)
、
志
(
こゝろざ
)
した
奥州路
(
おうしうぢ
)
に
旅
(
たび
)
するのに、一
旦
(
たん
)
引返
(
ひきかへ
)
して、はきものを
替
(
か
)
へて、
洋杖
(
すてつき
)
と、
唯
(
たゞ
)
一つバスケツトを
持
(
も
)
つて
出直
(
でなほ
)
したのであるが、
俥
(
くるま
)
で
行
(
ゆ
)
く
途中
(
とちう
)
も、
袖
(
そで
)
はしめやかで、
上野
(
うへの
)
へ
着
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
も
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
矢張
(
やつぱ
)
り、
病院
(
びやうゐん
)
を
怨
(
うら
)
んで
居
(
ゐ
)
るんですかねえ、
誰
(
だれ
)
かが
亡
(
な
)
く
成
(
な
)
つてさ、
貴方
(
あなた
)
。」
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今
(
いま
)
考
(
かんが
)
へると、それが
矢張
(
やつぱ
)
り、あの
先刻
(
さつき
)
の
樹
(
き
)
だつたかも
知
(
し
)
れません。
同
(
おな
)
じ
薫
(
かをり
)
が
風
(
かぜ
)
のやうに
吹亂
(
ふきみだ
)
れた
花
(
はな
)
の
中
(
なか
)
へ、
雪
(
ゆき
)
の
姿
(
すがた
)
が
素直
(
まつすぐ
)
に
立
(
た
)
つた。が、
滑
(
なめら
)
かな
胸
(
むね
)
の
衝
(
つ
)
と
張
(
は
)
る
乳
(
ちゝ
)
の
下
(
した
)
に、
星
(
ほし
)
の
血
(
ち
)
なるが
如
(
ごと
)
き
一雫
(
ひとしづく
)
の
鮮紅
(
からくれなゐ
)
。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「あれ、
矢張
(
やつぱ
)
り
恐悦
(
きようえつ
)
して
居
(
ゐ
)
ら、
何
(
ど
)
うかしてるんぢやねえかい。」
鑑定
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
矢張
(
やつぱ
)
りたまごと
書
(
か
)
いてあるだらう。」と
云
(
い
)
ふんです。
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
矢張
(
やつぱ
)
り
隧道
(
トンネル
)
に
惱
(
なや
)
んだんだ。」
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
矢張
(
やつぱ
)
り
見
(
み
)
える。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
矢
常用漢字
小2
部首:⽮
5画
張
常用漢字
小5
部首:⼸
11画
“矢張”で始まる語句
矢張大根卸