矢張やつぱ)” の例文
仕方しかたがない矢張やつぱわたし丸木橋まるきばしをばわたらずはなるまい、とゝさんもふみかへしておちてお仕舞しまいなされ、祖父おぢいさんもおなことであつたといふ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それよ——矢張やつぱり……うだ——わすれもしねえ。……矢張やつぱおなじやうなことはしつけが、私等わしらにや撫子なでしこわかんねえだ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「だつて、昔からたれも行かない森だもの、入つて行くのは気味が悪いから……」といつて、矢張やつぱり誰一人、森へ入つて行かなかつたのです。
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
織屋おりや御前おまへさうして脊負しよつて、そとて、時分じぶんどきになつたら、矢張やつぱ御膳ごぜんべるんだらうね」と細君さいくんいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
成程なるほど、へえゝ。婆「パノラマをつて御覧ごらんなさいまし。岩「地獄ぢごくへパノラマが……。婆「大層たいそう立派りつぱ出来できましたよ。岩「矢張やつぱりあの浅草あさくさの公園にるやうな戦争のかえ。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
實は田舍に母親もありますし、その方の世話もしなければなりませんから、矢張やつぱり私はお金で買はれた玩弄おもちやになつて、花が咲かうが、花が散らうが、目をつぶつて暮しませう。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
でも子供でしたから、矢張やつぱりくれるものはもらはずには居られなかつたからです。
あひるさん と つるさん (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
さう言つたが、多吉は矢張やつぱりそれなり口をつぐんだ。間隔あひだは七八間しかなかつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しばらくして、もうえたらうと一つ取出とりだしてかぢつてみました。かたい。まるでいしのやうです。もすこしたつて、また取出とりだしてみました。矢張やつぱかたい。いくらてもいしのやうでべられません。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
皆な新橋辺しんばしあたりのぢやありませんか——婦人をんな矢張やつぱり日本風の温柔おとなしいのがいなんて申してネ、自分が以前さかんに西洋風をとなへたことなど忘れて仕舞つて私にまで斯様こんな丸髷まるまげなどはせるんですもの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
膃肭臍と女医者、大層なちがひぢや、矢張やつぱやしきにゐるお蔭だと男爵は思つた。
矢張やつぱりロダン先生が此処ここで仕事をされるのであると思つた時自分の胸はとゞろいた。なかばから腕の切り放されてある裸体の女は云ひ様もない清い面貌おもわをして今や白𤍠の様な生命いのちを与へられやうとして居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「あゝ矢張やつぱり」
かべ天井てんじやうゆきそらのやうにつた停車場ステエシヨンに、しばらくかんがへてましたが、あま不躾ぶしつけだとおのれせいして、矢張やつぱ一旦いつたん宿やどことにしましたのです。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
矢張やつぱ物質的ぶつしつてき必要ひつえうかららしいです。さきなんでも餘程よほど派出はでうちなんで、叔母をばさんのはうでもさう單簡たんかんまされないんでせう」と何時いつにない世帶染しよたいじみたことつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「へえ、そのかた矢張やつぱ叛反むほんをおしやした。争はれんもんどすなあ。」
そして女教師の福富も矢張やつぱり、遣るだらうか、女だから遣らないだらうかという疑問を起した。或時二人きりゐた時、直接訊いて見た。福富は真顔まがほになつて、そんな事はした事はありませんと言つた。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
集金あつめくうちでも通新町とほりしんまちなにかに隨分ずいぶん可愛想かあいさうなのがるから、さぞ祖母ばあさんをるくいふだらう、れをかんがへるとれはなみだがこぼれる、矢張やつぱよわいのだね、今朝けさも三こううちりにつたら
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貴嬢あなたにしても矢張やつぱり御屈托でいらつしやらうと遠慮しましてネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「それじや矢張やつぱり、よこだあ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
はだおほうたともえないで、うつくしをんなかほがはらはらと黒髮くろかみを、矢張やつぱり、おなきぬまくらにひつたりとけて、此方こちらむきにすこ仰向あをむけにつてます。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからこれ安之助やすのすけ共同きようどうして失敗しつぱいした仕事しごとであるが、叔母をば云付いひつけで、障子しやうじらせられたときには、水道すゐだうでざぶ/\わくあらつたため、矢張やつぱかわいたあとで、惣體そうたいゆがみ出來でき非常ひじやう困難こんなんした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんと……おなこと昨年さくねんた。……篤志とくし御方おかたは、一寸ちよつと日記につき御覽ごらんねがふ。あきなかばかけて矢張やつぱ鬱々うつ/\陰々いん/\として霖雨ながあめがあつた。三日みつかとはちがふまい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うかしたか、おうら。はてな、いまころんだつて、したへはおとさん、怪我けが過失あやまちさうぢやない。なんだか正体しやうたいがないやうだ。矢張やつぱ一時いちじ疲労つかれたのか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちやう今頃いまごろだで——それ/\、それよ矢張やつぱみちだ。……わし忠蔵ちうざうがおともでやしたが、若奥様わかおくさまがね、瑞巌寺ずゐがんじ欄間らんまつてる、迦陵頻伽かりようびんがこゑでや
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お姉上あねうへ。」——いや、二十幾年にじふいくねんぶりかで、近頃ちかごろつたが、夫人ふじん矢張やつぱり、年上としうへのやうな心持こゝろもちがするとかふ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
所々ところ/″\で、——釣臺つりだいいてくれました主人あるじこゑけてをしへますのを、あゝ、冥途めいどみちも、矢張やつぱり、近所きんじよだけはつたまちとほるのかとおもひました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とのそ/\かへる……矢張やつぱりおうらさらはれたために、ちがつたとおもふらしい。いや、これだから人間にんげんるのはうるさい!
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、のきいちやんのところて、みぎ鍋下なべしただが、「なんだらう、きいちやんつてるかい。」と矢張やつぱわからない女房かみさんくと、これがまたらない。」とふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もやゝけて、食堂しよくだうの、しろ伽藍がらんとしたあたり、ぐら/\とれるのが、天井てんじやうねずみさわぐやうである。……矢張やつぱたびはものさびしい、さけめいさへ、孝子正宗かうしまさむね
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、それ矢張やつぱり、お前樣まへさまわれらがしましたやうに、背後うしろから呼留よびとめまして、瓦斯がすの五基目だいめも、あしもとの十九のかずも、お前樣まへさまいまわれらがうたとほりのことまをします。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あき納戸なんど姿すがたを、猛然まうぜん思出おもひだすと、矢張やつぱ鳴留なきやまぬねここゑが、かねての馴染なじみでよくつた。おあき撫擦なでさすつて、可愛かはいがつた、くろ、とねここゑ寸分すんぶんたがはぬ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
清々すが/\しいの、なんのつて、室内しつないにはちりひとツもない、あつてもそれ矢張やつぱ透通すきとほつてしまふんですもの。かべ一面いちめんたまの、大姿見おほすがたみけたやうでした、いろしろいんですがね。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かつて、木下きのしたさんの柏木かしはぎやしきの、矢張やつぱにはいけかへるとらへて、水掻みづかき附元つけもとを(あか絹絲きぬいと)……とふので想像さうざうすると——御容色ごきりやうよしの新夫人しんふじんのお手傳てつだひがあつたらしい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつせえまし、かたからむねあたりまで、うつすらとえるだね、ためしてろで、やつとげると、矢張やつぱあみかゝつてみづはなれる……今度こんどは、ヤケにゆつさゆさ引振ひつぷるふと
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それ/\、おかんむりとほり、くちばしまがつてました。をくる/\……でも、矢張やつぱ可愛かはいいねえ。」
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東京とうきやうて、京都きやうと藝妓げいこに、石山寺いしやまでらほたるおくられて、其處等そこら露草つゆぐささがして歩行あるいて、朝晩あさばん井戸ゐどみづきりくと了簡れうけんだとちがふんです……矢張やつぱ故郷ふるさとことわすれた所爲せゐ
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
晝間ひるまあのおはる納戸なんどいとつて姿すがた猛然まうぜん思出おもひだすと、矢張やつぱ啼留なきやまぬねここゑが、かねての馴染なじみでよくつた、おはる撫擦なでさすつて可愛かはいがつたくろねここゑ寸分すんぶんちがはぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ついちかくは、ちかく、一昔前ひとむかしまへ矢張やつぱまへ道理だうりおいとしへだてないはずはないから、とをから三十までとしても、あひだはずとも二十ねんつのに、最初さいしよつたときから幾歳いくとせても
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今時分いまじぶん、こんなところへ、運動會うんどうくわいではありますまい。矢張やつぱ見舞みまひか、それとも死體したい引取ひきとりくか、どつちみちたのもしさうなのは、そのばあさんの、晃乎きらりむねけた、金屬製きんぞくせい十字架じふじかで。——
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……はるかこゑえると、戸外おもてよひくちだのに、もう寂寞しんとして、時々とき/″\びゆうとかぜさわぐ。なんだか、どうも、さつきから部屋へやがこもる。玄關境げんくわんざかひのふすまをけたが、矢張やつぱいきがこもる。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、矢張やつぱいしげるか、うか、しきり樣子やうすたくつたもんですからね。御苦勞樣ごくらうさまさか下口おりくち暫時しばらくつてて、遣過やりすごしたのを、あとからついてあがつて、其處そこつてながめたもんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢張やつぱ当日たうじつこゝろざした奥州路おうしうぢたびするのに、一たん引返ひきかへして、はきものをへて、洋杖すてつきと、たゞ一つバスケツトをつて出直でなほしたのであるが、くるま途中とちうも、そではしめやかで、上野うへのいたとき
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢張やつぱり、病院びやうゐんうらんでるんですかねえ、だれかがつてさ、貴方あなた。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いまかんがへると、それが矢張やつぱり、あの先刻さつきだつたかもれません。おなかをりかぜのやうに吹亂ふきみだれたはななかへ、ゆき姿すがた素直まつすぐつた。が、なめらかなむねちゝしたに、ほしなるがごと一雫ひとしづく鮮紅からくれなゐ
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あれ、矢張やつぱ恐悦きようえつしてら、うかしてるんぢやねえかい。」
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢張やつぱりたまごといてあるだらう。」とふんです。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢張やつぱ隧道トンネルなやんだんだ。」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢張やつぱえる。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)