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撫擦
はッと縁側に腰をかけた、女房は草履の
踵を、清くこぼれた
褄にかけ、片手を
背後に、あらぬ空を
視めながら、
俯向き通しの疲れもあった、
頻に胸を
撫擦る。
後に仙台侯の
御抱えになりました
黒坂一齋と云う先生の処に、内弟子に参って
居る
惣領の
新五郎と云う者を
家へ呼寄せて、病人の
撫擦りをさせたり、
或は薬其の
外の手当もさせまする。
お
秋が
納戸に
居た
姿を、
猛然と
思出すと、
矢張り
鳴留まぬ
猫の
其の
聲が、
豫ての
馴染でよく
知つた。お
秋が
撫擦つて、
可愛がつた、
黒、と
云ふ
猫の
聲に
寸分違はぬ。