撫擦なでさす)” の例文
はッと縁側に腰をかけた、女房は草履のかかとを、清くこぼれたつまにかけ、片手を背後うしろに、あらぬ空をながめながら、俯向うつむき通しの疲れもあった、しきりに胸を撫擦なでさする。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のちに仙台侯の御抱おかゝえになりました黒坂一齋くろさかいっさいと云う先生の処に、内弟子に参って惣領そうりょう新五郎しんごろうと云う者をうちへ呼寄せて、病人の撫擦なでさすりをさせたり、あるいは薬其のほかの手当もさせまする。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あき納戸なんど姿すがたを、猛然まうぜん思出おもひだすと、矢張やつぱ鳴留なきやまぬねここゑが、かねての馴染なじみでよくつた。おあき撫擦なでさすつて、可愛かはいがつた、くろ、とねここゑ寸分すんぶんたがはぬ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
母の側に附きりで居りまして、母の機嫌を取るばかりでなく、足腰を撫擦なでさすり、又は枕元に本を持って参りまして、読んで聞かせたりして、外出そとでを致しませんから、また母も心配して
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
晝間ひるまあのおはる納戸なんどいとつて姿すがた猛然まうぜん思出おもひだすと、矢張やつぱ啼留なきやまぬねここゑが、かねての馴染なじみでよくつた、おはる撫擦なでさすつて可愛かはいがつたくろねここゑ寸分すんぶんちがはぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)