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吹亂
この
時も、
戸外はまだ
散々であつた。
木はたゞ
水底の
海松の
如くうねを
打ち、
梢が
窪んで、
波のやうに
吹亂れる。
尋る中
彌生の空も十九日
子待の月の
稍出て
朧ながらに差かゝる
堤の
柳戰々と
吹亂れしも物
寂寞水音高き大井川の此方の
岡へ來
掛るに何やらん二
疋の犬が
爭ひ居しが安五郎を見ると
齊しく
咥へし物を
其の
雪洞の
消えた
拍子に、
晃乎と
唯吉の
目に
留つたのは、
鬢を
拔けて
草に
落ちた
金簪で……
濕やかな
露の
中に、
尾を
曳くばかり、
幽な
螢の
影を
殘したが、ぼう/\と
吹亂れる
可厭な
風に