-
トップ
>
-
ふきみだ
其の
雪洞の
消えた
拍子に、
晃乎と
唯吉の
目に
留つたのは、
鬢を
拔けて
草に
落ちた
金簪で……
濕やかな
露の
中に、
尾を
曳くばかり、
幽な
螢の
影を
殘したが、ぼう/\と
吹亂れる
可厭な
風に
今考へると、それが
矢張り、あの
先刻の
樹だつたかも
知れません。
同じ
薫が
風のやうに
吹亂れた
花の
中へ、
雪の
姿が
素直に
立つた。が、
滑かな
胸の
衝と
張る
乳の
下に、
星の
血なるが
如き
一雫の
鮮紅。
国芳画中の女芸者は濃く荒く
紺絞の
浴衣の腕もあらはに猪牙の
船舷に
肱をつき、憎きまで
仇ツぽきその
頤を
支へさせ、
油気薄き
鬢の毛をば河風の吹くがままに
吹乱さしめたる様子には