吹亂ふきみだ)” の例文
新字:吹乱
このときも、戸外おもてはまだ散々さん/″\であつた。はたゞ水底みなそこ海松みるごとくうねをち、こずゑくぼんで、なみのやうに吹亂ふきみだれる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
尋る中彌生やよひの空も十九日子待ねまちの月のやゝ出ておぼろながらに差かゝるつゝみやなぎ戰々そよ/\吹亂ふきみだれしも物寂寞さびしく水音みづおとたかき大井川の此方のをかへ來かゝるに何やらん二ひきの犬があらそひ居しが安五郎を見るとひとしくくはへし物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
雪洞ぼんぼりえた拍子ひやうしに、晃乎きらり唯吉たゞきちとまつたのは、びんづらけてくさちた金簪きんかんざしで……しめやかなつゆなかに、くばかり、かすかほたるかげのこしたが、ぼう/\と吹亂ふきみだれる可厭いやかぜ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いまかんがへると、それが矢張やつぱり、あの先刻さつきだつたかもれません。おなかをりかぜのやうに吹亂ふきみだれたはななかへ、ゆき姿すがた素直まつすぐつた。が、なめらかなむねちゝしたに、ほしなるがごと一雫ひとしづく鮮紅からくれなゐ
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)