よう)” の例文
ゆきがふるとられなくなるから、ちょっと、となりむらまでようたしにいってくる。」と、父親ちちおやは、じたくをしながら、いいました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
宗助そうすけにも御米およねにもおもけないほどたまきやくなので、二人ふたりともなにようがあつての訪問はうもんだらうとすゐしたが、はたして小六ころくくわんするけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こんどは何かまとまったようがあるとかで、守口もりぐちの双葉屋という遊女屋から、お仙のからだを抵当かたに、百両ほど借りてしまった。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『おまへ亞尼アンニーとかつたねえ、なんようかね。』とわたくししづかにふた。老女らうぢよむしのやうなこゑで『賓人まれびとよ。』と暫時しばしわたくしかほながめてつたが
ようじゃァねえが、おかみさんもああいうンだから、ばんにしたらどうだ。どうせいまったって、えるもんでもねえンだから。——」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「どういうわけだからないが、むろんようもないのに、人のうちの中なんぞをかってにのぞいたりなんぞしませんから、安心あんしんしてください。」
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とまつとつちやいかん。ようのないものはずんずん前進ぜんしんする‥‥」と、さわぎの最中さいちう小隊長せうたいちやう大島少尉おほしませうゐががみがみしたこゑ呶鳴どなつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
余は不足ふそくしなと余分のしなとの直接交換ちよくせつこうくわんのみならず、必要以外の品と雖も後日ごじつようを考へて取り換へ置く事も有りしならんと思惟するなり
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
便所べんじょの二つもあるドアはみなあけはなされ、そのおくでは、いまや一人ひとり使節しせつが、日本流にほんりゅうようをたしているのが、まるえです。
かげうつしたときでした……ようおもむきかされた、かみながい、日本につぽんわかひとの、じつるのと、ひとみあはせたやうだつたつて……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
カピ長 だまれ、むが/\むが/\と、阿呆あはうめ! 其許おぬし御託宣ごたくせんは、冗口仲間むだぐちなかまさけでも飮合のみあとき被言おしゃれ、こゝにはよういわ。
『ラランいふのはおまへか。ヱヴェレストはそんなからすようはないぞ。おまへなんぞにられるとやまけがれだ。かへれ、かへれ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
南軍と北軍と、軍情おのずから異なることかくの如し。一は人えきくをくるしみ、一は人ようすをたのしむ。彼此ひしの差、勝敗に影響せずんばあらず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「十八日。晴。朝飯より出立。よう迄小坂五六あり。当駅より人車に而布袋ほてい村迄、夫より歩行、午後一時頃味野あぢの村へ著。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
言葉はなるべく簡略なるがよいというのも無理ならぬ説なれども、僕の考えでは名も言葉もおのずから物や思想のじつを現すだけでようの足るものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ナイフは真珠貝しんじゅがいのついた綺麗きれいなものだったし、一ルーブリ銀貨ぎんかはのっぴきならぬようにいるのであった。で、先生せんせいのところへいいつけにった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
このにぎやかな町にはいってから、五、六ちょうあるくうちに清造はどこの店も、自分にはまるでようのないものだということを、小さな頭にさとりました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
すると、裁縫さいほうほんとか、料理れうりほんとか、あるひまた育兒いくじくわんするほんとかいふものがある。ほどこれは、大抵たいてい場合ばあひ婦人ふじんのみにようのある書物しよもつである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
左仲が煙管きせるもと差出さしいだすにぞ左仲は愕然ぎよつとなし思はずふるへ出せし體を見るより彼の者は莞爾につこと笑ひ左仲が側へ同じくこし打掛うちかけ旅人りよじんは何等のようにてかく夜道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上杉うえすぎといふ苗字めうじをばいことにして大名だいめう分家ぶんけかせる見得みえぼうのうへなし、下女げじよには奧樣おくさまといはせ、着物きものすそのながいをいて、ようをすればかたがはるといふ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いやらん、もうぬまで、ズボンや、チョッキ、長靴ながぐつにはよういのかもれん。しかし奇妙きみょう成行なりゆきさ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いえ、氷山ひょうざんにぶっつかって船がしずみましてね、わたしたちはこちらのお父さんがきゅうようで二か月前、一足さきに本国へお帰りになったので、あとからったのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ヸリヤム・ブレイクの兄弟きやうだいがヸリヤムにたいしてしたやうに。きみはもう我々われわれにはようはないかもれないけれど、ぼくいつぺんきみひたいとおもつてゐる。つてはなしたい。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
かれその手先てさき自由じいううしなうたとき自棄やけこゝろからかれ風呂敷包ふろしきづゝみいた。野田のだころ主人しゆじんまた主人しゆじんようでの出先でさきからもらつた幾筋いくすぢ手拭てぬぐひあはせてこしらへた浴衣ゆかたした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はい、おけなさいまし。僧「あまり寒いから一ぱいけておれ。亭「エかしこまりました、此方こつちへおけなさいまし。僧「一寸ちよつと小便こようきたいが、何処どこようところはあるまいか。 ...
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分じぶん義母おつかさんに『これから何處どこくのです』とひたいくらゐであつた。最早もう我慢がまんきれなくなつたので、義母おつかさん一寸ちよつたつようたしにつた正宗まさむねめいじて、コツプであほつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
祖母おばあさんはあのかぎようむと、くらまへ石段いしだんりて、かきあひだとほりましたが、そこにとうさんがよくあそんでたのです。味噌藏みそぐら階上うへには住居すまゐ出來できた二かいがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『「あいちやん!まァ此處こゝへおで、ようがあるんだから!」「一寸ちよツとはいり、乳母ばアやも!わたしかへつてるまでねずみさないやうに、この鼠穴ねずみあなばんしておで」だけど』とつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「そりや偶時たまにはう思はんでも無いな。しかしお前は俺にはようのある人間だ。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『音もなく香もなく常に天地あめつちは、書かざる経をくりかへしつつ』とあるのがそのたいでございまして、『天地の恵みつみ置く無尽蔵、鍬で掘り取れ鎌で刈り取れ』と申すのがそのようなんでございます。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あるひいはく、『老莱子らうらいしまた楚人也そひとなりしよ十五へんあらはして道家だうか(一四)ようふ。孔子こうしときおなじうすとふ』と。けだ老子らうしは百いう六十餘歳よさいあるひふ二百餘歳よさいと。みちをさめてじゆやしなへるをもつなり
りもなほさず學問がくもん實際じつさいようてるの凖備じゆんびであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「どんなようだえ。いてやるがらつてたらよからう」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
わたしは、ようたしをするためここをはなれなければなりませんでした。そして、一時間じかんばかりののち、ふたたび、ここをとおりかけました。
ひとをたのまず (新字新仮名) / 小川未明(著)
さいはひ御米およね産氣さんけづいたのは、宗助そうすけそとようのない夜中よなかだつたので、そばにゐて世話せわ出來できるとてんからればはなは都合つがふかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
婦人をんなひざをついてすわつたが、まへ伸上のびあがるやうにして黄昏たそがれにしよんぼりつたわし姿すがたかして、(なにようでござんすかい。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬鹿ばかをいわッし。おいらがんで、うしかわようがあるんだ。もっともこの薬罐やかんそばはなッつけて、よくいで見ねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「聞きずてにならぬ暴言ぼうげんようがあればこそ幕内まくうちへとおる。それは奉行ぶぎょう役権やっけんじゃ。役儀やくぎけんをもってとおるになんのふしぎがあろう。どけどけ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうどこのうちの人たちはよそへ行くところらしいから、きっとうまようだろう。ここらでってほう安心あんしんだ。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これを思えば道すなわち道徳はそのせい高くしてそのよう低く、その来たるところ遠くして、その及ぼすところ広く、田夫野人でんぷやじんも守りるものであるらしい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それは、長崎ながさきでつうやくをしている森山多吉郎もりやまたきちろうというひとが、いま江戸えどにきて、幕府ばくふのごようをつとめているが、英語えいごができるといううわさをきいたのです。
カピ妻 ようとはうぢゃ。乳母うばや、ちっとの退席はづしてたも、内密ないしょうはなしぢゃによって。……いや/\、乳母うばもどりゃ、一通ひとゝほいておいてもらうたはうがよかった。
あざむとり仕合しあはせよしと微笑合ほゝゑみあひこれかうしてあゝしてとおごる事而已のみ談合かたらひけりさて其年そのとしくれあくれば享保きやうほ九年春も三月となりしに江戸中えどぢう大火たいくわに付此白子屋も諸侯方しよこうがたはじ多分たぶんよう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
旦那だんな御新造ごしんぞくおれいを申ていととゝさんがひましたと、子細しさいらねばよろこかほつらや、まづ/\つてくだされ、すこようもあればときて内外うちと見廻みまはせば
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いやらん、もうまで、ヅボンや、チヨツキ、長靴ながぐつにはよういのかもれん。しか奇妙きめう成行なりゆきさ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
えいせいで、シイ・テツサア四・五鏡玉レンズ、千百六十分の一べうまでくシヤツタア付の、手ふだかたレフレツクス、しろようとしてはほとんどこの上ないものといつて差支さしつかへないのだが
遺跡發見物中にははいも有りけたる木片ぼくへんも有りてコロボツクルがようを知り居りし事は明なるが、鉢形はちがた鍋形なべがたの土器の中には其外面のくすぶりたる物も有れば、かし
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
つまり、料理れうりとか裁縫さいほうとか、育兒いくじとかといふ書物以外しよもついぐわいに——婦人ふじん實生活じつせいくわつなかつとめる役割やくわりくわんした書物以外しよもついぐわいに、婦人ふじんにのみようのある書物しよもつがあるかどうかといふこと疑問ぎもんである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すなは現今げんこんおいもつと精巧せいこうなる潜水器せんすいきでも、海底かいてい五十米突メートル以下いかしづんではみづ壓力あつりよくめと空氣喞筒くうきポンプ不完全ふくわんぜんなるために、到底たうていそのようさぬのであるから、潜水器せんすいきもちゆる海賊船かいぞくせん
それはほとんどようをなしませんでした、石盤せきばんなん痕跡あとのこらぬので。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)