ひか)” の例文
よるもうっかりながしのしたや、台所だいどころすみものをあさりに出ると、くらやみに目がひかっていて、どんな目にあうかからなくなりました。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そとで、たこのうなりごえがする。まどけると、あかるくむ。絹糸きぬいとよりもほそいくものいとが、へやのなかにかかってひかっている。
ある少年の正月の日記 (新字新仮名) / 小川未明(著)
からになつた渡船とせんへ、天滿與力てんまよりきかたをいからしてつた。六甲山ろくかふざんしづまうとする西日にしびが、きら/\とれの兩刀りやうたう目貫めぬきひからしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
角海老かどゑび時計とけいひゞききもそゞろあわれのつたへるやうにれば、四絶間たえまなき日暮里につぽりひかりもれがひとけぶりかとうらかなしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
静かにさす午後の日に白くひかって小虫こむしが飛ぶ。蜘糸くものいの断片が日光の道を見せてひらめく。甲州の山は小春こはるそらにうっとりとかすんで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
夕涼ゆふすゞみにはあしあかかにで、ひかたこあらはる。撫子なでしこはまだはやし。山百合やまゆりめつ。月見草つきみさうつゆながらおほくは別莊べつさうかこはれたり。
松翠深く蒼浪遥けき逗子より (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「さうだ、まつたすね。わるくすると、明日あしたあめだぜ‥‥」と、わたしざまこたへた。河野かうのねむさうなやみなかにチラリとひかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
まぶしいものが一せん硝子ガラスとほしてわたしつた。そして一しゆんのち小松こまつえだはもうかつた。それはひかりなかひかかゞや斑點はんてんであつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
しかし外面おもてからたのとはちがって、内部なかはちっともくらいことはなく、ほんのりといかにも落付おちついたひかりが、へや全体ぜんたいみなぎってりました。
草木さうもくおよ地上ちじやうしもまばたきしながらよこにさうしてなゝめけるとほ西にし山々やま/\ゆき一頻ひとしきりひかつた。すべてをつうじて褐色かつしよくひかりつゝまれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ペアレットはストロムボリにてたまたとしようしてゐる。そのおほいさは直徑ちよつけい一米程いちめーとるほどであつてあをひかつたものであつたといふ。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
成程白い雲が大きなそらわたつてゐる。そらかぎりなく晴れて、どこ迄も青くんでゐる上を、綿わたひかつた様ない雲がしきりに飛んで行く。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのとき西にしのぎらぎらのちぢれたくものあひだから、夕陽ゆふひあかくなゝめにこけ野原のはらそゝぎ、すすきはみんなしろのやうにゆれてひかりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
薩摩さつま蝋蠋らふそくてら/\とひか色摺いろずり表紙べうし誤魔化ごまくわして手拭紙てふきがみにもならぬ厄介者やくかいもの売附うりつけるが斯道しだう極意ごくい当世たうせい文学者ぶんがくしや心意気こゝろいきぞかし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
さてまた、弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつ間際まぎわに、船長せんちやうをはじめ船員せんゐん一同いちどう醜態しゆうたいは、ひとおどろいからざるなく、短氣たんき武村兵曹たけむらへいそうひからして
あれはきつね松明たいまつるのだともひましたし、奧山おくやまくさつてひかるのをきつねくちにくはへてるのだともひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おほきくなるにしたがつて少女をとめかほかたちはます/\うるはしくなり、とてもこの世界せかいにないくらゐなばかりか、いへなかすみからすみまでひかかゞやきました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
とりあかみどりはねをして、のどのまわりには、黄金きんまとい、二つのほしのようにきらきらひからせておりました。それはほんとうに美事みごとなものでした。
さて此家にも別にかまどはなくみなにてものをる也。やがて夜もくれければ姫小松を細く割たるをともしとす、ひか一室いつしつをてらして蝋燭らふしよくにもまされり。
進みて私し江戸に在りし時は全盛ぜんせい土地柄とちがら故主人のひかりにて百五十兩の金子に有り附き古郷へ歸りもと田畑たはた受戻うけもどし家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をんなかたほヽをよせると、キモノの花模様はなもやうなみだのなかにいたりつぼんだりした、しろ花片はなびら芝居しばゐゆきのやうにあほそらへちら/\とひかつてはえしました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
それらのをのには横側よこがはゑぐりをれたものがおほいのであります。これらの石斧せきふみなよくみがいてなめらかにひかるように出來できて、非常ひじよう精巧せいこうつくかたであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
『それ、おまへくつなんうなつてる?』とつてグリフォンは、『なんだとふことさ、そんなにひかつてるのは?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
はかか? いや/\、こりゃはかではない、あかまどぢゃ、なア、足下きみ。はて、ヂュリエットがるゆゑに、その艶麗あてやかさで、このあなむろひかかゞや宴席えんせきともゆるわい。
これはたぶん複眼の多数のレンズの作用でちょうどひかごけの場合と同じような反射をするせいと思われる。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
振返ふりかえればむねひか徽章きしょうやら、勲章くんしょうやらをげたおとこが、ニヤリとばかり片眼かためをパチパチと、自分じぶんわらう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すきとおるような、冬の朝の日の光に、それらの店やびんやおかしが、美しくひかっていました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
あしひきのやまさへひかはなりぬるごときおほきみかも 〔巻三・四七七〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
若葉わかばがふっくらとしげった木々のあいだに、大きなわら屋根が見え、それから米倉こめぐらの白いかべが見えてきました。その白い壁は朝の日をうけて、あたたかそうにひかっていました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
硝子ガラスそとには秋風あきかぜいて、水底みなそこさかなのやうに、さむ/″\とひかつてゐた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「菊水の旗、天誅てんちゅうこれ揚がり、桜井の書世綱せいこう以てひかる」と悲歌したる当時の心事しんじを。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そのあごおおきくひらき、したをだらりとし、はきらきらひからせているのです。
殊更ことさらつとめて他人たにん教化けうくわせんとするが如きはこれを為す者の僣越せんえつしめし、無智無謀むちむぼうしようす、る大陽はつとめてかゞやかざるを、ほしは吾人の教化けうくわはかつひかりはなたず、からざるをざればひかるなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
おれはやつとすぎから、つかてたからだおこした。おれのまへにはつまおとした、小刀さすがひとひかつてゐる。おれはそれをにとると、一突ひとつきにおれのむねした。なになまぐさかたまりがおれのくちへこみげてる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かくてただこゑもなし。あをひか硝子戸がらすど真白ましろなるかほふりむけて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おれはおもす、銃剣じうけんつめたひかまち
四 みそらにかがやく 朝日あさひのみひか
七里ヶ浜の哀歌 (新字新仮名) / 三角錫子(著)
あひひかりをあふがしめずや。
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
赤玉は 緒さへひかれど
しくひかりし若者わかもの
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
かうがいひかる黒髮は
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
ひかり。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
そのおとこかおは、にやけてくろく、ひかって、ひげは、やみあがりのようにのびていました。こんどは、勇吉ゆうきちみせまえあしをとめて
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いやうへに、淺葱あさぎえり引合ひきあはせて、恍惚うつとりつて、すだれけて、キレーすゐのタラ/\とひかきみかほなかれると、南無三なむさん
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もう日がとっぷりれて、よるになりました。くらあいだから、けばびそうにうす三日月みかづきがきらきらとひかってえていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
皚々がい/\たる雪夜せつやけいかはりはなけれど大通おほどほりは流石さすが人足ひとあしえずゆき瓦斯燈がすとうひか皎々かう/\として、はだへをさす寒氣かんきへがたければにや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三四郎は午飯ひるめしを済ましてすぐ西片町へ来た。新調の制服を着て、ひかつた靴を穿いてゐる。静かな横町を広田先生の前迄ると、人声がする。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
厘錢りんせん黄銅くわうどう地色ぢいろがぴか/\とひかるまで摩擦まさつされてあつた。どつぺをいたのがさらおやになつて一ごとにどつぺはいてつなへつける。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
君子きみこのびをしてむすばれた電氣でんきつなをほどいてゐた。とそのときはゝあたかもそのひかりにはじかれたやうにぱつとあがつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)