なが)” の例文
そして、あたりはしずかであって、ただ、とおまちかどがる荷車にぐるまのわだちのおとが、ゆめのようにながれてこえてくるばかりであります。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よるもうっかりながしのしたや、台所だいどころすみものをあさりに出ると、くらやみに目がひかっていて、どんな目にあうかからなくなりました。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ながされるのは、たしかにやせたひばりの子供こどもです。ホモイはいきなり水の中にんで、前あしでしっかりそれをつかまえました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこで金太郎は體をかたく小さくして、道の白いながれの上へ、飛びこむやうな合に轉んでいつた。自轉車は三四米先へげ出された。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
やあ? きぬ扱帶しごきうへつて、するりとしろかほえりうまつた、むらさき萌黄もえぎの、ながるゝやうにちうけて、紳士しんし大跨おほまたにづかり/\。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
丁度ちようど普通ふつうちひさななみについてはまおい經驗けいけんするとほりであるから、此状態このじようたいになつてからは、なみといふよりもむしながれといふべきである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
カピ長 やゝ、これは! おゝ、我妻わがつまよ、あれ、さしませ、愛女むすめ體内みうちからながるゝ! えゝ、このけん住家すみかをば間違まちがへをったわ。
ひとひととのあひだすこしでも隙間すきま出来できるとるとあるいてゐるものがすぐ其跡そのあと割込わりこんで河水かはみづながれと、それにうつ灯影ほかげながめるのである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
てんにでもいゝ、にでもいゝ、すがらうとするこゝろいのらうとするねがひが、不純ふじゆんすなとほしてきよくとろ/\と彼女かのぢよむねながた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
幾里いくりともなきながれにかすみをひきたるがごとく、朝より夕べまでこと/″\く川上へつゞきたるがそのかぎりをしらず、川水も見えざるほど也。
かれはどつかりすわつた、よこになつたがまた起直おきなほる。さうしてそでひたひながれる冷汗ひやあせいたが顏中かほぢゆう燒魚やきざかな腥膻なまぐさにほひがしてた。かれまたあるす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うちければひたひよりながれけるに四郎右衞門今は堪忍かんにん成難なりがたしと思へども其身病勞やみつかれて居るゆゑ何共なにとも詮方せんかたなく無念を堪へ寥々すご/\とこそ歸りけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いのきちは、山でまれた。みずうみの上をながれるきりをおっぱいとしてのみ、谷をわたるカッコウの声を、もりうたにきいて、大きくなった。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
くだるわ、/\、/\。ながれは何處どこまでつてもきないのかしら?『いままでにわたしいくマイルちたかしら?』とあいちやんは聲高こわだかひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
馬方うまかたひますと、うま片足かたあしづゝたらひなかれます。うま行水ぎやうずゐわらでもつて、びつしよりあせになつた身體からだながしてやるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「なんてけち なかぜだらう。くならくらしくふけばいいんだ。あついのに。みてくんな、あせを。どうだいまるでながれるやうだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
男は、ぐいぐいとながしこむようにたてつづけていくはいものみ、口のはたをてのひらでぬぐうと立ちあがって、中庭なかにわにぶらりとでていった。
此時このとき今迄いまゝで晴朗うらゝかであつた大空おほぞらは、る/\うち西にしかたからくもつてて、熱帶地方ねつたいちほう有名いうめい驟雨にわかあめが、車軸しやぢくながすやうにつてた。
さういふてん世界せかいにとゞくやうな、空気くうき稀薄うすいところでは、あれあれといふもなく、千ねんぐらゐ年月としつきながれてしまふさうだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
それが済んだら、ぎいと風呂場の戸を半分けた。例の女が入口いりぐちから「ちいとながしませうか」と聞いた。三四郎は大きな声で
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一日ぼくしたがへて往來わうらいあるいて居るとたちまむかふから二人の男、ひたひからあせみづの如くながし、空中くうちゆうあがあがりしてはしりながら
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
みなさんはじり/\ときつけるような海岸かいがん砂濱すなはまたり、あせながしながら登山とざんをされるときのことをかんがへてごらんなさい。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
よほどふかいものとえまして、たたえたみずあいながしたように蒼味あおみび、水面すいめんには対岸たいがん鬱蒼うっそうたる森林しんりんかげが、くろぐろとうつってました。
ほりあめあとみづあつめてさら/\ときしひたしてく。あをしげつてかたむいて川楊かはやなぎえだが一つみづについて、ながちからかるうごかされてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
支那しなでは、たゞいままをしたように新石器時代しんせつきじだいのものがるばかりではなく、その北方ほつぽう黄河こうがながれがきたまがつて、またみなみへをれてるあたりでは
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
僧正そうじょういのりの声と、ろうそくのひかりこうけむりのなかで、人形がうっとり笑いかけたとき、コスモとコスマのからは、なみだがはらはらとながれました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
漸く話のわかって来た友達を失うと云う事は嬉しい事ではないので結句けっくその方がながし元まで響き渡ってよかったのである。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
おくでは殿様とのさま手襷掛たすきがけで、あせをダク/\ながしながら餡拵あんごしらへかなにかしてらつしやり、奥様おくさまは鼻の先を、真白まつしろにしながら白玉しらたまを丸めてるなどといふ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
文壇ぶんだん論陣ろんぢん今やけい亂雜らんざつ小にながれて、あくまでも所信しよしん邁進まいしんするどう々たる論客きやくなきをおもふ時、泡鳴ほうめいさんのさうした追憶ついおくわたしにはふかい懷しさである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
お島は力ない手を、浴槽よくそうふちにつかまったまま、ながっていく湯を、うっとり眺めていた。ごぼごぼと云う音を立てて、湯は流れおちていった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
寢轉ねころんで讀書どくしよしてゐる枕頭まくらもとにお行儀げうぎよくおちんをしてゐる、しかつてもげない、にはへつまみす、また這入はいつてくる、汚物をぶつをたれながす、下女げぢよおこる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
ながれてられるたのみもなしマアどのくらゐかなしからうとらぬことながら苦勞くらうぞかしとて流石さすがわらへばテモじやうさまははなこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よっちゃんと呼ばれる風呂屋の由蔵よしぞうが、誰かの背中を流しながらちょっと挨拶した。陽吉は黙って石鹸とながふだおけの上に置いて湯槽の横手へ廻った。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
明治めいぢ三十五ねんはるぐわつ徳島とくしまり、北海道ほくかいだう移住いぢゆうす。これよりき、四男しなん又一またいちをして、十勝國とかちのくに中川郡なかがはごほり釧路國くしろのくに足寄郡あしよろごほりながるゝ斗滿川とまむがはほとり牧塲ぼくぢやう經營けいえいせしむ。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
むずかしく申しますと、「無声に聴く」と云うことが一頭曳の馬車では出来なくなりますのですね。そこで肝心のだんまりも見事におながれになりましたの。
辻馬車 (新字新仮名) / フェレンツ・モルナール(著)
ながれにそつて京橋區内にはいると、靈岸島湊町みなとちやうに御船手番所があり、新川しんかは三十間堀には酒醤油の問屋と銀座があり、木挽町にも正保元年から山村座がある。
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
彼女は斎杭いくいに懸った鏡の前で、兎の背骨を焼いた粉末を顔に塗ると、その上から辰砂しんしゃの粉を両頬にながした。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
むかしの英傑の伝を見るに、果断だとか、「裁決さいけつながるるがごとし」とかぞうさもなく出来るように書いてある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ながから細君の声で兼吉はほうきをおいて走っていく。五郎はまぐさをいっせいに乳牛にふりまく。十七、八頭の乳牛は一騒然そうぜんとして草をあらそいはむ。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
此の山は九四大徳だいとこひらき給うて、土石草木どせきさうもく九五れいなきはあらずと聞く。さるに九六玉川のながれには毒あり。人飲む時はたふるが故に、大師のよませ給ふ歌とて
なにしろ一刀ひとかたなとはまをすものの、むなもとのきずでございますから、死骸しがいのまはりのたけ落葉おちばは、蘇芳すはうみたやうでございます。いえ、はもうながれてはりません。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かはやぶれ、にくたゞれて、膿汁うみしるのやうなものが、どろ/\してゐた。内臟ないざうはまるで松魚かつを酒盜しほからごとく、まはされて、ぽかんといた脇腹わきばら創口きずぐちからながしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その向こうはながもとで、手桶のそばに茶碗やはしが置いてあった。棚にはおけばちが伏せてあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
銛はするど尖端せんたんと槍の如きとより成る物なるが魚の力つよき時は假令たとへ骨にさりたるも其儘そのままにて水中深く入る事も有るべく、又漁夫があやまつて此道具をながす事も有るべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
しかり、鉱山掘夫かなやまほり六十人、その時、野呂川のろがわながれに沿って、上流かみへ上流へと足なみをそろえていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
りわたったなつの日、風の夜、ながれる光、星のきらめき、雨風あめかぜ小鳥ことりの歌、虫の羽音はおと樹々きぎのそよぎ、このましいこえやいとわしい声、ふだんきなれている、おと、戸の音
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
ところがそのばんのことです。料理番りょうりばんのわかいものが、台所だいどころながぐちから、一のカモがおよいではいってくるのを見ました。ところが、そのカモがこんなことをいいました。
この系統のもの、くすりの流し方変化に富みいずれも卓越する。信楽の作では絵附えつけのものが少ない代りに、ながぐすりの手法が著しく進んだ。色は黒のほかに、白や柿や緑も用いられた。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
シラチブチは其頃そのころから埋まりかけてゐた。東へ掘割を掘つて水を眞下にながすやうになつてから、夏になるたび沿岸えんがんの土が流れ込んで、五寸づつ一尺づつ、だん/\とうづまつて行つた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)