つくゑ)” の例文
どるめんといふも、いしつくゑといふ意味いみ言葉ことばであります。このてーぶるのした人間にんげんはうむつたので、これはうたがひもなくはかであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それをおもふと、つくゑむかつたなりで、白米はくまいいてたべられるのは勿體もつたいないとつてもいゝ。非常ひじやう場合ばあひだ。……かせがずにはられない。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
キツプリング、ブラツクウツド、ビイアスと数へて来ると、どうも皆そのつくゑ抽斗ひきだしには心霊学会の研究報告がはひつてゐさうな心持がする。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
けてゐる眼鏡めがねをはづして、蘿月らげつつくゑを離れて座敷ざしき真中まんなかすわり直つたが、たすきをとりながら這入はいつて来る妻のおたき来訪らいはうのおとよ
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
で、其手紙そのてがみは一わたし押収おうしうすることにして、一たんつくゑ抽斗ひきだしそこれてたが、こんな反故屑ほごくづ差押さしおさへてそれなんになるか。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さうして學校がつこう教場内きようじようない竝列へいれつした多數たすうつくゑあるひ銃器臺じゆうきだいなどは、其連合そのれんごうちからもつて、此桁このけたはりまた小屋組こやぐみ全部ぜんぶさゝへることは容易よういである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
仲冬のすゑ此人居間ゐまの二階にて書案つくゑによりて物をかきてをられしが、まどひさしさがりたる垂氷つらゝの五六尺なるがあかりにさはりてつくゑのほとりくらきゆゑ
さる十三にちぼくひとつくゑ倚掛よりかゝつてぼんやりかんがへてた。十いへものてしまひ、そとあめがしと/\つてる。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うれへんまたたれをかうらむる所もなし拙者せつしやは少々したゝめ物あれば御免ごめんあれ貴殿は緩々ゆる/\御咄おはなし成るべしと云ひつゝ其身はつくゑかゝりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
或時あるとき宗助そうすけがぽかんとして、下宿げしゆくつくゑりかゝつたまゝめづらしく時間じかん使つかかたこまつてゐると、ふと御米およねつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
朝御飯をすますと、つくゑの前にきてすわつた。さつき出来あがつた詩を、忘れぬうちに書きつけて置くためだ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
彼女かのぢよ若々わか/\しくむねをどきつかせながら、いそいでつくゑうへ手紙てがみつてふうつた。彼女かのぢよかほはみる/\よろこびにかゞやいた。ゆがみかげんにむすんだ口許くちもと微笑ほゝゑみうかんでゐる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
山田やまだ書斎しよさいは八ぢやうでしたが、それつくゑ相対さしむかひゑて、北向きたむきさむ武者窓むしやまど薄暗うすぐら立籠たてこもつて、毎日まいにち文学の話です、こゝ二人ふたりはなならべてるから石橋いしばししげく訪ねて来る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何處どこやらのひと子供こどもときうつした寫眞しやしんだといふあどけないのをもらつて、それをけくれにしてて、めんむかつてははれぬことならべてたり、つくゑ引出ひきだしへ叮嚀ていねい仕舞しまつてたり
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と思ツてつくゑの前へ引返すと、母親はにぶ眼光まなざしまぶしさうに此方こツちを見ながら
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
土瓶どびんれたみづつて墓參はかまゐりにつて、それから膳椀ぜんわんみなかへして近所きんじよ人々ひと/″\かへつたのち勘次かんじ㷀然けいぜんとしてふるつくゑうへかれた白木しらき位牌ゐはいたいしてたまらなくさびしいあはれつぽい心持こゝろもちになつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つくゑまへにマツチはつて、かれれをてゐながら、其癖そのくせ大聲おほごゑげて小使こづかひんでマツチをつていなどとひ、女中ぢよちゆうのゐるまへでも平氣へいき下着したぎ一つであるいてゐる、下僕しもべや、小使こづかひつかまへては
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
教場内きようじようないおいてはつくゑしたもつと安全あんぜんであるべきことは説明せつめいようしないであらう。下敷したじきになつた場合ばあひおいて、致命傷ちめいしようあたへるものははりけたとである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
宗助そうすけ障子しやうじてゝ座敷ざしきかへつて、つくゑまへすわつた。座敷ざしきとはひながらきやくとほすから左樣さうづけるまでで、じつ書齋しよさいとか居間ゐまとかはう穩當をんたうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いろも……うすいながら、判然はつきりすゝなかに、ちりはらつてくつきりと鮮麗あざやか姿すがたが、二人ふたりつくゑむかつた横手よこて疊數たゝみかずでふばかりへだてたところに、さむなれば
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのむら小學校しようがつこうには、生徒達せいとたちひろつて石斧せきふを、教室内きようしつないならべてある五六十ごろくじゆうつくゑうへいつぱいやまのようにならべてあるのをました。そのかず二千以上にせんいじようもあつてじつおどろいた次第しだいでありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
今日けふのやうな天候てんこうは、べつしてもあたま差響さしひゞく。わたしくのも可厭いやひとられるのも、ひと訪問はうもんするのも臆劫おつくうつたかたちで——それならてゞもゐるかとおもふと、矢張やつぱりきて、つくゑすわつてゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
まくらちか一脚いつきやくつくゑゑたるは、をりふし硯々すゞり/\び、書物しよもつよむとてあり學校がくかうのまねびをなせば、こゝろにまかせてかみいたづらせよとなり、あにといへるは何心なにごゝろなく積重つみかさねたる反古紙ほごがみりてれば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つくゑの上に書物は幾冊いくさつかさねてある。杉板すぎいたの本箱も置かれてある。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おもはずつくゑつて、『明日あすあさく!』とけんだ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ぺたりとそのまゝつくゑまへすわつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
第一だいゝち墜落物ついらくぶつ張壁はりかべ煖爐用煙突だんろようえんとつなど、いづれも重量じゆうりようだいなるものであるから、つくゑ椅子いすではさゝへることが困難こんなんである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
……これはそのまゝ、いま頂戴ちやうだいつてる。……ふろ敷包しきづつみ御持參ごぢさんで、「つくゑしな。」とおえにつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「さうでせう」と御米およねこたへるのをながして、かれめづらしく書齋しよさい這入はいつた。一時間じかんほどして、御米およねがそつとふすまけてのぞいてると、つくゑむかつて、なにんでゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
櫻町さくらまち殿との最早もはや寢處しんじよたまひしころか、さらずば燈火ともしびのもとに書物しよもつをやひらたまふ、らずばつくゑうへかみべてしづかにふでをやうごかしたまふ、かせたまふはなにならん、何事なにごとかの御打合おんうちあはせを御朋友おほういうもとへか
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こゝの障子しやうじは、をさないものの夜更よふかしをまもつて、さむいに一まいけたまゝ、あられなかにも、ちゝ祖母そぼなさけゆめは、紙一重かみひとへさへぎるさへなく、つくゑのあたりにかよつたのであつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いきほひつて、わたし夢中むちう駈上かけあがつて、懷中電燈くわいちうでんとうあかりりて、戸袋とぶくろたなから、觀世音くわんぜおん塑像そざう一體いつたい懷中くわいちうし、つくゑしたを、壁土かべつちなかさぐつて、なきちゝつてくれた
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
弔礼てうれいのために、香川家かがはけおとづれたものが、うけつけのつくゑも、つばかり、応接おうせつやまをなすなかから、其処そことほされた親類縁者しんるゐえんじや、それ/″\、また他方面たはうめんきやくは、大方おほかた別室べつしつであらう。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一驚いつきやうきつしたわたしつくゑまへでハタとかほはせたのは、知合しりあひのそのをとこで……眞青まつさをつてる。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つたものの、兩方りやうはうで、つくゑをずつて、ごそ/\と火鉢ひばち噛着かじりついて、ひつたりと寄合よりあはす。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大變たいへんです。」「……」「ばけものがます。」「……」「先生せんせいかべのわきの、あの小窓こまどところつくゑいて、勉強べんきやうをしてりますと……う、じり/\とあかりくらりますから、 ...
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あがれ、二階にかいへと、マツチを手探てさぐりでランプをけるのにれてるから、いきなりさきつて、すぐの階子段はしごだんあがつて、ふすまをけると、むツとけむりのくらむよりさきに、つくゑまへ
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むやうに、門外もんそとやなぎくゞつて、格子戸かうしどまへうめのぞくと、二疊にでふ一人ひとりつくゑひかへてた書生しよせいて、はじめてつた、春葉しゆんえふである。十七だから、ひげなんかやさない、五分刈ごぶがりながかほで、仰向あふむいた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)