“御存(ごぞん)” の例文
お螻(けら)殿(どの)を、佛(ほとけ)さん蟲(むし)、馬追蟲(うまおひむし)を、鳴聲(なきごゑ)でスイチヨと呼(よ)ぶ。鹽買蜻蛉(しほがひとんぼ)、味噌買蜻蛉(みそがひとんぼ)、考證(かうしよう)に及(およ)ばず、色合(いろあひ)を以(もつ)て子供衆(こどもしう)は御存(ごぞん)じならん。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ何(なに)も御存(ごぞん)じなしに彼(あ)のやうに喜(よろこ)んでお出遊(いであそ)ばす物(もの)を、何(ど)の顏(かほ)さげて離縁状(りゑんじよう)もらふて下(くだ)されと言(い)はれた物(もの)か、叱(し)かられるは必定(ひつぢよう)
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『はゝゝゝゝ。君(きみ)はまだ私(わたくし)の妻子(さいし)を御存(ごぞん)じなかつたのでしたね。これは失敬(しつけい)々々。』と急(いそが)はしく呼鈴(よびりん)を鳴(な)らして、入(いり)來(きた)つた小間使(こまづかひ)に
女王樣(ぢよわうさま)は事(こと)の大小(だいせう)に拘(かゝは)らず、總(すべ)ての困難(こんなん)を解决(かいけつ)する唯一(ゆゐいつ)の方法(はうはふ)を御存(ごぞん)じでした。『彼(か)れの頭(あたま)を刎(は)ねよ!』と四邊(あたり)も見(み)ずに申(まを)されました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
『紀(こつな)どのは、質屋(しちや)のことを御存(ごぞん)じかな。』と、玄竹(げんちく)の機智(きち)は、敵(てき)の武器(ぶき)で敵(てき)を刺(さ)すやうに、紀(こつな)の言葉(ことば)を捉(とら)へて、紀(こつな)の顏(かほ)の色(いろ)を赧(あか)くさせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いかにも言(い)はれる通(とほり)で、其(その)頭痛(づつう)のために出立(しゆつたつ)の日(ひ)を延(の)ばさうかと思(おも)つてゐますが、どうして直(なほ)してくれられる積(つもり)か。何(なに)か藥方(やくはう)でも御存(ごぞん)じか。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
へい……能(よ)う御存(ごぞん)じさまでございます、これは貴方(あなた)、遠州所持(ゑんしうしよぢ)でございまして、其後(そののち)大(たい)した偉(えら)い宗匠(そうしやう)さんが用(もち)ひたといふ品(しな)でございます。主
なに兄(にい)さんだつて、もう少(すこ)し都合(つがふ)が好(よ)ければ、疾(と)うにも何(ど)うにか爲(し)たんですけれども、御存(ごぞん)じの通(とほ)りだから實際(じつさい)已(や)むを得(え)なかつたんですわ。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御存(ごぞん)じの通(とお)り姫(ひめ)のお祠(やしろ)は相模(さがみ)の走水(はしりみず)と申(もう)すところにあるのですが、あそこは私(わたくし)の縁(えん)づいた三浦家(みうらけ)の領地内(りょうちない)なのでございます。
この頃(ころ)の先輩(せんぱい)に、名高(なだか)い西行法師(さいぎようほうし)といふ人(ひと)があります。御存(ごぞん)じのとほり、世捨(よす)て人(びと)として一風(いつぷう)變(かは)つた、靜(しづ)かな、さびしい歌(うた)を作(つく)つたといはれてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
『いけません、いけません! そんなことをさせてもいいとは誰(たれ)からも言付(いいつ)かりません。御存(ごぞん)じでしょう。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あなたは方々(ほうぼう)の国々(くにぐに)をお回(まわ)りですから、たぶん御存(ごぞん)じでしょうが、この村(むら)でも年々(ねんねん)、それ、あそこにちょっと高(たか)い山がございましょう、あの山の上の神(かみ)さまに
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
乳母 ほんに、巧(うま)いことを被言(おっしゃ)る。事壞(ことこは)しの爲(ため)に出來(でき)た人(ひと)ぢゃといの! あの、殿方(とのがた)え、ロミオの若樣(わかさま)には何處(どこ)へゐたら逢(あ)はれうかの、御存(ごぞん)じなら教(をし)へて下(くだ)され。
しかし御存(ごぞん)じの通り、西洋へ行ってもこれと定(さだま)った職業は覚えず、学位の肩書も取れず、取集めたものは芝居とオペラと音楽会(コンセール)の番組(プログラム)に女芸人の寫真と裸体画(はだかえ)ばかり。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
或時(あるとき)はデレリ茫然(ばうぜん)としてお芋(いも)の煮(に)えたも御存(ごぞん)じなきお目出(めで)たき者は当世(たうせう)の文学者(ぶんがくしや)を置(お)いて誰(た)ぞや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
御存(ごぞん)じの通り牡鹿(おじか)の角は、成長するにつれて枝の数が多くなり、五本ぐらいがまず大鹿である。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「何(なに)より小(こ)より御存(ごぞん)じよりか。なまじ辱(はじ)を知(し)ってるばかりに、おいらァ出世(しゅっせ)が出来(でき)ねえんだよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ほんとうにあなたはめつたにお出(で)ましにならないので、私どものやうに引越(ひつこ)してばかりゐますと、ついあなたが御存(ごぞん)じない家(いへ)も出來(でき)てまゐります、今日はほんとうに嬉(うれ)しうございました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
吾助は聞て我等事御存(ごぞん)じの通り岡山にて主取は致したれども高が若黨(わかたう)奉公なり何時迄(まで)勤(つと)めたりとも詮(せん)なしと奉公の中種々(さま/″\)なる内職致し辛(からう)じて漸々(やう/\)五十兩の金子を溜(ため)たれば何卒大坂か江戸へ出此金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先生(せんせい)が御存(ごぞん)じなかつたら「う」に聴(き)いてごらんなさい。
此處(ここ)は、御存(ごぞん)じでせう、ほら××村(むら)のH病院(びやうゐん)ですのよ。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
口(くち)にせねば入譯(いりわけ)御存(ごぞん)じなきこそよけれ御恩(ごおん)がへしにはお望(のぞ)み叶(かな)へさせまして悦(よろこ)び給(たま)ふを見(み)るが樂(たの)しみぞと我(わ)れを捨(すて)ての周旋(とりもち)なるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それも一(ひと)つだが、其(そ)の當時(たうじ)は、今(いま)も大錢(たいせん)お扱(あつか)ひの方(かた)はよく御存(ごぞん)じ、諸國(しよこく)小貨(こまかい)のが以(もつ)てのほか拂底(ふつてい)で、買(かひ)ものに難澁(なんじふ)一方(ひとかた)ならず。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
そなたが何(なん)と言(い)おうと、神界(しんかい)ではすでに人民(じんみん)の願(ねが)いを容(い)れ、小桜神社(こざくらじんじゃ)を建(た)てさせることに決(き)めた。そなたの器量(ちから)は神界(しんかい)で何(なに)もかも御存(ごぞん)じじゃ。
其爲(そのため)に亞尼(アンニー)は一人(ひとり)淋(さび)しく家(いへ)に殘(のこ)されて、遂(つひ)に私(わたくし)の家(いへ)に奉公(ほうこう)に出(で)る樣(やう)になつたのですが、御存(ごぞん)じの通(とう)り、極(ご)く正直(しやうじき)な女(をんな)ですから、私共(わたくしども)も目(め)をかけて使(つか)つて居(を)る内(うち)
そんなことはさておいて、この歌(うた)の考(かんが)へてゐるところは、ほんとうのことではありません。あなた方(がた)のうちには、すでに風流(ふうりゆう)といふ言葉(ことば)を御存(ごぞん)じな方(かた)がありませう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
『可(い)けません、可(い)けません! 那樣事(そんなこと)を爲(さ)せても可(い)いとは誰(たれ)からも言付(いひつ)かりません。御存(ごぞん)じでせう。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
道翹(だうげう)は不審(ふしん)らしく閭(りよ)の顏(かほ)を見(み)た。「好(よ)く御存(ごぞん)じでございます。先刻(せんこく)あちらの厨(くりや)で、寒山(かんざん)と申(まを)すものと火(ひ)に當(あた)つてをりましたから、御用(ごよう)がおありなさるなら、呼(よ)び寄(よ)せませうか。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
思ったよりは忙(いそが)しい店なんだけれど、チップだけじゃ二人暮して行けるはずがないじゃないの。何も彼(か)も承知しているくせに、内(うち)の先生ときたら相変らず御存(ごぞん)じの通りなんだから。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
拝啓(はいけい)益々(ます/\)御壮健(ごさうけん)奉慶賀候(けいがたてまつりさふらふ)、随(したが)つて貴君(きくん)御来京(ごらいきやう)の趣(おもむき)に御座候得共(ござさふらえども)、実(じつ)は御存(ごぞん)じの通(とほ)り御大喪(ごたいさう)にて、当地(たうち)は普通の家(いへ)にても参列者(さんれつしや)のために塞(ふさ)がり、弊屋(へいをく)も宿所(しゆくしよ)に充(あ)てられ、殊(こと)に夜(よる)のもの等(とう)も之(こ)れなく
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
和尚(おしょう)さまも御存(ごぞん)じのとおり、このごろお上(かみ)のお言(い)いつけで、都(みやこ)の猫(ねこ)が残(のこ)らず放(はな)し飼(が)いになりましたので、罪(つみ)のないわたくしどもの仲間(なかま)で、毎日(まいにち)、毎晩(まいばん)、猫(ねこ)の鋭(するど)い爪(つま)さきにかかって命(いのち)を落(お)とすものが
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
和(やは)らげられ物靜(ものしづか)に庄兵衞妻其方が名は何と云ぞ又國は何れ成やと問(とは)れしかば豐(とよ)はげら/\笑(わら)ひ出し御奉行樣(さま)は私(わたし)の名は御存(ごぞん)じないか私の夫は越後國寶田村の昌次郎(しやうじらう)私は梅と申して上臺の若夫婦(わかふうふ)なり夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あなた、原口さんといふ画工(ゑかき)を御存(ごぞん)じ?」と聞(き)き直(なほ)した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ちつとも此邊(このへん)ぢやあ見掛(みか)けない兒(こ)ですからね、だつて、さう遠方(ゑんぱう)から來(く)るわけはなしさ、誰方(どなた)か御存(ごぞん)じぢやありませんか。」
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
他人(ひと)はとまれお前(まへ)さまばかりは高(たか)が心(こゝろ)御存(ごぞん)じと思(おも)ふたは空(そら)だのめか情(なさけ)ないお詞(ことば)お前(まへ)さまと縁(えん)きれて生存(ながら)へる私(わたし)と思召(おぼしめ)すか恨(うら)みを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これは御存(ごぞん)じの醍醐天皇(だいごてんのう)の御代(みよ)に出來(でき)たもので、普通(ふつう)、天子(てんし)の仰(おほ)せでつくつた歌集(かしゆう)の第一番(だいゝちばん)のものだといふことになつてゐます。かうした歌集(かしゆう)を敕撰集(ちよくせんしゆう)といひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
私(わたくし)は神樣(かみさま)に誓(ちか)つて申(まう)しますよ、貴方(あなた)はまだ御存(ごぞん)じはありますまいが、大變(たいへん)な事(こと)があります。
これも指導役(しどうやく)のお爺(じい)さんから教(おし)えられて、私(わたくし)は女(おんな)が眠(ねむ)っている時(とき)に、白(しろ)い珠(たま)を神様(かみさま)から授(さず)かる夢(ゆめ)を見(み)せてやりました。御存(ごぞん)じの通(とお)り、白(しろ)い珠(たま)はつまり男(おとこ)の児(こ)の徴号(しるし)なのでございまして……。
一向(かう)御存(ごぞん)じ是なき段(だん)仰(おほ)せ聞(きけ)られ候と委細(ゐさい)に申上しかば大岡殿名主用右衞門へ對はれ此儀は何ぞ文藏へ意趣遺恨(いしゆゐこん)にても是ある者の心當(こゝろあた)りはなきやと申さるゝに用右衞門暫時(しばらく)考へ文藏儀は至て實體(じつたい)なる者ゆゑ意趣遺恨等(いしゆゐこんとう)請(うく)べき者に候は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二三日(にさんにち)經(た)つて、弴(とん)さんに此(こ)の話(はなし)をした。丁(ちやう)ど其日(そのひ)、同(おな)じ白樺(しらかば)の社中(しやちう)で、御存(ごぞん)じの名歌集(めいかしふ)『紅玉(こうぎよく)』の著者(ちよしや)木下利玄(きのしたりげん)さんが連立(つれだ)つて見(み)えて居(ゐ)た。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
何處(どこ)の姉樣(あねさま)からお手紙(てがみ)が來(こ)やうぞ、眞赤(まつか)な嘘(うそ)をと我家(わがや)の見返(みかへ)られて、何事(なにごと)も御存(ごぞん)じなしによいお顏(かほ)をして暇(ひま)を下(くだ)さる勿躰(もつたい)なさ、あのやうな毒(どく)の無(な)い
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
皆(みな)さんは、御存(ごぞん)じであらうか……此品(このしな)を。……あなた方(がた)が、女中(ねえ)さんに御祝儀(ごしうぎ)を出(だ)してめしあがる場所(ばしよ)などには、決(けつ)してあるものではない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
法(はふ)も道理(だうり)も無茶苦茶(むちやくちや)の犬畜生(いぬちくしやう)のやうな心(こゝろ)であらう、此樣(このやう)ないたづらの畜生(ちくしやう)をば、御存(ごぞん)じの無(な)い事(こと)とて天(てん)にも地(ち)にも無(な)いかのやうに可愛(かあい)がつて下(くだ)すつて
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一寸(ちよいと)、其(そ)の高樓(たかどの)を何處(どこ)だと思(おも)ひます……印度(インド)の中(なか)のね、蕃蛇剌馬(ばんじやらあまん)……船着(ふなつき)の貿易所(ぼうえきしよ)、——お前(まへ)さんが御存(ごぞん)じだよ、私(わたし)よりか
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
してお内儀(かみ)さんはと阿關(おせき)の問(と)へば、御存(ごぞん)じで御座(ござ)りましよ筋向(すぢむか)ふの杉田(すぎた)やが娘(むすめ)、色(いろ)が白(しろ)いとか恰好(かつかう)が何(ど)うだとか言(い)ふて世間(せけん)の人(ひと)は暗雲(やみくも)に褒(ほ)めたてた女(もの)で御座(ござ)ります
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御存(ごぞん)じの通(とほ)り、佐賀町(さがちやう)一廓(いつくわく)は、殆(ほとん)ど軒(のき)ならび問屋(とんや)といつてもよかつた。構(かま)へも略(ほゞ)同(おな)じやうだと聞(き)くから、昔(むかし)をしのぶよすがに、その時分(じぶん)の家(いへ)のさまを少(すこ)しいはう。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
石之助(いしのすけ)其夜(そのよ)はをとなしく、新年(はる)は明日(あす)よりの三ヶ日(にち)なりとも、我(わ)が家(いへ)にて祝(いは)ふべき筈(はづ)ながら御存(ごぞん)じの締(しま)りなし、堅(かた)くるしき袴(はかま)づれに挨拶(あいさつ)も面倒(めんどう)、意見(いけん)も實(じつ)は聞(きゝ)あきたり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
角(かく)はまは、名古屋通(なごやつう)で胸(むね)をそらした杉野氏(すぎのし)を可笑(をか)しがつて、當時(たうじ)、先生(せんせい)が御支配人(ごしはいにん)を戲(たはむ)れにあざけつた渾名(あだな)である。御存(ごぞん)じの通(とほ)り(樣(さま))を彼地(かのち)では(はま)といふ。……
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
お心細(こゝろぼそ)き御身(おんみ)なればこそ、小生(おのれ)風情(ふぜい)に御叮嚀(ごていねい)のお頼(たの)み、お前(まへ)さま御存(ごぞん)じはあるまじけれど、徃昔(そのかみ)の御身分(ごみぶん)おもひ出(だ)されてお痛(いた)はしゝ、我(わ)れ後見(うしろみ)まゐらする程(ほど)の器量(きりやう)なけれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ、最(も)う大分(だいぶ)遲(おそ)うござります。さあ、お召(め)しなさりまし。御存(ごぞん)じの、あの目(め)の赤(あか)い大蜈蚣(おほむかで)の紆(うね)つた、下(さが)り藤(ふぢ)の揃(そろ)ひの軒提灯(のきぢやうちん)を御覽(ごらう)じながら、徐々(そろ/\)お歸(かへ)りなさいませんか。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)