きし)” の例文
つもる雪もおなじく氷りて岩のごとく、きしの氷りたるはし次第しだいに雪ふりつもり、のちには両岸りやうがんの雪相合あひがつして陸地りくちとおなじ雪の地となる。
たかく、あしんで、ぬまきしはなれると、足代あじろ突立つゝたつて見送みおくつた坊主ばうずかげは、背後うしろから蔽覆おつかぶさるごとく、おほひなるかたちつてえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて船は、米倉の下のきしへつきました。水ぎわにあそんでいた、たくさんのあひるどもが、があがあなきながらおよぎにげました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
いつかうみなかてたくろいしが、すっかりきてでもいるようにカラカラカラッとって、なみせるたびにきしげられて
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よきはどうしたんだ」おつぎはきしあがつてどろだらけのあしくさうへひざついた。與吉よきち笑交わらひまじりにいて兩手りやうてしてかれようとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それですから、北上川のきしからこの高原の方へ行く旅人たびびとは、高原に近づくにしたがって、だんだんあちこちに雷神らいじんを見るようになります。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
白ガチョウは、うんよく、小さいスズキを見つけました。すばやくそれをつかまえますと、きしへもどってきて、ニールスの前におきました。
軍曹殿ぐんそうどの軍曹殿ぐんそうどのはやはやく、じうはやく‥‥」と、中根なかねきし近寄ちかよらうとしてあせりながらさけんだ。じうはまだ頭上づじやうにまつげられてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
家鴨あひるやドードてう、ローリーてう小鷲こわし其他そのほか種々いろ/\めづらしい動物どうぶつましたが、あいちやんの水先案内みづさきあんないで、みんたいしてのこらずきしおよぎつきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
この歌の近くに、清江娘子すみのえのおとめという者が長皇子にたてまつった、「草枕旅行く君と知らませばきし埴土はにふににほはさましを」(巻一・六九)という歌がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
伊那丸はおかにのこって、きしから小舟を見おくっていた。あかい夕陽ゆうひは、きらきらと水面をかえして、舟はだんだんと湖心へむかって小さくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いけおもてにうかんでいるこいでさえも、じぶんがきしつと、がばッとたいをひるがえしてしずんでいくのでありました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
したものの、どうするてもないので、いまにもおにっかけてるかとはらはらしながら、川のきしをはなれて山のほうへどんどんげてきました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
車外しやぐわい猛獸まうじうは、る/\うち氣色けしきかわつてた。すきうかゞつたる水兵すいへいは、サツと出口でぐちとびらひらくと、途端とたん稻妻いなづまは、猛然まうぜんをどらして、彼方かなたきし跳上をどりあがる。
そして、とうとういつめられて、みよこの家のよこの、ボートがきしにあげられてあるところまで走ってきた。そのむこうは、もう湖水こすいで、ゆきどまり——。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
鈴生すゞなりにひとせたふねが、對岸たいがんくまで、口惜くやしさうにしてつた天滿與力てんまよりきの、おほきなあかかほが、西日にしびうつつて一そうあか彼方かなたきしえてゐた。——
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一寸うへに浮ばんとするは、一寸したに沈むなり、一尺きしのぼらんとするは、一尺そこくだるなり、所詮自ら掘れる墳墓に埋るゝ運命は、悶え苦みて些の益もなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
十八に家出いえでをしたまま、いまだに行方ゆくえれないせがれきち不甲斐ふがいなさは、おもいだす度毎たびごとにおきしなみだたねではあったが、まれたくさにも花咲はなさくたとえの文字通もじどお
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのうちに、こんどは諭吉ゆきちちょうチフスにかかりました。それは、適塾てきじゅくあにでしであるきしというひとが、ちょうチフスにかかったのをかんびょうしていて、うつったのでした。
むかうのきしかんとしたまひしに、ある学者がくしやきたりてひけるはよ。何処いづこたまふともしたがはん。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬に引かれた小舟こぶねは、そろそろときしをはなれて、堀割ほりわりしずかな波を切ってすべって行った。両側りょうがわには木があった。後ろにはしずんで行く夕日のななめな光線が落ちた。
きし少尉を指揮官とする臨検隊りんけんたいが、ボートにうちのって、怪貨物船に近づいていった。むこうの方でも、もう観念したものと見え、舷側げんそくから一本の繋梯子けいはしごがつり下げられた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そういう時をねらって、くまは川のきしにでて、つめにひっかけては、さけをほしいだけります。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ふまでもなくうまむちぼく頭上づじやうあられの如くちて來た。早速さつそくかねやとはれた其邊そこら舟子ふなこども幾人いくにんうをの如く水底すゐていくゞつて手にれる石といふ石はこと/″\きしひろあげられた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
きしはどこもかしこもみなったようないわで、それにまつすぎその老木ろうぼくが、大蛇だいじゃのようにさがっているところは、風情ふぜいいというよりか、むしろものすごかんぜられました。
つみあらそひしむかしはなんりし野河のがはきしきくはな手折たをるとてなが一筋ひとすじかちわたりしたまときわれはるかに歳下とししたのコマシヤクレにもきみさまのたもとぬれるとて袖襻そでだすきかけてまゐらせしを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とほくアムールのきしなみひゞきは、興安嶺こうあんれいえ、松花江しようくわかうわたり、哈爾賓はるびん寺院じゐんすり、間島かんたう村々むら/\つたはり、あまねく遼寧れいねい公司こんするがし、日本駐屯軍にほんちうとんぐん陣営ぢんえいせま
社員しやゐん充満みちみちていづれも豪傑然がうけつぜんたり、機会ときにあたれば気は引立ひきたつものなり、元亀げんき天正てんしやうころなれば一国一城のぬしとなる手柄てがらかたからぬが、きしつゝみ真黒まつくろ立続たちつゞけし人も豪傑然がうけつぜんたり
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ときふゆはじめで、しもすこつてゐる。椒江せうこう支流しりうで、始豐溪しほうけいかは左岸さがん迂囘うくわいしつつきたすゝんでく。はじくもつてゐたそらがやうやうれて、蒼白あをじろきし紅葉もみぢてらしてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
またそれからきるほどつてくうちに、馬車ばしやはあるかはきしました。かはにかけたはしちたときとかで、伯父をぢさんでもたれでもみなその馬車ばしやからりて、みづあさところわたりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ときとしては柳条にりて深処にぼつするをふせぎしことあれども、すすむに従うて浅砂せんさきしとなり、つひに沼岸一帯の白砂はくさげんじ来る、砂土人馬の足跡そくせき斑々はん/\として破鞋と馬糞ばふんは所々に散見さんけん
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
運河うんがきしが いまにもかくれさうに水がびたびたになつちまつてゐるぞ
河の小波さざなみきしにひたひた音をたてていた。クリストフはがぼうとしてた。目にも見ないで、草の小さなくきをかみきっていた。蟋蟀こおろぎが一ぴきそばで鳴いていた。かれねむりかけてるような気持きもちだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
嫩江のきし水荘のあるじなる将軍がす春のかりがね
ゆふくれなゐのあからみに、黄金こがねきししたふらむ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
きしなる夜叉神社やしやじんじや參籠さんろうし、三七日さんしちにち
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
とりらむとてきしゆ落ちぬる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ふねきしにつけば柳に星一つ
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
うかびくるきしくま
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
同道どうだうしたる男は疑ひもなき敵とねらふ吾助にて有れば忠八はおのれ吾助とひながらすツくとあがる間に早瀬はやせなれば船ははやたんばかりへだたりし故其の船返せ戻せと呼はれ共大勢おほぜい乘合のりあひなれば船頭は耳にも入ず其うちに船は此方のきしつきけれとも忠八立たりしまゝ船よりあがらず又もや元の向島むかうじまの方へと乘渡り群集ぐんじゆの中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其處そこで、でこぼこと足場あしばわるい、蒼苔あをごけ夜露よつゆでつる/\とすべる、きし石壇いしだんんでりて、かさいで、きしくさへ、荷物にもつうへ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、しまいには、うすあおい、黄昏たそがれそらにはかなくえて、またひくきしなみおとにさらわれて、くら奈落ならくへとしずんでゆくのでした。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
きしそばだちたる所は鮏きしにつきてのぼるものゆゑ、岸におくばかりのたなをかきて、こゝにこし魚楑なつちをさし鮏を掻探かきさぐりてすくひとるなり。
勘次かんじはしつて鬼怒川きぬがはきしつたとききりが一ぱいりて、みづかれ足許あしもとから二三げんさきえるのみであつた。きしにはふねつないでなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けれども、ズルスケはそれより早く、矢のように突進とっしんして、一のガンのはねをくわえるが早いか、ふたたびきしのほうへかけもどりました。
ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光りんこうの川のきしすすみました。こうの方のまどを見ると、野原はまるで幻燈げんとうのようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
きし」は前にもあったが、川岸などの岸と同じく、山と平地との境あたりで、なだれになっているのを云うのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
はちかつぎはきながら、どこへ行くというあてもなしにまよあるきました。どこをどうあるいたか、自分じぶんでもらないうちに、ふと大きなかわきしへ出ました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
猫間川ねこまがはきし柳櫻やなぎさくらゑたくらゐでは、大鹽おほしほ亡魂ばうこんうかばれますまい。しかし殿樣とのさま御勤務役ごきんむやくになりましてから、市中しちう風儀ふうぎは、ちがへるほどあらたまりました。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しろ公は、そのようにして、林太郎がゆきだおれているみずうみきしへ、おとっつあんをりっぱに案内あんないしたのです。おとっつあんは、たおれている林太郎をだきあげると
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)