やま)” の例文
すみなれたはやしや、やまや、かわや、野原のはら見捨みすて、らぬ他国たこくることは、これらの小鳥ことりにとっても、冒険ぼうけんにちがいなかったからです。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまおきならんでうかこれも無用なる御台場おだいば相俟あひまつて、いかにも過去すぎさつた時代の遺物らしく放棄された悲しいおもむきを示してゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それがまへつたように人間にんげんおほくなるにつれて木材もくざいがいよ/\おほ必要ひつようとなり、どんどんるため、村落そんらくちかやまはもとより
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
小児せうにの如くタワイなく、意気地いくぢなく、湾白わんぱくで、ダヾをこねて、あそずきで、無法むはふで、歿分暁わからずやで、或時あるときはおやま大将たいしやうとなりて空威張からゐばりをし
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
どんどんげて行って、やまの下までると、御飯ごはんべてしまった山姥やまうばが、いくらさがしても女の子がいないので、たいそうおこって
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
うつくしいてて、たまのやうなこいしをおもしに、けものかはしろさらされたのがひたしてある山川やまがは沿うてくと、やまおくにまたやまがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そればかりではありません、やまにある田圃たんぼにあるくさなかにも『べられるからおあがり。』とつてくれるのもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
爐端ろばたもちいたゞくあとへ、そろへ、あたまをならべて、幾百いくひやくれつをなしたのが、一息ひといきに、やまひとはこんだのであるとふ。洒落しやれれたもので。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それも、この男としては無理もないことで、例えば、ほとんどその発端の時、あいやまでのムク犬擁護のための乱闘の後でもそうです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宗助そうすけ御米およね言葉ことばいて、はじめて一窓庵いつさうあん空氣くうきかぜはらつたやう心持こゝろもちがした。ひとたびやまうちかへれば矢張やはもと宗助そうすけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
東海道線とうかいだうせんやませんがつして鐵道線路てつだうせんろ右手みぎて臺地だいちがそれで、大井おほゐ踏切ふみきりからけば、鐵道官舍てつだうくわんしやうらから畑中はたなかるのである。
びっこを引き歩きながら「丸葉柳まるばやなぎは、やまオコゼは」と、少し舌のもつれるような低音バス尻下しりさがりのアクセントで呼びありくのであった。
物売りの声 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
こういう有様であるから、とても普通なみの小供のように一通りの職業を習得するは思いも寄らず、糊口くちすぎをすることがせきやまでありました。
やまがたといひして、土地とち樣子ようすからその性質せいしつべて、そこに青々あを/\した野菜やさいいろを、印象深いんしようぶかくつかんで、しめしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
なにとして今日けふはとうなじばすこゝろおなおもてのおたか路次口ろじぐちかへりみつ家内かないのぞきつよしさまはどうでもお留守るすらしく御相談ごさうだんすることやまほどあるを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日出雄ひでをや、あのむかふにえるたかやまおぼえておいでかえ。』と住馴すみなれし子ープルス市街まち東南とうなんそびゆるやまゆびざすと、日出雄少年ひでをせうねん
よる燭火ともしびきて、うれしげなあしためが霧立きりたやまいたゞきにもうあし爪立つまだてゝゐる。はやぬればいのちたすかり、とゞまればなねばならぬ。
慶州けいしゆうには周圍しゆういひくやまがあつて、一方いつぽうだけすこひらけてゐる地勢ちせいは、ちょうど内地ないち奈良ならて、まことに景色けしきのよいところであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「つばりの御決戦をお覚悟ならば、ここよりは、あれなる前山、ぶつやまの方が、いちだんとよい、御旗場所かとおもわれます」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無事ぶじであつてなによりじや。そのくろおほきなやまとは、くじらぢやつた。おそろしいこと、おそろしいこと、いただけでもぞつとする」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
わたくしやま修行場しゅぎょうじょうりながら、うやら竜宮界りゅうぐうかい模様もようすこしづつわかりかけたのも、まったくこの難有ありがた神社じんじゃ参拝さんぱいたまものでございました。
探険家はだれかというと、川上一郎君、すなわちポコちゃんと、やま万造まんぞう君、すなわちせんちゃんと、この二人の少年だった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そんなことを、あまり熱心ねつしんに、そして感傷的かんしやうてきはなつたのちは、二人ふたりとも過去くわこやまかはにそのこゝろいとられたやうに、ぽかんとしてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
「うん、あそこなら、ようて、まえやま清水しみずくくらいだから、あのしたならみずようが、あんなところへ井戸いどってなににするや。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
一休いっきゅうさんは、むっつのとき いなりやまの きたに ある あんこくじと いう おてらに はいって、ぼうさんに なることに なりました。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
要吉ようきちは、東京のやまにある、あるさか水菓子屋みずがしや小僧こぞうさんです。要吉は、半年はんねんばかり前にいなかからでてきたのです。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
しかし汽車きしやはその時分じぶんには、もう安安やすやす隧道トンネルすべりぬけて、枯草かれくさやまやまとのあひだはさまれた、あるまづしいまちはづれの踏切ふみきりにとほりかかつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
良次郎は御主人の娘をそそのかして淫奔いたずらをするような、そんな不心得な人間じゃありません。ここにいるおやまはほんとうの妹じゃありません。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『ラランいふのはおまへか。ヱヴェレストはそんなからすようはないぞ。おまへなんぞにられるとやまけがれだ。かへれ、かへれ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
折しも秋の末なれば、屋根にひたる芽生めばえかえで、時を得顔えがおに色付きたる、そのひまより、鬼瓦おにがわらの傾きて見ゆるなんぞ、戸隠とがくやま故事ふることも思はれ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
海岸かいがんちかやまやまには松柏しようはくしげり、其頂そのいたゞきには古城こじやう石垣いしがきのこしたる、其麓そのふもと小高こだかところつてるのが大島小學校おほしませうがくかうであります。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
みかどは、てん一番いちばんちかやま駿河するがくににあるときこして、使つかひの役人やくにんをそのやまのぼらせて、不死ふしくすりかしめられました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
このやま活火山かつかざんであることは明治二十六年めいじにじゆうろくねんいたるまでられなかつたが、このとし突然とつぜん噴火ふんかはじめたゝめ死火山しかざんでなかつたことが證據立しようこだてられた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
丁度向いの所にミョンヒスベルヒやまと、そのいただきにある城とが、はっきりした輪廓りんかくをなして、そらにえがかれている。明りなぞをけるには及ばない。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
やまくづして、それに引添ひきそふやうにてられたこのいへの二かいからは、丁度ちやうどせまらぬ程度ていどにその斜面しやめんそらの一とが、仰臥ぎやうぐわしてゐるわたしはいつてる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
宿には私と、やまらしい夫婦づればかり、シムプロン・エキスプレッスの汽笛も、遠い国から響くようで心細い。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
そういうわけで、私は数えどし十五のとき、郷里かみやまの小学校をえ、陰暦の七月十七日、つまり盆の十七日の午前一時ごろ父に連れられて家を出た。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
やま宿しゅく、金龍山下瓦町(広小路の「北東仲町」をいま「北仲町」といっているように、そこもいまは「金龍山瓦町」とのみ手間をかけないでいっている)
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
四方しほうやまかこまれた甲府こうふの町のことですから、九月になるともう山颪やまおろしの秋風が立ち、大きなテントの屋根は、ばさりばさりと風にあおられていました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
この辺にこんな上品な美しい女性ひとが住んでいたら、いままでにその評判を聞かないわけはないから、これはおそらく都の人がやまもうでをしたついでに
天皇、御歳一百六十八歳ももぢあまりむそぢやつ、(戊寅の年の十二月に崩りたまひき。)御陵は、やまみちまがりをか一九にあり。
もつとも、わたしちゝはじちひさな士族しぞくとして、家屋かをくと、宅地たくちと、周圍しうゐすこしのやまと、金祿公債證書きんろくこうさいしようしよなんゑんかを所有しよいうしてゐたが、わたし家督かとく相續さうぞくしたころには
まつた不思議ふしぎことでございました。やまからとらつてかへつてまゐられたのでございます。そしてそのまゝ廊下らうか這入はひつて、とらぎんじてあるかれました。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
南村山郡の高松たかまつには「麻布あざぶ」と呼ぶごく薄手の紙をきます。かみやま温泉おんせんには遠くありません。この紙は漆をすのになくてはならない紙なのであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それで朝日あさひはびつくらしてひがしやまからましたので、お月様つきさまはなごりしいけれどそれきりよるわかれました。
それが行列を為しほこを出し、やまを出し、矢台やたいを出すというような儀式、これは皆インドの儀式に相違ない。
元来此の女はやま浮草うきくさと云う茶見世へ出て居りました浮草うきくさのおなみという者で、黥再刺いれなおしで市中お構いになって、島数しまかずの五六たびもあり、小強請こゆすりかた筒持つゝもたせをする
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それは、やま宿しゅくというのは、隅田川に沿った細長い町で、そこの隅田川寄りにある小山田家は、当然大川の流れに接していなければならないということであった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
遠國ゑんごくやまからすのだといふ模擬まがひおもだいへゴムせいおもてつた下駄げたけてるものもある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
三丰かつて武当のしょ巌壑がんがくあそび、このやま異日必ずおおいおこらんといいしもの、実となってこゝに現じたる也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)