自分じぶん)” の例文
「なんというおそろしいところだ。どうしてこんなところにまれてきたろう。」と、ちいさなあかはなは、自分じぶん運命うんめいをのろいました。
小さな赤い花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しか崖丈がけだけ大丈夫だいぢやうぶです。どんなことがあつたつてえつこはねえんだからと、あたか自分じぶんのものを辯護べんごでもするやうりきんでかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
姿すがた婀娜あだでもおめかけではないから、團扇うちは小間使こまづかひ指圖さしづするやうな行儀ぎやうぎでない。「すこかぜぎること」と、自分じぶんでらふそくにれる。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
するとこのおかあさんは、すこしいじのわるい人だったものですから、おひめさまのために自分じぶんがしかられたのをたいそうくやしがりました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
諭吉ゆきちは、このように、自分じぶんでなっとくのできないことについては、自分じぶんでじっさいにためしてみるという、しっかりした少年しょうねんでした。
先年せんねん自分じぶんに下されしなり大切の品なれども其方そのはうねがひ點止もだし難ければつかはすなりと御墨付おんすみつきを添てくだんの短刀をぞたまはりける其お墨付すみつきには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しなには與吉よきち惡戯いたづらをしたり、おつぎがいたいといつてゆびくはへてせれば與吉よきち自分じぶんくちあてるのがえるやうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
自分じぶん大学だいがくにいた時分じぶんは、医学いがくもやはり、錬金術れんきんじゅつや、形而上学けいじじょうがくなどとおな運命うんめいいたるものとおもうていたが、じつおどろ進歩しんぽである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
このころひとはすべて、あまり自分じぶん生活せいかつうたあらはれるといふことをきらつたので、さういふふうなのを無風流ぶふうりゆうだとしりぞけてゐました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
じゆく家族的かぞくてき組織そしきであるから各人かくじん共同きようどうものである、塾生じゆくせい此處こゝ自分じぶんいへ心得こゝろえ何事なにごと自分じぶん責任せきにんつてらねばなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
これならばひめるにちがひない、きっと自分じぶんひめのお婿むこさんになれるだらうなどゝかんがへて、おほめかしにめかしんでかけました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
けれども自分じぶんでそれをやったおぼえはございませぬ。きょうとはちがって東国とうごく大体だいたい武張ぶばったあそごと流行はやったものでございますから……。
こんどは用吉君ようきちくんが、得意とくい相手あいてくびをしめにかかったが、反対はんたい自分じぶんくびをしめつけられ、ゆでだこのようになってしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
とうさんもたこあげたり、たこはなしいたりして、面白おもしろあそびました。自分じぶんつくつたたこがそんなによくあがつたのをるのもたのしみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
自分じぶん同年齡おないどし自分じぶんつてる子供こどものこらずかたぱしからかんがはじめました、しも自分じぶん其中そのかなだれかとへられたのではないかとおもつて。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ロミオ あれは自分じぶん饒舌しゃべるのをくことのきなをとこ一月ひとつきかゝってもやりれぬやうなことを、一分間ぶんかん饒舌しゃべてようといふをとこぢゃ。
自分じぶんうまはのろくてとてもかなひませんので、そのうまをほしくおもひ、いろ/\はなしをしてうまりかへてもらひ、よろこんでいへへかへりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しかし、一休いっきゅうさんをんだ伊予局いよのつぼねは、后宮きさきのみや嫉妬しっとのため、危険きけんがせまったので、自分じぶんから皇居こうきょをのがれることになりました。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
もし自分じぶん文字もんじつうじてゐたなら、ひとつ羊皮紙やうひしれて、それにしたゝめもしよう。さうして毎晩まいばんうんとうまものべてやる。
殘念ざんねんでならぬので、自分じぶん持場もちばを一生懸命しやうけんめいつたけれど、なにない。幻子げんし大成功だいせいかう引替ひきかへて大失敗だいしつぱいくわつぼう茫然ばうぜんとしてしまつた。
『ああ、いい塩梅あんばいちやがつた。自分じぶん眼玉めだまふなんて阿呆あほうがどこにゐる。ペンペの邪魔じやまさえゐなけりや、もうあとはをれのものだ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
わたし自分じぶん不安ふあん苦痛くつううつたへたが、それかひはなく、このまゝ秘密ひみつにしてくれとつま哀願あいぐわんれて、此事このことは一そのまゝにはふむることにした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そのうち上座じやうざざう食事しよくじそなへていて、自分じぶんつて一しよにべてゐるのを見付みつけられましたさうでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
若旦那わかだんなあわせて、たってのたのみだというからこそ、れててやったんじゃねえか、そいつを、自分じぶんからあわてちまってよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
自分がいやしい罪人つみびとだったからといって、まるでむしけらみたいなものだったからといって、自分じぶんの身がつくづくいやになった時のもある。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「こんなに年老としよるまで、自分じぶんこづゑで、どんなにお前のためにあめかぜをふせぎ、それとたゝかつたかれない。そしておまへ成長せいちやうしたんだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そこで、外國人ぐわいこくじん吾等われら立去たちさつたあとで、このしま上陸じやうりくして、此處こゝ自分じぶんが、第一だいいち發見はつけんしたしまだなんかと、くだひたつて無益だめもうすのだ。
此世界このせかい地球ちきうとなまろきものにて自分じぶんひながら日輪にちりん周圍まはりまはること、これをたとへば獨樂こまひながら丸行燈まるあんどう周圍まはりまはるがごとし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
「じゃア、一しょにおいで!」といって、継母ままはは部屋へやへはいって、はこふた持上もちあげげながら、「さア自分じぶん一個ひとつりなさい。」
恁うしてさびしい一生を送ツてかなきやならないかと思ふと、僕は自分じぶん將來せうらいといふものがおそろしいやうな氣がしてならない。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
林太郎は、自分じぶんが聞いては悪いことを話しているのだ、と思いました。自分のあたまでっかちのことを話しているのだな、とも思いました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
りにつてやつちるなんてよつぽどうんわるいや‥‥」と、一人ひとりはまたそれが自分じぶんでなかつたこと祝福しゆくふくするやうにつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それは勿論もちろん正氣せうきひとからはちがひとえるはづ自分じぶんながらすこくるつてるとおもくらゐなれど、ちがひだとてたねなしに間違まちがものでもなく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あんな悲慘事ひさんじ自分じぶんむらおこつたことを夢想むそうすることも出來できず、翌朝よくあさ跡方あとかたもなくうしなはれたむらかへつて茫然自失ぼうせんじしつしたといふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
自分じぶん内職ないしよくかね嫁入衣裳よめいりいしよう調とゝのへたむすめもなく実家さとかへつてたのを何故なぜかとくと先方さきしうと内職ないしよくをさせないからとのことださうだ(二十日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
たゞをとこうらんでのろひ、自分じぶんわらひ、自分じぶんあはれみ、ことひと物笑ものわらひのまととなる自分じぶんおもつては口惜くやしさにへられなかつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
なにしろこりゃおとこだもの、きりょうなんかたいしたことじゃないさ。いまつよくなって、しっかり自分じぶんをまもるようになる。」
まちは、ふとむかしのことをかんがへると、なんとなく自分じぶんきふにいとしいものゝやうにおもはれて、そのいとしいものをかいいだくやうにをすくめた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
べつ自分じぶんがそれについて弱味よわみつてないにしてもさ、ながあひだにはなんだか不安ふあんを感じてさうな氣持きもちがするね。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
高原に立つて秋草を吹き靡かす初秋の風に身をまかせて、佇んでゐる自分じぶんを描き、風のかをりをなつかしんでゐたのだ。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
政府せいふ當局者たうきよくしやとしてはこの國民こくみん努力どりよくたいしてふか感謝かんしやへうするのであるが、國民こくみんとしても自分じぶん努力どりよく結果けつくわ
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
だから清造は、沼のふちに遊びにきて帰る時には、かならず石を一つ投げこんであわがすっかり浮かびきるまでながめてから、自分じぶんの家に帰るのでした。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
わがはいのこの所見しよけんたいして、或人あるひとはこれを學究がくきう過敏くわびんなる迂論うろんであるとへうし、齒牙しがにかくるにらぬ些細ささい問題もんだいだといつたが、自分じぶんにはさうかんがへられぬ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
かういふふう自分じぶん自分じぶん保護ほごするために外界がいかいものいろおないろをもつ、そのいろのことを『保護色ほごしよく』といひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
黒猫「どうしてなか/\、わたしなんざあ、自分じぶん自分じぶん糊口くちすぎをしなきやあならないんですからやりきれやせんや」
それはね 自分じぶんがどういふものだか 自分でいふことを 自己紹介といふんだよ 僕がするからまねをしたまへ
公然開放的の顔のことゆえなんぴとも見るのであるが、その見られるのが怖気おじけうながす。かく何か弱点があって、自分じぶん控目ひかえめになることの自覚があると怖気おじける。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかし、ジャックにしてもベルナールにしても、マルセルにしても、またロジェにしても、哲学者てつがくしゃではありません。四人は自分じぶんあしおうじた歩き方をします。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
道子みちこ自分じぶん身近みぢか突然とつぜんしろヅボンにワイシヤツををとこ割込わりこんでたのに、一寸ちよつと片寄かたよせる途端とたんなんとつかずそのかほると、もう二三ねんまへことであるが
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)