)” の例文
柱時計はしらどけいは、カッタ、コット、カッタ、コットと、たゆまずときをきざんでいましたが、きなれているので、かくべつみみにつきません。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
串戯じやうだんはよして、些細さゝいことではあるが、おなじことでも、こゝは大力だいりきい。強力がうりき、とふと、九段坂だんざかをエンヤラヤにこえてひゞきわるい。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
近所きんじょいえの二かいまどから、光子みつこさんのこえこえていた。そのませた、小娘こむすめらしいこえは、春先はるさきまち空気くうきたかひびけてこえていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
きことにしてかねやらんせうになれ行々ゆく/\つまにもせんと口惜くちをしきことかぎくにつけてもきみさまのことがなつかしくにまぎれてくに
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可愛かはいさうに景氣けいきのよいこゑ肺臟はいざうからこゑいたのは十ねんぶりのやうながして、自分じぶんおもはず立上たちあがつた。れば友人いうじんM君エムくんである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
会衆は蠱惑こわくされてれていた。底の底から清められ深められたクララの心は、露ばかりの愛のあらわれにも嵐のように感動した。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
このはなし但馬守たじまのかみが、與力よりきからいて、一そう玄竹げんちくきになつたのであつた。それからもうひとつ、玄竹げんちく但馬守たじまのかみよろこばせた逸話いつわがある。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
みなまた少時しばしもくしてしまふ。其中そのうちちやる。ドクトル、ハヾトフはみなとの一ぱんはなしうちも、院長ゐんちやうことば注意ちゆういをしていてゐたが突然だしぬけに。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
帽子屋ばうしやはこれをいていちじるしくみはりました、が、つたことは、『何故なぜ嘴太鴉はしぶとがらす手習机てならひづくゑてるか?』と、たゞこれだけでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたくしこの大佐たいさとはかつ面會めんくわいしたこといが、かね櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさとは無二むに親友しんいうで、また、わたくしためには終世しゆうせいわするゝこと出來できない
おじいさんはいままで一人ひとりぼっちで、さびしくってたまらなかったところですから、こえくとやっとかえったようながしました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
此返事このへんじいて、むつとはらつた。頭巾づきんした剥出むきだして、血色けつしよく頸元えりもとかゝるとむかう後退あとすざりもしない。またいてた。
しかし祖父そふきたいと思ってるのは、そんなものではなかった。祖父そふは口をつぐんで、もうクリストフに取りあわないふうをした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
しかし、之をいてゐる中に、下人の心には、ある勇氣ゆうきが生まれて來た。それは、さつき、もんしたでこの男に缺けてゐた勇氣である。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勘次かんじはおしな病氣びやうきかゝつたのだといふのをいて萬一もしかといふ懸念けねんがぎつくりむねにこたへた。さうして反覆くりかへしてどんな鹽梅あんばいだといた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「そうともそうとも。こうなったら、いそいでくれろとたのまれても、あしがいうことをきませんや。あっしと仙蔵せんぞうとの、役得やくとくでげさァね」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それから二三日は、代助も門野かどのも平岡の消息をかずにごした。四日目よつかめ午過ひるすぎに代助は麻布あざぶのあるいへへ園遊会に呼ばれてつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのやうなことばかせてわしりさいなむとはむごいわい、つれないわい、それでも高僧かうそうか、司悔僧しくわいそうか、教導師けうどうしか、莫逆ばくぎゃくちかうた信友しんいうか?
それは、お日様ひさまあたたかっているのをたり、雲雀ひばりうたいたりして、もうあたりがすっかりきれいなはるになっているのをりました。
けばこのむらはかつて壯丁そうてい多數たすう出漁中しゆつりようちゆうしつして全村ぜんそん灰燼かいじんしたことがあるさうで、これにかんがみて其後そのご女子じよし消防隊しようぼうたいをも編成へんせい
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
無事ぶじであつてなによりじや。そのくろおほきなやまとは、くじらぢやつた。おそろしいこと、おそろしいこと、いただけでもぞつとする」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
その一方の土手どてむこう、そとぼりをへだてた城外じょうがいやなぎのかげに、耳に手をかざして、館のなかの騒音そうおんをジッといている者がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あなたは、なんでもつておいでなされるといふことであるから、これをおきになるでせう。一ついてかせてください」
『すると、あのいしをのいしやぢりや、あれ同時代どうじだい製作せいさくですか』といてると。『うです、三千ねんぜんのコロボツクル人種じんしゆ遺物ゐぶつです。 ...
金工かざりや仕事場しごとばすわって、黄金きんくさりつくっていましたが、家根やねうえうたっているとりこえくと、いいこえだとおもって、立上たちあがってました。
何事なにごと外國人ぐわいこくじんせつ妄信まうしんする日本人にほんじんは、これをいておほいに感服かんふくしたもので、識見しきけん高邁かうまいせうせられた岡倉をかくらかくごときも
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
非常ひじやうなもんだよ。きみこといてくれた。おれ頭腦づなう明晰めいせきを一層確實そうかくじつ證據しようこだてる機會きくわいあたへてくれたこときみ感謝かんしやするね。ちたまへ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
「えいくそッ、びっくりした。おかしらなどとぶんじゃねえ、さかなあたまのようにこえるじゃねえか。ただかしらといえ。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あの牌音パイおとくといふ力強ちからづよ魅力みりよくがある。だからこそ、麻雀マアジヤンすこあそびをおぼえると、大概たいがいひとが一熱病的ねつびやうてきになつてしまふ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
S、Hだけは「彼是かれこれふべきものぢやない。羨望せんぼうすべきものぢやないか」とつたといふことを、二三或青年あるせいねんから、わたしかされてゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
おわりてねむりに就くころは、ひがし窓の硝子ガラスはやほの暗うなりて、笛の音も断えたりしが、この夜イイダ姫おも影に見えぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「今のはさるき声であります。これからまたほかき声をおかせいたします。……さあひょっとこ人形、いたりいたり、犬のき声」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
さいさい自分じぶん研究けんきうして熟考じゆくかうしてうへ愈々いよ/\わからねば其時そのときはじめて理由りいう説明せつめいしてかすくらゐにしてくのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「なに貴女あなたそれほどでも有りますまいで……なんでもいたほどではないものどす……そー御心配しやはると御子をこはんより貴女あなたほうが御よはりどすえ」
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
自分じぶん内職ないしよくかね嫁入衣裳よめいりいしよう調とゝのへたむすめもなく実家さとかへつてたのを何故なぜかとくと先方さきしうと内職ないしよくをさせないからとのことださうだ(二十日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
芳輔よしすけは、十時ごろに台所だいどころからあがってこっそり自分のへやへはいった。パチリパチリとの音は十二時すぎまでこえた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
くところによれば橋本という人は、外見はまことに温和に柔順な好男子であったから、この人の心情を知らぬものは、この柔順らしい皮の下に
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
またべつ先生方せんせいがたからおきになる場合ばあひがありませう。なほふるいおてらのあつたところには、かはらのほかにおほきなはしら礎石そせきのこつてゐることもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
衞國ゑいこくはふひそかきみくるまするものつみ(一〇七)げついたる、すでにして彌子びしははむ。ひとき、いてよるこれぐ。彌子びしいつはつてきみくるましてづ。
母もやっぱり、わが子の読書の声を嬉しがってれています。やがて読書の声が止んで、しばらくして裏口からハタハタと駆け出して来た子供。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
汝將に京に入らんとすとく、請ふ吾が爲めに恭順きようじゆんの意を致せと。余江戸を發して桑名にいたり、柳原前光さきみつ公軍をとくして至るに遇ふ。余爲めに之を告ぐ。
わたしは、金魚きんぎょのことばかりにしていました。それから島本しまもとに、きていたとき金魚きんぎょはどんなだかつていたんです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
きでないかあのものしづかなかけひおとを。とほりにゆき眞白ましろやまつもつてゐる。そして日蔭ひかげはあらゆるものの休止きうし姿すがたしづかにさむだまりかへつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
もし「そう言うお前は?」とく人があったら、私は即座に、しかも進んでブラームスのために左袒さたんするだろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
理学士の称号を貰い、三年の大学院の研究を終えて来た丘助手にとって、博士の仰有った一言は、いくら木戸博士とあおぐにしても、てになり兼ねた。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから、さうさう、こけ野原のはら夕陽ゆふひなかで、わたくしはこのはなしをすきとほつたあきかぜからいたのです。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わたくしおもまくらいて、起居たちい不自由ふじゆうになったといたときに、第一だいいちせつけて、なにくれと介抱かいほうをつくしてくれましたのは矢張やは鎌倉かまくら両親りょうしんでございました。
そばに居た女がとがめて理由わけを訊くと、光政は宵のにあつた蜜柑の事を話して、あの折自分が、その位の事だつたら此方こつちにも知つてゐるとでも言はうものなら
つたか今の話しをきたるやつにがしはせぬと飛掛とびかゝつて捕るたもと振拂ふりはらひお梅は聲立人殺し人殺しぞと呼所よぶところへ昌次郎のあとうて此所へ來かゝる親上臺は女のさけびごゑを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
トルストイ、ツルゲネーフとう吾人ごじんひさしくこれけども、ドストイヱフスキーの著書ちよしよいたりては吾文界わがぶんかいこれ紹介せうかいするのこう不知庵フチアンおほしとはざるからず。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)