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春先
近所の
家の二
階の
窓から、
光子さんの
声が
聞こえていた。そのませた、
小娘らしい
声は、
春先の
町の
空気に
高く
響けて
聞こえていた。
彼の
云ふ
所によると、
清水谷から
辨慶橋へ
通じる
泥溝の
樣な
細い
流の
中に、
春先になると
無數の
蛙が
生れるのださうである。
夫れ
所ではない。
虱は塾中永住の動物で、
誰れ一人も
之を
免かれることは出来ない。
一寸と
裸体になれば
五疋も十疋も
捕るに
造作はない。
春先き少し暖気になると羽織の襟に
匍出すことがある。