春先はるさき)” の例文
近所きんじょいえの二かいまどから、光子みつこさんのこえこえていた。そのませた、小娘こむすめらしいこえは、春先はるさきまち空気くうきたかひびけてこえていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かれところによると、清水谷しみづだにから辨慶橋べんけいばしつうじる泥溝どぶやうほそながれなかに、春先はるさきになると無數むすうかへるうまれるのださうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
げんに、数年前すうねんぜんのこと、ちょうど春先はるさきであったが、轟然ごうぜんとして、なだれがしたときに、みき半分はんぶんはさかれて、ゆきといっしょに谷底たにそこちてしまったのでした。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さうかうするうちに三年さんねんばかりたちました。そのとし春先はるさきから、赫映姫かぐやひめは、どうしたわけだか、つきのよいばんになると、そのつきながめてかなしむようになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
つまり同じ影もつ家どなり春先はるさきといふに寒きにあり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春先はるさき弁当でも持ってあそびに来るには至極しごく結構だが、ところが満洲だけになお珍らしい。余は痛い腹をおさえて、とうとう天辺てっぺんまで登った。するとそこに小さなびょうがあった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このをとりになるとり呼聲よびごゑは、春先はるさきから稽古けいこをしたこゑですから、たかそらはうまでよくとほりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
春先はるさきの ばんがたの が、こうばいいろに みんなの かおを てらしました。
うみぼうずと おひめさま (新字新仮名) / 小川未明(著)
春先はるさきであったから、河水かわみずは、なみなみとしてながれていました。そのみずは、やまからながれてくるのでした。やまには、ゆきけて、たにというたにからは、みずがあふれて、みんなかわなかそそいだのです。
千代紙の春 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、春先はるさきのことでした。友人ゆうじんたずねると
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)