容易ようい)” の例文
しかし容易よういなことでは、かれにうたがわれるから、あくまでおまえは子供らしく、いざとなったらかくかくのことをもうしのべろ……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとつゝあそんなぜねなんざ一錢ひやくだつてつてねえから、しほだつて容易よういなもんぢやねえや、そんな餘計よけいなものなんになるもんぢやねえ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
富士山ふじさん測量そくりょうはいまだ綿密めんみつに出来ていないごとく、大人物であればあるほど、その高さも大きさも容易ようい凡人ぼんじんの見分け得るものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
宗助そうすけ外套ぐわいたうがずに、うへからこゞんで、すう/\いふ御米およね寐息ねいきをしばらくいてゐた。御米およね容易よういめさうにもえなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
親方はなかなか容易よういなことでまごつくような、まのぬけた男ではなかった。ていねいにしかもれいおおふうな様子で、医者を引き止めた。
幸ひ間もなく正氣づきましたが、餘程ひどくおびえたものと見えて、すゝり泣いたりふるへたりするばかりで、容易よういに口も利けません。
「このうみえて、しまたっすることは容易よういのことでない。つかれをやすめて、おだやかな、いい天気てんきのつづくとうではないか。」
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
失望湾は左門洞から約二十キロメートルの距離きょりにある、これは万一のばあい、左門洞の一同と消息しょうそくを通ずるにしごく容易よういである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
すこしもながく、おせんをめておきたい人情にんじょうが、たがいくち益々ますますかるくして、まるくかこんだ人垣ひとがきは、容易よういけそうにもなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さうして學校がつこう教場内きようじようない竝列へいれつした多數たすうつくゑあるひ銃器臺じゆうきだいなどは、其連合そのれんごうちからもつて、此桁このけたはりまた小屋組こやぐみ全部ぜんぶさゝへることは容易よういである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そんな面倒めんどう手続てつづきんであってさえも、ゆうからけんに、肉体にくたいのないものから肉体にくたいのあるものに、うつかわるには、じつ容易よういならざる御苦心ごくしん
『一、二、三、すゝめ』の號令がうれいもなく、各自てんでみな勝手かつてはしして勝手かつてまりましたから、容易ようい競爭きやうさうをはりをることが出來できませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此燒土このやけつちついて、武内桂舟畫伯たけうちけいしうぐわはくせつがある。陶器通たうきつう立場たちばからしてかんがへてたので、つちやけさうすまでくといふのは、容易よういでない。
奉行所へ召連めしつれ奉らんなどうへへ對し容易よういならざる過言くわごん無禮ぶれいとや言ん緩怠くわんたいとや言ん言語に絶せし口上かなかたじけなくも天一坊樣には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それが彼の顔を見ると、「俸給ほうきゅうですね」と一言ひとこと云った。彼も「そうです」と一言答えた。が、主計官は用が多いのか、容易よういに月給を渡さなかった。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今度こんどは石をにしきつゝんでくらをさ容易よういにはそとに出さず、時々出してたのしむ時は先づかうたいしつきよめるほどにして居た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
で、高尾たかを薄雲うすぐも芳野よしのなど絶世ぜつせい美人びじん身代金みのしろきんすなは人參にんじん一兩いちりやうあたひは、名高なだか遊女おいらん一人いちにん相當さうたうするのであるから、けだ容易よういなわけのものではない。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其れから彼はもちでもやると容易よういに食わず、じっと主人の顔を見て、其れ切りですか、まだありますかと云うかおをした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なるほど、それはおはらつのはごもっともです。けれども人のいのちるというのは容易よういなことではありません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つまりうさぎ外敵がいてきよわ動物どうぶつですから、ふゆゆきつて野山のやま眞白まつしろになれば自分じぶんのからだをもおなじようにしろくしてほかから容易よういつからないようにするのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
おほきい博物館はくぶつかんをつくることはかねさへあれば容易よういでありますが、博物館はくぶつかんをつくることは金以外かねいがいさら知識ちしき必要ひつようでありますから、餘程よほど困難こんなんなことになります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此両人のせつをきゝしにちからをつくせば一丈以上なるをもおりうべし、しかれども其機工きこう容易よういならずといへり。平賀源内は織こと五六尺にすぎずと火浣布考くわくわんふかうにいへり。
当時外国公使はいずれも横浜に駐剳ちゅうさつせしに、ロセツは各国人環視かんしの中にては事をはかるに不便ふべんなるを認めたることならん、やまいと称し飄然ひょうぜん熱海あたみに去りて容易よういに帰らず
容易ようい胸隔きようかくひらかぬ日本人にほんじん容易ようい胸隔きようかくつる日本人にほんじんそろ失望しつぼうさうならざるなしと、かつ内村うちむら先生申されそろしか小生せうせい日本人にほんじんそろこばまざるがゆゑ此言このげんそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
大層たいそう感心かんしんしましてじつ恐入おそれいつたものだ、中々なか/\アヽところ商売人しやうばいにんだつて容易よういくもんぢやアないとひました、何卒どうぞ打出はねましたらと三がいらつしやいまして
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此坊このばうやのうまれてやうといふ時分じぶん、まだわたし雲霧くもきりにつゝまれぬいてたのです、うまれてからのち容易よういにはれさうにもしなかつたのです、だけれども可愛かあいい、いとしい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
容易よういに自分を零にできないことがある。それがためにわが運命の解決にまようほどの事なのだ。これはまだ大木に白状しない胸中の秘密で、いうまでもなくそれは恋だ。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この某国大使館の、いろいろある始末機関をそれからそれへと動員して使ってみたが、どういうわけか、たった一人の博士を片附かたづけることは仲々容易よういに成功しなかった。
そのやうやす書物しよもつむかつても意味いみ容易よういとれない、もつと直譯ちよくやくしてときはどうかわかつてるらしいが、あと如何どん意味いみかとたゞしてるとほとんわかつてないやうである。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「ええ、ひどい風ですよ。大きく口をあくと風がぼくのからだをまるで麦酒瓶ビールびんのようにボウと鳴らして行くくらいですからね。わめくも歌うも容易よういのこっちゃありませんよ」
おきなぐさ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ふとつたMM容易よういたなかつたが、勿論もちろんかれにも若々わか/\しい愛嬌あいけう洒落気しやれけせてゐなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
姉妹二人共にはつとした樣子だつた——驚愕したのでもおびやかされたのでもなかつた。その報らせは彼等の眼には悲しい事といふよりは、寧ろ容易よういならぬことらしかつた。
最初さいしよから多少たせうこの心配しんぱいいでもなかつたが、かくめづらしき巨大きよだいうをの、左樣さう容易ようい腐敗ふはいすることもあるまいと油斷ゆだんしてつたが、その五日目いつかめあさわたくしはふとそれと氣付きづいた。
またひと建築けんちく本義ほんぎは「實」であるとふかもれぬ。いづれがせいいづれがじやであるかは容易よういわからない。ひと心理状態しんりじやうたい個々こゝことなる、その心理しんり境遇きやうぐうしたが移動いどうすべき性質せいしつもつる。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
もとより一時の出來心や、不圖ふとした氣紛きまぐれでは無かツたのであるから、さて是れが容易よういに解決される問題で無い。第一つまとしてむかへ取るには餘りに身分の懸隔けんかくがある。家庭かていは斷じて此の結婚けつこん峻拒しゆんきよする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
この時も先に述べたる共和党の大会と同じく、容易ようい逆上ぎゃくじょうせぬこの国民にして初めて言論の自由も思想の自由も享有きょうゆうすべきものと思った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
小路こうぢ泥濘ぬかるみ雨上あめあがりとちがつて一日いちんち二日ふつかでは容易よういかわかなかつた。そとからくつよごしてかへつて宗助そうすけが、御米およねかほるたびに
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「しかし、いまの戦国多端たたんのときに、二、三百の兵を四日にあつめてくるのは容易よういでないこと。龍太郎、それはまちがいないことか……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘次かんじたゞひゞきてながら容易よういめぬあつ茶碗ちやわんすゝつた。おつぎも幾年いくねんはぬ伯母をばひとなづこいやう理由わけわからぬやう容子ようすぬすた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
幸三こうぞうは、そこにあったおも鉄板てっぱん両手りょうてをかけました。しかし、それは、容易よういげることすらできないほど、おもかったのでありました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くちでそういわれても、勝手かってらないやみなかでは、手探てさぐりも容易よういでなく、まつろうやぶたたみうえを、小気味悪こきみわるまわった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
『ナニ、ちつとばかりは進上あげられないッて』と帽子屋ばうしやつて、『なんにもいのをれるのはむづかしいけど、澤山たくさんるのをれるのは容易よういなことだ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「相手は何分容易よういの者ぢやない。私が見張つて居たところで、ふせぎやうはないかも知れませんよ。それを承知なら一日お邪魔をさせて頂きませう」
が、肝腎かんじんの天神様へは容易よういに出ることも出来なかつた。すると道ばたに女の子が一人ひとりメリンスのたもとひるがへしながら、傍若無人ばうじやくぶじんにゴムまりをついてゐた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これはたんなる偶然ぐうぜんか、それとも幽冥ゆうめい世界せかいからのとりなしか、かみならぬには容易ようい判断はんだんかぎりではありません。
安く送らん事最々いと/\容易よういわざながら忠相ぬしつら/\かれを見るに貴介きかい公子こうし落胤らくいん似氣にげなく奸佞かんねい面に顯れ居ればこゝろゆるせぬ曲者くせものなりと夫が成立なりたちよりの事柄を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ゆるはたらちからたいしては容易よういかたちへ、ちからはたらくまゝになること、食用しよくようあめおもさせるようなものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
此両人のせつをきゝしにちからをつくせば一丈以上なるをもおりうべし、しかれども其機工きこう容易よういならずといへり。平賀源内は織こと五六尺にすぎずと火浣布考くわくわんふかうにいへり。
政府はほとんど全国の兵をげ、くわうるに文明精巧せいこう兵器へいきを以てして容易よういにこれを鎮圧ちんあつするを得ず、攻城こうじょう野戦やせんおよそ八箇月、わずかに平定へいていこうそうしたれども
そのした石器時代せつきじだいのものがあるのですから容易ようい調しらべがつかず、今日こんにちまでよくられてをりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)