おどろ)” の例文
おじいさんは、眼鏡めがねをかけて、はさみをチョキチョキとらしながら、くしをもって、若者わかもの頭髪かみにくしれてみておどろきました。
てかてか頭の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、子家鴨達あひるたちは、いままでたまごからんでいたときよりも、あたりがぐっとひろびろしているのをおどろいていました。すると母親ははおや
山中さんちううらにて晝食ちうじき古代こだいそつくりの建場たてばながら、さけなることおどろくばかり、斑鯛ふだひ?の煮肴にざかなはまぐりつゆしたをたゝいてあぢはふにへたり。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ラプンツェルは、まだ一も、おとこというものをたことがなかったので、いま王子おうじはいってたのをると、はじめは大変たいへんおどろきました。
じつおどろきました、んなお丈夫ぢやうぶさまなおかたうして御死去おなくなりになつたかとつて、宿やどものよろしうまうしました、さぞ力落ちからおとしで……。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
うちよりけておもていだすは見違みちがへねどもむかしのこらぬ芳之助よしのすけはゝ姿すがたなりひとならでたぬひとおもひもらずたゝずむかげにおどろかされてもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分じぶん大学だいがくにいた時分じぶんは、医学いがくもやはり、錬金術れんきんじゅつや、形而上学けいじじょうがくなどとおな運命うんめいいたるものとおもうていたが、じつおどろ進歩しんぽである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
機械きかいとどろき勞働者ろうどうしや鼻唄はなうた工場こうばまへ通行つうかうするたびに、何時いつも耳にする響と聲だ。けつしておどろくこともなければ、不思議ふしぎとするにもらぬ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さい近廣津和郎氏が「さまよへる琉球りうきう人」といふさくしゆこうにした青年がどうもその青年と同一人らしいので、わたしはちよつとおどろいてゐる。
大臣だいじんたちはみんなおどろいて、太子たいしも、このこじきも、みんなただの人ではない、慈悲じひ功徳くどくの中の人たちにあまねくらせるために
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ええ」とうなずきながら、ぼくはふいと目頭が熱くなったのに、自分でおどろき、汗をぬぐうふりをすると、あわてて船室に駆け降りました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すくはん爲に故意わざつみおちいりしならん何ぞ是を知らずして殺さんや其方は井筒屋茂兵衞ゐづつやもへゑ惣領そうりやうならんと申されければ雲源うんげんおどろき感じ今は何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんゆえ私宅教授したくけふじゆの口がありても錢取道ぜにとるみちかんがへず、下宿屋げしゆくやに、なにるとはれてかんがへることるとおどろかしたるや。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
はは、おどろいているな。おまえはな、さっき店の前に立って、たこの絵を見ているうちに、ううんといってぶったおれてしまったんだ。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
道子みちこ一晩ひとばんかせげば最低さいていせん五六百円ぴやくゑんになる身体からだ墓石ぼせき代金だいきんくらいさらおどろくところではない。ふゆ外套ぐわいたうふよりもわけはないはなしだとおもつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
しかそのもつとおそれをいだくべき金錢きんせん問題もんだいそのこゝろ抑制よくせいするには勘次かんじあまりにあわてゝかつおどろいてた。醫者いしや鬼怒川きぬがはえてひがしる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
... 持って歩いてもすぐに流れ出すような事はありません」小山「ヘー、おどろきますな。それもやっぱり今のような製法ですか」お登和嬢
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
宗助そうすけにはそれが意外いぐわいであつた。しかたいした綺羅きら着飾きかざつたわけでもないので、衣服いふくいろも、おびひかりも、夫程それほどかれおどろかすまでにはいたらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いながらすそかたに立寄れる女をつけんと、掻巻かいまきながらに足をばたばたさす。女房はおどろきてソッとそのまま立離たちはなれながら
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おどろいてめたが、たしかにねここゑがする、ゆめかいか、はねきてたらまくらもとにはれい兒猫こねこすはつてゐた、どこからしのんでたのやら。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
こう言うや、殿様はそばの刀を取って引きこうとしました。とんまの六兵衛も、これにはおどろき、がたがたふるえ出しました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
おどろいてあと見送みおくつてゐるりよ周圍しうゐには、めしさいしるつてゐたそうが、ぞろ/\とてたかつた。道翹だうげう眞蒼まつさをかほをしてすくんでゐた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
よるになりました。こつそりでかけました。そしておどろきました。「なあんだ。こりやいしじやないか。ちえツ、馬鹿々々ばか/″\/″\しい」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
にはとりおどろいて、きりしたあたまをさげて友伯父ともをぢさんのはうんでました。そして、かみつてもらつて友伯父ともをぢさんのわききました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ある日のこと、かなり長い散歩から、昼飯に帰ってみると、おどろいたことには、わたしは一人きりで食事をしなければならぬことがわかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
島の上も、海の上とおなじで、一めんにきりがたちこめていました。ところが、ニールスは、岸を見たとき、アッとおどろいてしまいました。
そういながら、わたくしるべく先方むこうおどろかさないように、しずかにしずかにこしおろして、この可愛かわい少女しょうじょとさしむかいになりました。
およびその右手のこととて、彼にのり移るのも不思議はなかったが、その後一時平静にかえったシャクが再び譫言を吐き始めた時、人々はおどろいた
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
きぬとは何人なんぴとぞ、きみおどろなかれ、藝者げいしやでも女郎ぢよらうでもない、海老茶えびちや式部しきぶでも島田しまだ令孃れいぢやうでもない、美人びじんでもない、醜婦しうふでもない、たゞのをんなである
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おどろいたのはモンクスだった。敵の上半身をねらってただ一げきと思いきや、相手は寝てしまったんだ。拍子抜ひょうしぬけがして、ぼんやりしてしまった。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
「わっ」といって二人をおどろかして上げようと思って、いきなり大きな声を出して二人の方に走り寄りました。ところがどうしたことでしょう。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
やま全体ぜんたいうごいたやうだつた。きふ四辺あたり薄暗うすくらくなり、けるやうなつめたかぜうなりがおこつてきたので、おどろいたラランは宙返ちうがへりしてしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
わたし人物じんぶつまつた想像さうざうはんしてたのにおどろいたとひます、甚麼どんなはんしてたか聞きたいものですが、ちと遠方ゑんぱうで今問合とひあはせるわけにもきません
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たとへば昆蟲こんちゆう標本室ひようほんしつにはひつてますと、めづらしい蝶々ちよう/\甲蟲かぶとむしなどのかはつた種類しゆるいのものがおどろほどたくさんにあつめてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
聞く者その威容いようおそれ弁舌におどろ這々ほうほうていにて引き退さがるを常としたりきと云っているもって春琴の勢い込んだ剣幕けんまくを想像することが出来よう。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
以上いじやうで、敬愛けいあいする讀者どくしや諸君しよくん髣髴ほうふつとして、このてい構造かうざうそのおどろくべき戰鬪力せんとうりよくについて、ある想像さうざう腦裡こゝろえがかれたであらう。
けれど、寝耳ねみみに水の変を聞いた、一とうのもののおどろきはどんなであったか。なかにも、小幡民部こばたみんぶはその急報きゅうほうをうけるとともに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
コロボツクルの男子中はたして衣服をつけざる者有りとせばアイヌはじつに其無作法ぶさはふおどろきしならん。氣候の寒暖かんだんは衣服の有無を决定けつていするものにあらず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
彼はちょっとおどろいて一度遊びに来るようにいって、そのまま別れたときから、いっそうかれのことが頭からはなれなかった。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
生業せいぎょうということにかかわっていれば、らちもないことにもおどろくばかばかしさを主人はふかく感じた。細君さいくんもでてきて
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
春重はるしげかわものだってこたァ、いつも師匠ししょうがいってるじゃねえか。いまさらかわものぐれえに、おどろくおめえでもなかろうによ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ナニ、あんたが松吉さんだったのか。これはおどろいた」と、紳士はギクリと身体をふるわせた。「もう忘れてしまったかネ、こんな顔の男を。……」
(新字新仮名) / 海野十三(著)
終夜しうやあめ湿うるほひし為め、水中をあゆむもべつに意となさず、二十七名の一隊粛々しゆく/\としてぬまわたり、蕭疎しようそたる藺草いくさの間をぎ、悠々いう/\たる鳧鴨ふわうの群をおどろかす
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
官服ふくはもちろん懐中の金も一文も盗まれてはいなかった。そして屍骸の死に顔には「おどろき」の表情はあったけれども「無念」の表情は少しもない。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
粗末そまつきれ下衣したぎしかてゐないで、あしにはなにかず、落着おちついてゐて、べつおどろいたふうく、こちらを見上みあげた。
見物人けんぶつにんおどろいてしまいました。なにしろ人形がひとりでうごまわるのは、見たこともいたこともありません。みな立ちあがって、やんやと喝采かっさいしました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ブランドはおどろいてコスターをだいた手をはなし、フハンの両耳をつかんで一生けんめいに戦った。人と犬! 押しつ押されつ汗みずくになってもみあった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
虐待ぎやくたいはずゐぶんひどいやうです。或晩あるばんなぞ、鉄瓶てつびん煮湯にえゆをぶつかけて、くびのあたりへ火焦やけどをさしたんでせう。さすがにおどろいて、わたしのところへやつてたんです。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かねて支度したくしてあつたお輿こしせようとなさると、ひめかたちかげのようにえてしまひました。みかどおどろかれて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)