くび)” の例文
やがて盗賊とうぞくどもは、生人形いきにんぎょうおくからってきましたが、くびはぬけ手足はもぎれて、さんざんな姿すがたになっていました。それも道理もっともです。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ところかほわりあたまうすくなりぎたふとつたをとこて、大變たいへん丁寧ていねい挨拶あいさつをしたので、宗助そうすけすこ椅子いすうへ狼狽あわてやうくびうごかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勘次かんじはそれでも分別ふんべつもないので仕方しかたなしに桑畑くはばたけこえみなみわびたのみにつた。かれふる菅笠すげがさ一寸ちよつとあたまかざしてくびちゞめてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
料理番がカモのくびをちょんぎって、はらわたをだしてみますと、はたして、ぶくろのなかにおきさきさまの指輪ゆびわがはいっていました。
百姓ひゃくしょうは、ひょいとくびを起して、思わず、あたりを見まわしました。ほんのちょっとのあいだ、わたしの言うことにつられたのです。
こんどは用吉君ようきちくんが、得意とくい相手あいてくびをしめにかかったが、反対はんたい自分じぶんくびをしめつけられ、ゆでだこのようになってしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
本堂の横の拾石に腰をおろすと、後ろからいて來た人は、そつと平次の側に立つて、くびうなれて何やら切つかけを待つて居る樣子。
すぐさま石垣からとびおりると、ガチョウのむれのまんなかにけこんで、その若いガチョウのくびたまにかじりついて、さけびました。
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ところがおどろいたことには、られたいぬくびは、いきなりがって、りょうしのねむっていたあたまの上の木のえだにかみつきました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はあと嘉十かじふもこつちでその立派りつぱ太陽たいやうとはんのきをおがみました。みぎから三ばん鹿しかくびをせはしくあげたりげたりしてうたひました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
考えていたような恐ろしい顔も、みにくい顔もあらわれてはこずに、男の顔はかき消え、くびなしの怪人かいじんがそこにつっ立っていた。
げに我はくびなき一のからだの悲しき群にまじりてその行くごとくゆくを見たりき、また我いまもこれをみるに似たり 一一八—一二〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
直之なおゆきの首は暑中の折から、ほおたれくびになっております。従って臭気も甚だしゅうございますゆえ、御検分ごけんぶんはいかがでございましょうか?」
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あの、りゅうがかいてある香炉こうろあたまは、ししのくびなんだね。」と、だいにのっている、そめつけの香炉こうろを、竹夫たけおはさしました。
ひすいの玉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くびをすくめながら、くちなかでこうつぶやいた春重はるしげは、それでもつめ煮込にこんでいる薬罐やかんそばからかおはなさずに、雨戸あまどほうぬすた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かくてもあられねばつまたる羽織はおりをつとくびをつゝみてかゝへ、世息せがれ布子ぬのこぬぎて父の死骸しがいうでをそへてなみだながらにつゝみ脊負せおはんとする時
一方では舞妓たちが藤棚の下へ床几しょうぎをもちこみ、銀のかんざし花櫛はなぐしのきれいくびをあつめて、和蘭陀おらんだカルタをやりはじめていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心得こゝろえことで……はさんではてるへびの、おなじ場所ばしよに、おなじかまくびをもたげるのも、あへて、咒詛じゆそ怨靈をんりやう執念しふねんのためばかりではないことを。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つけられし通り傳吉は何れにも正路しやうろの者右の河原にてころされたる女は空せみ又一人の男は彼を勾引かどはかしたるやつならんが二ツのくび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
君子きみこ不審いぶかしさに母親はゝおや容子ようすをとゞめたとき彼女かのぢよ亡夫ばうふ寫眞しやしんまへくびれて、しづかに、顏色かほいろ青褪あをざめて、じろぎもせずをつぶつてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「よッ、先程の釣り侍じゃな? 七十三万石の太守にむかって、もぐり大名とは何ごとじゃッ、何事じゃッ、雑言申ぞうごんもうさるるとくびが飛び申すぞッ」
あのめられたくびしろくしまして、はねをむしられるにはとりますと、とうさんはおなかなかでハラ/\しました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
死罪しざいこと追放つゐはうといはッしゃるは、黄金わうごん斧鉞まさかりわしくびねておいて、そち幸福しあはせぢゃとわらうてござるやうなものぢゃ。
あるひはマンロー大發掘だいはつくつではるまいかと、くびかたむけながらつてると、それは土方氏どかたし非學術的大發掘ひがくじゆつてきだいはつくつであつた。
もつと左樣さうするまへ老人らうじん小聲こゞゑ一寸ちよつ相談さうだんがあつたらしく、金貸かねかしらしい老人らうじんは『勿論もちろんのこと』とひたげな樣子やうすくびかたせてたのであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『まあ見事みごと百合ゆりはな……。』わたくしおぼえずそうさけんで、巌間いわまからくびをさししていた半開はんかい姫百合ひめゆり手折たおり、小娘こむすめのように頭髪かみしたりしました。
大伴おほとも大納言だいなごんにはたつくびについてゐる五色ごしきたま石上いそのかみ中納言ちゆうなごんにはつばめのもつてゐる子安貝こやすがひひとつといふのであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
硝子天井は、容赦ようしゃなく僕の頭をおさえつける。僕はさっきから無理な姿勢をとりくびを横にまげて泳いでいるので、くびすじがひきつって痛くてたまらない。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
くだんの如きくびかせの芸当を以て京の町外れまで一散に走りましたが、そこで、米友は、がんりきの肩から下り、がんりきは脚絆きゃはんひもを結び直したけれども
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
六郎が父のくびは人々持ちかえりしが、彼素肌にてつき殺されし人は、ずだずだにられて、頭さえくだけたりき。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
此處こゝ地球上ちきゆうじやういづれのへんあたつてるだらうと、二人ふたりくびひねつてたがすこしもわからない。武村兵曹たけむらへいそうかんがへでは。
何處どこからかうおまへのやうなひとれの眞身しんみあねさんだとかつてたらどんなにうれしいか、くびたまかじいてれはそれぎり往生わうじやうしてもよろこぶのだが
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
虐待ぎやくたいはずゐぶんひどいやうです。或晩あるばんなぞ、鉄瓶てつびん煮湯にえゆをぶつかけて、くびのあたりへ火焦やけどをさしたんでせう。さすがにおどろいて、わたしのところへやつてたんです。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「閣下、鞭など使はずに、あんな悪魔は、すぐくびたたつきつておしまひなされば、ようございましたのに!」
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
『いや貴方あなたは。こまつたな、まあおきなさい。』と、院長ゐんちやう寐臺ねだいそば腰掛こしかけけてせむるがやうにくびる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と、くびをひねりました。どのみせのかんばんをながめても、みせさきにならんでいるしなものをみても、かいてあることばが、さっぱりよめないではありませんか。
そして、——てはならん‥‥と、一所懸命しよけんめいかんがへてはゐながら、何時いつにかトロリとまぶたちて、くびがガクリとなる。あしがくたくたとまがるやうながする。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
すゑにはう「初雪はつゆきやせめてすゞめの三まで」どころではないすゞめくびつたけになるほど雪がつもりました。
ばうのさきには、よろいをきたサムライや、あか振袖ふりそでをきたオイランがだらりとくびをたれてゐました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
さうして温かい苅麥かりむぎのほめきに、赤いくびの螢に、或は青いとんぼの眼に、黒猫の美くしい毛色に
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
子家鴨こあひるいままでにそんなとりまったことがありませんでした。それは白鳥はくちょうというとりで、みんなまばゆいほどしろはねかがやかせながら、その恰好かっこうのいいくびげたりしています。
A ウン、あれはおれのぢやないけれど、ういふんだ。『きみ社頭しやとうまつくびくくり』さ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
それ永遠えいえんけない宇宙うちうなぞでもあるかのやう。友と私とはくびれて工場の前を通過とほりすぎた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
りやう以上いじやう盜賊たうぞくでなくても、くびつながらなかつた。死刑しけい連日れんじつおこなはれた。れが月番つきばんときは、江戸えどなら淺右衞門あさゑもんともいふべき首斬くびきやくやいばに、らぬとてはなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
エーと、が、それのみにては御慰おなぐさみが薄い様にござります。かように斬りさいなみましたる少女の首を、ザックリ、切断致し、これなるテーブルの上に、さらくびとござあい。ハッ
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
将門が醍醐の開基理源大師の法力ほふりきいましめられ、さらくびに遭つたのを残念がつて、首が空を飛んで来たのを拾つたのだといふが、事に依つたら、大師が申請まをしうけたのかも知れない。
ペンペはすこくびちぢめた。二千メートルのくもなかだ。ペンペはいきをはづませてゐる。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
弥八 (得物を投じ、長脇差へ手をかける)抵抗てむかいすると、くびを、叩き落すぞ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)