あし)” の例文
いながら、まさかりをほうりして、いきなりくまみつきました。そしてあしがらをかけて、どしんとびたにげつけました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひかりは、ほのかにあしもとをあたためて、くさのうちには、まだのこったむしが、ほそこえで、しかし、ほがらかにうたをうたっていました。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの娵さんに會計を渡したら、わたしは其日から、ちよいと何かでおあしが入ることがあつても、頭を下げて往つて頼まねばならない。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「おや、此所こゝらつしやるの」と云つたが、「一寸ちよいと其所そこいらにわたくしくしが落ちてなくつて」と聞いた。くし長椅子ソーフアあしところにあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これ引摺ひきずつて、あしながらなさけなさうなかほをする、蟋蟀きり/″\す𢪸がれたあしくちくはへてくのをるやう、もあてられたものではない。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
木刀ぼくとうをもってたっているにいさんのあしもとに、おかあさんはきちんとすわって、あたまをたたみにすりつけんばかりにして、たのみました。
「あッ」と万吉がよろけあしをふんだ、と同時に、生き物のようにはね返ってきた縄尻が、どうする間もなくグルグルと巻きついた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぢいやは御飯ごはんときでも、なんでも、草鞋わらぢばきの土足どそくのまゝで片隅かたすみあしれましたが、夕方ゆふがた仕事しごところから草鞋わらぢをぬぎました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何處どこへゆく何處どこへゆく、げてはならないと坐中ざちうさわぐにてーちやんたかさんすこたのむよ、かへるからとてずつと廊下らうかいそあしいでしが
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
勘次かんじはひつそりとしたいへのなかにすぐ蒲團ふとんへくるまつてるおしな姿すがたた。それからおしなあしさすつてるおつぎにうつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
院長いんちょう不覚そぞろあわれにも、また不気味ぶきみにもかんじて、猶太人ジウあといて、その禿頭はげあたまだの、あしくるぶしなどをみまわしながら、別室べっしつまでった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
日本につぽんアルプスの上高地かみこうち梓川あづさがはには、もといはなで、あしすべるといはれたほど澤山たくさんゐたものですが、近頃ちかごろはだんだんつてたようです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「そうともそうとも。こうなったら、いそいでくれろとたのまれても、あしがいうことをきませんや。あっしと仙蔵せんぞうとの、役得やくとくでげさァね」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一四二烈婦さかしめのみぬしが秋をちかひ給ふを守りて、家を出で給はず。翁も又一四三あしなへぎて百かたしとすれば、深くてこもりて出でず。
面附つらつきこそはれよりもよけれ、脛附すねつきが十人並にんなみ以上いじゃうぢゃ、それからあしどうやはふがほどいが、ほかには、ま、るゐい。
そのときだれしのあしに、おれのそばたものがある。おれはそちらをようとした。が、おれのまはりには、何時いつ薄闇うすやみちこめてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ええ、馬鹿ばかつくせえ。なんとでもなるやうになれだ」と、途中とちうで、あらうことかあるまいことかをんなくせに、酒屋さかやへそのあしではいりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
前年さきのとし江戸にありし時右の事をさき山東翁さんとうをうにかたりしに、をういはく世路せいろなだ総滝そたきよりも危からん、世はあしもとを見てわたるべきにやとてわらへり。
表を見ると、和服や洋服、老人やハイカラや小僧が、いわゆる「あしそら」という形で、残暑のはげしい朝の町を駈け廻っている。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれはもう一度挙手の礼を送り、まわれ右をして、あしで隊の右翼うよくに帰って行き、そこではじめて「休め」の号令をかけた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そしてたうたう手拭てぬぐひのひとあしこつちまでつて、あらんかぎりくびばしてふんふんいでゐましたが、にはかにはねあがつてげてきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
けれども三にんともあしうごかさない。そして五六にんおな年頃としごろ小供こどもがやはり身動みうごきもしないでばあさんたち周圍まはりいてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
吃驚びつくりした鴉は一あしあし後方うしろ退しさつて、じつと蛇の頭を見てゐたが、急に厭世的な顔をしたと思ふと、そのまゝひつくりかへつて死んでしまつた。
まへせい一ぱいつて御覽ごらん——だけど、わたし深切しんせつにしてやつてよ。でなければ、屹度きつとあしふことをかないわ!屹度きつとさうよ。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
たれもがからだをぐらつかせながら、まるで出來できわる機械人形きかいにんぎやうのやうなあしはこんでゐたのだつた。隊列たいれつ可成かなみだれてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
『やア、ぼくいま、フアーマーをしてところだ。まアあがたまへ。あしあらふ。離座敷はなれざしき見晴みはらしがいから』ときやくこのむ。
そのころわかいもんたちは、三日三晩みっかみばん、たたらというおおきなふいごをあしんで、かねをとかすをおこしたもんだそうだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
粗末そまつきれ下衣したぎしかてゐないで、あしにはなにかず、落着おちついてゐて、べつおどろいたふうく、こちらを見上みあげた。
ほそあしのおかげではしるわ、はしるわ、よつぽどとほくまでげのびたが、やぶのかげでそのうつくしいつのめがさヽ引掛ひつかかつてとう/\猟人かりうどにつかまつたとさ。
いづれもいたつて粗末そまつ簡單かんたん人形にんぎようで、あしほうはたいてい一本いつぽん筒形つゝがたになり、あしさきまであらはしてあるのはまれであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
見返みかへり/\やゝかげさへもみえざればうしがみをや引れけん一あし行ば二足ももどる心地の氣をはげまし三河の岩井をあとになし江戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしあしわるいまちは、すぐにつかれるので、やがてしづかなカフエーかレストランドにはひらなければならなかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
そだちのいい家鴨あひるはそのおとうさんやおかあさんみたいに、ほら、こうあしひろくはなしてひろげるもんなのだ。さ、くびげて、グワッってって御覧ごらん
そして見た状勢を、あしで、うしろへ引っかえして報告した。報告がすむと、また前に出て行くことを命じられた。雪は深く、そしてまぶしかった。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
へい/\。主「足がよごれてるな……これ/\徳次郎とくじらう/\。徳「はい。主「此処こゝての、此乞食このこじきの足を洗つてれ。徳「乞食こじきあしイ……ンー/\/\。 ...
『おつ魂消たまぎえた/\、あぶなく生命いのちぼうところだつた。』と流石さすが武村兵曹たけむらへいそうきもをつぶして、くつ片足かたあしでゝたが、あし幸福さひはひにも御無事ごぶじであつた。
ほら よくそとで三本あしをたてて 望遠鏡のやうなものをのぞいては地めんや道なぞをはかつてゐる人があるだらう
山の斜面しやめんに露宿をりしことなればすこしも平坦へいたんの地を得す、為めに横臥わうぐわする能はず、或は蹲踞するあり或はるあり、或は樹株にあしささへてするあり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
長袖ながそであしにも肉刺まめ出來できることはあるまいとおもつて、玄竹げんちくほとんど二十ねんりで草鞋わらぢ穿いたのであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
金庫きんこあし車止くるまどめをたしかにしてくこと。地震ぢしんのとき金庫きんこうごし、とびらがしまらなくなつたれいおほい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
こんなくるしい道中どうちゅうのことでございますから、御服装おみなりなどもそれはそれは質素しっそなもので、あしには藁沓わらぐつには筒袖つつそで、さして男子だんし旅装束たびしょうぞく相違そういしていないのでした。
かれはさっきから目のまえの草のうえに、二あし長靴ながぐつをきちんとならべて、つくづくと見いっていた。
たえ子は込合ふ乗客のあひだに、辛うじてあしの踏み場を見つけて釣革につかまつてゐたが、実は時間もさう早くはないので、こゝから四谷まで行くのは大変だと思つた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あしのとまるところにて不図ふと心付こゝろづけば其処そこ依田学海先生よだがくかいせんせい別荘べつさうなり、こゝにてまたべつ妄想まうさうきおこりぬ。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ひどく赤い眼とこわい顔をして、ジェリー・クランチャーは、動物園のあし連中のように食事を前にして唸りながら、朝食を食べるというよりも噛みちらかしていた。
で、とんだひょうしに、どたりと たおれて、ぶかっこうなうでとあしとを、おってしまいました。
そこで、法師をはだかにして、ありがたい、はんにゃしんきょうの経文きょうもんを、あたまからむねどうからからあし、はては、あしのうらまで一めんすみくろぐろときつけました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
現在のようにあの畳の上をあしして、堪えず足のあかをこすりつけ、その上へ板のごときあしなしぜんをすえ並べて、なるだけちりの多く載っかった物を食おうとする流行などは
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
神谷はホッとして、青ざめている弘子をなぐさめておいて、あし遅れてカフェを出た。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
亀屋の亭主もこれまでと口をつぐむありさま珠運口惜くちおしく、見ればお辰はよりどころなき朝顔のあらしいて露もろく、此方こなたに向いて言葉はなく深く礼して叔父に付添つきそい立出たちいずる二タあし三足め
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)