むす)” の例文
かれは、このはなしをきくと、なんとなくからだじゅうが、ぞっとしました。おんな姿すがたると、ながくろかみむすばずに、うしろにれていました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かつ面白おもしろ人物じんぶつであるから交際かうさいして見給みたまへとふのでありました、これからわたしまた山田やまだ石橋いしばしとを引合ひきあはせて、桃園とうゑんむすんだかたちです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と言いながらムクの面を見ていた時に、ふと気がつけば、その首に糸が巻いてあって、糸の下にはむすぶみが附けてあるのを認めました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたしたちの芝居小屋しばいごやはさっそくできあがった。四本の木になわをむすび回して、その長方形のまん中にわたしたちは陣取じんどったのである。
現世げんせ夫婦ふうふならあいよくとの二筋ふたすじむすばれるのもむをぬが、一たん肉体にくたいはなれたうえは、すっかりよくからははなれてしまわねばならぬ。
餘所よそをんな大抵たいてい綺麗きれいあかおびめて、ぐるりとからげた衣物きものすそおびむすしたれて只管ひたすら後姿うしろすがたにするのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
みちわずかに通ずるばかり、枯れてもむぐらむすぼれた上へ、煙の如く降りかゝる小雨こさめを透かして、遠く其のさびしいさまながめながら
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
花前は、よどみなく決然けつぜんと答えて平気へいきでいる。話のしりをむすばないことになれてる主人も、ただありませんと聞いたばかりではこまった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
神聖たふとことば二人ふたりむすはしてくだされば、こひほろぼため此身このみ如何樣どのやうにならうとまゝ。つまぶことさへかなへば、心殘こゝろのこりはない。
電氣でんきの一きよく活字くわつじむすけていて、の一きよくかみつうじて、其紙そのかみ活字くわつじうへけさへすれば、すぐ出來できるのだと小六ころくつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兎角とかくするほどむすびのつなかれて、吾等われら兩人りやうにんせたる輕氣球けいきゝゆうは、つひいきほひよく昇騰しようたうをはじめた。櫻木大佐等さくらぎたいさら一齊いつせいにハンカチーフをつた。
君子きみこのびをしてむすばれた電氣でんきつなをほどいてゐた。とそのときはゝあたかもそのひかりにはじかれたやうにぱつとあがつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
何日いつとて云うて來ぬかモウ今日あたりは來然きさうな物と親父おやぢいへ女兒むすめもまた戀しい人と二世のえんむすぶに附てうれしさの一日ひとひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしはいまでもこのことだけは、感心かんしんだとおもつてゐるのです。わたしと二十がふむすんだものは、天下てんかにあのをとこ一人ひとりだけですから。(快活くわいくわつなる微笑びせう
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
とうさんがそのちいさなむらさきいろのはなまへ自分じぶん草履ざうりひもむすばうとしてりますと、伯父をぢさんはとうさんのそばて、こしこゞめて手傳てつだつてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なにぶんうすてついたでつくり、これをかはひもむすあはせたものでありますから、いまではぼろ/\にこはれて、完全かんぜんのこつてゐるものはまれであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
やみでもてえげええるだろうが、おいらァ堅気かたぎ商人しょうにんで、四かくおびを、うしろでむすんでわけじゃねえんだ。面目めんぼくねえが五一三分六ごいちさぶろくのやくざものだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ちごしづかに寢床ねどこうつして女子をなごはやをら立上たちあがりぬ、まなざしさだまりて口元くちもとかたくむすびたるまゝ、たゝみやぶれにあしられず
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのとき明智は、たずなをはなして、腰のかげんでウマを走らせながら、両手でほそびきのたばをほぐし、むすだまをつくって、大きな輪にしました。
サーカスの怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
第二例においては此部に布目ぬのめの痕を付けたり是等の遮光器は左右兩端さいうりやうはしに在る紐を以て頭にむすび付けられたるものの如し。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
白布しらぬの汗止あせどめ、キッチリとうしろにむすび、思いきってはかまを高くひっからげた姿すがた——群集ぐんしゅうのむかえる眼にもすずしかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人知ひとしれずしのんできた同じようなくるしみとおたがいあわれみの気持きもちとが、悲しいやさしみをもって二人をむすびつけていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
友染いうぜんの着物に白茶錦しらちやにしきの帯をむすびにして、まだ小い頃から蝶々髷てふ/\まげやら桃割もゝわれつて、銀のすゝきかんざしなどを挿して
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
今の私には、その氣持ちがかなりはつきり理解できるが、當時は、それを怜悧な保身術と解し、京阪かみがたの人間としての本性とむすびつけて考へないわけにいかなかつた。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
私は萱のんだところから無理むりにのぞいて見ましたら二人ともメリケンふくろのようなものを小わきにかかえてその口のむすび目を立ったままいているのでした。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして福徳円満とあるこの土性で自分が居たい心持がしきりに起り、覚えて来たばかりの縁結びというのを行って見ると、どうしても自分と小歌とがむすばらない
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
いそに漂着ひょうちゃくしたる丸太や竹をはりけたとし、あしむすんで屋根をき、とまの破片、藻草もぐさ、松葉等を掛けてわずかに雨露あめつゆけたるのみ。すべてとぼしく荒れ果てている。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
いま少時しばしねえさんのひざまくら假寐かりねむすんだあいちやんのゆめいてほどけばうつくしいはな數々かず/\色鮮いろあざやかにうるはしきをみなして、この一ぺんのお伽噺とぎばなし出來できあがつたのです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其後そののち帝室博物館ていしつはくぶつくわんつて陳列品ちんれつひんを一けんし、それから水谷氏みづたにし交際かうさいむすやうになり、採集品さいしふひんを一けんし、個人こじんちからもつ帝室博物館ていしつはくぶつくわん以上いじやう採集さいしふことり。
ける銃架じうか。おういへはなれてむすねむりのうちに、かぜ故郷こきやうのたよりをおまへつたへないのか
冬曉とうげうはやじよくはなれて斗滿川とまむがはき、氷穴中へうけつちゆうむすべるこほり手斧てをのもつやぶり(このこほりあつさにても數寸餘すうすんよあり)ぼつし、曉天げうてんかゞや星光せいくわうながめながら灌水くわんすゐときの、清爽せいさうなる情趣じやうしゆ
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
見えない猫の二本の前足が、細いゴムのバンドでむすんであることだった。そのゴムのバンドは、草むらの中にあって、よくよく見ないと、青二の目には、はいらない場所であった。
透明猫 (新字新仮名) / 海野十三(著)
福島、特に郡山こおりやまを中心に養蚕や製糸の業が盛であります。川俣かわまた羽二重はぶたえの産地として名を成しました。ですが主に輸出ものでありますから土地の暮しとは深いむすばりがありません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
こういうひとたちも、みなごんごろがねと、えないいとむすばれているのだ。ぼくはいまさら、このおおきくもないかねが、じつにたくさんのひと生活せいかつにつながっていることにおどろかされた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そのうちふとがつくと、これこそはなしにきいた一つおにだ、ぐずぐずしているととんでもないことになるとおもって、あわててわらじのひもをむすぶひまもなくそうとしました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
磐代いはしろ浜松はままつむす真幸ささきくあらばまたかへりむ 〔巻二・一四一〕 有間皇子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
○さて此関山村のかたほとりに、ひと草庵さうあんむすびて源教げんけうといふ念仏ねんぶつ道心坊だうしんばうありけり。年は六十あまり、たゞ念仏三昧ざんまい法師はふしにて、无学むがくなれどもそのおこなひ碩僧せきそうにもをさ/\おとらず。
という場合、単に女子じょしという文字だけにてはさらに善悪の意を含んでおらぬが、小人しょうじんということばむすびあわせると、女子じょし卑下ひげする心持が現れている。ちょっと普通行わるることわざを見ても
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「誰にも言ふな、最初若旦那の柳吉は、手代の喜三郎に殺されたのだ。犬のつな匕首あひくちむすんだのは、喜三郎の細工さいくだよ、小僧の佐吉と一緒の部屋で寢て、夜中に拔出して仕事をしたのさ」
是はむすんで居るうち附た癖です譬えば真直な髪の毛でもチョン髷に結べば其髷の所だけはといた後でも揺れて居ましょう、夫と同じ事で此髪も縮れ毛では無い結んで居た為に斯様かように癖が附たのです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
僕はも少しで言うのを忘れてしまうところだったが、その箱はめてありました。錠前とか、何かほかのそういったようなものでなしに、金の紐を大変込み入ったむすび方にして留めてあったのです。
教会けうくわい草木さうもくまた動物どうぶつの如き自然物しぜんぶつにあらず、草木は時期じきさだめてはなむすび、小児せうに時期じき経過けいくわすれば成人せいじんして智力ちりよく啓発けいはつに至るべし、しかれども教会けうくわい人為的じんゐてきなり、復興ふくこうせんとほつせば明日めうにち
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
よし飯焚をないにしても、朝飯とお弁当は、お冷でも善い、菜が無いなら、漬物だけでも苦しうない、といふ工合で、食ぱんのぽそ/\も、むせツたいと思はず、餌をつまんだ手で、おむすびを持ツても
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、世界を祝福する御手みてからき散らし給ふ薔薇ばらの花、羅馬法皇ろおまほふわうのやうな薔薇ばらの花、その金色こんじきしんあかがねづくり、そのあだなるりんの上に、露とむすぶ涙は基督クリスト御歎おんなげき、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
歴史上れきしじよう事實じじつむすびつけて、かんがへられたものだとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「私は、この山の上にあんむすんでおりますよ」
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「だけど紐がむすぼれて——手を貸して。」
さてはまた、野に霜むすんで枯るるごと
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
くちばしむすびたゞしく
しやうりの歌 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
あるひしもとおきむす
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)