あき)” の例文
先生せんせいが、あきになると、空気くうきむからちかえるのだといったよ。」と、いただきてんについていないと反対はんたいした子供こどもはいいました。
木に上った子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かぜつめたさわやかに、町一面まちいちめんきしいた眞蒼まつさを銀杏いてふが、そよ/\とのへりをやさしくそよがせつゝ、ぷんと、あきかをりてる。……
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうしたあかいろどられたあきやまはやしも、ふゆると、すっかりがおちつくして、まるでばかりのようなさびしい姿すがたになり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
しかるに奥様は松平和泉守まつだいらいずみのかみさまからお輿入こしいれになりましたが、四五年ぜんにお逝去かくれになり、其のまえから居りましたのはおあきという側室めかけ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「うむ、なあにれもそれから去年きよねんあき火箸ひばしばしてやつたな」卯平うへいういつてかれにしてはいちじるしく元氣げんき恢復くわいふくしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あきかぜ少しそよ/\とすれば、はしのかたより果敢はかなげに破れて、風情ふぜい次第にさびしくなるほど、あめおとなひこれこそは哀れなれ。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またあきになつて、まち夫婦ふうふ去年きよねんとおなじやうに子供こどもてるとき食後しよくごなどは、しみ/″\と故郷こきやう追憶つひおくにふけるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
滝田くんはじめてぼくの家へ来たのはぼくの大学を出た年のあき、——ぼくはじめて「中央公論ちゅうおうこうろん」へ「手巾はんけち」という小説しょうせつを書いた時である。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
保名やすなからだがすっかりよくなって、ってそと出歩であるくことができるようになった時分じぶんには、もうとうにあきぎて、ふゆなかばになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかしながらむかし歌人かじんは、あきかなしいものだとかんじることの出來できるのは、自分じぶん歌人かじんとしての大事だいじ資格しかくだとおもつてゐました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
その後もない十二年の歳のあきに、わたしは三つ時分からの持べう喘息ぜんそくに新しい療法れうほうはつ見されたといふので、母とともにはる/″\上けうしたが
宗助そうすけこの宣告せんこくさびしいあきひかりやうかんじた。もうそんなとしなんでせうかといてたくなつたが、すこきまりがわるいので、たゞ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あの娘は、鳥越とりごえ平助店へいすけだなにいるおあきという者だ、——叔父、叔母といってるのは全く他人で、これは飴屋あめや丑松うしまつとおとくという、仕事の相棒さ。
夜雨やうあきさむうしてねむりらず残燈ざんとう明滅めいめつひとり思うの時には、或は死霊しりょう生霊いきりょう無数の暗鬼あんきを出現して眼中に分明なることもあるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かべとなり左官夫婦さかんふうふが、朝飯あさめしぜんをはさんで、きこえよがしのいやがらせも、春重はるしげみみへは、あきはえばたきほどにも這入はいらなかったのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
吉野のゆき霏々ひひ、奥州のあき啾々しゅうしゅうちまたにも、義経詮議の声のかしましく聞えてきた頃、誰やら、義朝の廟、南御堂の壁へ、こんな落書をしたものがある。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とうさんは九つのとしまで、祖父おぢいさんや祖母おばあさんの膝下ひざもとましたがそのとしあき祖父おぢいさんのいゝつけで、東京とうきやう學問がくもん修業しうげふることにりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「さようでございます。これはすきとおったするどいあきこなでございます。数知れぬ玻璃はり微塵みじんのようでございます」
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あるあきのことでした。二、三日雨がふりつづいたそのあいだ、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それはわすれもせぬ去年きよねんあきことで、わたくし米國ベイこくから歐羅巴エウロツパわた航海中かうかいちうで、ふと一人ひとり英國イギリス老水夫らうすゐふ懇意こんいになつた。
ところが、あきになってまもない九がつ十日とおかごろ、おかあさんから、九がつ三日みっかにいさんがなくなったから、すぐかえってくるようにとのらせがありました。
白茶色になって来た田圃たんぼにも、白くなった小川のつつみ尾花おばなにも夕日が光って、眼には見る南村北落の夕けぶり。烏啼き、小鳥鳴き、あきしずかに今日も過ぎて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あるあきあさのこと、イワン、デミトリチは外套ぐわいたうえりてゝ泥濘ぬかつてゐるみちを、横町よこちやう路次ろじて、町人ちやうにんいへ書付かきつけつてかねりにつたのであるが
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あきのことだった。終点しゅうてんI駅あいえきからでる最終さいしゅう列車に後部車掌こうぶしゃしょうをつとめることになったわたしは、列車の一ばんうしろ貨車かしゃについた三じゃくばかりしかない制動室せいどうしつに乗りこんだ。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
あき穂田ほだかりがねくらけくにのほどろにもわたるかも 〔巻八・一五三九〕 聖武天皇
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
や見し成んと一入ひとしほあはれのいやませしと言つる心の御製なり又芭蕉翁ばせをおうにも「ましらさへ捨子すてご如何いかあきくれ」是や人情にんじやうの赴く處なるらんさて又藤川宿にては夜明てのち所の人々ひと/″\此捨子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は白いくさをかみながら立ち上つた。ふと、私はそのくさが、去年きよねんあき私達わたしたちすわつてみつけたときのくさ相違さうゐないとかんがへた。それが一を落してまたを出した。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
去年きよねん夏頃なつごろから稼場かせぎば姿すがたはじめ、川風かはかぜあきはやぎ、手袋てぶくろした手先てさきこゞえるやうなふゆになつても毎夜まいよやすまずにるので、いまでは女供をんなどもなかでも一ばん古顔ふるがほになつてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そのうちあきて、もりはオレンジいろ黄金色おうごんいろかわってました。そして、だんだんふゆちかづいて、それがると、さむかぜがその落葉おちばをつかまえてつめた空中くうちゅうげるのでした。
はるうら/\てふともあそぶやはな芳野山よしのやまたまさかづきばし、あきつきてら/\とたゞよへるうしほ絵島ゑのしままつさるなきをうらみ、厳冬げんとうには炬燵こたつおごり高櫓たかやぐら閉籠とぢこもり、盛夏せいかには蚊帳かや栄耀えいえう陣小屋ぢんごやとして
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
竹村たけむらはじめて奈美子なみこたのは、ちやうど三月みつきほどまへあきころであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あきれた。彼女かのぢよ屍體したい白布しろぬのおほはれて、その屍室ししつはこばれた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
彼女かのぢよ病院びやうゐん生活せいくわつつてから三年目ねんめあきに、ある地方ちはうから一人ひとりわか醫者いしやて、その病院びやうゐん醫員いゐんになつた。かれ所謂いはゆる人好ひとずきのするをとこで、こと院内ゐんない看護婦達かんごふたちをすぐになづけてしまうことが出來できた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
植ゑし植ゑばあきなきときかざらんはなこそらめさへれめや
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
染めてよと君がみもとへおくりやりし扇かへらず風あきとなりぬ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
田のあなた新墾道にひばりみちの砂利道もしづけかりけりあき正午まひる過ぎ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
あき奉天ほうてん街上かいじやう銃架じうかはひとりの同志どうしうばつた
したしくもあるか、今朝けさあき偃曝ひなたぼこり其骨そのほね
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
春日かすがみや使つかひめあきふたして
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ひものまどのけむりやあきかぜ
荷風翁の発句 (旧字旧仮名) / 伊庭心猿(著)
化石くわせきもすらむあき
茴香 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
あきすさまじきかげ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
あきといふに
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あき
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
わたしが、去年きょねんあき、ここへやってきたときに、だれかいぬてたものがあった。いぬは、クンクンかなしそうなこえしていていました。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
つい、そのころもんて——あき夕暮ゆふぐれである……何心なにごころもなく町通まちどほりをながめてつと、箒目はゝきめつたまちに、ふと前後あとさき人足ひとあし途絶とだえた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
十七のあきたおつぎの姿すがたがおしなくもたことをおもしては、他人ひとうはさいて時々とき/″\つてもたい心持こゝろもちがした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
われもこう、ききょう、かるかや、おみなへし、すゝき、ふぢばかま、はぎのあき七草なゝくさをはじめ、いろ/\のくさ野原一面のはらいちめんいてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
玄翁和尚げんのうおしょうは一にち野原のはらあるきどおしにあるいてまだ半分はんぶんも行かないうちに、みじかあきの日はもうれかけて、るそこらがくらくなってきました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それ多少たせうまつて、みきすときなぞは、みきからくびすと、土手どてうへあき暖味あたゝかみながめられるやう心持こゝろもちがする。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)