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幕
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まく
ふりがな文庫
“
幕
(
まく
)” の例文
軍師
(
ぐんし
)
民部は、きのうから
幕
(
まく
)
のそとに床几をだして、ジッと
裾野
(
すその
)
をみつめたまま、
龍太郎
(
りゅうたろう
)
のかえりを、いまかいまかと待ちかねていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして
若
(
わか
)
い
牝狐
(
めぎつね
)
が一
匹
(
ぴき
)
、中から
風
(
かぜ
)
のように
飛
(
と
)
んで
来
(
き
)
ました。「おや。」という
間
(
ま
)
もなく、
狐
(
きつね
)
は
保名
(
やすな
)
の
幕
(
まく
)
の中に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで
来
(
き
)
ました。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
裾野
(
すその
)
の
煙
(
けむり
)
長
(
なが
)
く
靡
(
なび
)
き、
小松原
(
こまつばら
)
の
靄
(
もや
)
廣
(
ひろ
)
く
流
(
なが
)
れて、
夕暮
(
ゆふぐれ
)
の
幕
(
まく
)
更
(
さら
)
に
富士山
(
ふじさん
)
に
開
(
ひら
)
く
時
(
とき
)
、
其
(
そ
)
の
白妙
(
しろたへ
)
を
仰
(
あふ
)
ぐなる
前髮
(
まへがみ
)
清
(
きよ
)
き
夫人
(
ふじん
)
あり。
肘
(
ひぢ
)
を
輕
(
かる
)
く
窓
(
まど
)
に
凭
(
よ
)
る。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其時原口さんは
後
(
うしろ
)
から、
平手
(
ひらて
)
で、与次郎の
脊中
(
せなか
)
を
叩
(
たゝ
)
いた。与次郎はくるりと
引
(
ひ
)
つ
繰
(
く
)
り
返
(
かへ
)
つて、
幕
(
まく
)
の
裾
(
すそ
)
を
潜
(
もぐ
)
つて
何所
(
どこ
)
かへ消え失せた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
もう、日が西のほうへうつっていましたので、マタンじいさんは、子どもたちの上にかぶさっていた日おおいの
幕
(
まく
)
を、しぼりあげました。
名なし指物語
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
▼ もっと見る
少女は実際部屋の窓に、緑色の
鸚鵡
(
おうむ
)
を飼いながら、これも去年の秋
幕
(
まく
)
の
陰
(
かげ
)
から、そっと
隙見
(
すきみ
)
をした王生の姿を、絶えず夢に見ていたそうである。
奇遇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ベンヺ こりゃ
何
(
なん
)
でも、
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に
隱
(
かく
)
れて、
夜露
(
よつゆ
)
と
濡
(
ぬ
)
れの
幕
(
まく
)
という
洒落
(
しゃれ
)
であらう。
戀
(
こひ
)
は
盲
(
めくら
)
といふから、
闇
(
やみ
)
は
恰
(
ちょう
)
どお
誂
(
あつら
)
へぢゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
仮小屋
(
かりごや
)
や
幕
(
まく
)
の
内
(
うち
)
または青空の下で、
賞翫
(
しょうがん
)
する場合のほうが昔から多く、それはまたわたしたちの親々の、なにか変った仕事をする日でもあった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
○さて口上いひ出て寺へ
寄進
(
きしん
)
の物、あるひは役者へ
贈物
(
おくるもの
)
、餅酒のるゐ一々人の名を
挙
(
あげ
)
、
品
(
しな
)
を
呼
(
よび
)
て
披露
(
ひろう
)
し、此処忠臣蔵七段目はじまりといひて
幕
(
まく
)
開
(
ひらく
)
。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
先刻
(
さつき
)
から三人四人と絶えず
上
(
あが
)
つて来る見物人で
大向
(
おほむかう
)
はかなり
雑沓
(
ざつたふ
)
して来た。
前
(
まへ
)
の
幕
(
まく
)
から
居残
(
ゐのこ
)
つてゐる
連中
(
れんぢゆう
)
には待ちくたびれて手を
鳴
(
なら
)
すものもある。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
道具方
(
どうぐかた
)
が
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かして
幕
(
まく
)
を
引
(
ひ
)
いたんだが、そりゃおめえ、ここでおれが
話
(
はなし
)
をしてるようなもんじゃァねえ、
芝居中
(
しばいじゅう
)
がひっくり
返
(
かえ
)
るような
大騒
(
おおさわ
)
ぎだ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
秋も十一月に入って、お天気はようやく
崩
(
くず
)
れはじめた。今日も
入日
(
いりひ
)
は姿を見せず、灰色の雲の
垂
(
た
)
れ
幕
(
まく
)
の向う側をしのびやかに落ちてゆくのであった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして新吉の手が
抜
(
ぬ
)
けるほどぐいと引き立て、引きずるようにして
中央
(
ちゅうおう
)
の
垂
(
た
)
れ
幕
(
まく
)
のかげへ
連
(
つ
)
れて行ってしまいました。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
いかに
訊
(
たず
)
ねても
訊
(
たず
)
ねても、
竜神
(
りゅうじん
)
の
生活
(
せいかつ
)
は
何
(
なに
)
やら
薄
(
うす
)
い
幕
(
まく
)
を
隔
(
へだ
)
てたようで、シックリとは
腑
(
ふ
)
に
落
(
お
)
ちない
個所
(
ところ
)
がございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
草
(
くさ
)
に
蔽
(
おほ
)
はれた
丘
(
をか
)
の
坂
(
スロープ
)
が
交錯
(
かうさく
)
し合つて
穏
(
おだや
)
かな
幕
(
まく
)
のやうに流れてゐた。
人家
(
じんか
)
はばう/\とした
草
(
くさ
)
のために
見
(
み
)
えなかつた。
美しい家
(新字旧仮名)
/
横光利一
(著)
山麓
(
さんろく
)
には、
紅白
(
こうはく
)
だんだらの
幕
(
まく
)
を
張
(
は
)
り、
天幕
(
テント
)
を
吊
(
つ
)
り、
高等官休憩所
(
かうとうくわんきうけいじよ
)
、
新聞記者席
(
しんぶんきしやせき
)
、
參觀人席
(
さんくわんにんせき
)
など
區別
(
くべつ
)
してある。
別
(
べつ
)
に
喫茶所
(
きつさじよ
)
を
設
(
まう
)
けてある。
宛然
(
まるで
)
園遊會場
(
えんいうくわいぢやう
)
だ。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
アントン・チエエホフの名
戯曲
(
ぎきよく
)
「
櫻
(
さくら
)
の
園
(
その
)
」の
第
(
だい
)
三
幕
(
まく
)
目の
舞台
(
ぶたい
)
の左
奧
(
おく
)
手には
球突塲
(
たまつきば
)
がある心になつてゐる。
文壇球突物語
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
東
(
ひがし
)
の
門
(
もん
)
から
入
(
はひ
)
つて、
露店
(
ろてん
)
と
參詣人
(
さんけいにん
)
との
雜沓
(
ざつたふ
)
する
中
(
なか
)
を、
葵
(
あふひ
)
の
紋
(
もん
)
の
幕
(
まく
)
に
威勢
(
ゐせい
)
を
見
(
み
)
せた
八足門
(
はつそくもん
)
の
前
(
まへ
)
まで
行
(
ゆ
)
くと、
向
(
むか
)
うから
群衆
(
ぐんしう
)
を
押
(
お
)
し
分
(
わ
)
けて、
脊
(
せ
)
の
高
(
たか
)
い
武士
(
ぶし
)
がやつて
來
(
き
)
た。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
着し座す其
形勢
(
ありさま
)
いと
嚴重
(
げんぢう
)
にして先本堂には
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
に
白
(
しろ
)
く十六の
菊
(
きく
)
を
染出
(
そめいだ
)
せし
幕
(
まく
)
を張り渡し表門には
木綿地
(
もめんぢ
)
に白と
紺
(
こん
)
との三
筋
(
すぢ
)
を染出したる幕を
張
(
はり
)
惣門
(
そうもん
)
の内には
箱番所
(
はこばんしよ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
その
時
(
とき
)
、
黒装束
(
くろせうぞく
)
に
覆面
(
ふくめん
)
した
怪物
(
くわいぶつ
)
が澤村路之助丈えと
染
(
そ
)
めぬいた
幕
(
まく
)
の
裏
(
うら
)
からあらはれいでヽ
赤
(
あか
)
い
毛布
(
けつと
)
をたれて、
姫君
(
ひめぎみ
)
の
死骸
(
しがい
)
をば
金泥
(
きんでい
)
の
襖
(
ふすま
)
のうらへと
掃
(
は
)
いていつてしまつた。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
湊屋の大将こと、篠崎仁三郎は、その日常の生活が
悉
(
ことごと
)
くノベツ
幕
(
まく
)
なしの二輪加の連鎖であった。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
チャリン!
揚
(
あ
)
げ
幕
(
まく
)
をはねて花道から、しばらく……しばらくと現われる、
伊達姿女暫
(
だてすがたおんなしばらく
)
。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
時は
涼秋
(
りょうしゅう
)
九
月
(
げつ
)
、処は北海山中の無人境、
篝火
(
かがりび
)
を焚く霜夜の天幕、
幕
(
まく
)
の
外
(
そと
)
には立聴くアイヌ、幕の内には
隼人
(
はやと
)
の
薩摩
(
さつま
)
壮士
(
おのこ
)
が
神来
(
しんらい
)
の
興
(
きょう
)
まさに
旺
(
おう
)
して、歌
断
(
た
)
ゆる時四絃続き、
絃黙
(
げんもく
)
す時
声
(
こえ
)
謡
(
うた
)
い
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
芝居の引幕は能の
揚
(
あ
)
げ
幕
(
まく
)
とは趣を異にして居るやうではあるが、しかし元はやはり揚幕から出た考へであらうと思ふ。チヨボ語りの位置は
地謡
(
じうたい
)
の位置と共に舞台に向つて右側の方にある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
みるみるうちに数人の人夫が財宝を庭に出しはじめた。金銀銭紙幣数百万、真珠
瑪瑙
(
めのう
)
の類数
百斛
(
ひゃくこく
)
、
幕
(
まく
)
、
簾
(
すだれ
)
、榻類これまた数千事。そして
児
(
こども
)
の
襁褓
(
おむつ
)
や女の
※
(
くつ
)
などは庭や階段にちらばって見えた。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
桂川
(
かつらがは
)
の
幕
(
まく
)
が
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
はお
半
(
はん
)
の
脊
(
せな
)
に
長右衞門
(
ちやううゑもん
)
と
唱
(
うた
)
はせて
彼
(
あ
)
の
帶
(
おび
)
の
上
(
うへ
)
へちよこなんと
乘
(
の
)
つて
出
(
で
)
るか、
此奴
(
こいつ
)
は
好
(
い
)
いお
茶番
(
ちやばん
)
だと
笑
(
わら
)
はれるに、
男
(
をとこ
)
なら
眞似
(
まね
)
て
見
(
み
)
ろ、
仕事
(
しごと
)
やの
家
(
うち
)
へ
行
(
い
)
つて
茶棚
(
ちやだな
)
の
奧
(
おく
)
の
菓子鉢
(
くわしばち
)
の
中
(
なか
)
に
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
坊
(
ぼつ
)
ちやんがアノ
何
(
ど
)
うも
長
(
なが
)
いダレ
幕
(
まく
)
の
間
(
あひだ
)
ちやんとお
膝
(
ひざ
)
へ手を
載
(
の
)
せて見て
居
(
ゐ
)
らつしやるのは
流石
(
さすが
)
は
何
(
ど
)
うもお
違
(
ちが
)
ひなさるツてえましたら
親方
(
おやかた
)
がさう
云
(
い
)
ひましたよ、
夫
(
それ
)
ア
当然
(
あたりめえ
)
よお
前
(
まへ
)
のやうな
痴漢
(
ばか
)
とは
違
(
ちが
)
ふ
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それ
故
(
ゆゑ
)
一
般
(
ぱん
)
の
子女
(
しぢよ
)
のやうではなくおつぎの
心
(
こゝろ
)
にも
男
(
をとこ
)
に
對
(
たい
)
する
恐怖
(
きようふ
)
の
幕
(
まく
)
を
無理
(
むり
)
に
引拂
(
ひきはら
)
はれる
機會
(
きくわい
)
が
嘗
(
かつ
)
て
一度
(
ひとたび
)
も
與
(
あた
)
へられなかつた。おつぎは
往來
(
わうらい
)
を
行
(
ゆ
)
くとては
手拭
(
てぬぐひ
)
の
被
(
かぶ
)
りやうにも
心
(
こゝろ
)
を
配
(
くば
)
る
只
(
たゞ
)
の
女
(
をんな
)
である。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その
夜
(
よ
)
の
月
(
つき
)
は、
紺碧
(
こんぺき
)
の
空
(
そら
)
の
幕
(
まく
)
からくり
拔
(
ぬ
)
いたやうに
鮮
(
あざ
)
やかだつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
有名な
蔚山籠城
(
うるさんろうじょう
)
の
幕
(
まく
)
は、切って落とされたのである。
三両清兵衛と名馬朝月
(新字新仮名)
/
安藤盛
(著)
拍子木
(
ひやうしぎ
)
をうつはね
幕
(
まく
)
の
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
という
幕
(
まく
)
かげの答え。
主命
(
しゅめい
)
によって、いまそこへ、
控
(
ひか
)
えたばかりの
福島市松
(
ふくしまいちまつ
)
、一
箇
(
こ
)
の
鎧櫃
(
よろいびつ
)
をもって、秀吉と
伊那丸
(
いなまる
)
の中央にすえた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やがて
拍子木
(
ひょうしぎ
)
が
鳴
(
な
)
って、
幕
(
まく
)
が
上
(
あ
)
がりますと、
文福
(
ぶんぶく
)
茶
(
ちゃ
)
がまが、のこのこ
楽屋
(
がくや
)
から出て
来
(
き
)
て、お
目見
(
めみ
)
えのごあいさつをしました。
文福茶がま
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
代助は今読み
切
(
き
)
つた
許
(
ばかり
)
の
薄
(
うす
)
い洋書を机の上に
開
(
あ
)
けた儘、両
肱
(
ひぢ
)
を
突
(
つ
)
いて
茫乎
(
ぼんやり
)
考へた。代助の
頭
(
あたま
)
は最後の
幕
(
まく
)
で一杯になつてゐる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
……
二人
(
ふたり
)
三人
(
さんにん
)
、
乘組
(
のりく
)
んだのも
何處
(
どこ
)
へか
消
(
き
)
えたやうに、もう
寂寞
(
ひつそり
)
する。
幕
(
まく
)
を
切
(
き
)
つて
扉
(
とびら
)
を
下
(
お
)
ろした。
風
(
かぜ
)
は
留
(
や
)
んだ。
汽車
(
きしや
)
は
糠雨
(
ぬかあめ
)
の
中
(
なか
)
を
陰々
(
いん/\
)
として
行
(
ゆ
)
く。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
○さて口上いひ出て寺へ
寄進
(
きしん
)
の物、あるひは役者へ
贈物
(
おくるもの
)
、餅酒のるゐ一々人の名を
挙
(
あげ
)
、
品
(
しな
)
を
呼
(
よび
)
て
披露
(
ひろう
)
し、此処忠臣蔵七段目はじまりといひて
幕
(
まく
)
開
(
ひらく
)
。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
役者の
仕着
(
しき
)
せを着た
賤
(
いや
)
しい顔の男が、
渋紙
(
しぶかみ
)
を張つた
小笊
(
こざる
)
をもつて、次の
幕
(
まく
)
の料金を集めに来たので、
長吉
(
ちやうきち
)
は時間を心配しながらも
其
(
そ
)
のまゝ
居残
(
ゐのこ
)
つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし
中央
(
ちゅうおう
)
の
垂
(
た
)
れ
幕
(
まく
)
の前に立っている
団長
(
だんちょう
)
はもちろん、ファットマンの
周囲
(
しゅうい
)
に立っている四、五人の道具方も、それが新吉であることは
夢
(
ゆめ
)
にも知りませんでした。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
修行
(
しゅぎょう
)
も
未熟
(
みじゅく
)
、
思慮
(
しりょ
)
も
足
(
た
)
りない
一人
(
ひとり
)
の
昔
(
むかし
)
の
女性
(
じょせい
)
がおこがましくもここにまかり
出
(
で
)
る
幕
(
まく
)
でないことはよく
存
(
ぞん
)
じて
居
(
お
)
りまするが、
斯
(
こ
)
うも
再々
(
さいさい
)
お
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
しに
預
(
あず
)
かり、
是非
(
ぜひ
)
くわしい
通信
(
つうしん
)
をと
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「あいサ。
粋
(
いき
)
な
糸
(
いと
)
の
欲
(
ほ
)
しい
幕
(
まく
)
だけれど、あんまりパッとした着付けじゃアないね」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
出立し大坂
指
(
さし
)
て
赴
(
おもむ
)
き日ならず渡邊橋向の
設
(
まう
)
けの旅館へぞ
着
(
ちやく
)
したり伊賀亮が
差※
(
さしづ
)
にて旅館の
玄關
(
げんくわん
)
に
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
に
葵
(
あふひ
)
の御紋を染出せし
幕
(
まく
)
を
張渡
(
はりわた
)
し
檜
(
ひのき
)
の大板の
表札
(
へうさつ
)
には
筆太
(
ふでぶと
)
に徳川天一坊旅館の七字を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
いつたい「
櫻
(
さくら
)
の
園
(
その
)
」には
第
(
だい
)
一
幕
(
まく
)
の
汽
(
き
)
車の
音
(
おと
)
、
第
(
だい
)
二
幕
(
まく
)
のギタアの音色、
第
(
だい
)
四
幕
(
まく
)
の
終
(
をは
)
りの
櫻
(
さくら
)
の木を切り
倒
(
たふ
)
す
斧
(
をの
)
の
響
(
ひゞ
)
きなどと、
塲面
(
ばめん
)
々々の
感
(
かん
)
じと
相
(
あひ
)
俟つて
音響
(
おんけう
)
の
効果
(
こうくわ
)
が
實
(
じつ
)
に
巧
(
たくみ
)
に
用
(
もち
)
ゐられてゐるが
文壇球突物語
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
絵
(
え
)
にあるような
綺麗
(
きれい
)
な、お
嬢様
(
じょうさま
)
に
何
(
なに
)
やかやと
御馳走
(
ごちそう
)
を
頂戴
(
ちょうだい
)
した
挙句
(
あげく
)
、お
化粧直
(
けしょうなお
)
しの
幕
(
まく
)
の
隅
(
すみ
)
で、あたしはお
前
(
まえ
)
に、お
前
(
まえ
)
はあたしに、
互
(
たがい
)
にお
化粧
(
けしょう
)
をしあって、この
子達
(
こたち
)
、もう
小
(
こ
)
十
年
(
ねん
)
も
経
(
た
)
ったなら
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
ふきあげのかたわらにもう一つのふきあげのように白いしぶきの柱が立ちあがって、それが
軽羅
(
けいら
)
の
幕
(
まく
)
のように広がって流れゆき、池の水ぎわにいたるとその幕のなかから昼間の老人が現われてきた。
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
倦怠
(
けんたい
)
は
彼等
(
かれら
)
の
意識
(
いしき
)
に
眠
(
ねむり
)
の
樣
(
やう
)
な
幕
(
まく
)
を
掛
(
か
)
けて、
二人
(
ふたり
)
の
愛
(
あい
)
をうつとり
霞
(
かす
)
ます
事
(
こと
)
はあつた。けれども
簓
(
さゝら
)
で
神經
(
しんけい
)
を
洗
(
あら
)
はれる
不安
(
ふあん
)
は
決
(
けつ
)
して
起
(
おこ
)
し
得
(
え
)
なかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
きょう一日は陣休みだから、とにかく久しぶりに、じゅうぶん心もからだも養っておくようにと、
幕
(
まく
)
のあなたへでていった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ついて
曲
(
まが
)
ると、
眞晝間
(
まつぴるま
)
の
幕
(
まく
)
を
衝
(
つ
)
と
落
(
おと
)
した、
舞臺
(
ぶたい
)
横手
(
よこて
)
のやうな、ずらりと
店
(
みせ
)
つきの
長
(
なが
)
い、
廣
(
ひろ
)
い
平屋
(
ひらや
)
が、
名代
(
なだい
)
の
團子屋
(
だんごや
)
。
但
(
たゞ
)
し
御酒肴
(
おんさけさかな
)
とも
油障子
(
あぶらしやうじ
)
に
記
(
しる
)
してある。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
一
幕
(
まく
)
にてかへらんとせしに守る者木戸をいださず、
便所
(
べんじよ
)
は寺の
後
(
うしろ
)
にあり、
空腹
(
くうふく
)
ならば
弁当
(
べんたう
)
を
買
(
かひ
)
玉へ、
取次
(
とりつぎ
)
申さんといふ。我のみにあらず、人も又いださず。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
「
生意気
(
なまいき
)
をいうな。
我々
(
われわれ
)
がせっかく
見
(
み
)
つけた
狐
(
きつね
)
が、この
幕
(
まく
)
の中に
逃
(
に
)
げ
込
(
こ
)
んだから
探
(
さが
)
すのだ。
早
(
はや
)
く
狐
(
きつね
)
を
出
(
だ
)
せ。」
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
屋根にはイルミネーションがつき、前面には金銀の
垂
(
た
)
れ
幕
(
まく
)
が下がり、
幾本
(
いくほん
)
もの
旗
(
はた
)
がにぎやかに立ち
並
(
なら
)
び、すべて新吉の町に
造
(
つく
)
ったものと少しも
変
(
か
)
わりませんでした。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
“幕”の意味
《名詞》
(マク)仕切りや装飾などの目的で垂らしたりめぐらしたりする長い布。
(マク)劇場などで、開演時に開き、閉演時に閉じる、舞台の前面をおおう布。
(マク)場面。場合。
(マク)物事の終わり。幕引き。
(出典:Wiktionary)
“幕”の解説
幕(まく)は、舞台あるいは映画の映写、式典や祭礼、広告や装飾などで用いられる主に吊り下げて使用する布の総称。カーテンや帳の類。
(出典:Wikipedia)
幕
常用漢字
小6
部首:⼱
13画
“幕”を含む語句
帷幕
天幕
幕間
幕府
幕下
垂幕
序幕
幕舎
終幕
映写幕
幕切
幕張
幕屋
幕合
油幕
幔幕
幕僚
陣幕
内幕
一幕
...