ひら)” の例文
寶鼎はうてい金虎きんこそんし、芝田しでん白鴉はくあやしなふ。一瓢いつぺう造化ざうくわざうし、三尺さんじやく妖邪えうじやり、逡巡しゆんじゆんさけつくることをかいし、また頃刻けいこくはなひらかしむ。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、露子つゆこは、そんなくにへいってみたいものだ。どんなにひらけているうつくしいくにであろうか。どんなにうつくしいひとのいるところであろうか。
赤い船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
またギリシヤの文明ぶんめいひらけるまへに、クリートのしまやその附近ふきんにおいて發達はつたつした文明ぶんめいも、やはり青銅器せいどうき時代じだいぞくするのでありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
わたくしやうなものには到底たうていさとりひらかれさうにりません」とおもめたやう宜道ぎだうつらまへてつた。それはかへ二三日にさんちまへことであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それからいよ/\問題もんだいおほきくひろがつて、大學人類學教室だいがくじんるゐがくけうしつで『彌生式研究會やよひしきけんきうくわい』がひらかれ、其結果そのけつくわとして、加瀬探檢かせたんけん遠足會えんそくくわいもよほされた。
羊歯しだの生えた岩の下には、深い谷底がひらいてゐる。一匹の毒竜はその谷底に、白馬しろうままたがつた聖ヂヨオヂと、もう半日も戦つてゐる。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしは急にはひらけそうにも見えない多くの家の敷地を発見したが、ある人々はそれが村からあんまり遠すぎると考えたかも知れない。
大地震だいぢしんのときは大地だいちけてはつぼみ、ひらいてはぢるものだとは、むかしからかたつたへられてもつと恐怖きようふされてゐるひとつの假想現象かそうげんしようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なにもかもそこからはじまります。御先祖ごせんぞさまがさうおもつてこんなやまなかむらひらきはじめたといふことには、おほきなちからがありますね。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
アンドレイ、エヒミチはせつなる同情どうじやうことばと、其上そのうへなみだをさへほゝらしてゐる郵便局長いうびんきよくちやうかほとをて、ひど感動かんどうしてしづかくちひらいた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おちやおあがんなせえね」おつぎは勘次かんじしりいてすこ聲高こわだかにいつた。おつたはぎりつとしぼつた手拭てぬぐひひらいてばた/\とたゝいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
茶店の腰掛で辨當をひらいて、自分は持つて來た西洋の詩集か何かを讀んで日を暮すことがあつたが、ある日新夫人をも此遊に誘ひ出した。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
〔評〕三條公の筑前に在る、或る人其の旅況りよきやう無聊むれうさつして美女を進む、公之をしりぞく。某氏えんひらいて女がくまうく、公ふつ然として去れり。
こう語勢ごせい強くいったきり、ふたたび口をひらかぬ。ふたりはしきりに気ちがいなどに打たれたりなんかされて、とてもいられないとわめく。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
流石さすがに物堅き重二郎も木竹きたけでは有りませんから、心嬉しく、おいさの顔を見ますと、つぼみの花の今なかひらかんとする処へつゆを含んだ風情ふぜい
あらたまつてのはなしとは何事なにごとだらうと、わたくしにわかにかたちあらためると、大佐たいさ吸殘すひのこりの葉卷はまきをば、まど彼方かなたげやりて、しづかにくちひらいた。
機会きかいわたくしはそうしました。するとひめはしばらく凝乎じっかんがまれ、それからようやくちびるひらかれたのでございました。——
ひらかれけるさて平石ひらいし次右衞門吉田三五郎の兩人より越前守へ言上いひあげ彼若君かのわかぎみ澤の井の死骸しがいはうむりし光照寺へ永代佛供料えいたいぶつくれうとして十八石の御朱印ごしゆいん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
桜町さくらまち殿との最早もはや寝処しんじより給ひしころか。さらずは燈火ともしびのもとに書物をやひらき給ふ。らずは机の上に紙をべて、静かに筆をや動かし給ふ。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
兒玉こだま先程來さきほどらいおほくちひらかず、微笑びせうして人々ひと/″\氣焔きえんきいたが、いま突然とつぜん出身しゆつしん學校がくかうはれたので、一寸ちよつとくちひらなかつたのである。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此時このときいままでなに備忘録ノートブツクいそがしさうにいてられた王樣わうさまが、『だまれ!』とさけんで、やがて御所持ごしよぢ書物しよもつをおひらきになり
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
湖のへりはそこから左にひらけて人家がなくなり、傾斜のある畑が丘の方へ続いていた。黒いその丘ははるかの前にくずれて湖の中へ出っぱって見えた。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そんなことを考えて、フッと目をひらきますと、鼻の先に犬の顔が見えました。一匹の犬がクンクン言いながら一郎君にすりよっているのです。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
てんでん、こんなことを口々くちぐちにわいわいいながら、またおてらえんの下で会議かいぎひらきました。けれどもべつだんわったいい知恵ちえも出ません。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
くらがりの海のものおそろしさも、衰弱のきよくとなれる神経を刺すこと多く、はてはもとの𤍠湯の中に死なずして目をひらうをとなり申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此日一行は沼田ぬまたより湯檜會に着し、夜大に会議をひらきて進路しんろす、議二派にわかる、一は国境論こくけうろんにして一は水源論すゐげんろんなり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
このうたつくりかへて、べつかはつた領分りようぶんひらいたものがあります。それは明治めいじになつてんだ京都きようと蓮月れんげつといふあまさく
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
既に交通こうつうみちひらけ居たりとすれば、異部落相互の間にも往來わうらいりしと考ふるを得べし。此事の確証かくせう遺物中ゐぶつちうより發見さるるなり。一例を擧げんか。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
私が江戸に来たその翌年、すなわち安政六年、五国ごこく条約とうものが発布になったので、横浜はまさしくひらけたばかりの処、ソコデ私は横浜に見物にいった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
吉原よしわら出来事できごと観音様かんのんさま茶屋女ちゃやおんなうえなど、おそらくくちひらけば、一ようにおのれの物知ものしりを、すこしもはやひとかせたいとの自慢じまんからであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おかあさんはたちまち本棚ほんだなのところへいって、ルーテルの説教集せっきょうしゅうをおろし、その日のお説教のところをひらいて、まどぎわのテーブルの上におきました。
そのころ習慣ならはしにしたがつて、三日みつかあひだ大宴會だいえんかいひらいて、近所きんじよひとたちや、そのほかおほくの男女なんによをよんでいはひました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
その一行八人がアルプスのマッターホルンを初めて征服したので、それから段〻とアルプスもひらけたような訳です。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何しろうでぱいのところを見せて、すくなくとも日本の洋畫界やうぐわかいに一生面せいめんひらかうといふ野心やしんであツたから、其の用意、其の苦心くしん、實にさん憺たるものであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
うんほしかゝってあるさるおそろしい宿命しゅくめいが、今宵こよひえんはしひらいて、てたわが命數めいすうを、非業無慚ひごふむざん最期さいごによって、たうとするのではないからぬ。
ひらけたる所は月光げつくわうみづの如く流れ、樹下じゆか月光げつくわうあをき雨の如くに漏りぬ。へして、木蔭をぐるに、灯火ともしびのかげれて、人の夜涼やれうかたるあり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
だん/\と人口じんこうがふえ、みんなの智慧ちえひらけてるにしたがつて、やうやくといふものを使つかふことをり、ものたりいたりしてべるようになり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
わたし今朝けさ急患きゅうかんがあつて往診おうしんかけました。ところがきにもかえりにも、老人ろうじんうちもんが五すんほどひらきかかつていたから、へんなことだとおもつたのです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
そして格子戸を開けて、ひしゃげた帽子を拾おうとしたら、不思議にも格子戸がひとりでに音もなくひらいて、帽子がひょいと往来おうらいの方へころがりだしました。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
何分なんぷんつた。突然とつぜん一人ひとり兵士へいしわたしからだひだりからたふれかかつた。わたしははつとしてひらいた。その瞬間しゆんかんわたしひだりほほなにかにやとほどげられた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
鏡に映つた兒どもの、つらには凄いほど眞白まつしろ白粉おしろひつてあつた、まつげのみ黒くパツチリとひらいたふたつの眼の底から恐怖おそれすくんだ瞳が生眞面目きまじめ震慄わなないてゐた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
だれかが自分をぶようなので、王子はふとひらきました。見ると、すぐ前に一人の老人ろうじんが立っていました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「運転手の過失もありますが、どうも此方このかたが自分で扉を、開けたやうな形跡もあるのです。扉さへひらかなかつたら、死ぬやうなことはなかつたと思ひます。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼女かのぢよはレースいと編物あみものなかいろめたをつと寫眞しやしんながめた。あたかもそのくちびるが、感謝かんしやいたはりの言葉ことばによつてひらかれるのをまもるやうに、彼女かのぢよこゝろをごつてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
わし連の馬の蹄は、丈夫な木造の刎橋はねばしの上に前よりも声高く鳴りひゞいて、二人はやがて二つの巨大な塔の間に口をひらいた大きな穹窿形の拱廊に馬をすゝめた。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
三つも投げて、両手をひらいて見せると、彼は納得なっとくして、三個ながら口にくわえて、芝生に行ってゆる/\食うのが癖であった。彼は浮浪の癖が中々けなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
左には広きひらあり。右にも同じ戸ありて寝間ねまに通じ、このぶんは緑の天鵞絨びろうど垂布たれぎぬにて覆いあり。窓にそいて左のかたに為事机あり。その手前に肱突ひじつき椅子いすあり。
ガドルフはしゃがんでくらやみの背嚢をつかみ、手探てさぐりでひらいて、小さな器械きかいたぐいにさわってみました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あんまり兼の笑い顔が恐ろしかったので……ひたい向疵むこうきずまでが左右にひらいて笑ったように見えたので……。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
容易ようい胸隔きようかくひらかぬ日本人にほんじん容易ようい胸隔きようかくつる日本人にほんじんそろ失望しつぼうさうならざるなしと、かつ内村うちむら先生申されそろしか小生せうせい日本人にほんじんそろこばまざるがゆゑ此言このげんそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)