くも)” の例文
なつになると、しろくも屋根やねうえながれました。おんなは、ときどき、それらのうつりかわる自然しぜんたいして、ぼんやりながめましたが
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて大きなつめでひっかくようなおとがするとおもうと、はじめくろくもおもわれていたものがきゅうおそろしいけもののかたちになって
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
上杉うへすぎ隣家となり何宗なにしうかの御梵刹おんてらさまにて寺内じない廣々ひろ/\もゝさくらいろ/\うゑわたしたれば、此方こなたの二かいよりおろすにくも棚曳たなび天上界てんじやうかい
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はたして、まもなくくもれまから虹のような陽がこぼれて来た。——見れば輿も人馬の列も、粉雪のような白いに染まっていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いろは以前よりうすかつた。くもから、落ちてる光線は、下界げかい湿しめのために、半ば反射力を失つた様に柔らかに見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
火入ひいれにべた、一せんがおさだまりの、あの、萌黄色もえぎいろ蚊遣香かやりかうほそけむりは、脈々みやく/\として、そして、そらくもとは反對はんたいはうなびく。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
風がはげしくなり、足下あしもとくもがむくむくとき立って、はるか下の方にかみなりの音までひびきました。王子はそっと下の方をのぞいてみました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
こんなに、くっきり、空が二つにわかれて、一方には少しもくもがなく、一方は厚い雲におおわれるということが、あるものでしょうか。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ベンヺ おゝ、ロミオ/\、マーキューシオーはおにゃったぞよ! あの勇敢ゆうかんたましひ氣短きみじか此世このよいとうて、くもうへのぼってしまうた。
なかにはえだこしかけて、うえから水草みずくさのぞくのもありました。猟銃りょうじゅうからあおけむりは、くらいうえくもようちのぼりました。
そのとき西にしのぎらぎらのちぢれたくものあひだから、夕陽ゆふひあかくなゝめにこけ野原のはらそゝぎ、すすきはみんなしろのやうにゆれてひかりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
百合と薔薇ばらとを取りかへて部屋へやくらさをわすれてゐると、次ぎにはおいらんさうが白と桃色もゝいろくものやうに、庭の全面ぜんめんみだれた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
じつくもつかむやうなはなしだが、まんが一もと旅亭やどや主人しゆじんんでいてると、果然くわぜん! 主人しゆじんわたくしとひみなまではせず、ポンと禿頭はげあたまたゝいて
あれあれうす鼠色ねずみいろおとこ竜神りゅうじんさんが、おおきなくちけて、二ほんつのてて、くもなかをひどいいきおいけてかれる……。
このやくもたつなども、ふる書物しよもつ説明せつめいにさへ、いくすぢものくもかこんだところから、いはれたものとしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それからはこのやま不死ふしやまぶようになつて、そのくすりけむりはいまでもくもなかのぼるといふことであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
すごほどえたよるそらいそがしげなくもつきんですぐうしろし/\はしつた。つき反對はんたいげつゝはしつた。秋風あきかぜだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
越しかたかえりみれば、眼下がんかに展開する十勝の大平野だいへいやは、蒼茫そうぼうとして唯くもの如くまた海の如く、かえって北東の方を望めば、黛色たいしょく連山れんざん波濤はとうの如く起伏して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
地気上騰のぼること多ければてん灰色ねずみいろをなして雪ならんとす。くもりたるくも冷際れいさいいたまづ雨となる。此時冷際の寒気雨をこほらすべきちからたらざるゆゑ花粉くわふんしてくだす、これゆき也。
(七〇)同明どうめい相照あひてらし、(七一)同類どうるゐ相求あひもとむ。くもりようしたがひ、かぜとらしたがふ。(七二)聖人せいじんおこつて萬物ばんぶつる。
〔譯〕論語ろんごかうず、是れ慈父じふの子を教ふる意思いし孟子まうしを講ず、是れ伯兄のをしふる意思いし大學だいがくを講ず、あみかうに在る如し。中庸ちゆうようを講ず、くもしうを出づる如し。
すると、空を流れるくもきぬのようにつややかなブナのみきこまかく入りくんだ枝、ブナの落ち葉をおおっているシモ、こうしたすべてのものがさっと赤くなりました。
それが火口かこうからあがつて形状けいじようは、西洋料理せいようりようり使つかはれるはなてゐるから菜花状さいかじようくもばれる。これには鎔岩ようがん粉末ふんまつくははつてゐるから多少たしよう暗黒色あんこくしよくえる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
入梅つゆになッてからは毎日まいにち雨降あめふりそれやつ昨日きのふあがツて、庭柘榴ざくろの花に今朝けさめづらしくあさひ紅々あか/\したとおもツたもつか午後ごゝになると、また灰色はいいろくもそら一面いちめんひろがり
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あしひきの山河やまがはるなべに弓月ゆつきたけくもわたる 〔巻七・一〇八八〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
〔ヱヴェレストはおもつたよりとほいな〕と独言ひとりごとしながら四辺あたり見廻みまはすと、うすひかりうつくしくあやしくみなぎつて、夕暮ゆふぐれちかくなつたのだらう。下界したても、くもきりでまるでうみのやうだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
芦の葉先がくものようにもやい、茫々とした池の面が、薄光りながら鱗波うろこなみをたてている。
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
二十三年の今まで絶えておぼえなき異樣の感情くもの如く湧き出でて、例へばなぎさを閉ぢし池の氷の春風はるかぜけたらんが如く、若しくは滿身の力をはりつめし手足てあし節々ふし/″\一時にゆるみしが如く
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
雨は、羅生門らしやうもんをつゝんで、とほくから、ざあつと云ふ音をあつめて來る。夕闇は次第に空を低くして、見上みあげると、門の屋根が、斜につき出したいらかさきに、重たくうすくらくもを支へてゐる。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
するとなかから、くもちのぼり、そのくも真中まんなかで、ぱっとったとおもうと、なかから、うつくしいとりして、こえをしてうたいながら、中空なかぞらたかいのぼりました。
ゴットフリートはゆっくり煙草たばこをすい、クリストフは夕闇ゆうやみこわくて、小父おじに手をひかれていた。彼等かれらはよく草の上にすわった。ゴットフリートはしばらくだまってたあとで、ほしくもはなしをしてくれた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
りがたやこゝろくももはれわたりうきよのくもはとにもかくにも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
くもしろくいゆきわたらふ夏の空松蝉まつぜみの声ぞここにしづけき
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やあ くものやうに たくさん火星人がとんでゐる
總崩そうくづれになつたくも斥候隊せきこうたいはうのぼつてゆくと
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
くもむらがり立つ出雲いづものタケルが腰にした大刀は
次第しだいつかれ、くもよわりてうすき、いま
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くもがどんどん空の上にかたまって出て来た。
同時どうじ不安ふあんくもますまくらくなつてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
くもたるとみなにせんあはれ
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
つきくもおおわれたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
くもみねの句を比較せんに
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
八百重やほへくもばずとも
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
くもわかれてりし
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
くもひだほのかににば
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
殘れるよるくもめて
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
まつ白いくも
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
つぐみが、どこからかやってきて、このえだまりました。は、からすのいったことをわすれずに、さっそくくもはなしをしました。
山の上の木と雲の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)