)” の例文
そして、大空おおぞらからもれるはるひかりけていましたが、いつまでもひとところに、いっしょにいられるうえではなかったのです。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
の一のかはをがれたために可惜をしや、おはるむすめ繼母まゝはゝのために手酷てひど折檻せつかんけて、身投みなげをしたが、それのちこと
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
唐縮緬とうちりめんの袖には咲き乱れた春の花車が染め出されている。嬢やはと聞くと、さっきから昼寝と答えたきり、元の無言に帰る。
枯菊の影 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ことしは芳之助よしのすけもはや廿歳はたちいま一兩年いちりやうねんたるうへおほやけつまとよびつまばるゝぞとおもへばうれしさにむねをどりて友達ともだちなぶりごともはづかしく
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
また床次君のやうに自分が偉人らしい言草いひぐさも気に喰はぬ、不肖ふせうながら朝夕南洲翁にいてゐたから、翁の面目めんもくはよく知つてゐるが
かたがたわたくしとしてはわざとさしひかえてかげから見守みまもってだけにとどめました。結局けっきょくそうしたほうがあなたのめになったのです……。
その驚き方は、長男の庄次郎が板新道いたじんみちの女にをやつしているのを発見した時の場合などとは、比較にならないほど大きかった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ロレ いや、そのことば鋭鋒きっさきふせ甲胄よろひおまさう。逆境ぎゃくきゃうあまちゝぢゃと哲學てつがくこそはひとこゝろなぐさぐさぢゃ、よしや追放つゐはうとならうと。
いまかならずしも(六四)其身そのみこれもらさざるも、しかも((説者ノ))((適〻))かくところことおよばんに、かくごとものあやふし。
そこには着飾った森おじ——ではない森虎造が落ちつかぬ顔をしながら、強いてになって威厳を保とうとしているのだった。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なになんでも望遠鏡ばうゑんきやうのやうにまれてはたまらない!ちよツはじめさへわかればもうめたものだ』此頃このごろではにふりかゝる種々いろ/\難事なんじ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それでいのだ、わたしに後の心配はすこしもない。とお雪は叫びたかった。四万円の代金しろきんで姉さんは加藤楼の女将おかみになっている。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「わたくしは、におぼえのないつみをいいわたされたのでございます。わたくしは、いつなんどきも、忠義をつくしてまいりました。」
十まではおろか一生いっしょうでも、この子のそばにいたいのですけれど、わたしはもう二人間にんげん世界せかいかえることのできないになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
身にまと何樣どのやうなる出世もなるはずを娘に別れ孫を失ひ寄邊よるべなぎさ捨小舟すてこぶねのかゝる島さへなきぞとわつばかりに泣沈なきしづめり寶澤は默然もくねんと此長物語を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
騎兵大隊長きへいだいたいちやう夫人ふじん變者かはりものがあつて、いつでも士官しくわんふくけて、よるになると一人ひとりで、カフカズの山中さんちゆう案内者あんないしやもなく騎馬きばく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
は母のふところにあり、母の袖かしらおほひたればに雪をばふれざるゆゑにや凍死こゞえしなず、両親ふたおや死骸しがいの中にて又こゑをあげてなきけり。
勘次かんじころからおしなのいふなりにるのであつた。二人ふたりとほくはけないので、隣村となりむら知合しりあひとうじた。兩方りやうはう姻戚みよりさわした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なにとなく薄淋うすさびしくなつたなみおもながめながら、むねかゞみくと、今度こんど航海かうかいはじめから、不運ふうんかみ我等われら跟尾つきまとつてつたやうだ。
かれこのはかまけたをとこうへに、いま何事なにごとおこりつゝあるだらうかを想像さうざうしたのである。けれどもおくはしんとしてしづまりかへつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、一休いっきゅうさんをんだ伊予局いよのつぼねは、后宮きさきのみや嫉妬しっとのため、危険きけんがせまったので、自分じぶんから皇居こうきょをのがれることになりました。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
人々ひとびと御主おんあるじよ、われをもたすたまへ。」此世このよ御扶おんたすけ蒼白あをじろいこのわが罪業ざいごふあがなたまはなかつた。わが甦生よみがへりまでわすれられてゐる。
その時私の指してる大小は、脇差わきざし祐定すけさだの丈夫なであったが、刀は太刀作たちづくりの細身ほそみでどうも役に立ちそうでなくて心細かった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
博士と警官二人は広いホールに逃げて、ホールに入ってくる透明人間を包囲ほういするようにがまえ、火かき棒を前に突きだして敵を待った。
そうして買収された罪状が一々明白になったにも拘らず、大道局長は依然としてになって、例の鼻眼鏡を光らしていた。
さきの勞働者の唄ね、きみは何うおもふからないけれど、あれを聽いてゐて、僕はにつまされて何んだかきたくなるやうな氣がしたよ。」
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼は始めて空想の夢をさまして、及ばざるぶんあきらめたりけれども、一旦金剛石ダイアモンドの強き光に焼かれたる心は幾分の知覚を失ひけんやうにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
兼吉かねきち五郎ごろうは、かわりがわり技師と花前とのぶりをやって人を笑わせた。細君が花前を気味きみわるがるのも、まったくそのころからえた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
どうかすると心にもない自分のうえばなしがはずんで、男にもたれかかるような姿態ようすを見せたが、聴くだけはそれでも熱心に聴いている浜屋が
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「これこそあ、耕平の野郎の、代金しろきんだぞ。無暗なことにあつかわれねえぞ。この金は、金として、取って置かなくちゃ。」
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
蓬頭垢面ほうとうこうめん襤褸らんるをまといこもを被り椀を手にして犬と共に人家の勝手口を徘徊して残飯を乞うもの近来漸くその跡を絶てり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
煙草屋たばこやかどったまま、つめうわさをしていたまつろうは、あわてて八五ろうくばせをすると、暖簾のれんのかげにいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
岐阜県の或る地方では以前は山の神の産衣うぶぎぬと称して長さの六七尺もあるひとの着物を献上する風があったというが、今はいかがであろうか。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
できることなら、せがれのがわりにしていただきたいところですが、せめて、一ど、あわせてはいただけないでしょうか。
御免ごめんなさい。「ハイ。「さて誠にどうもモウ此度このたび御苦労様ごくらうさまのことでございます、じつうもひやうのない貴方あなた冥加至極みやうがしごくのおうへでげすな。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
なにしろこりゃおとこだもの、きりょうなんかたいしたことじゃないさ。いまつよくなって、しっかり自分じぶんをまもるようになる。」
「むりに宮仕みやづかへをしろとおほせられるならば、わたしえてしまひませう。あなたのおくらゐをおもらひになるのをて、わたしぬだけでございます」
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
またそのぎにはいしあはせてかんつくることをしないで、ふたとは別々べつ/\として、いしをくりいて、おほきなかんつくるように進歩しんぽしてました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
冬時とうじこのかは灌水くわんすゐおこなふには、あらかじ身體しんたいるゝに孔穴こうけつこほりやぶりてまうき、朝夕あさゆふこの孔穴こうけつぼつして灌水くわんすゐおこなふ。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
君子きみこ不審いぶかしさに母親はゝおや容子ようすをとゞめたとき彼女かのぢよ亡夫ばうふ寫眞しやしんまへくびれて、しづかに、顏色かほいろ青褪あをざめて、じろぎもせずをつぶつてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
これを見たものみなの毛もよだち大地もかんじて三べんふるえたと云うのだ。いま私らはこの実をとることができない。
とソフアにけてたオックスフオード出身しゆつしん紳士しんしおこしていた。其口元そのくちもとにはなんとなく嘲笑あざけりいろうかべてる。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
まちは、ふとむかしのことをかんがへると、なんとなく自分じぶんきふにいとしいものゝやうにおもはれて、そのいとしいものをかいいだくやうにをすくめた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
そうして、自分がめくらであることをよく改めて貰うかのように、顔を月下に仰向あおむけてになっているのである。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれど、いまのじぶんののふしあわせを思いだしますと、なみだがこみあげてきました。でも、しばらくたつと、またもや笑いだしてしまうのでした。
といふのは、せう代に両しんわかれた一人つ子の青木さんは、わづかなその遺産ゐさんでどうにか修学しうがくだけはましたものの、全く無財産むざいさんの上だつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そう思うた刹那、郎女の身は、大浪にうちたおされる。浪に漂う身……衣もなく、もない。抱き持った等身の白玉と一つに、水の上に照り輝くうつ
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
道翹だうげうかゞめて石疊いしだゝみうへとら足跡あしあとゆびさした。たま/\山風やまかぜまどそといてとほつて、うづたかには落葉おちばげた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
昨夜亥刻よつ半(十一時)過ぎにお篠さんが、二百両の金を持って来て、お秋の代金しろきんにこれだけ受取って来たから、これで私に身を立てろと言うんです。
小刀さすがのどたててたり、やますそいけげたり、いろいろなこともしてましたが、れずにかうしてゐるかぎり、これも自慢じまんにはなりますまい。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)