まも)” の例文
「よく、ご主人しゅじんのいいつけをまもって、辛棒しんぼうするのだよ。」と、おかあさんは、いざゆくというときに、なみだをふいて、いいきかせました。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
むまつのなく鹿しかたてがみなくいぬにやんいてじやれずねこはワンとえてまもらず、しかれどもおのづかむまなり鹿しかなりいぬなりねこなるをさまたけず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
貴樣達きさまたちはあのとき中根なかね行爲かうゐわらつたかもれん。しかし、中根なかねまさしく軍人ぐんじんの、歩兵ほへい本分ほんぶんまもつたものだ。えらい、えらい‥‥」
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
左樣さやうわたくしきみ確信くわくしんします、きみ我等われら同志どうしとして、永久えいきゆう秘密ひみつまもこと約束やくそくたまはゞ、誠心せいしんより三度みたびてんちかはれよ。
じいやのほうでは一そうったもので、ただもううれしくてたまらぬとった面持おももちで、だまって私達わたくしたち様子ようすまもっているのでした。
ほんとに藝術をまもるものと大衆との握手あくしゆとみで買ふ人たちだけが不自由する——そんな劇場の一ツや二ツあつてもよい筈だ。ぜひ持ちたい。
むぐらの吐息 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「いいつけをまもって、すなおにはたらく者へは、後日ごじつ、じゅうぶんな褒美ほうびをくれるし、とやこう申すやつはってすてるからさよう心得こころえろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為朝ためともれいの二十八をつれて西にしもんまもっておりますと、そこへ清盛きよもり重盛しげもり大将たいしょうにして平家へいけ軍勢ぐんぜいがおしよせてました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それでもおまへさゝづるにしきまもぶくろといふやうな證據しようこいのかえ、なに手懸てがゝりはりさうなものだねとおきやうふをして
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くつも、靴下くつしたも、ふくらはぎ真黒まっくろです。緑の草原くさはらせいが、いいつけをまもらない四人の者に、こんなどろのゲートルをはかせたのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
豆州づしう御勝手ごかつて不如意ふによいなるは、一朝一夕いつてういつせきのことにはあらじを、よしや目覺めざましき改革かいかく出來できずとも、たれなんぢ過失あやまちとははじ、たゞまことをだにまもらばなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにもかもが、ふだんどおりだったら、セーサルもこの言いつけをよくまもって、子どもをあぶないところに近よらせるようなことはしなかったでしょう。
食卓ではきびしい摂生法をまもっていた。理想的な白粉おしろいののりぐあいを害するかもしれないような食物は、いっさい口にしないで、水ばかり飲んでいた。
カピ長 モンタギューとてもみぎ同樣どうやう懲罰おとがめにて謹愼きんしん仰附おほせつけられた。したが、吾々われ/\老人らうじんっては、平和へいわまもることはさまで困難むづかしうはあるまいでござる。
墓の前の柱にちやんと「御用のおかたにはおまもり石をさし上げます」と書いた、小さい紙札もりつけてある。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まもる事ふくべの如くと又口はわざはひのかどしたは禍ひのと言る事金言きんげんなるかな瀬戸物屋忠兵衞はからず八ヶ年過去すぎさりたる事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いはく、『西河せいがまもりて、しんへいあへひがしむかはず、かんてう(九二)賓從ひんじうするは、いづれぞ』と。
寺の門内には仮店かりみせありて物を売り、ひとぐんをなす。芝居にはかりに戸板をあつめかこひたる入り口あり、こゝにまもものありて一人まへ何程とあたひとる、これ屋根普請やねふしん勧化くわんけなり。
繭玉まゆだまのかたちを、しんこでつくつてそれをたけえだにさげて、お飼蠶かいこさまをまもつてくださるかみさまをもまつりました。病氣びやうきたふれたうまのためには、馬頭觀音ばとうくわんおんまつりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
實際、私は、病氣にでもなつてしまひさうな失望の氣持ちを、經驗した。しかし、心をとりなほし、自分のまもるべきことを思ひ浮べて、直ぐに私は、心を鎭めた。
そしてそのまもり神を金屋子さんと呼んでいるのであろう。後世は鋳物師いもじの事を多く金屋と呼んでいる。
稽古してもらっていると「まもぶくろは遺品ぞと」というくだりがどうしてもうまく語れないり直し遣り直して何遍なんべん繰り返してもよいと云ってくれない師匠団平は蚊帳かや
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大尉を驚かせたのは、米艦隊の最上さいじょうの空に、まもがみのように端然たんぜん游泳ゆうえいをつづけていたメーコン号が、一団の火焔となって、焼け墜ちてゆくのを発見したことだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うしなはれゆく感覚かんかく懸命けんめいたゝかひながら、いたるまで、まもとほしたたうをとぎれ/\にんだ
人々は半ば椅子より立ちて「いみじきたわぶれかな、」と一人がいへば、「われらは継子ままこなるぞくやしき、」とほかの一人いひて笑ふを、よそなる卓よりも、皆興ありげにうちまもりぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この工合ぐあいのいいかくに一家鴨あひるがそのときについてたまごがかえるのをまもっていました。
よいかしらであったとおもっておりました。よいかしらだから、最後さいごにかしらが「盗人ぬすびとにはもうけっしてなるな。」といったことばを、まもらなければならないとおもっておりました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あたしの留守るすにも、ここへあしれたが最後さいご、おっかさんのはつぶれましょうと、きつくいわれたそれからこっち、なになにやらわからないままに、おせんのたのみをかたまもって、おきし
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
うちではみんなもうただろう。祖母さんはぼくにおまもりをしてくれた。さよなら、北上山地、北上川、岩手県の夜の風、今武田先生がまわってみんなのせき工合ぐあいや何かを見て行った。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ふのは、おぢさんにまへ約束やくそくをきつとまもらすためには、きみたちはこのほんをよくんで、そしてそのうちの一ばんきなうたとか、きらひなうたとか、このうたはこんなとき使つかつたらどうだつたとか
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
この刀子とうすをとこばかりでなく、をんなひともおまもりにつてゐたとおもはれますが、そのさやでつくつたものゝほかに、のついたかはあはせてつくつたものが、一般いつぱんおこなはれてゐたようです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
戸倉村よりは他の物品を此処にち来り以て之を交易こうえきし、其間あへて人の之を媒介ばいかいするものなく、只正直と約束やくそくとをまもりて貿易ばうえきするのみと、此に於て前日来より「あるこーる」にかつしたる一行は
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かれ自分じぶん御米およね生命らいふを、毎年まいとし平凡へいぼん波瀾はらんのうちにおく以上いじやうに、面前まのあたりたいした希望きばうつてゐなかつた。かうしていそがしい大晦日おほみそかに、一人ひとりいへまもしづかさが、丁度ちやうどかれ平生へいぜい現實げんじつ代表だいへうしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もはやこんな老婆ろうばになりましたので、もとよりご奉公ほうこうにはえられませんが、ただ私がどこまでもおおせをまもっておりましたことだけを申しあげたいと存じましてわざわざおうかがいいたしました
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
成程なるほどわたくしじゆくには規則きそくまをしても何時なんどきる、おきるといふだけで、其外そのほかこれまもれ、これをおこなへといふやうな命令的めいれいてきことさらまをさないが、かはり、何事なにごと自營獨立じえいどくりつ精神せいしんめてつてもらひたい。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
君が業務なりはひいそがしからむ然れども張りつむる心をまもり居らむか
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
われとしたけ老いし父母まもる事のさびしとは思へ白梅の花
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いちど言ったことは、かならずまもってもらいたいね
きんまもりて愚鈍者ぐどんじや
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
まもがみ
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自然界しぜんかい法則ほうそくがあれば、人間界にんげんかいにも法則ほうそくがある。どのほしても、ほこらしげに、またやすらけくかがやくのは、天体てんたい法則ほうそくまもるからだ。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うちに垣なく、ひとに病があるやうなもので、まもらせれば盜人もからめとるであらうし、關節の病も早く治せば命は長いであらう。
のこったものは殿とののご寝所しんじょのほうをまもれ、もう木戸きど多門たもんかためにはじゅうぶん人数がそろったから、よも、やぶれをとるおそれはあるまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実高夫婦さねたかふうふはさっそく長谷はせ観音かんのんさまにおれいまいりをして、こんどまれたひいさんの一生いっしょうを、ほとけさまにまもっていただくようにおたのみしてかえってました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
渠等かれらつう原則げんそくまもりて俗物ぞくぶつ斥罵せきばするにもかかはらず。)然しながら縦令たとひ俗物ぞくぶつ渇仰かつがうせらる〻といへども路傍みちばた道祖神だうろくじんの如く渇仰かつがうせらる〻にあらす
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
ゆふおはりての宵々よひ/\いゑいでては御寺參おんてらまい殊勝しゆしように、觀音くわんをんさまには合掌がつしようを申て、戀人こひびとのゆくすゑまもたまへと、おこゝろざしのほどいつまでもえねばいが。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左舷さげん紅燈こうとう海上法かいじやうはふまもり、停泊とゞまれるふね大鳥おほとり波上はじやうねむるにて、丁度ちやうどゆめにでもありさう景色けしき! わたくし此樣こん風景ふうけい今迄いまゝで幾回いくくわいともなくながめたが
しかるに、中根なかね危急ききふわすれてじうはなさず、くまでじうまもらうとした。あの行爲かうゐ、あの精神せいしんまさ軍人精神ぐんじんせいしん立派りつぱ發揚はつやうしたもので、まこと軍人ぐんじんかがみである。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
其方儀吟味相遂あひとげ候所いさゝかも惡事是なく且亡父の遺言ゆゐごんまもり不埓の伯父を呼戻よびもどし養ひ候而已ならず其後大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こゝの障子しやうじは、をさないものの夜更よふかしをまもつて、さむいに一まいけたまゝ、あられなかにも、ちゝ祖母そぼなさけゆめは、紙一重かみひとへさへぎるさへなく、つくゑのあたりにかよつたのであつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)