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邊
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あたり
ふりがな文庫
“
邊
(
あたり
)” の例文
新字:
辺
彼
(
かれ
)
は
苦
(
くる
)
しさに
胸
(
むね
)
の
邊
(
あたり
)
を
掻
(
か
)
き
毟
(
むし
)
り、
病院服
(
びやうゐんふく
)
も、シヤツも、ぴり/\と
引裂
(
ひきさ
)
くので
有
(
あ
)
つたが、
施
(
やが
)
て
其儘
(
そのまゝ
)
氣絶
(
きぜつ
)
して
寐臺
(
ねだい
)
の
上
(
うへ
)
に
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
さてこの
邊
(
あたり
)
は夜たりがたく晝たりがたき處なれば、我は遠く望み見るをえざりしかど、はげしき
雷
(
いかづち
)
をも
微
(
かすか
)
ならしむるばかりに 一〇—
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
ヱルレトリの少女の群は、頭に環かざりを戴き、美しき肩、圓き乳房の
露
(
あらは
)
るゝやうに着たる衣に、襟の
邊
(
あたり
)
より、
彩
(
いろど
)
りたる
巾
(
きれ
)
を下げたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
……
川
(
かは
)
も
此
(
こ
)
の
邊
(
あたり
)
は
最
(
も
)
う
大溝
(
おほどぶ
)
で、
泥
(
どろ
)
が
高
(
たか
)
く、
水
(
みづ
)
が
細
(
ほそ
)
い。
剩
(
あまつさ
)
へ、
棒切
(
ぼうぎれ
)
、
竹
(
たけ
)
の
皮
(
かは
)
などが、ぐしや/\と
支
(
つか
)
へて、
空屋
(
あきや
)
の
前
(
まへ
)
は
殊更
(
ことさら
)
に
其
(
そ
)
の
流
(
ながれ
)
も
淀
(
よど
)
む。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「何んの禿げたるもんか、入れ毛なんぞしてえへん。」と、千代松は頭の祕密を押し隱すやうに、右の手で
月代
(
さかやき
)
の
邊
(
あたり
)
を押へた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
▼ もっと見る
瀧口入道、都に來て見れば、思ひの外なる大火にて、六波羅、
池殿
(
いけどの
)
、西八條の
邊
(
あたり
)
より
京白川
(
きやうしらかは
)
四五萬の
在家
(
ざいけ
)
、
方
(
まさ
)
に煙の中にあり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
父
(
ちゝ
)
なるものは
蚊柱
(
かばしら
)
の
立
(
たつ
)
てる
厩
(
うまや
)
の
側
(
そば
)
でぶる/\と
鬣
(
たてがみ
)
を
撼
(
ゆる
)
がしながら、ぱさり/\と
尾
(
を
)
で
臀
(
しり
)
の
邊
(
あたり
)
を
叩
(
たゝ
)
いて
居
(
ゐ
)
る
馬
(
うま
)
に
秣
(
まぐさ
)
を
與
(
あた
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
圭一郎は又しても、病み疲れた獸のやうな熱い息吹を吐き、鈍い目蓋を開いて光の消えた瞳を据ゑ、今更のやうに
邊
(
あたり
)
を四顧するのであつた。……
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
時々
(
とき/″\
)
寒
(
さむ
)
い
風
(
かぜ
)
が
來
(
き
)
て、
後
(
うしろ
)
から
小六
(
ころく
)
の
坊主頭
(
ばうずあたま
)
と
襟
(
えり
)
の
邊
(
あたり
)
を
襲
(
おそ
)
つた。
其度
(
そのたび
)
に
彼
(
かれ
)
は
吹
(
ふ
)
き
曝
(
さら
)
しの
縁
(
えん
)
から六
疊
(
でふ
)
の
中
(
なか
)
へ
引
(
ひ
)
つ
込
(
こ
)
みたくなつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
それをも顧みずに猶進めば、果して町の
盡頭
(
はづれ
)
とも覺しき
邊
(
あたり
)
の右側に、高く石垣を築きおこしたる
嚴
(
いかめ
)
しき
門構
(
もんがまへ
)
の家屋あり。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
尋ぬるに源内は先内に入り我御仕置場にて首を切れしときハツと
思
(
おも
)
ひしばかりにて
其後
(
そののち
)
は何も知ず
頓
(
やが
)
て氣が付て其
邊
(
あたり
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
『論語』を見ると、孔子その人を
目
(
ま
)
の
邊
(
あたり
)
に見る樣な心地がせられ、殊にその郷黨篇には、飮食より坐臥に至る迄、孔子の生活状態を描き出して殆ど遺憾がない。
支那史上の偉人(孔子と孔明)
(旧字旧仮名)
/
桑原隲蔵
(著)
青々とした裾野につゞく十勝の大平野を何處までもずうと走つて、地と空と融け合ふ
邊
(
あたり
)
にとまつた。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
後の障子が颯と開いて、腰の
邊
(
あたり
)
に細い紐を卷いたなり、帶も締めず、垢臭い木綿の細かい縞の袷をダラシなく着、胸は露はに、抱いた子に乳房
啣
(
ふくま
)
せ乍ら、靜々と立現れた
化生
(
けしやう
)
の者がある。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
下足を受取り乍らも恍惚として心は小光の
邊
(
あたり
)
に飛ぶといつたやうな心持でぼんやりして表に出た。先刻細君が「塀和さん行き度くないの?」と言つたのもあまり強く頭には響かなかつた。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
たゞ
其
(
その
)
白
(
しろ
)
い
顏
(
かほ
)
の
邊
(
あたり
)
から
肩先
(
かたさき
)
へかけて
楊
(
やなぎ
)
を
洩
(
も
)
れた
薄
(
うす
)
い
光
(
ひかり
)
が
穩
(
おだや
)
かに
落
(
お
)
ちて
居
(
ゐ
)
る。
画の悲み
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「どうせ變死と知れずには濟まぬと思つたのさ、知れると、この
邊
(
あたり
)
の事だから、俺が行くに決つてゐるぢやないか。どうせ平次の手に掛かるものなら、此方から訴へ出て好い子にならうといふ
魂膽
(
こんたん
)
さ」
銭形平次捕物控:097 許婚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
まいまいつむりの
脆
(
もろ
)
い
殼
(
から
)
の
邊
(
あたり
)
へ
メランコリア
(旧字旧仮名)
/
三富朽葉
(著)
紅の上衣を頂より被りて、一人の
穉兒
(
をさなご
)
には乳房を
啣
(
ふく
)
ませ、一人の稍〻年たけたる子をば、腰の
邊
(
あたり
)
なる
籠
(
こ
)
の中に睡らせたる女あり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
從者
(
ずさ
)
は近き
邊
(
あたり
)
の院に立寄りて何事か物問ふ樣子なりしが、やがて元の所に立歸り、何やら主人に
耳語
(
さゝや
)
けば、
點頭
(
うなづ
)
きて尚も山深く上り行きぬ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
野鼠
(
のねずみ
)
を
退治
(
たいぢ
)
るものは
狸
(
たぬき
)
と
聞
(
き
)
く。……
本所
(
ほんじよ
)
、
麻布
(
あざぶ
)
に
續
(
つゞ
)
いては、この
邊
(
あたり
)
が
場所
(
ばしよ
)
だつたと
言
(
い
)
ふのに、あゝ、その
狸
(
たぬき
)
の
影
(
かげ
)
もない。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しかして巡禮が、その誓願をかけし
神殿
(
みや
)
の中にて
邊
(
あたり
)
を見つゝ心を慰め、はやその
状
(
さま
)
を人に傳へんと望む如く 四三—四五
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
病室では千代松が道臣に默つて、京子の口の
邊
(
あたり
)
に附いてゐる汚れを拭き取つて見ると、何か知ら青い色をしてゐるので、立つて元の物置を調べて見た。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
盜
(
ぬす
)
み取んと
彼曲者
(
かのくせもの
)
は半四郎が寢たる
夜着
(
よぎ
)
の
脇
(
わき
)
より
徐々
(
そろ/\
)
と腹の
邊
(
あたり
)
へ手を
差入
(
さしいれ
)
ければ後藤は目を
覺
(
さま
)
しはて
奴
(
きや
)
つめが來りしぞと
狸寢入
(
たぬきねいり
)
をして
密
(
ひそ
)
かに
傍
(
そば
)
の夜具を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
春
(
はる
)
になつて
雪
(
ゆき
)
も
次第
(
しだい
)
に
解
(
と
)
けた
或日
(
あるひ
)
、
墓場
(
はかば
)
の
側
(
そば
)
の
崖
(
がけ
)
の
邊
(
あたり
)
に、
腐爛
(
ふらん
)
した二つの
死骸
(
しがい
)
が
見付
(
みつ
)
かつた。
其
(
そ
)
れは
老婆
(
らうば
)
と、
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
とで、
故殺
(
こさつ
)
の
形跡
(
けいせき
)
さへ
有
(
あ
)
るのであつた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
宗助
(
そうすけ
)
はそれから
懷手
(
ふところで
)
をして、
玄關
(
げんくわん
)
だの
門
(
もん
)
の
邊
(
あたり
)
を
能
(
よ
)
く
見廻
(
みまは
)
つたが、
何處
(
どこ
)
にも
平常
(
へいじやう
)
と
異
(
こと
)
なる
點
(
てん
)
は
認
(
みと
)
められなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
女房
(
にようばう
)
は
默
(
だま
)
つて
口
(
くち
)
の
邊
(
あたり
)
に
冷
(
ひやゝ
)
かな
笑
(
ゑみ
)
を
含
(
ふく
)
んで
膝
(
ひざ
)
をそつと
動
(
うご
)
かしてぐつすり
眠
(
ねむ
)
りこけた
自分
(
じぶん
)
の
子
(
こ
)
を
見
(
み
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
汽車の通ふセバツトの鐵橋の
邊
(
あたり
)
に來ると、また一しきりざあと雨が來た。鐵橋の蔭に舟を寄せて雨宿りする間もなく、雨は最早過ぎて了うた。此邊は沼の中でもやゝ深い。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
而して最初の者の爲す事をばこれに續く者皆傚ひて爲し、かの者止まれば、聲なく
思慮
(
こゝろ
)
なくその何故なるをも知らで、これが
邊
(
あたり
)
に押合ふ如く 八二—八四
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
寢衣
(
ねまき
)
も何もはだけ放題にはだけて、
太腿
(
ふともゝ
)
までもあらはに、口の
邊
(
あたり
)
には、
鐵漿
(
おはぐろ
)
のやうなものがベタ/\附いてゐる。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
通
(
とほり
)
がかりに
見
(
み
)
た。
此
(
こ
)
の
山椒
(
さんせう
)
を、
近頃
(
ちかごろ
)
、
同
(
おな
)
じ
此
(
こ
)
の
邊
(
あたり
)
に
住
(
すま
)
はるゝ、
上野
(
うへの
)
の
美術學校出
(
びじゆつがくかうで
)
の
少
(
わか
)
い
人
(
ひと
)
から
手土産
(
てみやげ
)
に
貰
(
もら
)
つた。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
延
(
の
)
び
掛
(
か
)
かつた
髯
(
ひげ
)
が、
頬
(
ほゝ
)
の
邊
(
あたり
)
で
手
(
て
)
を
刺
(
さ
)
す
樣
(
やう
)
にざら/\したが、
今
(
いま
)
の
宗助
(
そうすけ
)
にはそれを
苦
(
く
)
にする
程
(
ほど
)
の
餘裕
(
よゆう
)
はなかつた。
彼
(
かれ
)
はしきりに
宜道
(
ぎだう
)
と
自分
(
じぶん
)
とを
對照
(
たいせう
)
して
考
(
かんが
)
へた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
御身の茲に來られし
途
(
みち
)
すがら、
溪川
(
たにがは
)
のある
邊
(
あたり
)
より、山の方にわびしげなる
一棟
(
ひとむね
)
の僧庵を見給ひしならん。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
暫くこの
邊
(
あたり
)
を
漫歩
(
そゞろあるき
)
して、汝が目の赤きを風に吹き消させ、さて共にマレツチイ夫人の許に往かん。夫人は汝と共に笑ひ共に泣きて、汝が厭ふをも知らぬなるべし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
引連
(
ひきつれ
)
出
(
いで
)
はしたれど
騷
(
さわが
)
しき所は素より好まねば
王子
(
わうじ
)
邊
(
あたり
)
へ立越て
楓
(
かへで
)
の
若葉
(
わかば
)
若緑
(
わかみどり
)
を
眺
(
ながめ
)
んにも又上野より
日暮
(
ひぐらし
)
里などへ掛る時は
渠
(
かれ
)
醉人の多くして
風雅
(
ふうが
)
を妨げ
面白
(
おもしろ
)
からねば音羽通を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
來年
(
らいねん
)
邊
(
あたり
)
はカフカズへ
出掛
(
でか
)
けやうぢや
有
(
あ
)
りませんか、
乘馬
(
じようば
)
で
以
(
もつ
)
てからに
彼方此方
(
あちこち
)
を
驅廻
(
かけまは
)
りませう。
而
(
さう
)
してカフカズから
歸
(
かへ
)
つたら、
此度
(
こんど
)
は
結婚
(
けつこん
)
の
祝宴
(
しゆくえん
)
でも
擧
(
あ
)
げるやうになりませう。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
最初蝦夷松椴松の
翠
(
みどり
)
に秀であるひは白く立枯るゝ峯を過ぎて、障るものなき
邊
(
あたり
)
へ來ると、軸物の大俯瞰圖のする/\と解けて落ちる樣に、眼は今汽車の下りつゝある霜枯の
萱山
(
かややま
)
から
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「
口
(
くち
)
利
(
き
)
かねえ、そんだら
口
(
くち
)
兩方
(
りやうはう
)
へふん
裂
(
ぜ
)
えてやれ、さあ
利
(
き
)
くか
利
(
き
)
かねえかと
斯
(
か
)
うだ」
小柄
(
こがら
)
な
爺
(
ぢい
)
さんは
自分
(
じぶん
)
の
口
(
くち
)
を
兩手
(
りやうて
)
の
指
(
ゆび
)
でぐつと
擴
(
ひろ
)
げていつた、
圍爐裏
(
ゐろり
)
の
邊
(
あたり
)
は
暫
(
しばら
)
く
騷
(
さわ
)
ぎが
止
(
や
)
まなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
名物
(
めいぶつ
)
と
豫
(
かね
)
て
聞
(
き
)
く、——
前
(
まへ
)
にも
一度
(
いちど
)
、
神田
(
かんだ
)
の
叔父
(
をぢ
)
と、
天王寺
(
てんわうじ
)
を、
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
は
相坂
(
あひざか
)
の
方
(
はう
)
から
來
(
き
)
て、
今戸
(
いまど
)
邊
(
あたり
)
へ
𢌞
(
まは
)
る
途中
(
とちう
)
を、こゝで
憩
(
やす
)
んだ
事
(
こと
)
がある。が、
最
(
も
)
う七八
年
(
ねん
)
にもなつた。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
小池は初めて氣がついたらしく、肩から
膝
(
ひざ
)
の
邊
(
あたり
)
へかけて、黒い
塵埃
(
ほこり
)
の附いてゐるのを、眞白なハンケチでバタ/\やつて、それから
對
(
むか
)
ひ合つてゐるお光の
手提袋
(
てさげぶくろ
)
の上までを拂つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
見よ、「愛」は君います
邊
(
あたり
)
、のびらかに心のどけく
よそ人のあざむが如く
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
小庭
(
こには
)
を
隔
(
へだ
)
てた
奧座敷
(
おくざしき
)
で
男女
(
なんによ
)
打交
(
うちまじ
)
りのひそ/\
話
(
ばなし
)
、
本所
(
ほんじよ
)
も、あの
餘
(
あんま
)
り
奧
(
おく
)
の
方
(
はう
)
ぢやあ
私
(
わたし
)
厭
(
いや
)
アよ、と
若
(
わか
)
い
聲
(
こゑ
)
の
媚
(
なま
)
めかしさ。
旦那
(
だんな
)
業平橋
(
なりひらばし
)
の
邊
(
あたり
)
が
可
(
よ
)
うございますよ。おほゝ、と
老
(
ふ
)
けた
聲
(
こゑ
)
の
恐
(
おそろ
)
しさ。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
呼吸
(
いき
)
を
詰
(
つ
)
めて、なほ
鈴
(
すゞ
)
のやうな
瞳
(
ひとみ
)
を
凝
(
こら
)
せば、
薄暗
(
うすぐら
)
い
行燈
(
あんどう
)
の
灯
(
ひ
)
の
外
(
ほか
)
、
壁
(
かべ
)
も
襖
(
ふすま
)
も
天井
(
てんじやう
)
も
暗
(
くらが
)
りでないものはなく、
雪
(
ゆき
)
に
眩
(
くる
)
めいた
目
(
め
)
には
一
(
ひと
)
しほで、ほのかに
白
(
しろ
)
いは
我
(
われ
)
とわが、
俤
(
おもかげ
)
に
立
(
た
)
つ
頬
(
ほゝ
)
の
邊
(
あたり
)
を
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
戲
(
たはむ
)
れに
箱根々々
(
はこね/\
)
と
呼
(
よ
)
びしが、
人
(
ひと
)
あり、
櫻山
(
さくらやま
)
に
向
(
むか
)
ひ
合
(
あ
)
へる
池子山
(
いけごやま
)
の
奧
(
おく
)
、
神武寺
(
じんむじ
)
の
邊
(
あたり
)
より、
萬兩
(
まんりやう
)
の
實
(
み
)
の
房
(
ふさ
)
やかに
附
(
つ
)
いたるを
一本
(
ひともと
)
得
(
え
)
て
歸
(
かへ
)
りて、
此草
(
このくさ
)
幹
(
みき
)
の
高
(
たか
)
きこと一
丈
(
ぢやう
)
、
蓋
(
けだ
)
し
百年
(
ハコネ
)
以來
(
いらい
)
のもの
也
(
なり
)
と
誇
(
ほこ
)
る
逗子だより
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
對手
(
あひて
)
が
百日紅
(
さるすべり
)
だと
燒討
(
やきうち
)
にも
及
(
およ
)
ぶ
處
(
ところ
)
、
柳
(
やなぎ
)
だけに
不平
(
ふへい
)
も
言
(
い
)
へぬが、
口惜
(
くちをし
)
くない
事
(
こと
)
はなかつた——
其
(
それ
)
さへ、
何
(
なん
)
となく
床
(
ゆか
)
しいのに、
此
(
こ
)
の
邊
(
あたり
)
にしては
可
(
か
)
なり
廣
(
ひろ
)
い、
其
(
そ
)
の
庭
(
には
)
に
石燈籠
(
いしどうろう
)
が
据
(
すわ
)
つたあたりへ
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
分
(
わ
)
けて
見詰
(
みつ
)
むるばかり、
現
(
うつゝ
)
に
見
(
み
)
ゆるまで
美
(
うつく
)
しきは
紫陽花
(
あぢさゐ
)
なり。
其
(
そ
)
の
淺葱
(
あさぎ
)
なる、
淺
(
あさ
)
みどりなる、
薄
(
うす
)
き
濃
(
こ
)
き
紫
(
むらさき
)
なる、
中
(
なか
)
には
紅
(
くれなゐ
)
淡
(
あは
)
き
紅
(
べに
)
つけたる、
額
(
がく
)
といふとぞ。
夏
(
なつ
)
は
然
(
さ
)
ることながら
此
(
こ
)
の
邊
(
あたり
)
分
(
わ
)
けて
多
(
おほ
)
し。
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
見上
(
みあ
)
ぐるばかりな、これほどの
丈
(
たけ
)
のある
樹
(
き
)
はこの
邊
(
あたり
)
でつひぞ
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
はない、
橋
(
はし
)
の
袂
(
たもと
)
の
銀杏
(
いてふ
)
は
固
(
もと
)
より、
岸
(
きし
)
の
柳
(
やなぎ
)
は
皆
(
みな
)
短
(
ひく
)
い、
土手
(
どて
)
の
松
(
まつ
)
はいふまでもない、
遙
(
はるか
)
に
見
(
み
)
える
其
(
その
)
梢
(
こずゑ
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
水面
(
すゐめん
)
と
並
(
なら
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
そ
)
の
邊
(
あたり
)
の
公園
(
こうゑん
)
に
廣
(
ひろ
)
き
池
(
いけ
)
あり。
時
(
とき
)
よし、
風
(
かぜ
)
よしとて、
町々
(
まち/\
)
より
納涼
(
すゞみ
)
の
人
(
ひと
)
出
(
い
)
で
集
(
つど
)
ふ。
童
(
わらべ
)
たち
酸漿提灯
(
ほゝづきぢやうちん
)
かざしもしつ。
水
(
みづ
)
の
灯
(
ともしび
)
美
(
うつく
)
しき
夜
(
よる
)
ありき。
汀
(
みぎは
)
に
小
(
ちひさ
)
き
船
(
ふね
)
を
浮
(
うか
)
べて、
水茶屋
(
みづぢやや
)
の
小奴
(
こやつこ
)
莞爾
(
にこ
)
やかに
竹棹
(
たけざを
)
を
構
(
かま
)
へたり。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
羅
(
うすもの
)
も
脱
(
ぬ
)
いで、
帶
(
おび
)
も
解
(
と
)
いて、
水
(
みづ
)
のやうなお
襦袢
(
じゆばん
)
ばかりで、がつかりしたやうに、
持
(
も
)
つた
團扇
(
うちは
)
も
動
(
うご
)
かさないで、くの
字
(
じ
)
なりに
背後
(
うしろ
)
へ
片手
(
かたて
)
支
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
なさる
處
(
ところ
)
……
何
(
ど
)
うもお
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い
事
(
こと
)
……
乳
(
ちゝ
)
の
邊
(
あたり
)
は
其
(
そ
)
の
團扇
(
うちは
)
で
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
邊
部首:⾡
19画
“邊”を含む語句
四邊
其邊
此邊
海邊
頬邊
枕邊
爐邊
身邊
近邊
縁邊
奈邊
公邊
周邊
天邊
番町邊
川邊
上邊
片邊
口邊
傍邊
...