みち)” の例文
四国しこくしまわたって、うみばたのむら托鉢たくはつしてあるいているうちに、ある日いつどこでみち間違まちがえたか、山の中へまよんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
二人ふたりは、みせまえをはなれると、しました。ちょうどそのとき、横合よこあいから、演習えんしゅうにいった兵隊へいたいさんたちがみちをさえぎりました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どのみち余計なことだけれど、お前さんを見かけたから、つい其処そこだし、彼処あそこうちの人だったら、ちょいと心づけてこうと思ってさ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまりさうしないと、平凡へいぼんうはすべりがするとおもつたのでせう。だから、直譯ちよくやくして、みちがはかどらないでとつておけばよいでせう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
と、小仏こぼとけの上で休んでいた旅人たちは、今、自分たちの後ろから登って来る一団の旅の群れを、これは観物みものと、みちばたで迎えていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつ如此かくのごとき事をこゝろみし事なし、こゝろみてそのはなは馬鹿気ばかげきつたる事をみとめたれば全然ぜん/\之を放棄はうきせり、みちおこなことみちく事なり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
ここおいせいぐんものをして、(五三)萬弩ばんどみちはさんでふくせしめ、(五四)していはく、『くれがるをともはつせよ』
現代いまのよ人達ひとたちから頭脳あたまふるいとおもわれるかぞんじませぬが、ふるいにも、あたらしいにも、それがその時代じだいおんなみちだったのでございます。
そのあやふきふんで熊を捕はわづか黄金かねため也。金慾きんよくの人をあやまつ色慾しきよくよりもはなはだし。されば黄金わうごんみちを以てべし、不道をもつてべからず。
何処で何う聞き出して来るんですか、矢っ張りじゃみちへびね。日本橋の金輪さんの娘さんの縁談の時なぞも先方むこうかくしていたことを……
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこでとうさんはお墓參はかまゐりにみちはうから、るべくつたひとはない田圃たんぼわきとほりまして、こつそりと出掛でかけてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
心當こゝろあてに助十樣と御尋おたづね申せしと始終はじめをはりを物語りけるに兩人は思はず涙を流し偖々さて/\いまだ年も行ぬ身を以て百餘里のみちくだ親公おやごほね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そしてもう何も見る物もなくなツた時分に、ウソ/\と森を出て、御殿町の方へ上ツた。其から植物園の傍のみちを通ツて氷川田圃に出た。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
みちのつよきひとなればむなぐるしさえがたうて、まくら小抱卷こがいまき仮初かりそめにふしたまひしを、小間こまづかひのよねよりほか、えてものあらざりき。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにしろ小六ころくうちるとめるよりほかみちはあるまいよ。あと其上そのうへことだ。いまぢや學校がくかうへはてゐるんだね」と宗助そうすけつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おつぎのまだみじか身體からだむぎ出揃でそろつたしろからわづかかぶつた手拭てぬぐひかたとがあらはれてる。與吉よきちみちはたこもうへ大人おとなしくしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つぎ著意ちやくいしてみちもとめるひとがある。專念せんねんみちもとめて、萬事ばんじなげうつこともあれば、日々ひゞつとめおこたらずに、えずみちこゝろざしてゐることもある。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
だが、長崎ながさきからここにくるには、中津なかつによってくるのがみちのじゅんというものだ。それを、おまえはおかあさんのおられる中津なかつをよけてきた。
れが出来ればこのみちめに誠に有益な事で、私もおおいに喜びますが、果して出来るか出来ないか、私はただしずかにして見て居ます。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
王子はやはり高いところへあがるのがすきでしたが、ちゃんとそのみちをこしらえてからあがるので、少しもあぶないことはありませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その森もっと半分過ぎたことを知らせる或わかみち(その一方は村へ、もう一方は明がそこで少年の夏の日を過した森の家へ通じていた……)
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
椿つばきかげに清水しみずはいまもこんこんとき、みちにつかれた人々ひとびとは、のどをうるおして元気げんきをとりもどし、またみちをすすんでくのであります。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
置いてきぼりにされた小山内氏は、履直げたなほしのやうにみちばたにぺたりと尻を下した。そして一念こめてじつと電車のあとを睨んだ。
なお賢人のうに、「げん近くしてむね遠きものは善言ぜんげんなり。守ること約にしてほどこすことひろきものは善道なり。君子くんしげんおびよりくだらずしてみちそんす」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
二人ふたりは、子供こどもいてあかるいとほりかられて、くらみちあるいた。くらいところても、銀座ぎんざあかるみをあるひと足音あしおときこえた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
道子みちこはバスのとほるのをて、その停留場ていりうぢやうまであるき、つてゐるひとみちをきいて、こんどは国府台こふのだいから京成電車けいせいでんしや上野うへのまはつてアパートにかへつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あの連中はいずれ私を殺すだろうと思っていますが、そんなことはかまいません。わたしはこの通りの年寄りですから、どのみちやがて死ぬからだです。
堪忍かんにんしておくんなさい。みちぱたではおにかけねえようにと、こいつァいもうとからの、かたたのみでござんすので。……」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
やつとその道の尽きるところまで来た。其処そこは自分達の今乗つて来たのとはちがふ別の汽車みちの踏切である。そして一層人気ひとげのない寂しい道へ自分達は出た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
どうだ、最早もはや皈途きとむかふのだが、これからすこみちへんじてすゝんでは、ふるみちかへるより、あたらしい方面ほうめんからかへつたら、またいろ/\珍奇めづらしことおほからう。
たしかに、これは大抵たいてい子供こども菓子くわしべるときおこることだが、あいちやんはなに素晴すばらしいことがおこるのをばかりのぞんでて、通常あたりまへみちすゝんでくのは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
天皇、御歳一百六十八歳ももぢあまりむそぢやつ、(戊寅の年の十二月に崩りたまひき。)御陵は、やまみちまがりをか一九にあり。
それがくせのいつものふとした出來心できごころで、銀座ぎんざ散歩さんぽみちすがら、畫家ぐわかをつとはペルシア更紗さらさ壁掛かべかけつてた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
こゝからは岩石がんせき砂礫されきみち一歩々々いつぽ/\みすゝんで、つひに海拔かいばつ一萬二千餘尺いちまんにせんよしやく絶頂ぜつちようへたどりつくわけです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
あへて往路を俯瞰ふかんするものなし、荊棘けいきよくの中黄蜂の巣窟すうくつあり、先鋒あやまつて之をみだす、後にぐもの其襲撃しうげきを被ふるもあへて之をくるのみちなし、顔面ためれし者おう
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ステーションまでの二百ヴェルスタのみちを二昼夜ちゅうやぎたが、そのあいだうま継場々々つぎばつぎばで、ミハイル、アウエリヤヌイチは、やれ、ちゃこっぷあらいようがどうだとか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なるほどぶはずです、そのきものというのはかえるで、みちばたの草原くさはらまで行こうと思っているのです。その草原はかえるさんのお国です。蛙さんには大切たいせつなお国です。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
岡山と広島の間にみちと云う小さな町があります。ほんの腰掛けのつもりで足を止めたこの尾の道と云う海岸町に、私は両親と三人で七年ばかり住んでいました。
文学的自叙伝 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
小鮫の類を海底の猛獣に例えるなら、そのガラスみちに現れる魚類としては、えいなどは、水に棲む猛鳥にも比すべく、穴子あなごうつぼの類は毒蛇と見ることが出来ましょう。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、おれたちはどっちみち死ぬのだ。×××××××××××××××××××××たのだ。どうせ死なずにすまないのなら、綺麗きれいに×××やった方が好いじゃないか?
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
はなはだもけてなみち五百小竹ゆざさうへしもを 〔巻十・二三三六〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「それでは、今、おかゆをさしあげますから、次のへやでお休みくださいませ、おみち、おれ申せ」
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
第七 一ヶげつ五六かなら村里むらざとはなれたる山林さんりんあるひ海濱はまべで、四五みち歩行ほかうすべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
袋中和尚の「泥洹ないおんみち」には、いわゆるエタも非人も、獣医すなわち伯楽も、関守、渡し守、弦差つるさしすなわち犬神人つるめそなどの徒をも、みな一緒にして三家者と云っているのである。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
先生のみか世人よのひとおどろかすもやすかるべしと、門外もんぐわい躊躇ちうちよしてつひにらず、みちひきかへて百花園くわゑんへとおもむきぬ、しん梅屋敷うめやしき花園くわゑんは梅のさかりなり、御大祭日ごたいさいびなれば群集ぐんしふ其筈そのはずことながら
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
私はかぜを引きつゞけた。母が、「アツ」といつたまゝんでしまつた。すると、つまが母に代つてとこについた。私のほこつてゐたもんから登るはなの小路は、氷を買ひにはしみちとなつた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
「だって叔父さま、神道はみち……自然哲学のようなもので、宗教じゃないんでしょう」
春雪 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
真面目な決心とも謂えようが……ああ、しかし、みち思想に捕われては仕方がない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あな間口まぐちしやくすんに、奧行おくゆきしやくの、たかさ四しやく長方形ちやうはうけい岩室がんしつで、それにけたやう入口いりぐちみちがある。突當つきあたりに一だんたかところがあつて、それから周圍しうゐ中央ちうわうとにあさみぞつてある。
「ううん、なんでもあれへん。痩せた方がみちちゃんに似て来て、ええやないの。」
旅への誘い (新字新仮名) / 織田作之助(著)