大勢おほぜい)” の例文
そこで天皇てんのう大勢おほぜい家來けらいたちをおつれになりそのながい/\丸木橋まるきばしうへをおわたりになつたといふことが、日本書紀につぽんしよきといふほんてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
しかしドン・ジユアンは冷然と、舟中しうちうつるぎをついた儘、にほひい葉巻へ火をつけた。さうして眉一つ動かさずに、大勢おほぜいの霊を眺めやつた。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しばらまつててゐるうちに、いしかべ沿うてつくけてあるつくゑうへ大勢おほぜいそうめしさいしる鍋釜なべかまからうつしてゐるのがえてた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼等かれらむし自分じぶんうちつくつたものゝはう佳味うまいにもかゝわらず大勢おほぜいともさわぐのが愉快ゆくわいなので、水許みづばかりのやうな甘酒あまざけ幾杯いくはいかたむけるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やき大勢おほぜいながら餘り目はしのきか奴等やつらだ兄と云ば某しが弟にちがひなし何故早く然樣さう云ないなどと無理むりばかり云中に長兵衞長八の兩人は足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
例へば堂々たる帝國の議會ですら、僅か二三千萬の金の問題で、大きな子供が大勢おほぜいでワイ/\大騷をるぢやないか。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あんなに大勢おほぜい女のゐる中で、どうして自分は一人も自分をなぐさめてくれる相手に邂逅めぐりあはないのであらう。れでもいゝ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
休憩時間きふけいじかんには控所ひかえじよ大勢おほぜいの中を奔走ほんそうして売付うりつけるのです、其頃そのころ学習院がくしうゐん類焼るいしやうして当分たうぶん高等中学こうとうちうがく合併がつぺいしてましたから、こゝへも持つて行つて推売おしうるのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大勢おほぜいつてたかつておれを三つも四つものめしアがつて、揚句あげくのはてに突飛つきとばされたが、悪いところに石があつたので、ひざ摺剥すりむいて血が大層たいそう出るからのう……。
「あゝもううございます。漏電ろうでんですがえました。——軍隊ぐんたいかたも、大勢おほぜいえてゐますから安心あんしんです。」
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其夜そのよ大雨たいうしたので、これまで野營やえいつゞけてゐた附近ふきん被害民ひがいみんは、みなつぶのこりのいへあつまつてあま大勢おほぜいでありしため混雜こんざつはしたけれども、みな口々くち/″\
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ひまさへあれば下宿へ出掛でかけて行つて、一人一人ひとりひとりに相談する。相談は一人一人ひとりひとりかぎる。大勢おほぜいると、各自めいめいが自分の存在を主張しやうとして、やゝともすれば異をてる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
紳士だの貴婦人だのが、大勢おほぜい母さまに會ひに來て、あたしはいつもその人たちの前でダンスをしたり、その人たちのお膝の上に坐つて唄を歌つて上げたりしましたの。
堪忍かんにんをし、なんおもつても先方さき大勢おほぜい此方こつちみなよわいものばかり、大人おとなでさへしかねたにかなはぬはれてる、れでも怪我けがのないは仕合しあはせ此上このうへ途中とちうまちぶせがあぶない
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たはむれに枯草かれくさうつした子供等こどもらは、はるかにえる大勢おほぜい武士ぶし姿すがたおそれて、周章あわてながらさうと、青松葉あをまつばえだたゝくやら、えてゐるくさうへころがるやらして、しきりにさわいでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
このほかいへつかはれてゐるもの大勢おほぜいぐすねいてつてゐます。いへうちをんなどもがばんをし、おばあさんは、ひめかゝへて土藏どぞうなかにはひり、おきな土藏どぞうめて戸口とぐちひかへてゐます。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
であるから學校がくかう歸途かへりみちには大勢おほぜいそのくづおちかべいのぼつてワイ/\とさわぐ、つやら、はやすやら、はなはだしきは蜜柑みかんかはげつけなどして揄揶からかうのである。けれどもなん效果きゝめもない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こゝには動植鑛物どうしよくこうぶつはじめ、理科りかかんする標本ひようほん完備かんびしてゐます。そして子供こども素人しろうとのためにいろ/\興味きようみくようにならべてありますので、としわか學校がつこう生徒せいとなども大勢おほぜい見物けんぶつかけます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
あいちやんが朝鮮猫てうせんねこところかへつてつたときに、其周圍そのしうゐにゐた大勢おほぜい群集ぐんじゆ一方ひとかたならずおどろきました、其處そこには死刑執行者しけいしつかうしやと、王樣わうさまと、それから女王樣ぢよわうさまとのあひだに、いつ爭論さうろんはじまつてゐました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
京から呉服屋の出入でいりの表具師や畳屋の職人が大勢おほぜい来て居るなかで頓死した。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
大勢おほぜいあつまつて、のんきに。
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大勢おほぜい味方みかたあつまつて
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
それは、日本に伝へられる種々の物語に徴しても、また、大勢おほぜいの旅行家の見聞けんぶんした事実に徴しても、疑ふ余地はないといはなければならぬ。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
東隣ひがしどなり主人しゆじんにはには村落むらもの大勢おほぜいあつまつておほきな燒趾やけあと始末しまつ忙殺ばうさつされた。それでその人々ひと/″\勘次かんじにはさうとはしなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つのるに於ては是非に及ばず此大勢おほぜいにて半年又は一年かゝりても澤の井の出所しゆつしよ調しらべねばならぬぞ左樣さやうに心得よと威猛高ゐたけだかになりておどすにぞ村中の者きも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぼくね、あのウだつてもね、先生せんせい、人だつて、大勢おほぜいで、みんな体操場たいさうばで、てんでになにかいつてるのをとほくンとこいてると、なにをいつてるのか些少ちつとわからないで
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
アイそれは痛いワ……負傷けがをしたんだから……エー新入しんまい乞食こじきだからの、何処どこうだかさつぱりわけわからないが、山下やました突当つきあたりのかどの所に大勢おほぜい乞食こじき
松並木のどこまでも続いてゐる街道を、自分は力限ちからかぎりけて行く。あとから大勢おほぜいの人が追ひ掛けて来る。自分の身は非常に軽くて、ほとんど鳥の飛ぶやうに駈けることが出来る。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「どうです具合は。頭痛でもしますか。あんまり人が大勢おほぜいゐた所為せゐでせう。あの人形を見てゐる連中のうちには随分下等なのがゐた様だから——何か失礼でもしましたか」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大部分だいぶぶんひと生活せいかつしてゐる都會とかいは、せま土地とち大勢おほぜいひとみ、石炭せきたん煤煙ばいえんや、そのほか塵埃じんあいでもって空氣くうきがおそろしくにごつてをり、また各種かくしゆ交通機關こうつうきかん發達はつたつして晝夜ちゆうやわかちなく
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ればかりでなく黒ずんだ天井てんじやう壁襖かべふすまかこまれた二階のへやがいやに陰気臭いんきくさくて、燈火とうくわの多い、人の大勢おほぜいあつまつてゐる芝居しばゐにぎはひが、我慢がまん出来できぬほど恋しく思はれてならなかつたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
二十日はおまつりなればこゝろ一ぱい面白おもしろことをしてと友達ともだちのせがむに、趣向しゆこうなになりと各自めい/\工夫くふうして大勢おほぜいこといではいか、幾金いくらでもいゝわたしすからとてれいとほ勘定かんでうなしの引受ひきうけに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それでも可なり大勢おほぜい衝突ぶつゝかつた
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
近所きんじよもの大勢おほぜいたゞどろのやうになつてうごいてるのでどれがどうとも識別みわけがつかないでこまつたといつて、勘次かんじうたことを反覆くりかへしてたゞよろこんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかし大勢おほぜいの人人の中にいつにない親しさのいてゐるのはかく美しい景色だつた。僕は永久にあの記憶だけは大事にして置きたいと思つてゐる。
……おどりもよほしとへば、園遊會ゑんいうくわいかなんぞで、灰色はひいろ黄色きいろ樺色かばいろの、いたちきつねたぬきなかにはくまのやうなのもまじつた大勢おほぜいに、引𢌞ひきまはされ、掴立つかみたてられ
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大勢おほぜいの坊主が珠数繋じゆずつなぎにせられる所をまぼろしに見ることがあつたが、それは皆間もなく事実になつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
も廣げ手代てだい丁稚でつち大勢おほぜいかゝへ今は一かどの身代となり向ふの加賀屋おとろへるに引變ひきかへ彌々いよ/\繁昌なしけるが加賀屋四郎右衞門は茂兵衞方へ引とられし其身そのみ病勝やまひがちうへ老衰らうすゐして漸々近所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大勢おほぜいうしろから、のぞき込んだ丈で、三四郎は退しりぞいた。腰掛に倚つてみんなを待ち合はしてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
長吉ちやうきちは二度見る同じ芝居しばゐの舞台をば初めてのやうに興味深くながめた。れと同時に、今度はにぎやかな左右の桟敷さじきに対する観察をも決して閑却かんきやくしなかつた。世の中にはあんなに大勢おほぜい女がゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
かほねば承知しようちせぬぞと威張いばりたてるを聞流きゝながしに二かい座敷ざしき結城ゆふきれあげて、今夜こんや頭痛づゝうがするので御酒ごしゆ相手あいて出來できませぬ、大勢おほぜいなかれば御酒ごしゆふて夢中むちうになるもれませぬから
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すると大勢おほぜいの客の中に忽ち「毎度御やかましうございますが」と甲高かんだかい声を出しはじめたのは絵葉書や雑誌を売る商人である。これもまた昔に変つてゐない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
をんなうで大勢おほぜい小兒こどもをつれてゐるんだから——いづれひとさ、だれかがり、かたをひいてくれたんだらうが、わたし神佛しんぶつのおかげだとおもつて難有ありがたがつてゐるんだよ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まつたぢやねえね。きたくなるね」とつたので、大勢おほぜいがまた一度いちどわらつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから一しよに塾にゐる河合八十次郎やそじらうと相談いたしまして、昨晩どきに抜けて帰りました。先生の所にはお客が大勢おほぜいありまして、混雑いたしてゐましたので、出られたのでございます。それから。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「それから」が発表された当時、世間にはやつてゐた自然派の小説には、我々の周囲にも大勢おほぜいゐさうな、その意味では人生に忠実な性格描写せいかくべうしやが多かつた筈である。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もとより以前いぜんから、友造ともざういへは、土地とちでも、場末ばすゑの、まちはづれの、もと足輕町あしがるまちやぶ長屋ながやに、家族かぞく大勢おほぜいで、かびた、しめつた、じと/\したまづしいくらしでたのであるから
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御出おいでです。うも相變あひかはらずさむいぢやありませんか」とつねとほ元氣げんき主人しゆじんると、子供こども大勢おほぜい自分じぶんまへならべて、其中そのうち一人ひとり掛聲かけごゑをかけながら、じやんけんつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
汽船へ乗るには棧橋さんばしからはしけに乗らなければなりません。私達のゐた棧橋にはやはり修学旅行に来たらしい、どこかほかの小学校の生徒も大勢おほぜいわいわい言つてゐました。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大勢おほぜいつてたかり、民子たみこ取縋とりすがるやうにして、介抱かいほうするにも、くすりにも、ありあはせの熊膽くまのゐくらゐそれでもこゝろつうじたか、すこしは落着おちついたから一刻いつこくはやくと、ふたゝ腕車くるまてようとすれば
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)