さけ)” の例文
そして、コップのなかにはいった、みどりあおあか、いろいろのさけいろに、ぼんやりとれていますと、うとうとと居眠いねむりをしたのでした。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
寶鼎はうてい金虎きんこそんし、芝田しでん白鴉はくあやしなふ。一瓢いつぺう造化ざうくわざうし、三尺さんじやく妖邪えうじやり、逡巡しゆんじゆんさけつくることをかいし、また頃刻けいこくはなひらかしむ。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
顏色かほいろ蒼白あをじろく、姿すがたせて、初中終しよつちゆう風邪かぜやすい、少食せうしよく落々おち/\ねむられぬたち、一ぱいさけにもまはり、往々まゝヒステリーがおこるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
賭場でない別室では、鄒淵すうえん鄒潤すうじゅんを上座に、そして孫新が取りもち役で、さけみ交わして飲んでいたが、毋大虫ぶだいちゅうの顔を見るなり孫新が
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちにだんだんおさけのききめがあらわれてきて、酒呑童子しゅてんどうじはじめおにどもは、みんなごろごろたおれて、正体しょうたいがなくなってしまいました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
四郎右衞門先々まづ/\引止ひきとめ下女に云付さけさかなを出し懇切ねんごろ饗應もてなして三郎兵衞を歸しけり其後三月十日に三郎兵衞二十兩加賀屋へ持參ぢさん先達せんだつての禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
林太郎のおとうさんは、きのうのばんさけによってきて、林太郎のことをいっては、この家をでていけ、と、おっかさんをいじめたのでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
カピ長 だまれ、むが/\むが/\と、阿呆あはうめ! 其許おぬし御託宣ごたくせんは、冗口仲間むだぐちなかまさけでも飮合のみあとき被言おしゃれ、こゝにはよういわ。
(カフェーでおさけをのむって、ずいぶんお金がいるのに、あの人たちは、どうしてあんなにお金をもっているのだろうか。)
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
くすり主人しゅじんも、これにはこまったとみえて、ひらあやまりにあやまり、さけを五しょうに、にわとりとさかななどをおれいとしてだしました。
媒妁人ばいしやくにんたゞさけんでさわいだだけであつた。おしなもなくをんなんだ。それがおつぎであつた。季節きせつくれつまつたいそがしいときであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
第三 さけちや菓子かしるゐ食時しよくじせつ少々せう/\もちゐて飮食いんしよく消化せうくわたすくるはがいなしといへども、その時限じげんほか退屈たいくつときもちゆとうがいあること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
楠殿が高時のさけこんさかなしゆを用ゆるを聞いて驕奢おごりの甚だしいのを慨嘆したといふは、失敬ながら田舎侍の野暮な過言いひすぎだ子。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
なにたのしみに轅棒かぢぼうをにぎつて、なにのぞみに牛馬うしうま眞似まねをする、ぜにもらへたらうれしいか、さけまれたら愉快ゆくわいなか、かんがへればなに悉皆しつかいやで
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんは洋卓テーブル周圍しうゐのこらず見廻みまはしましたが、其上そのうへにはちやほかなにもありませんでした。『さけくッてよ』とあいちやんが注意ちういしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
みんなは本部ほんぶへ行ったり、停車場ていしゃばまでさけみに行ったりして、室にはただ四人だけでした。(一月十日、玉蜀黍とうもろこし脱穀だっこく
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてそこへんでしまふんです。神樣かみさま、どうしてこんなにみたいんでせう。どうかしてみたいさけをやめることは出來できないもんでせうか
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それが學年がくねんはじまりだつたので、京都きやうとのまだあさ宗助そうすけには大分だいぶん便宜べんぎであつた。かれ安井やすゐ案内あんないあたらしい土地とち印象いんしやうさけごとんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いままでおさけのわきでていた井戸いどが、すっかりかれてしまって、水一てきでないというのは、どうしてなんですか。
むろんさけもございました……にごってはりませぬが、しかしそう透明すきとおったものでもなかったようにおぼえてります。
お祭りだというので、いつものように役人やくにんは牢屋の中を見まわりにもこないし、部屋へや検査けんさもされず、さけを持ちこむのも、おおめに見られていたのです。
それから、アフリカのおさけが少し飲みたいとおっしゃいませ。するとあの男が、それをとりに行きますからね。
本堂ほんどうの中には蝋燭そうそくが明るくともっていましたが、盗賊とうぞくどもはさけぱらって、そこにごろごろねむっていました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「京都著名老鋪ろうほ財数十万戸主家系由緒身健品正風采紳士さけ不嗜たしなまず店雇人十数工場雇人数十ははろういもうとかす弟分家無係累むけいるい
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
成程なるほど一日いちにちの苦とうつかれていへかへツて來る、其處そこには笑顏ゑがほむかへる妻子さいしがある、終日しうじつ辛勞しんらう一杯いつぱいさけために、陶然たうぜんとしてツて、すべて人生の痛苦つうくわすれて了ふ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
へえゝこれがお猪口ちよこ……ウンナ……手には持慣もちつけてますが、うま出来できてるもんですな、ヘヽヽ、これはお徳利とくり成程なるほどなかからおさけが出るんで、面白おもしろいもんですな。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おやじの言葉ことばに、ときどきあいづちをうちながら、ビスケットにチーズで、ちびちびとさけを飲んでいた。
あなみにくさかしらをすとさけまぬ人をよくればさるにかもる(よく見ば猿にかも似む) (同・三四四)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
玄竹げんちくさけからいとかんずるやうになつては、人間にんげん駄目だめだなう。いくんでも可味うまくはないぞ。』
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
となりの大黒屋だいこくやさけつくうちでした。そこのうちでお風呂ふろてばとうさんのおうちびにましたし、とうさんのおうちでお風呂ふろてばおとなりりからもばれてはひりにました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なに使つかつたのかよくわかりませんが、あるひとはそのあなちひさいたけくだんで、なかにあるみづとかさけとかをつたものだらうといひます。あるひはさうかもれません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そこでさけをのみはじめましたが、五にん盗人ぬすびと一人ひとり村役人むらやくにんはすっかり、くつろいで、十ねんもまえからのいのように、ゆかいにわらったりはなしたりしたのでありました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あまりにさけんでさけのためにはなあかくなつた獨逸ドイツ陸軍士官りくぐんしくわんや、其他そのほか美人びじん標本へうほんともいふ伊太利イタリー女俳優をんなはいゆうや、いろ無暗むやみくろ印度インドへん大富豪おほがねもち船客等せんきやくらあひだ立交たちまじらつて
菓子くわしくにたひらげてしまつて、其後そのあと持參ぢさん花竦薑はならつきやうを、びんから打明うちあけて、さけさかなにしてる。
荒物屋あらものや味噌みそ醤油しょうゆさけを売る店、米屋などが、一軒ずつ細々と暮しを立てているだけだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すそ曳摺ひきずりて奥様おくさまといへど、女はついに女なり当世たうせい臍繰へそくり要訣えうけついわく出るに酒入さけいつてもさけ、つく/\良人やど酒浸さけびたして愛想あいそうきる事もございますれど、其代そのかはりの一とくには月々つき/\遣払つかひはらひに
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
湯水の他の飮料ゐんれうとは如何なるものなりしや。鳥獸魚介てうぢうぎよかいの煑汁も其一ならん。草根木實そうこんもくじつよりりたる澱粉でんふんたるものも其一ならん。或はさけたる嗜好品しこうひん有りしやも知る可からず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
酒好さけずきならばこんなときにはすぐさけに走るところだが、糟谷かすやは酒はすこしもいけない。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
饗す兎も角もこゝ書入かきいれの名所なり俗境なりとてさて止むべきかは一杯酌みて浦嶋殿の近付ちかづきとならんと上の旅人宿はたごやへいそぎさけさかなを持來れと命じそれより寺内を漫歩そゞろあるきしまた川を眺むるに流を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
『本草綱目』に、よきさけ一斗に蝮一疋活きたまま入れて封じ、馬がいばりする処に埋め、一年経て開けば酒は一升ほどに減り、味なお存し蝮は消え失せいる。これを飲めば癩病を癒すとある。
けれど縁談を断わったあとでもあり、これからのこともあるので、源六もおせんもゆかずにいると、四日の夕方になって幸太が松造まつぞうという職人といっしょに、さけさかなの遣い物を届けに来た。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さけのゼリー 冬付録 病人の食物調理法の「第六十八 葡萄酒ぶどうしゅのゼリー」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それ外日いつぞや友人いうじんところで、或冬あるふゆさけみながらおそくまで話込はなしこんでゐたときこと恋愛談れんあいだんから女学生ぢよがくせい風評うはさはじまつて、其時そのとき細君さいくん一人ひとり同窓の友クラスメートに、散々さん/″\或学生あるがくせい苦労くらうをした揚句あげく熱湯にえゆのまされて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
〔評〕南洲弱冠じやくくわんの時、藤田東湖ふじたとうこえつす、東湖は重瞳子ちやうどうし躯幹くかん魁傑くわいけつにして、黄麻わうま外套ぐわいとう朱室しゆざや長劒ちやうけんして南洲をむかふ。南洲一見して瞿然くぜんたり。乃ち室内に入る、一大白をぞくしてさけすゝめらる。
われはおのれ生涯しやうがいのあまりきよくないこと心得こゝろえてゐる、みちかたはら菩提樹下ぼだいじゆか誘惑いうわくけたことつてゐる。たま/\われにさけませる会友くわいいうたちの、よく承知しようちしてゐるごとく、さういふもの滅多めつた咽喉のどとほらない。
たのしみは、とぼしきまゝに人集ひとあつめ、さけのめ ものをへといふとき
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
玉手摻摻酒幾巡 玉手ぎょくしゅ摻摻さんさんとしてさけ幾たびかめぐ
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さけへばかつた。しいことをた』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さけまで旅のなやみにひにける
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
おいしいおさけをおあがあそばせ。