すす)” の例文
矢張やは歴史れきし名高なだか御方おかただけのことがある。』わたくしこころなかひとりそう感心かんしんしながら、さそわるるままに岩屋いわや奥深おくふかすすりました。
みんなは「さんせいだ。」というようなかおをしましたが、さてだれ一人ひとりすすんでねこかっていこうというものはありませんでした。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこの岸には、紫色のはっぴをきた水夫たちが、洗いきよめた船を用意していました。その船の方へ観音様はすすんでいかれました。
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いずれはもろともに、善逝スガタしめされた光の道をすすみ、かの無上菩提むじょうぼだいいたることでございます。それではおわかれいたします。さようなら。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこから着目ちゃくもくしてある程度ていど内偵ないていすすめて、その容疑者ようぎしゃを、べつべつに任意出頭にんいしゅっとうかたち警察けいさつし、井口警部いぐちけいぶ直接ちょくせつ訊問じんもんしてみた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
すすむこと一里半にしてきふ暖気だんきかんず、俯視ふしすれば磧礫間温泉おんせんありて数ヶ所にづ、衆皆くわいぶ、此処はあざはな或は清水沢しみづさはと称し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
そしてそれが水上すいじょうわたってむこうへえたとおもうと、幾匹いくひきかの猟犬りょうけん水草みずくさの中にんでて、くさすすんできました。
正二しょうじは、いつも、こんなようなことにあったときは、ひとにいわれなくとも、自分じぶんからすすんでたすけてやる性質せいしつでありました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と。鮑叔はうしゆくすで管仲くわんちうすすめ、もつこれくだる。((鮑叔ノ))子孫しそんよよせい祿ろくせられ、封邑ほういふたももの餘世よせいつね名大夫めいたいふたり。
慶応義塾けいおうぎじゅくはこのころ、弟子いよいよすすみ、その数すでに数百に達し、また旧日のにあらず。或夜あるよ神明社しんめいしゃほとりより失火し、予が門前もんぜんまで延焼えんしょうせり。
と、名馬草薙くさなぎの足もそこよりはすすみえずに、手綱たづなをむなしくして、馬上にぼうぜんと考えこんでしまっていると、そこへ飛んできた早足はやあし燕作えんさく
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人が妄想もうそうちて、いたずらに立てるあいだに、花前は二とう三頭とちゃくちゃくしぼりすすむ。かれは毅然きぜんたる態度たいどでそのなすべきことをなしつつある。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
が、小娘こむすめわたくし頓著とんぢやくする氣色けしきえず、まどからそとくびをのばして、やみかぜ銀杏返いてふがへしのびんそよがせながら、ぢつと汽車きしやすす方向はうかうやつてゐる。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
檀家だんかなかにも世話好せわずきのある坂本さかもと油屋あぶらや隱居ゐんきよさま仲人なかうどといふもものなれどすすめたてゝ表向おもてむきのものにしける、信如しんによ此人このひとはらよりうまれて男女なんによ二人ふたり同胞きやうだい
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたくし誠心まごころもっ彼等かれらしゅくします、彼等かれらためよろこびます! すすめ! 同胞どうぼう! かみ君等きみらたすけたまわん!
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何をつとむといえどもすすことはやけれどもそのまま怠惰の気発す。これにより武士の風俗善といい難しとぞ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そんな心掛こころがけは、このたちにはそもそも註文ちゅうもんするだけ無理むりなのです。そういうところは、この子たちも大人おとなおなじです。「すすめッ」と、世間せけんつよい人たちはいいます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
ガンの隊長たいちょうは前にすすみでました。しかし、こわいのをおさえるのは、なかなかむずかしいようです。
またらに一歩をすすめてかんがうれば、日本の内乱に際し外国干渉かんしょううれいありとせんには、王政維新おうせいいしんの後に至りてもまた機会きかいなきにあらず。その機会はすなわち明治十年の西南戦争せいなんせんそうなり。
王子おうじは、ここまでると、どこからか、いたことのあるこえみみはいったので、こえのするほうすすんでくと、ラプンツェルがぐに王子おうじみとめて、いきなりくび抱着だきついて、きました。
もちろん、まだどろぼうが貨車の中にぐずついていようとは思わなかったけれど、用心ようじんのために、そばにあった信号旗しんごうきのまいたのを、右手に持ち、左手にランプを高くさし上げて、用心ぶかすすんだ。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
髪結かみゆいのおたつと、豆腐屋とうふやむすめのおかめとが、いいのいけないのとあらそっているうちに、駕籠かごさらおおくの人数にんず取巻とりまかれながら、芳町通よしちょうどおりをひだりへ、おやじばしわたって、うしあゆみよりもゆるやかにすすんでいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
子供はいいすすんだ。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
とうとう神社じんじゃというところまではなしすすんだのでございました、まことにひとうえというものはなになにやらさっぱり見当けんとうがとれませぬ。
ガドルフはそっちへすすんで行ってガタピシのこわれかかった窓を開きました。たちまち冷たい雨と風とが、ぱっとガドルフの顔をうちました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おやたれれば子がすすみ、子がたれればおやがつづくというふうに、味方みかた死骸しがいえ、え、どこまでも、どこまでもすすんでます。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ふゆへかけてのたびは、はげしい北風きたかぜこうしてすすまなければならなかった。としとったがんは、みんなをれているという責任せきにんかんじていました。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
と。すですること(二九)はいをはりて、(三〇)田忌でんきひとたびたずしてふたたつ。つひわうの千きんたり。ここおい孫子そんし威王ゐわうすすむ。
申立もうしたて拒否きょひしたとなつたら、それをいてわせる権限けんげん警察けいさつにもない。訊問じんもんはこれ以上いじょうにはあまりすすまなかつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それがどうも盜人ぬすびと言葉ことばに、つてゐるやうにえるではないか? おれはねたましさに身悶みもだえをした。が、盜人ぬすびとはそれからそれへと、巧妙かうめうはなしすすめてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
アンドレイ、エヒミチは戸口とぐちところすすんで、けた。するとニキタが躍上おどりあがって、そのまえ立塞たちふさがる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
山霊さんれいたたりにやあらんたちまち暴風雨をおこしてすすむを得ざらしむ、ただ口碑こうひの伝ふる所にれは、百二十年以前に於て利根水源とねすゐげんたる文珠もんじゆ菩薩の乳頭にうたうより混々こん/\として出できた
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ニールスが気がついてみますと、どうやら、ガンのむれは一直線ちょくせんすすんではいないのです。みんなはスウェーデンの南部の地方を、あちこちとびまわっているのです。
するとこのわかとりつばさ横腹よこばらってみましたが、それはまったくしっかりしていて、かれそらたかのぼりはじめました。そしてこのつばさはどんどんかれまえまえへとすすめてくれます。
そのたぬきめ、汽車にばけて、こちらの汽車のとおりにすすんできたところが、こちらがとまったので、むこうでもとまって、それから火夫かふがおりて行くと、汽車の方をわすれてしまって、火夫かふだけにばけて
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そうするうちわたくし岩屋いわや修行場しゅぎょうばから、やま修行場しゅぎょうばすすみ、やがて竜宮界りゅうぐうかい訪問ほうもんんだころになりますと、わたくしのような執着しゅうじゃくつよ婦女おんなにも
ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光りんこうの川のきしすすみました。こうの方のまどを見ると、野原はまるで幻燈げんとうのようでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
みち両側りょうがわには、ゆきえかかって、あおくさているところもありました。けれど、だんだんとすすむにしたがって、ゆきおおくなったのであります。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどもいまにもうしろから鬼婆おにばばあ襟首えりくびをつかまれそうながして、ばかりわくわくして、こしがわなわなふるえるので、あし一向いっこうすすみません。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
のこる所の二十七名は之よりすすむのみにしてかへるを得ざるもの、じつすすりて决死けつしちかひをなししと云ふてなり、すでにして日やうやたかく露亦やうやへ、かつ益渇をくわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
わたしはやぶけながら、たからすぎもとうづめてあると、もつともらしいうそをつきました。をとこはわたしにさうはれると、もうすぎいてえるはうへ、一しやう懸命けんめいすすんできます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
隊長たいちょうのアッカがこうしゃべっていますと、ニールスはすっとまえにすすみでました。
そうしてちながら、外国がいこくや、露西亜ロシヤ新聞しんぶん雑誌ざっしいてあるめずらしいこと、現今げんこんはこう思想しそう潮流ちょうりゅうみとめられるとかとはなしすすめたが、イワン、デミトリチはすこぶ注意ちゅういしていていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すでにして鮑叔はうしゆく(四)せい公子こうし小白せうはくつかへ、管仲くわんちう公子こうしきうつかふ。小白せうはくつて桓公くわんこうるにおよんで、公子こうしきうし、管仲くわんちうとらはる。鮑叔はうしゆくつひ管仲くわんちう(五)すすむ。管仲くわんちうすでもちひられてまつりごとせいにんず。
マサちゃんはをくいしばって、すすんでいきました。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
お前はゆめの中で決心けっしんしたとおりまっすぐにすすんで行くがいい。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ相談そうだんにおいでなさい
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
正直しょうじきで、しんじやすいかみなりは、たかのいうことにしたがいました。そして、かみなりは、方向ほうこうてんじて、みやこほうすすんでいきました。黒雲くろくもかみなりに、したがいました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
するともなく比良ひらみねから三上山みかみやまにかけてなん千というたまあらわれ、それがたいまつ行列ぎょうれつのように、だんだんとこちらにかってすすんでました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
諫説かんぜいしてきみかほをかすにいたつては、所謂いはゆるすすみてはちうつくすをおもひ、退しりぞいてはあやまちおぎなふをおもものなるかな(七三)假令もし晏子あんしにしてらば、これめにむちるといへど忻慕きんぼするところなり。
このとき、蒼白あおじろかおをして、一人ひとり兵士へいしが、部隊長ぶたいちょうまえすすて、自分じぶんもぜひこのなかくわえてくださいといったのです。それは、徳蔵とくぞうさんでした。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)