おく)” の例文
たとえ、それをおもして、なつかしいとおもっても、ただ生活せいかつのまにまに、そのそのおくらなければならなかったのであります。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところこのアルゼリヤこくうちでブリダアといふ市府まちひとわけても怠惰なまけることがき、道樂だうらくをしておくることが好きといふ次第である。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それは、年久しく、甲州に質子ちしとして養われていた末子の五男御坊丸ごぼうまるが、甲州の使者に伴われて、安土へおくかえされて来たことである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで、時々とき/″\お手がみやおうたをおおくりになると、それにはいち/\お返事へんじをさしげますので、やう/\おこゝろなぐさめておいでになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
甚兵衛じんべえは、もうだれたのんでも人形を使いませんでした。そして山からときどきあそびにくるさる相手あいてに、たのしく一しょうおくりましたそうです。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
大門際おほもんぎわ喧嘩けんくわかひとるもありけり、よや女子をんな勢力いきほひはぬばかり、春秋はるあきしらぬ五丁町てうまちにぎわひ、おくりの提燈かんばんいま流行はやらねど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
細々こま/″\しい臺所だいどころ道具だうぐやうなものはまでもあるまい、ふるいのでければとふので、小人數こにんず必要ひつえうだけ一通ひととほそろえておくつてた。其上そのうへ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かくこんな具合ぐあいで、敦子あつこさまは人妻ひとづまとなり、やがて一人ひとりおとこうまれて、すくなくとも表面うわべにはたいそう幸福こうふくらしい生活せいかつおくっていました。
昨夜さくやも、一昨夜いつさくやも、夕食ゆふしよくてゝのち部室へやまど開放あけはなして、うみからおくすゞしきかぜかれながら、さま/″\の雜談ざつだんふけるのがれいであつた。
おくるものと送られるもの、——大勢の軍兵に囲繞いにょうされた左陣とお銀の一団は、こうして高原を東へ東へと半刻余り進んで行った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
障子しやうじかげしやがんで山男やまをとこかほさせる、とこれが、いましがたつひ其処そこまでわたしおくつてくれたわかいもの、……此方こつち其処そこどころぢやい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
失なひ斯迄かくまで千辛萬苦して調しらぶるも手懸りを得ず此上は是非に及ばじこの旨江戸へ申おくり我等は紀州きしうにて自殺致じさついたすより外なしと覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そうだ、おせんちゃん。けえときにゃ、みんなでおくってッてやろうから、きょういち見世みせはなしでも、かしてくんねえよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其時そのとき日本帝國にほんていこく』から何程なにほど利益りえき保護ほごとをけてゐるのかとはれたら、返事へんじには當惑たうわくするほどのミジメな貧乏生活びんばふせいくわつおくつてゐたくせに。
そんな無意な生涯なら動物どうぶつでもおくツてゐる。如何いかに何んでも、僕は動物となツてまでもやすさをむさぼらうとは思はないからな!
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
とんことさ。』と、ミハイル、アウエリヤヌヰチは聽入きゝいれぬ。『ワルシヤワこそきみせにやならん、ぼくが五ねん幸福かうふく生涯しやうがいおくつたところだ。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二三の若い者は、これを捨ゼリフのおくことばで、あっちへ向くと、もう両国の盛り場の人混みへ見えなくなってしまいました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すれば、當國このくに風習通ならはしどほりに、かほわざかくさいで、いっち晴衣はれぎせ、柩車ひつぎぐるませて、カピューレット代々だい/\ふる廟舍たまやおくられさッしゃらう。
そして摂津国せっつのくに難波なにわから、おとうさんやおかあさんをせて、うちじゅうがみんなあつまって、たのしくの中をおくりました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見渡みわたかぎり、あいちやんが針鼠はりねずみおくらうとおもところにはすべ畦畝うねがあつて、二れつになつた兵士へいしつねきて、毬投場グラウンド部分々々ぶゝん/\あるいてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すると青年は自分でとって一つずつ二人におくってよこしましたので、ジョバンニも立って、ありがとうといました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何分なにぶん支那しなひろくにでありますし、またその東部とうぶ大河たいがながしたどろだとか、かぜおくつてきたちひさいすなだとかゞつもつて、非常ひじようにそれがふかいために
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
忽忙そそくさ二重外套にじゆうまわし打被うちかつぎてづる後より、帽子を持ちておくれる妻はひそかに出先を問へるなり。彼は大いなる鼻をしわめて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
とうさんはそれだけのことをいにくそうにって、また自分じぶん部屋へやほうもどってった。こんななやましい、うにわれぬ一にち袖子そでことこうえおくった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それからまた日目かめほとけおくつて村落むらもの黄昏たそがれ墓地ぼちうた。へび猶且やつぱり棺臺くわんだいかげらなかつた。へび自由じいう匍匐はらばふにはあまりに瘡痍きずおほきかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もと(一〇)驕貴けうきにして、以爲おもへらく、しやうすでぐんく、しかうしておのれかんたり、(一一)はなはきふにせずと。親戚左右しんせきさいうこれおくつて留飮りういんす。日中につちうにしていたらず。
父と母とのほかに、みよことみよこのうちのおじさんが、わざわざえきまでおくってきてくれたのであった。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
「じゃ、あんたの家まで、わたしがおくっていってあげればいいでしょう。」と、おばさんは言いました。
ラプンツェルは、そのおとこおんな双生児ふたごんで、この沙漠さばくなかに、かなしいおくってたのです。
砂糖さとう澱粉でんぷんといふような含水炭素がんすいたんそとよぶ養分ようぶんつくり、それをからえだへ、えだからみきくだつておくつて、木全體きぜんたい發育はついくのための養分ようぶんにし、そののこりはたくはへておきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
翌朝よくてう知縣ちけんおくられてた。けふもきのふにかはらぬ天氣てんきである。一たい天台てんだいまん八千ぢやうとは、いつたれ測量そくりやうしたにしても、所詮しよせん高過たかすぎるやうだが、かくとらのゐるやまである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ばうさんは道子みちこ孝心かうしんを、いまにはまれなものとして絶賞ぜつしやうし、そのかへるのを門際もんぎはまでおくつてやつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
旦那寺だんなでらなれば北高和尚をむかへてくわんをいだし、親族しんぞくはさら也人々蓑笠みのかさに雪をしのぎておくりゆく。
なんでもよろしうございます。いておくつてください。きつとですよ。ようございますか。」
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
いよ/\といふた。荷物にもつといふ荷物にもつは、すつかりおくられた。まづをとこ一足ひとあしきに出發しゆつぱつして先方せんぱう都合つがふとゝのへ、それから電報でんぱうつて彼女かのぢよ子供こどもぶといふ手筈てはずであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
かえるどころか、みんなのかおには、まちまでおくってゆこう、という決意けついがあらわれていた。 
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
これが きつと 火星の運河のある所にしげつてゐる植物しよくぶつに水をおくる管だ
どろのやうにぱらはせた兵士へいしらを御用船ごようせんみ込んでおくさうと
おくおおかみ
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おくっていただいた、うつくしい雑誌ざっしともだちにせると、みんなが、うばって、たちまち、きたなくしてしまいました。残念ざんねんでなりません。
おかめどんぐり (新字新仮名) / 小川未明(著)
同伴者つれ親類しんるゐ義母おつかさんであつた。此人このひと途中とちゆう萬事ばんじ自分じぶん世話せわいて、病人びやうにんなる自分じぶんはらまでおくとゞけるやくもつたのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
然るに其かねは野々宮さんが、いもとにヷイオリンをつてらなくてはならないとかで、わざ/\国もと親父おやぢさんからおくらせたものださうだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
甲斐かひのない一生いつしやうおくるは眞實しんじつなさけないことかんがへられ、我身わがみこゝろをためなほさうとはしないでひとごとばかりうらめしくおもはれました。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
付て一同に通夜迄もなし翌朝よくあさ泣々なく/\野邊のべおくりさへいとねんごろに取行なひ妻の紀念かたみ孤子みなしご漸々やう/\男の手一ツにそだてゝ月日を送りけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
も一つ可笑をかしはなしがある。鳥屋とりやのおきやくかへときに、むすめが、「こんだいつ被入いらつしやるの。」とふと、女房かみさんまたうツかり、「おちかうち——」とおくす。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とんだことさ。』と、ミハイル、アウエリヤヌイチは聴入ききいれぬ。『ワルシャワこそきみせにゃならん、ぼくが五ねん幸福こうふく生涯しょうがいおくったところだ。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたくしはそこで忠実ちゅうじつ家来けらい腰元こしもと相手あいて余生よせいおくり、そしてそこでさびしくこの気息いきったのでございます。
いま本島ほんとう主人公しゆじんこうなる櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさ健康けんこうまでもなく、此頃このごろではほとん終日しうじつ終夜しうやを、秘密造船所ひみつぞうせんじよなかおくつてる。
案内あんない猪飼八兵衛いがいはちべえはかけもどって、おくりこまれた徳川家とくがわけ家臣かしん三名、やりぶすまの間をとおってひかえじょに待たされた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諒安はそのくろもじのえだにとりついてのぼりました。くろもじはかすかなにおいを霧におくり霧はにわかにちちいろのやわらかなやさしいものを諒安によこしました。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)