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藍
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あゐ
ふりがな文庫
“
藍
(
あゐ
)” の例文
伜孫三郎の腕の中に、辛くも擧げた孫六の顏は、月の光の中ながら
藍
(
あゐ
)
を
刷
(
は
)
いたやう、自分の脇差に胸を貫かれて、最早頼み少ない姿です。
銭形平次捕物控:128 月の隈
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
青鈍
(
あをにび
)
の水干と、同じ色の
指貫
(
さしぬき
)
とが一つづつあるのが、今ではそれが
上白
(
うはじろ
)
んで、
藍
(
あゐ
)
とも紺とも、つかないやうな色に、なつてゐる。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
又対岸の蘭領のリオ島
外
(
ほか
)
諸島が遠近に
由
(
よ
)
つて明るい緑と
濃
(
こい
)
い
藍
(
あゐ
)
とを際立たせ
乍
(
なが
)
ら屏風の如く
披
(
ひら
)
いて居るのも蛮土とは想はれない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その手を
摩払
(
すりはら
)
ひつつ窓より首を
出
(
いだ
)
して、
停車場
(
ステエション
)
の
方
(
かた
)
をば、求むるものありげに
望見
(
のぞみみ
)
たりしが、やがて
藍
(
あゐ
)
の如き
晩霽
(
ばんせい
)
の空を仰ぎて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
無限の大空には雲の影一ツない。昼の
中
(
うち
)
は烈しい日の光で飽くまで透明であつた空の
藍
(
あゐ
)
色は、薄く薔薇色を帯びてどんよりと
朧
(
おぼ
)
ろになつた。
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
「そら
今度
(
こんだ
)
こさ
雪子
(
ゆきこ
)
の
勝
(
かち
)
だ」と
云
(
い
)
つて
愉快
(
ゆくわい
)
さうに
綺麗
(
きれい
)
な
齒
(
は
)
を
露
(
あら
)
はした。
子供
(
こども
)
の
膝
(
ひざ
)
の
傍
(
そば
)
には
白
(
しろ
)
だの
赤
(
あか
)
だの
藍
(
あゐ
)
だのゝ
硝子玉
(
がらすだま
)
が
澤山
(
たくさん
)
あつた。
主人
(
しゆじん
)
は
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
俊成卿は
逢
(
あ
)
ひと云ふ
波
(
は
)
行の「あひ」を草木の和行の
藍
(
あゐ
)
に、其の外戀を
木居
(
こゐ
)
にかける。こんな「いひかけ」が出て來ます。
仮名遣意見
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
上州境の連山が
丁度
(
ちやうど
)
屏風
(
びやうぶ
)
を立廻したやうに一帯に
連
(
つらな
)
り渡つて、それが
藍
(
あゐ
)
でも無ければ紫でも無い一種の色に
彩
(
いろど
)
られて
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
藍
(
あゐ
)
がちな紫地に小い紅色の花模様のあつたものや、紺地に
葡萄茶
(
えびちや
)
のあらい
縞
(
しま
)
のあるものやを南さんの着て居た姿は今も目にはつきりと残つて居ます。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
他愛
(
たわい
)
なく
頭
(
かしら
)
が
下
(
さが
)
つたと
云
(
い
)
ふのは、
中年
(
ちうねん
)
の
一個
(
いつこ
)
美髯
(
びぜん
)
の
紳士
(
しんし
)
、
眉
(
まゆ
)
におのづから
品位
(
ひんゐ
)
のあるのが、
寶石
(
はうせき
)
を
鏤
(
ちりば
)
めた
藍
(
あゐ
)
の
頭巾
(
づきん
)
で、
悠然
(
いうぜん
)
と
頤
(
あご
)
の
其
(
そ
)
の
髯
(
ひげ
)
を
扱
(
しご
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
人参
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
昨日は人の波打ちしコルソオの大道には、往き交ふ人
疎
(
まばら
)
にして、白衣に
藍
(
あゐ
)
色の縁取りしを
衣
(
き
)
たる懲役人の一群、
霰
(
あられ
)
の如く散りぼひたる石膏の
丸
(
たま
)
を掃き居たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
さて雲のみねは全くくづれ、あたりは
藍
(
あゐ
)
色になりました。そこでベン蛙とブン蛙とは
蛙のゴム靴
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
奇樹
(
きじゆ
)
崖
(
きし
)
に
横
(
よこ
)
たはりて
竜
(
りよう
)
の
眠
(
ねふ
)
るが
如
(
ごと
)
く、
怪岩
(
くわいがん
)
途
(
みち
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎて
虎
(
とら
)
の
臥
(
ふ
)
すに
似
(
に
)
たり。
山林
(
さんりん
)
は
遠
(
とほ
)
く
染
(
そめ
)
て
錦
(
にしき
)
を
布
(
し
)
き、
礀水
(
かんすゐ
)
は
深
(
ふか
)
く
激
(
げき
)
して
藍
(
あゐ
)
を
流
(
なが
)
せり。
金壁
(
きんへき
)
双
(
なら
)
び
緑山
(
りよくざん
)
連
(
つらな
)
りたるさま画にもおよばざる
光景
(
くわうけい
)
也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
以て御尋ね者と成し
所
(
ところ
)
一
向
(
かう
)
行衞
(
ゆくゑ
)
知
(
し
)
れざりしに享保も四年となりし頃は
最早
(
もはや
)
五六年も立し
故
(
ゆゑ
)
氣遣
(
きづか
)
ひなしとは思へども
肩
(
かた
)
へ
藍
(
あゐ
)
にて
黶
(
あざ
)
の如く
入墨
(
いれずみ
)
をなし
額
(
ひたひ
)
にも
腮
(
あご
)
の
形
(
かたち
)
を
畫
(
ゑが
)
き前齒二枚
打缺
(
うちかき
)
て名を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
熊野川は
藍
(
あゐ
)
に澄んで目前を流れてゐる。けふの途中に、山峡からたまたま熊野川が見え出し、発動機船の鋭い音が山にこだまさせながら聞こえてゐたが、あれも山水に新しい気持を起させた。
遍路
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
と大きな
声
(
こゑ
)
を出して
山中
(
やまぢう
)
呶鳴
(
どな
)
り歩きます
中
(
うち
)
に、
田圃
(
たんぼ
)
の
出口
(
でぐち
)
の
掛茶屋
(
かけぢやや
)
に腰を
掛
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
ました
女
(
をんな
)
は
芳町辺
(
よしちやうへん
)
の
芸妓
(
げいしや
)
と見えて、お
参
(
まゐ
)
りに
来
(
き
)
たのだから
余
(
あま
)
り
好
(
よ
)
い
装
(
なり
)
では
有
(
あ
)
りません、
南部
(
なんぶ
)
の
藍
(
あゐ
)
の
萬筋
(
まんすぢ
)
の
小袖
(
こそで
)
に
心眼
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
解けにし
藍
(
あゐ
)
の一すぢの糸かとばかりかゝりたる
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
藍
(
あゐ
)
を
湛
(
たた
)
へし静寂のかげ、ほのぐらき
清海波
(
せいがいは
)
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
藍
(
あゐ
)
や
海原
(
うなばら
)
、
白銀
(
しろがね
)
や風のかがやき、——
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
藍
(
あゐ
)
いろのかげさす
忘春詩集:02 忘春詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
自然
(
しぜん
)
の
魂塊
(
たましひ
)
藍
(
あゐ
)
に
文月のひと日
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
ギラリ引拔いた一刀、佐次郎の顏は
藍
(
あゐ
)
のやうに見えます。多分激情に自制心を失ふ、不思議な變質者ででもあつたでせう。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
……
其
(
そ
)
の
黒繻子
(
くろじゆす
)
に、
小辨慶
(
こべんけい
)
の
藍
(
あゐ
)
と
紺
(
こん
)
、
膚
(
はだ
)
の
白
(
しろ
)
さも
可
(
い
)
いとして、
乳房
(
ちゝ
)
の
黒子
(
ほくろ
)
まで
言
(
い
)
ひ
當
(
あ
)
てられました、
私
(
わたし
)
が
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
の
心持
(
こゝろもち
)
、
憚
(
はゞか
)
りながら
御推量
(
ごすゐりやう
)
下
(
くだ
)
さりまし。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
足下
(
あしもと
)
には層をなして市街の屋根が斜めに重なり、対岸には
珠江
(
しゆかう
)
の
河口
(
かこう
)
を
抱
(
いだ
)
いた半島が
弓形
(
きゆうけい
)
に展開し、
其間
(
そのあひだ
)
に
瓢
(
ひさご
)
を
割
(
さ
)
いた様な形で
香港
(
ホンコン
)
湾が
藍
(
あゐ
)
を湛へて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
自分は小山から小山の間へと縫ふやうに通じて居る路を
喘
(
あへ
)
ぎ/\伝つて行くので、前には僧侶の
趺坐
(
ふざ
)
したやうな山が
藍
(
あゐ
)
を
溶
(
とか
)
したやうな空に
巍然
(
ぎぜん
)
として
聳
(
そび
)
えて居て
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
たゞ単調に澄んでゐたものの
中
(
うち
)
に、色が幾通りも
出来
(
でき
)
てきた。
透
(
す
)
き
徹
(
とほ
)
る
藍
(
あゐ
)
の
地
(
ぢ
)
が消える様に次第に
薄
(
うす
)
くなる。其上に白い雲が
鈍
(
にぶ
)
く
重
(
かさ
)
なりかゝる。
重
(
かさ
)
なつたものが溶けて
流
(
なが
)
れ
出
(
だ
)
す。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ありがたう。」雪童子はそれをひろひながら、白と
藍
(
あゐ
)
いろの野はらにたつてゐる、美しい町をはるかにながめました。川がきらきら光つて、停車場からは白い煙もあがつてゐました。
水仙月の四日
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
たゞ
他所
(
たしよ
)
の者は
渋海川
(
しぶみがは
)
の
氷見
(
こほりみ
)
とて、花見のやうに
酒肴
(
しゆかう
)
をたづさへ
岸
(
きし
)
に
彩筵
(
はなござ
)
毛氈
(
まうせん
)
などしきてこれを見る。大小
幾
(
いく
)
万の
氷片
(
こほりのわれ
)
水晶
(
すゐしよう
)
の
盤石
(
ばんじやく
)
のごときが、
藍
(
あゐ
)
のやうなる浪に
漂
(
たゞよ
)
ひながるゝは目ざましき
荘観
(
みもの
)
なり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
藍
(
あゐ
)
と
鬱金
(
うこん
)
に染まる
爪
(
つめ
)
。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
黄金
(
こがね
)
の
鱗
(
うろこ
)
藍
(
あゐ
)
ぞめの
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
葡萄色
(
ぶだういろ
)
に
藍
(
あゐ
)
がかつて、づる/\と
蔓
(
つる
)
に
成
(
な
)
つて、
葉
(
は
)
は
蓮
(
はす
)
の
葉
(
は
)
に
肖如
(
そつくり
)
で、
古沼
(
ふるぬま
)
に
化
(
ば
)
けもしさうな
大
(
おほき
)
な
蓴菜
(
じゆんさい
)
の
形
(
かたち
)
である。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
顏一面に
藍
(
あゐ
)
を塗つて、墨で
隈取
(
くまど
)
つたやうな無氣味な顏が、自分の顏の横から、そつと覗いてるではありませんか。
銭形平次捕物控:331 花嫁の幻想
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
赤い
封蝋
(
ふうらふ
)
細工のほほの木の芽が、風に吹かれてピッカリピッカリと光り、林の中の雪には
藍
(
あゐ
)
色の木の影がいちめん網になって落ちて日光のあたる所には銀の
百合
(
ゆり
)
が咲いたやうに見えました。
雪渡り
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
セエヌは常に
藍
(
あゐ
)
を湛へて
溶溶
(
よう/\
)
と流れて居るが、テエムスは
何時
(
いつ
)
も甚だしく濁つて
忙
(
せは
)
し
相
(
さう
)
である。
彼
(
かれ
)
が優麗なルウヴル宮やトロカデロの劇場を映すのに対して、
之
(
これ
)
は堅実な
国会
(
パリヤマン
)
の大建築を伴つて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
藍
(
あゐ
)
と
鬱金
(
うこん
)
に染まる
爪
(
つめ
)
。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
が、
其
(
そ
)
の
影
(
かげ
)
が
映
(
さ
)
すと、
半
(
なか
)
ば
埋
(
うも
)
れた
私
(
わたし
)
の
身體
(
からだ
)
は、ぱつと
紫陽花
(
あぢさゐ
)
に
包
(
つゝ
)
まれたやうに、
青
(
あを
)
く、
藍
(
あゐ
)
に、
群青
(
ぐんじやう
)
に
成
(
な
)
りました。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
中田屋杉之助の顏は眞つ蒼、——その
藍
(
あゐ
)
のやうな額に油汗が浮かんで、恐ろしい苦惱の色が
鞭打
(
むちう
)
つたやうに顏中を走ると、胸を押へてクワツと吐いたのは
一塊
(
ひとかたまり
)
の血潮です。
銭形平次捕物控:167 毒酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
たしかにみんなさう云ふ気もちらしかったのです。製板の小屋の中は
藍
(
あゐ
)
いろの影になり、白く光る
円鋸
(
まるのこ
)
が四五
梃
(
ちゃう
)
壁にならべられ、その一梃は軸にとりつけられて幽霊のやうにまはってゐました。
イギリス海岸
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
……
発
(
ぱつ
)
と
朱
(
しゆ
)
が
底
(
そこ
)
へ
漲
(
みなぎ
)
ると、
銀
(
ぎん
)
を
蔽
(
おほ
)
ふて、三
脚
(
きやく
)
の
火
(
ひ
)
が
七
(
なゝ
)
つに
分
(
わか
)
れて、
青
(
あを
)
く、
忽
(
たちま
)
ち、
薄紫
(
うすむらさき
)
に、
藍
(
あゐ
)
を
投
(
な
)
げて
軽
(
かる
)
く
煽
(
あふ
)
つた。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それは何んと、
長襦袢
(
ながじゆばん
)
を踏みはだけた寢亂れ姿、髮が少し亂れて、
銀簪
(
ぎんかんざし
)
を振り冠つた青い顏——
藍
(
あゐ
)
を塗つたやうな
鬼畜
(
きちく
)
の顏——
紛
(
まぎ
)
れもない、内儀のお輝の血に
渇
(
かわ
)
く、物凄い顏だつたのです。
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
裳
(
もすそ
)
を
曳
(
ひ
)
く
濡縁
(
ぬれえん
)
に、
瑠璃
(
るり
)
の
空
(
そら
)
か、
二三輪
(
にさんりん
)
、
朝顏
(
あさがほ
)
の
小
(
ちひさ
)
く
淡
(
あは
)
く、
其
(
そ
)
の
色
(
いろ
)
白
(
しろ
)
き
人
(
ひと
)
の
脇
(
わき
)
明
(
あけ
)
を
覗
(
のぞ
)
きて、
帶
(
おび
)
に
新涼
(
しんりやう
)
の
藍
(
あゐ
)
を
描
(
ゑが
)
く。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
藍
(
あゐ
)
のやうな顏をして
悶
(
もだ
)
え苦しんで居ります。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
處
(
ところ
)
を、
君達
(
きみたち
)
、それ
見
(
み
)
よ
春家
(
はるいへ
)
。と、
袖
(
そで
)
を
去
(
さ
)
る
事
(
こと
)
一尺
(
いつしやく
)
ばかり。
春家
(
はるいへ
)
顏
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
は
朽
(
くち
)
し
藍
(
あゐ
)
のやうに
成
(
な
)
つて、
一聲
(
ひとこゑ
)
あつと
叫
(
さけ
)
びもあへず、
立
(
た
)
たんとするほどに
二度
(
にど
)
倒
(
たふ
)
れた。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
氣
(
き
)
の
寄
(
よ
)
る
時
(
とき
)
は、
妙
(
めう
)
なもので……
又
(
また
)
此處
(
こゝ
)
へ
女
(
をんな
)
一連
(
ひとつれ
)
、これは
丸顏
(
まるがほ
)
の
目
(
め
)
のぱつちりした、
二重瞼
(
ふたへまぶた
)
の
愛嬌
(
あいけう
)
づいた、
高島田
(
たかしまだ
)
で、あらい
棒縞
(
ぼうじま
)
の
銘仙
(
めいせん
)
の
羽織
(
はおり
)
、
藍
(
あゐ
)
の
勝
(
か
)
つた。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
屋號
(
やがう
)
、
樓稱
(
ろうしよう
)
(
川
(
かは
)
。)と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
、(
松
(
まつ
)
。)と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
、
藍
(
あゐ
)
に、
紺染
(
こんぞめ
)
、
暖簾
(
のれん
)
靜
(
しづか
)
に(
必
(
かならず
)
。)と
云
(
い
)
ふ
形
(
かたち
)
のやうに、
結
(
むす
)
んでだらりと
下
(
さ
)
げた
蔭
(
かげ
)
にも、
覗
(
のぞ
)
く
島田髷
(
しまだ
)
は
見
(
み
)
えなんだ。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
藍
(
あゐ
)
あさき
宵
(
よひ
)
の
空
(
そら
)
、
薄月
(
うすづき
)
の
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
りて、
雲
(
くも
)
は
胡粉
(
ごふん
)
を
流
(
なが
)
し、
一
(
ひと
)
むら
雨
(
さめ
)
廂
(
ひさし
)
を
斜
(
なゝめ
)
に、
野路
(
のぢ
)
の
刈萱
(
かるかや
)
に
靡
(
なび
)
きつゝ、
背戸
(
せど
)
の
女郎花
(
をみなへし
)
は
露
(
つゆ
)
まさる
色
(
いろ
)
に
出
(
い
)
で、
茂
(
しげ
)
れる
萩
(
はぎ
)
は
月影
(
つきかげ
)
を
抱
(
いだ
)
けり。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
小春時
(
こはるどき
)
の
一枚小袖
(
いちまいこそで
)
、
藍
(
あゐ
)
と
紺
(
こん
)
の
小辨慶
(
こべんけい
)
、
黒繻子
(
くろじゆす
)
の
帶
(
おび
)
に、
又
(
また
)
緋
(
ひ
)
の
扱帶
(
しごき
)
……
髷
(
まげ
)
に
水色
(
みづいろ
)
の
絞
(
しぼ
)
りの
手絡
(
てがら
)
。
艷
(
つや
)
の
雫
(
しづく
)
のしたゝる
鬢
(
びん
)
に、ほんのりとした
耳
(
みゝ
)
のあたり、
頸許
(
えりもと
)
の
美
(
うつく
)
しさ。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
途
(
みち
)
すがらも、
此
(
こ
)
の
神祕
(
しんぴ
)
な
幽玄
(
いうげん
)
な
花
(
はな
)
は、
尾花
(
をばな
)
の
根
(
ね
)
、
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
、
山
(
やま
)
の
裂
(
さ
)
けた
巖角
(
いはかど
)
に、
輕
(
かろ
)
く
藍
(
あゐ
)
に
成
(
な
)
つたり、
重
(
おも
)
く
青
(
あを
)
く
成
(
な
)
つたり、
故
(
わざ
)
と
淺黄
(
あさぎ
)
だつたり、
色
(
いろ
)
が
動
(
うご
)
きつつある
風情
(
ふぜい
)
に
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
螢
(
ほたる
)
一
(
ひと
)
つ、すらりと
反對
(
はんたい
)
の
窓
(
まど
)
より
入
(
い
)
りて、
細
(
ほそ
)
き
影
(
かげ
)
を
捲
(
ま
)
くと
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
汗
(
あせ
)
埃
(
ほこり
)
の
中
(
なか
)
にして、
忽
(
たちま
)
ち
水
(
みづ
)
に
玉敷
(
たまし
)
ける、
淺葱
(
あさぎ
)
、
藍
(
あゐ
)
、
白群
(
びやくぐん
)
の
涼
(
すゞ
)
しき
草
(
くさ
)
の
影
(
かげ
)
、
床
(
ゆか
)
かけてクシヨンに
描
(
ゑが
)
かれしは
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
そ
)
の
惱
(
なや
)
ましさを、
崖
(
がけ
)
の
瀧
(
たき
)
のやうな
紫陽花
(
あぢさゐ
)
の
青
(
あを
)
い
叢
(
くさむら
)
の
中
(
なか
)
に
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
むで
身
(
み
)
を
冷
(
ひや
)
しつゝ、
且
(
か
)
つもの
狂
(
くる
)
はしく
其
(
そ
)
の
大輪
(
おほりん
)
の
藍
(
あゐ
)
を
抱
(
いだ
)
いて、
恰
(
あたか
)
も
我
(
われ
)
を
離脱
(
りだつ
)
せむとする
魂
(
たましひ
)
を
引緊
(
ひきし
)
むる
思
(
おも
)
ひをした。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
藍
常用漢字
中学
部首:⾋
17画
“藍”を含む語句
甘藍
伽藍
藍染川
藍色
藍鼠
藍染
藍靛
藍瓶
濃藍
藍本
花甘藍
藍染橋
碧藍
藍微塵
大伽藍
出藍
薄藍
藍玉
藍摺
藍玉屋
...