ゆる)” の例文
おとこは、さかんにわるいことをしました。しかし、世間せけんは、それをゆるすものではありませんから、じきにまたらえられてしまいました。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし下人にとつては、このあめに、この羅生門の上で、死人の髮のを拔くと云ふ事が、それ丈で既にゆるす可らざる惡であつた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「おっと、御念ごねんにはおよばねえ。おかみゆるしておくんなさりゃァ、棒鼻ぼうはなへ、笠森かさもりおせん御用駕籠ごようかごとでも、ふだててきてえくらいだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
だまれ! をひくせ伯父樣をぢさまめかけねらふ。愈々いよ/\もつ不埒ふらちやつだ。なめくぢをせんじてまして、追放おつぱなさうとおもうたが、いてはゆるさぬわ。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天子てんしさまはそのうたをおよみになって、かわいそうにおおもいになり、頼政よりまさ四位しいくらいにして、御殿ごてんのぼることをおゆるしになりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
でも力も落とさず、それから引っ返してしまおうとも思わずに待っていたおかげで、わたしはやっと面会をゆるされることになった。
『できても、できなくても一おう神様かみさま談判だんぱんしていただきます。これくらいねがいがゆるされないとあっては、わしにも料簡りょうけんがござります……。』
「この外人はまことに恐れ入ったしだいであるといい、かく脱帽しておわびを申し上げています、何分にもいのちだけはおゆるしをねがいたい」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
闔廬かふろいはく、『こころみに婦人ふじんもつてすきか』と。いはく、『なり』と。ここおいこれゆるす。宮中きうちう美女びぢよいだし、百八十にんたり。
しかしそのとき周圍しうゐ事情じじやうは、病人びやうにんをKうちかしてことゆるさないので、ぐに何處どこへか入院にふゐんさせなければならなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
院長ゐんちやうなにがしなかだちをしたのだといふうはさもあつた。人々ひと/″\はたゞ彼女かのぢよよわをんなであるといふことのために、おほみゝおほうて彼女かのぢよゆるした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「むぐらはゆるしておやりよ。ぼくもう今朝けさゆるしたよ。けれどそのおいしいたべものは少しばかりって来てごらん」といました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なにしろ、あいつたちは卵やヒナドリまでもゆるしてはおかないということだから、どこかへ、ひっこさなくちゃなるまい、というのです。
始めとして富澤町の實父じつぷにも兄にも先立さきだつ不幸ふかうの罪おゆるなされて下されよ是皆前世の定業と斷念あきらめられて逆樣さかさまながら只一ぺんの御回向を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ああ、おゆるしがでないとあたしたちもいただけやしないからね。それに、」と、女中はみょうな顔をして笑いながらいいました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
山田やまだ元来ぐわんらい閉戸主義へいこしゆぎであつたから、からだかう雑務ざつむ鞅掌わうしやうするのをゆるさぬので、おのづからとほざかるやうにつたのであります
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ひる午睡ひるねゆるされてあるので時間じかんいて器用きようかれには内職ないしよく小遣取こづかひどりすこしは出來できた。きな煙草たばことコツプざけかつすることはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それが大変うまく、緩急をつけて、なかなかちょっと誰にでもはやれない地唄の中のゆるし物をれた渋い声で唄って来る。
京のその頃 (新字新仮名) / 上村松園(著)
そこで五人はかけました。おかあさんにちゃんとお約束やくそくをしたので、五人だけでってもいいというおゆるしが出たのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
其以上それいじやうわたし詰問きつもんとほらぬ。とほらぬところくら不安ふあんかげたゞようてゐるのであるが、かげかげで、一わたし足迹そくせきるゝをゆるさぬのである。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そこで子家鴨こあひるためしに三週間しゅうかんばかりそこにことゆるされましたが、たまごなんかひとつだって、うまれるわけはありませんでした。
不都合ふつごうやつだ。しかしおとなしく人形をだしたから、いのちだけはたすけてやる。どこへなりといってしまえ。またこれから泥坊どろぼうをするとゆるさんぞ」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「へエ——、面目次第も御座いません。——親御(金右衞門)のおゆるしがあれば、何時でも一緒になる氣で居りました」
これらの博物館はくぶつかんについて一々いち/\くはしくおはなしをすることは、このほん紙面しめんゆるさないばかりでなく、科學博物館かがくはくぶつかんや、美術びじゆつ歴史れきし博物館はくぶつかんかんしては
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「いや、何度なんどまえたのみにきても、わしは井戸いどらせん。しゃっくりがもうあと一にちつづくと、わしがぬそうだが、んでもそいつはゆるさぬ。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
左樣さやうさ、一旦いつたん無事ぶじ本國ほんごくかへつてたが、法律ほふりつと、社會しやくわい制裁せいさいとはゆるさない、嚴罰げんばつかうむつて、ひどつて、何處いづくへか失奔しつぽんしてしまいましたよ。
これは、丹羽昌仙にわしょうせんのれいの蓑虫根性みのむしこんじょうから起ること、なにとぞ、とくにお頭領よりこの又八に、城外へ打ってでることを、おゆるし願わしゅうぞんじます
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗助そうすけこの臆斷おくだんゆるすべき餘地よちが、安井やすゐ御米およねあひだ充分じゆうぶん存在そんざいるだらうぐらゐかんがへて、ながら可笑をかしくおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、たとへば、たとへばと諸賢しよけんのの麻雀振マアジヤンぶり紹介せうかいするつもりだつたが、ちやうどゆるされた枚數まいすうにもたつしたし、あとのたたりもおそろしいので。(せう五・三・三)
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
陪審人ばいしんにんひとつが鉛筆えんぴつきしらせました。つことをゆるされないにもかゝはらずあいちやんは、法廷ほふていまはつて背後うしろき、すきねらつて手早てばやくそれをりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
可愛かはゆつまあねことなれば、やさしきゆるしのねがはずしてるに、飛立とびたつほどうれしいを此方こなたわざいろにもせす、ではきませうかと不勝々々ふしよう/″\箪笥たんすかくれば
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すなわち紹介しょうかいを求めて軍艦奉行ぐんかんぶぎょうやしき伺候しこうし、従僕じゅうぼくとなりて随行ずいこうせんことを懇願こんがんせしに、奉行はただ一面識いちめんしきもと容易たやすくこれをゆるして航海こうかいれつに加わるを得たり。
あへて一行をわづらはすことなけん、つつしんで随行の許可きよかを得んことをふと、衆其熱心ねつしんかんよろこんで之をゆるす、内二人は上牧村の者にして他一人は藤原村字くぼの者とす
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
吾が国に雪吹ふゞきといへるは、猛風まうふう不意ふいおこりて高山平原かうざんへいげんの雪を吹散ふきちらし、その風四方にふきめぐらして寒雪かんせつ百万のとばすが如く、寸隙すんげきあひだをもゆるさずふきいるゆゑ
早速さっそくこれをゆるし宗伯を熱海につかわすこととなり、爾来じらい浅田はしばしば熱海に往復おうふくして公使を診察しんさつせり。
すぐにそのちからのなすまゝにかたち調節ちようせつして平均へいきんつため、地震力ぢしんりよくたくはへられることをゆるされない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
同船どうせんゆるす、みんなれ。』と、天滿與力てんまよりきふねからきおろされた百姓ひやくしやう町人ちやうにんむれむかつてこゑをかけた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ねづみが「おぢさんわたいのやうないさなものをいぢめたつてあなたの手柄てがらにもなりますまい」つてつたらライオンは「ハヽヽヽなるほどさうだ」つてゆるしてやつた。
ただし、当局側とうきょくがわ見解けんかいでは、まだ十ぶんなきめがない。監視かんしつきでひとまず帰宅きたくゆるしたのであつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
この歌は、「人のゆるさむことをし待たむ」というのが好いので選んだ。男が女の許すのを待つ、気長に待つ気持の歌で、こういう心情もまた女に対する恋の一表現である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
むかし苗字めうじ武士階級ぶしかいきふ以上いじやうかぎられたが、維新いしん以來いらいしやう町人ちやうにんすべ苗字めうじゆるされたので、種々雜多しゆ/″\ざつた苗字めうじ出現しゆつげんし、苗字めうじうぢともせいともことになつて今日こんにちにいたつたのである。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ヂュリ さア、いてもませう、かるゝものなら。とはいへ、わたしの矢頃やごろは、はゝさまのおゆるしをばかぎりにして、それよりきつうは射込いこまぬやうにいたしませう。
よつ其駁雑そのはくざつけづり、校訂かうてい清書せいしよし、豚児とんじ京水にゑがゝしめしもの三巻、書賈しよかこひおうじ老人につげゆるもつてしきしに、発販はつはん一挙いつきよして七百余部よぶひさげり。これより書肆しよし後編こうへんふ。
号室ごうしつうちでこのモイセイカばかりは、にわにでもまちにでも自由じゆう外出でるのをゆるされていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
他の国にゆかしめば、必ずも後のわざはひとなるべしと、ねんごろに教へて、又商鞅をひそかにまねき、吾汝を一三四すすむれども王ゆるさざる色あれば、用ゐずばかへりて汝を害し給へと教ふ。
保安上ほあんじやう容易よういならぬ問題もんだいであるといふので(それにみだりに神社呼じんじやよばはりをこと法律はふりつゆるさぬところでもあるので)奉納ほうのう旗幟はたのぼり繪馬等ゑまとうてつせしめ、いはやから流出りうしゆつする汚水をすい酌取くみとるをきん
シロクシナスを牢舎らうやれたのは、あやまり、第一国内こくないで一とう学者がくしやといふ立派りつぱの人物を押込おしこめて置くといふは悪かつた、とお心附こゝろづきになりましたから、早速さつそくシロクシナスをゆるして
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「小父さん、もう悲しまないでね。もう意地悪いじわるはしないよ。ゆるしておくれよ。僕は小父おじさんが大好きだ!」しかしかれはいえなかった。——そしていきなり小父おじうでの中にとびこんだ。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
此期に及び多くは言はじ、只〻御邊がゆるしを願ふのみ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
交易の品に御定め売捌所うりさばきじょ、御ゆるし御座ありたく候
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)