-
トップ
>
-
飛立
今
仰しゃった事がほんとうなら
飛立つ程嬉しいが、只今も申す通り、
私は今じゃア
零落れて
裏家住いして、人力を
挽く
賤しい身の上
と
可愛き
妻が
姉の
事なれば、
優しき
許しの
願はずして
出るに、
飛立つほど
嬉しいを
此方は
態と
色にも
見せす、では
行きませうかと
不勝々々に
箪笥へ
手を
懸れば
追つて走り行くにぞアラ
有難や
嬉しやと
飛立ばかりに
打喜悦泊りの宿へと
急ぎ行きしにお專與惣次を
御駕籠訴に
行か行ぬか天下の吟味
叶はぬ迄も願つて見ん夫で行ねば是非もない
夫が
大事と思ふなら己と一所に願ひ出よと聞てお節は
飛立思ひ夫なら父樣
寸時も早ふ御駕籠訴とやら云事を