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陪審人
愛ちやんは
陪審人が
殘らず
其の
石盤に、『
愚物だわねえ!』と
書きつけてゐるのを、
皆なの
肩越しに
全然能く
見ました、それのみならず
愛ちやんは
陪審人の
一つが
鉛筆を
軋らせました。
立つことを
許されないにも
拘らず
愛ちやんは、
法廷を
廻つて
其の
背後へ
行き、
隙を
狙つて
手早くそれを
取り
去りました。
十二の
陪審人は
皆な
忙しさうに
石盤に
書いてゐました。『
何を
皆なで
爲てるんでせう?』と
愛ちやんはグリフォンに
咡いて、『
審問が
始まらないので、
未だそんなに
何も
書くことがないんだわ』