つみ)” の例文
かみさまは自分じぶんわるかったとかんじられました。そして、つみもない、おけらの一しょうとしては、あまりに、みじめであったとおもわれました。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
の人の作った戯曲の面白さが分らないとすれば、つみは自分の方にある。残念ながら、自分は藝術の殿堂でんどううかゞう資格がないのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
つみおとし入んと計りくらき夜に昌次郎と兩人ふたりにて男女をころし悴娘の着類をきせ兩人の首をきつて川へ流せしおもむき最早兩人より白状はくじやうに及びしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
不知庵主人フチアンシユジンやくりしつみばつたいする批評ひゝやう仲々なか/\さかんなりとはきゝけるが、病氣びやうき其他そのたことありて今日こんにちまでにたるはわづか四五種しごしゆのみ
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
「わたくしは、におぼえのないつみをいいわたされたのでございます。わたくしは、いつなんどきも、忠義をつくしてまいりました。」
祇園の歌蝶は憲政芸妓として知られ、選挙違反ですこしの間つみせられ、禅門に参堂し、富菊は本願寺句仏上人くぶつしょうにん得度とくどして美女の名が高い。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
解釋かいしやくしたとき御米およねおそろしいつみをかした惡人あくにんおのれ見傚みなさないわけかなかつた。さうしておもはざる徳義上とくぎじやう苛責かしやく人知ひとしれずけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おやないだが、成長せいてうしたらアノとほりの獰惡振だうあくぶりを相續さうぞくするにちがひない、環境かんけうつみだいつそうちつてやらうかとおもつて、また躊躇ちうちよした。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
「でもそちのように不義ふぎで、みだらで、つみふかく、ばかものを生けどってくらしているものに、どうしてまことの力があるのか」
手紙 二 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
翌年よくとしになり權官はあるつみを以てしよくはがれてしまい、つい死亡しばうしたので、ぼくひそかに石をぬすみ出してりにたのが恰も八月二日の朝であつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
孔子曰く、後世、丘を知らんとする者は、春秋を以てせん、しこうして丘をつみせんとする者もまた春秋を以てせん。(『孔子全集』、一九七五)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「だってぼくはつかまるとは思わないから。でもにげ出すということがつみになりやしないかと思うのだ。それが気になるのだ」
今度こんどお客がとまつたら茗荷めうがはせよう、さうしたら無闇むやみに物を忘れてくだらう、ナニ此方こつち泥坊どろばうたのぢやアないからつみにはならねえや。
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わすられぬは我身わがみつみひととがおもへばにくきは君様きみさまなりおこゑくもいや御姿おすがたるもいやればけばさるおもひによしなきむね
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なぜ面と向って私に仰いませんのでしょう……? 可哀そうに何のつみとがもない悲哀トリステサにお当りになるなんて! まあなんて卑怯な方なんでしょう
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
まことに、つみな、まないことぢやあるけれども、同一おなじ病人びやうにんまくらならべてふせつてると、どちらかにかちまけがあるとのはなしかべ一重ひとへでも、おんなじまくら
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うたおぼすらむ。然れども昼牟子を風の吹き開きたりつるより見奉るに、更にものおぼえずつみゆるし給へ云々うんぬん」とある。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ロミオ このいやしいたふと御堂みだうけがしたをつみとあらば、かほあかうした二人ふたり巡禮じゅんれいこのくちびるめの接觸キッスもって、あらよごしたあとなめらかにきよめませう。
そもそも五一永治えいぢの昔、をかせるつみもなきに、五二みかどみことかしこみて、三歳の五三体仁としひとゆづりし心、人慾深きといふべからず。
はたしてさけあまたえしゆゑ鵜飼うかひ謡曲うたひにうたふごとくつみむくひのちわすれはてゝ、おもしろくやゝ時をぞうつしける。
わたくしというものはよくよく執着しゅうじゃくつよい、つみふかい、女性じょせいだったのでございましょう。——この生活せいかつ何年位なんねんくらいつづいたかとのおたずねでございますか……。
それがゆえに、つみのようだが、ふたりを別々な口へいれて、じょうまでおろしているのだよ、これもひとつの情けのかぎだ。悪く思ってくれてはこまる
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衞國ゑいこくはふひそかきみくるまするものつみ(一〇七)げついたる、すでにして彌子びしははむ。ひとき、いてよるこれぐ。彌子びしいつはつてきみくるましてづ。
照彦てるひこ様はまもなく台所で見つかって、お母様のお部屋へやへ引かれてゆく途中とちゅう小間使こまづかいの手のこうに歯あとの残るほどかみついて、また一つつみがふえた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「そんだがよ、先刻さつきてえにいてんのに惡口わるくちなんぞいふなつみだよなあ」とわか女房等にようばうらはそれでもしんみりといつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしはもう自分じぶんながら自分じぶんふかつみまよいのために、このとおり石になってもなおくるしんでいるのでございます。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
折々は学者のうちに高慢ちきな者があると、学者そのものをきらい、進んでは学問そのものをすらつみする傾向がある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「聖母マリアさま、われらつみ人のために祈りたまえ……こりやあれとそつくりじや……恐ろしいほどそつくりじや——悪魔のような愛人のために泣く女」
「ははは。若旦那わかだんな」と、まつろうくちをはさんだ。「そいつァちとめが強過つよすぎやしょう。小僧こぞうさんにつみはねえんで。みんなあなたのわがままからじゃござんせんか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しか無論むろんかれ自身じしんなんつみもなきこと、また將來しやうらいおいても殺人さつじん窃盜せつたう放火はうくわなどの犯罪はんざいだんじてぬとはつてゐるが、またひとりつく/″\とうもおもふたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『それがなによりつみのある證據しようこだ、までもなく』と女王樣ぢよわうさままをされました、『かまはない、ねろ——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
亞尼アンニーは、いまは、眞如しんによ月影つきかげきよき、ウルピノ山中さんちうくさいほりに、つみもけがれもなく、此世このよおくつてことでせうが、あのにくむべき息子むすこ海賊かいぞくは、矢張やはり印度洋インドやうなみまくら
女はむかしのままの一筋ひとすじの真心をもってわたしを愛してくれるのに、このような分裂ぶんれつした気持ちを胸にぞうし、表面だけとりつくろっているのはつみであると思いました。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
自分はなんらおかしたつみはないと考えても、それがために苦痛くつう事実じじつかるくなるとは思えないのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そのエスさまは、どうかというと、みんなのまんなかで、両手りょうてをさしのべながら、子どもたちを祝福しゅくふくしたり、つみくおかあさんたちを祝福したりしていらっしゃる。
しかしあのあか水々みづ/″\したは、ながい/\野山のやまゆきえるまでのあひだを、かみ小鳥達ことりたち糧食りやうしよくにとそなへられたものではないかとおもふと、痛々いた/\しくなたれたひとつみおそろしい。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ふたりは、サンドリヨンの足もとにつっぷして、これまでひどい目にあわせたつみをわびました。サンドリヨンは、ふたりの手をとっておこして、やさしくだきしめました。
いままで、ごろごろとのんきにころがつてつみのない世間話せけんばなしをしてゐたうりが、一せいにぴたりとそのはなしをやめて、いきころしました。みんな、そしてねむつた眞擬ふりをしてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
誠に心配な話である、之を私が言葉を設けて評すれば、弱藩つみなし武器わざわいをなすと云わねばならぬ、ダカラいっそこの鉄砲を皆うっ仕舞しまいたい、見れば大砲はいずれもクルップだ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かれは、自分よりも長い生命いのちがあるにちがいないと感じたまご作品さくひんの中に、自分のまずい一節ひとふしをはさみ込むという、きわめてつみのないたのしみを、おさえることができなかったのである。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
なんぢおきなよ、そちはすこしばかりのいことをしたので、それをたすけるために片時かたときあひだひめくだして、たくさんの黄金おうごんまうけさせるようにしてやつたが、いまひめつみえたのでむかへにた。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
混乱こんらんした世相はここにもあらわれて、つみもなく若い生命いのちをうばわれた彼らの墓前ぼぜんに、花をまつるさえ忘れていることがわかった。花立ての椿つばきはがらがらにれて午後のをうけている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「ばか。おまえがあたまでっかちだって、おっかさんのつみではないんだよ。」
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「申し開きをせず腹を切ったことだから、言わずと当人つみに落ちたものじゃ」
〔評〕徳川慶喜よしのぶ公は勤王きんわうの臣たり。幕吏ばくりの要する所となりて朝敵てうてきとなる。猶南洲勤王の臣として終りをくせざるごとし。公はつみゆるし位にじよせらる、南洲は永く反賊はんぞくの名をかうむる、悲しいかな。
人々ひとびと御主おんあるじよ、われをもつみくなしたまへ、この癩病らいびやうものを。」あゝさむしい、あゝ、こはい。だけに、生来しやうらいしろいろのこつてゐる。けものこはがつてちかづかず、わがたましひげたがつてゐる。
醫道いだうおもてからまをしますれば、んだものをきてゐるとして、白々しら/″\しい見立みたきで、かみいつはるのは、おもつみあたりませうが、これもまア、五まん千石ぜんごくの一家中かちうたすけるとおもうていたしました。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いま漁人ぎよじんとなつて餘命よめいおくるといへども、何日いつかつみあがなうてふたゝ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それはね、これの校了かうれう校正刷かうせいずりんでゐて誤植ごしよくひと發見はつけんしてなほしていたことだ。もつともその手柄てがらと、こんなことを卷頭くわんとういてきみうつくしいほんをきたなくするつみとでは、差引さしひきにならないかもれない。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
此度このたびの事件については、見す見す間違った推断によってつみせられんとする我学界の長者を救うものは、偶然にもその現場に居合いあわして、一寸した証拠物件を手に入れた、この私の外にないと信ずるが故に
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)