べつ)” の例文
しかれどもべつ社界しやかい大弊根たいへいこんながそんするありて、壯年有爲そうねんゆういをして徃々おう/\にして熱火ねつくわ焔柱ゑんちういだくの苦慘くさんこゝろよしとせしむることあり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかこれきたはなしとか、交際かうさいとかとふものとはまたべつで、あま適切てきせつれいではりませんが、たとへば書物しよもつはノタで、談話だんわ唱歌しやうかでせう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
現界げんかい景色けしきくらべてべつ格段かくだん相違そういもありませぬが、ただこちらの景色けしきほうがどことなくきよらかで、そして奥深おくふかかんじがいたしました。
そのうまがさ、わしべつうまめづらしうもないが、白痴殿ばかどの背後うしろかしこまつて手持不沙汰てもちぶさたぢやからいまいてかうとするとき椽側えんがはへひらりと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼく、このあそびをおぼえてから足掛あしかけ五ねんになるが、食事しよくじ時間じかんだけはべつとしてたゝかひつづけたレコオドはやく三十時間じかんといふのが最長さいちやうだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
同時に「自我じが」といふものが少しづゝ侵略しんりやくされてくやうに思はれた。これは最初のあひだで、少時しばらくつとまたべつに他の煩悶が起つた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
木のえだをあつめ火をたきてあたりをりしに、其所よりすこしはなれてべつに火燄々えん/\もえあがりければ、児曹こどもら大におそれ皆々四方に逃散にげちりけり。
然し是もことわらした。夫でもべつに不都合はなく敷金は返せてゐる。——まだ其外にもあつたが、まあんな種類の例ばかりであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「おやおや、おまえの親方は二日分の食料しょくりょうぐらいははらえるかもしれんが、二か月などはとてもとてもだ。そりやあまるでべつな話だよ」
連歸つれかへりしかど我が家は貧窮ひんきうにして九尺間口まぐち煙草店たばこみせゆゑべつに此方へと言所いふところもなく夫婦諸共ふうふもろとも吉之助をいたはると雖もよるの物さへ三布蒲團みのぶとん一を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
與吉よきちなゝめくのがすこ窮屈きうくつであつたのと、叱言こごとがなければたゞ惡戲いたづらをしてたいのとでそばかまどくちべつ自分じぶん落葉おちばけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もとより、これは、べつ運転手うんてんしゅで、もっととしをとった熟練じゅくれんおとこでありました。その汽車きしゃには、大臣だいじんとたくさんな高等官こうとうかんっていました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、あなたもわかってきますよ。いちばんとうと御褒美ごほうびっていうのは、名誉めいよにだけなって、べつとくにはならないような御褒美ごほうびです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
んなのがりましたとしてせるのは、彌生式土器やよひしきどき上部じやうぶ(第五圖參照)と破片はへん澤山たくさんおよぞこである。べつ貝塚土器かひづかどき網代底あじろぞこ
なされてくださるはづもなしべつものにあそばすとりながらおうらみも申されぬ不束ふつゝかうらめしうぞんじますとホロリとこぼすひざつゆ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こまるなあ。おいことわっちまえよ。奮起す。おーい、火山だなんてまるでべつだよ。ちゃんと立派りっぱなビルデングになってるんだぜ。
非常時ひじようじ消防施設しようぼうしせつについてはべつ其局そのきよくあたひとがあるであらう。たゞわれ/\は現状げんじようおい最善さいぜんつく工夫くふうをしなければならぬ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
このうたべつふかおもひこんでゐるのでもないたのしみを、ぢっとつゞけてゐたといふだけのものですから、調子ちようし意味いみとがぴったりとしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
どうだの、これはべつに、おいらが堺屋さかいやからたのまれたわけではないが、んといっても中村松江なかむらしょうこうなら、当時とうじしもされもしない、立派りっぱ太夫たゆう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
同樣どうようおとへるに『落葉針葉樹らくようしんようじゆ』(からまつ、いてふなど)と『落葉闊葉樹らくようかつようじゆ』(さくら、もみぢなど)のべつがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
兩樣の土偶一ヶ所より出づる事有るとはをして土偶形状のべつは男女の別を示すものならんとの考へをつよからしむるなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
いな、一だいのうちでも、いへ死者ししや出來できれば、そのいへけがれたものとかんがへ、しかばね放棄はうきして、べつあたらしいいへつくつたのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「そういうわけで、来年のお正月の拝賀式はいがしきは、この再建さいけん日本のかくごをかためるためにも、べつしておごそかにとりおこなわなければなりません。」
美しき元旦 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
「どこかで花がさいたのですね。」と、べつの葉にとまっていたちょうがいいました。「きっと原っぱのまんなかのあの木に花がさいたのですよ。」
木の祭り (新字新仮名) / 新美南吉(著)
終夜しうやあめ湿うるほひし為め、水中をあゆむもべつに意となさず、二十七名の一隊粛々しゆく/\としてぬまわたり、蕭疎しようそたる藺草いくさの間をぎ、悠々いう/\たる鳧鴨ふわうの群をおどろかす
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
またべつ先生方せんせいがたからおきになる場合ばあひがありませう。なほふるいおてらのあつたところには、かはらのほかにおほきなはしら礎石そせきのこつてゐることもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
粗末そまつきれ下衣したぎしかてゐないで、あしにはなにかず、落着おちついてゐて、べつおどろいたふうく、こちらを見上みあげた。
べつにもならずすべてを義母おつかさんにおまかせしてちやばかりんで内心ないしん一のくいいだきながら老人夫婦としよりふうふをそれとなく觀察くわんさつしてた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
べつ自分じぶんがそれについて弱味よわみつてないにしてもさ、ながあひだにはなんだか不安ふあんを感じてさうな氣持きもちがするね。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
彼女かのじょべつわるかおもせず、ただそれをながしたままでいえもどってみると、ちゃ障子しょうじのわきにはおはつ針仕事はりしごとしながら金之助きんのすけさんをあそばせていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なんでもないことだよ。それは、たまかたかたのあなのまわりにたくさん蜂蜜はちみつをぬっておいて、絹糸きぬいとありを一ぴきゆわいつけて、べつあなかられてやるのです。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
下士はよき役をつとめかねて家族の多勢たぜいなる家に非ざれば、婢僕ひぼくを使わず。昼間ひるまは町にでて物を買う者少なけれども、夜は男女のべつなく町にいずるを常とす。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
萬有ばんいうはゝたる大地だいぢその墓所はかどころでもあり、またその埋葬地まいさうちたるものがその子宮こぶくろでもある、さてその子宮こぶくろより千べつ兒供こどもうまれ、そのむねをまさぐりてふやうに
なにゆゑに間は四年の音信おとづれを絶ち、又何の故にさしもおもひに忘れざる旧友と相見てべつを為さざりしか。彼が今の身の上を知らば、この疑問はおのづから解釈せらるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかしをとこころさずとも、をんなうばこと出來できれば、べつ不足ふそくはないわけです。いや、そのときこころもちでは、出來できるだけをとこころさずに、をんなうばはうと決心けつしんしたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼女かのぢよくちかたは、すこ内気うちきすぎるほど弱々よわ/\しかつた。そしてそれについて、べつにはつきりした返事へんじあたへなかつたが、わざと遠慮ゑんりよしてゐるやうにもえた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ニールスは、思いきって、ひろびろとした並木道なみきみちを走っていく勇気ゆうきはありませんでした。それで、べつの道をいくことにきめました。庭を通って、裏庭うらにわに出ました。
自分じぶんをばみち疎遠そゑんひとだと諦念あきらめ、べつみち親密しんみつひとがゐるやうにおもつて、それを尊敬そんけいするひとがある。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
団長はそのきえちゃんをおこりつけているのだとばかり思っていたのに、そばからべつなきえちゃんが顔を出したので、あっけにとられてきょとんとしてしまいました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
あしのとまるところにて不図ふと心付こゝろづけば其処そこ依田学海先生よだがくかいせんせい別荘べつさうなり、こゝにてまたべつ妄想まうさうきおこりぬ。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
木立こだちひ繁る阜は岸までつづく。むかひの岸の野原には今一面の花ざかり、中空なかぞらの雲一ぱいに白い光がかすめゆく……ああ、またべつの影が來て、うつるかと見て消えるのか。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それから……それからべつに何ごとがあろう? ママは生徒監せいとかんのところへ出かけて行った。生徒監せいとかん相手あいてにひとさわぎ持ちあげた上、あとでうったえてやるつもりだったのである。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
近江屋あふみや旦那だんなかへつてて、梅喜ばいきいたから浅草あさくされてつたが、奥山おくやま見失みはぐつたけれども、いたからべつ負傷けがはないから安心してなとはれた時には
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
勿論もちろん其時そのときべつこゝろにもめなかつたが、いまになつてはじめてそれとおもあたふしいでもない。
いや、もうひとり、べつのすみのほうに、八十ぐらいのばあさんが、レウマチでうなっている。
この世の中を渡るに嗜好しこうはなるたけ人々によりべつなるが面白おもしろけれども、善悪の標準ひょうじゅんは一様でなくてはならぬと。この一様なる善悪の標準をもって好き嫌いを測るべきものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
と、びっくりしてふりかえったのは、べつなことでぼうとしていた金鉱山掘夫かなやまほりや熊蔵たち。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
べつ特別とくべついたむわけでもなく外面ぐわいめんからも右足うそく膝關節しつくわんせつは、なんの異常いじやうもなかつたのであるけれども、自由じいう曲折きよくせつ出來できないめに、學校がくかうでは作法さはふ體操たいさうやすまなければならなかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
何處どこわたしかたつてしまつたのかしら?オヤ、可哀相かあいさうに、うしたんでせう、わたしえないわ?』あいちやんはひながらそれをつてましたが、べつかはつたこともなく
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
火星の街の名前ではないが べつに地きう学者がくしやがつけた運河うんがの名前にたしかにあるよ