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傾
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かたむ
ふりがな文庫
“
傾
(
かたむ
)” の例文
自分は
直
(
ただち
)
に
籠
(
かご
)
の中に鳥を入れて、春の日影の
傾
(
かたむ
)
くまで眺めていた。そうしてこの鳥はどんな心持で自分を見ているだろうかと考えた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
主人の喜兵衞はそればかり心配して、親類や知己に頼んで、縁談の雨を降らせましたが、新助はそれに耳を
傾
(
かたむ
)
けようともしません。
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
すずめは、
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に、こんな
不平
(
ふへい
)
がありましたけれど、しばらく
黙
(
だま
)
って、こまどりの
熱心
(
ねっしん
)
に
歌
(
うた
)
っているのに
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
聞
(
き
)
いていました。
紅すずめ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
原田氏
(
はらだし
)
は
星亨氏
(
ほしとほるし
)
幕下
(
ばつか
)
の
雄將
(
ゆうしやう
)
で、
關東
(
くわんとう
)
に
於
(
お
)
ける
壯士
(
さうし
)
の
大親分
(
おほおやぶん
)
である。
嶺村
(
みねむら
)
草分
(
くさわけ
)
の
舊家
(
きうけ
)
であるが、
政事熱
(
せいじねつ
)
で
大分
(
だいぶ
)
軒
(
のき
)
を
傾
(
かたむ
)
けたといふ
豪傑
(
がうけつ
)
。
探検実記 地中の秘密:03 嶺の千鳥窪
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
「十三
囘忌
(
くわいき
)
、はあ、
大分
(
だいぶ
)
久
(
ひさ
)
しいあとの
佛樣
(
ほとけさま
)
を、あの
徒
(
てあひ
)
には
猶更
(
なほさら
)
奇特
(
きとく
)
な
事
(
こと
)
でござります。」と
手拭
(
てぬぐひ
)
を
掴
(
つか
)
んだ
手
(
て
)
を、
胸
(
むね
)
に
置
(
お
)
いて
傾
(
かたむ
)
いて
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
耳
(
みゝ
)
を
傾
(
かたむ
)
けると、
何處
(
いづく
)
ともなく
鼕々
(
とう/\
)
と
浪
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
の
聽
(
きこ
)
ゆるのは、
此
(
この
)
削壁
(
かべ
)
の
外
(
そと
)
は、
怒濤
(
どとう
)
逆卷
(
さかま
)
く
荒海
(
あらうみ
)
で、
此處
(
こゝ
)
は
確
(
たしか
)
に
海底
(
かいてい
)
數十
(
すうじふ
)
尺
(
しやく
)
の
底
(
そこ
)
であらう。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
凝然
(
ぢつ
)
とした
靜
(
しづ
)
かな
月
(
つき
)
が
幾
(
いく
)
らか
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けたと
思
(
おも
)
つたら
樅
(
もみ
)
の
梢
(
こずゑ
)
の
間
(
あひだ
)
から
少
(
すこ
)
し
覗
(
のぞ
)
いて、
踊子
(
をどりこ
)
が
形
(
かたち
)
づくつて
居
(
ゐ
)
る
輪
(
わ
)
の一
端
(
たん
)
をかつと
明
(
あ
)
かるくした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
立とまっては耳を
傾
(
かたむ
)
け、
答
(
こたえ
)
なき声を
空林
(
くうりん
)
にかけたりして、到頭甲州街道に出た。一廻りして、今度は雑木山の東側の
径
(
こみち
)
を取って返した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
帆村が
蹣跚
(
よろ
)
めくのを追って、私が右にヨタヨタと寄ると、帆村は意地わるくそれと逆の左の方にヨロヨロと
傾
(
かたむ
)
いてゆくのだった。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
傷つけ
呪
(
のろ
)
うような
傾
(
かたむ
)
きがありにわかにことごとくを信ずる訳に行かない乳母の一件なども恐らくは
揣摩臆測
(
しまおくそく
)
に過ぎないであろう。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
傾
(
かたむ
)
けて
見返
(
みかへ
)
るともなく
見返
(
みかへ
)
る
途端
(
とたん
)
目
(
め
)
に
映
(
うつ
)
るは
何物
(
なにもの
)
蓬頭亂面
(
ほうとうらんめん
)
の
青年
(
せいねん
)
車夫
(
しやふ
)
なりお
高
(
たか
)
夜風
(
よかぜ
)
の
身
(
み
)
にしみてかぶる/\と
震
(
ふる
)
へて
立止
(
たちどま
)
りつゝ
此雪
(
このゆき
)
にては
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私はその
隣
(
とな
)
りのまだ空いている別荘の庭へ這入りこんで、しばらくそれに耳を
傾
(
かたむ
)
けていた。バッハのト短調の
遁走曲
(
フウグ
)
らしかった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
もぐりの
流行神
(
はやりがみ
)
なら
知
(
し
)
らぬこと、
苟
(
いやし
)
くも
正
(
ただ
)
しい
神
(
かみ
)
として
斯
(
こ
)
んな
祈願
(
きがん
)
に
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
けるものは
絶対
(
ぜったい
)
に
無
(
な
)
いと
思
(
おも
)
えば
宜
(
よろ
)
しいかと
存
(
ぞん
)
じます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
当の剣敵諏訪栄三郎に
傾
(
かたむ
)
きつくしていると知っては、丹下左膳の心中はなはだ穏かならぬものがあったことは言うまでもない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
いったい「三つ
子
(
ご
)
の
魂
(
たましい
)
百までも」というがごとく、
何人
(
なんぴと
)
にも幼少の折、漠然とした職業選定の
傾
(
かたむ
)
きが心に備われるものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
見るさえまばゆかった雲の
峰
(
みね
)
は風に
吹
(
ふ
)
き
崩
(
くず
)
されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の
傾
(
かたむ
)
くに連れてさすがに
凌
(
しの
)
ぎよくなる。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
先に政権の独占を
憤
(
いきどお
)
れる民権自由の叫びに狂せし妾は、今は
赤心
(
せきしん
)
資本の独占に抗して、不幸なる
貧者
(
ひんしゃ
)
の救済に
傾
(
かたむ
)
けるなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
平たき
面
(
おもて
)
に半白の
疎髯
(
そぜん
)
ヒネリつゝ
傲然
(
がうぜん
)
として乗り入る
後
(
うし
)
ろより、
未
(
ま
)
だ十七八の盛装せる
島田髷
(
しまだまげ
)
の少女、
肥満
(
ふとつちよう
)
なる体をゆすぶりつゝ
笑
(
ゑみ
)
傾
(
かたむ
)
けて従へり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
御主意
(
ごしゆい
)
御尤
(
ごもつとも
)
に
候
(
さふらふ
)
。
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
唱歌
(
しやうか
)
は
思
(
おも
)
ひ
止
(
と
)
まり
候
(
さふらふ
)
。
淺
(
あさ
)
ましい
哉
(
かな
)
。
教室
(
けうしつ
)
に
慣
(
な
)
れ
候
(
さふらふ
)
に
從
(
した
)
がつて
心
(
こゝろ
)
よりも
形
(
かたち
)
を
教
(
をし
)
へたく
相成
(
あひな
)
る
傾
(
かたむ
)
き
有之
(
これあり
)
、
以後
(
いご
)
も
御注意
(
ごちゆうい
)
願上候
(
ねがひあげさふらふ
)
。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
〔評〕南洲人に
接
(
せつ
)
して、
妄
(
みだり
)
に
語
(
ご
)
を
交
(
まじ
)
へず、人之を
憚
(
はゞか
)
る。然れども其の人を知るに及んでは、則ち心を
傾
(
かたむ
)
けて之を
援
(
たす
)
く。其人に非ざれば則ち
終身
(
しゆうしん
)
言
(
い
)
はず。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
こんな
勝
(
すぐ
)
れた
歌
(
うた
)
が、しかも
非常
(
ひじよう
)
に
貴
(
たふと
)
い
方々
(
かた/″\
)
のお
作
(
さく
)
に
出
(
で
)
て
來
(
き
)
てゐるに
拘
(
かゝは
)
らず、
世間
(
せけん
)
の
流行
(
りゆうこう
)
は、
爲方
(
しかた
)
のないもので、だん/\、
惡
(
わる
)
い
方
(
ほう
)
へ/\と
傾
(
かたむ
)
きました。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
と、いつのまにか、すみの方で
議論
(
ぎろん
)
めいた口調で話すものがありましたので、一同は、言いあわせたように、口をつぐんで、その
議論
(
ぎろん
)
に耳を
傾
(
かたむ
)
けました。
ジェンナー伝
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
皺嗄
(
しやが
)
れた
殆
(
ほとん
)
ど
聴取
(
きゝと
)
れない
程
(
ほど
)
の
聲
(
こゑ
)
で、
恁
(
か
)
う
唄
(
うた
)
ふのが
何處
(
どこ
)
ともなく
聽
(
きこ
)
えた。
私
(
わたし
)
は
思
(
おも
)
はず
少
(
すこ
)
し
歩
(
あゆみ
)
を
緩
(
ゆる
)
くして
耳
(
みゝ
)
を
傾
(
かたむ
)
けた。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
僧
(
そう
)
は
徐
(
しづ
)
かに
鉢
(
はち
)
に
殘
(
のこ
)
つた
水
(
みづ
)
を
床
(
ゆか
)
に
傾
(
かたむ
)
けた。そして「そんならこれでお
暇
(
いとま
)
をいたします」と
云
(
い
)
ふや
否
(
いな
)
や、くるりと
閭
(
りよ
)
に
背中
(
せなか
)
を
向
(
む
)
けて、
戸口
(
とぐち
)
の
方
(
はう
)
へ
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
した。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
すると、「What's team?」と
訊
(
き
)
いたような気がするので、「Boat Crew.」と答えますと、「What's?」と小首を
傾
(
かたむ
)
けます。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
すると
皇子
(
おうじ
)
はいきなり、そこでどしんと船を
傾
(
かたむ
)
けて、
命
(
みこと
)
をざんぶと川の中へ落としこんでおしまいになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
いやしくも正義の士は心をつくし気を
傾
(
かたむ
)
けて崇拝する、それになんのふしぎがあるか、万人に傑出する材ありといえども
弓削道鏡
(
ゆげのどうきょう
)
を英雄となし得ようか
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
そのSH
氏
(
し
)
がしばらくすると、
立
(
た
)
つて
彼方
(
あなた
)
の
卓
(
たく
)
の
前
(
まえ
)
に
立
(
た
)
つて、
和服姿
(
わふくすがた
)
の
東洋人
(
とうようじん
)
らしい
憂鬱
(
ゆううつ
)
な
恥
(
はじ
)
らひの
表情
(
へうぜう
)
で、
自作
(
じさく
)
の
詩
(
し
)
を
謳
(
うた
)
ひだした。
皆
(
みな
)
が
之
(
こ
)
れに
耳
(
みゝ
)
傾
(
かたむ
)
けた。
微笑の渦
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
宗匠
(
そうしやう
)
は
此
(
こ
)
の
景色
(
けしき
)
を見ると
時候
(
じこう
)
はちがふけれど酒なくて
何
(
なん
)
の
己
(
おの
)
れが
桜
(
さくら
)
かなと急に一杯
傾
(
かたむ
)
けたくなつたのである。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
寄せ何か
祕々
(
ひそ/\
)
囁
(
さゝや
)
きければ二人はハツと驚きしが三次は
暫
(
しば
)
し小首を
傾
(
かたむ
)
け
茶碗
(
ちやわん
)
の酒をぐつと
呑干
(
のみほし
)
先生皆迄
宣
(
のたま
)
ふな我々が身に
係
(
かゝ
)
る事委細承知と早乘が答へに長庵力を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
よっぽど西にその
太陽
(
たいよう
)
が
傾
(
かたむ
)
いて、いま入ったばかりの雲の間から
沢山
(
たくさん
)
の白い光の
棒
(
ぼう
)
を
投
(
な
)
げそれは
向
(
むこ
)
うの
山脈
(
さんみゃく
)
のあちこちに
落
(
お
)
ちてさびしい
群青
(
ぐんじょう
)
の
泣
(
な
)
き
笑
(
わら
)
いをします。
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
やがて寺の
本堂
(
ほんどう
)
へついた。大きな屋根は
朽
(
く
)
ち、広い
回廊
(
かいろう
)
は
傾
(
かたむ
)
きかけ、太い柱は
歪
(
ゆが
)
み、見るから怪物の住みそうなありさまに、勘太郎も始めはうす気味悪くなった。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
井泉村の助役の手紙を読んで、巻き返して、「私は視学からも助役からもそういう話は聞かなかったが……」と頭を
傾
(
かたむ
)
けた時は、清三は不思議な思いにうたれた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
かくて十年、家附きの娘は気兼もなく、娘時代と同様、
物見遊山
(
ものみゆさん
)
に過していたが、
傾
(
かたむ
)
く時にはさしもの家も一たまりもなく、
僅
(
わず
)
かの
手違
(
てちが
)
いから没落してしまった。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
浅草観世音へ参詣し、賽銭を投げて奥山を廻り、東両国の盛場へ来たときには、日が少し
傾
(
かたむ
)
いていた。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この
山
(
やま
)
は
近時
(
きんじ
)
淺間山
(
あさまやま
)
と
交代
(
こうたい
)
に
活動
(
かつどう
)
する
傾
(
かたむ
)
きを
有
(
も
)
つてゐるが、
降灰
(
こうはひ
)
のために
時々
(
とき/″\
)
災害
(
さいがい
)
を
桑園
(
そうえん
)
に
及
(
およ
)
ぼし、
養蠶上
(
ようさんじよう
)
の
損害
(
そんがい
)
を
被
(
かうむ
)
らしめるので、
土地
(
とち
)
の
人
(
ひと
)
に
迷惑
(
めいわく
)
がられてゐる。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
二人は
並
(
なら
)
んで馬を歩ませていた。父は何やらしきりに彼女に話しかけながら、
胴体
(
どうたい
)
をすっかり彼女の方へ
傾
(
かたむ
)
け、片手を馬の首についていた。父は
微笑
(
びしょう
)
を
浮
(
うか
)
べていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
若し僕がロマンチツクとかコケツトリイとか云ふやうな
傾
(
かたむ
)
きを持つてゐて、忠実な、頼もしい友人が、僕が死んだ跡で、余計な思慮を費すやうにしようと思つたなら
不可説
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
注
(
つ
)
ぎ出し口を我か身の方に向け之に唇を
觸
(
ふ
)
れて器を
傾
(
かたむ
)
け飮料を口中に
灌
(
そそ
)
ぎ
込
(
こ
)
みしものの如く思はる。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
若い男でございましたが感心な心掛けで暫く首を
傾
(
かたむ
)
け、どうも私は今
麦焦
(
むぎこが
)
しも何も持って居ないけれども一つこういう物があるからといって懐から出してくれたのが
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
それは
作
(
つく
)
るのに大へん
骨
(
ほね
)
が折れたし、
得意
(
とくい
)
なものであった。自分がどんなに
芸術家
(
げいじゅつか
)
であるか見せてやりたかった。ゴットフリートは
静
(
しず
)
かに
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
けた。それからいった。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
どんなに
待
(
ま
)
ったか
知
(
し
)
れなかったが、
心魂
(
しんこん
)
を
傾
(
かたむ
)
けつくす
仕事
(
しごと
)
だから、たとえなにがあっても、その
日
(
ひ
)
までは
見
(
み
)
に
来
(
き
)
ちゃァならねえ、
行
(
ゆ
)
きますまいと
誓
(
ちか
)
った
言葉
(
ことば
)
の
手前
(
てまえ
)
もあり
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
夫れ
台所
(
だいどころ
)
に於ける
鼠
(
ねづみ
)
の
勢力
(
せいりよく
)
の
法外
(
はふぐわい
)
なる
飯焚男
(
めしたきをとこ
)
が
升落
(
ますおと
)
しの
計略
(
けいりやく
)
も更に
討滅
(
たうめつ
)
しがたきを思へば、
社会問題
(
しやくわいもんだい
)
に
耳
(
みゝ
)
傾
(
かたむ
)
くる人いかで此
一町内
(
いつちやうない
)
百「ダース」の
文学者
(
ぶんがくしや
)
を
等閑
(
なほざり
)
にするを
得
(
う
)
べき。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
雲の多い午後が、
陰暗
(
いんあん
)
な夕空明りへ
傾
(
かたむ
)
いてゆく。階段の窓を叩く雨の音が、まだ聽え、邸の
背後
(
うしろ
)
の
灌木林
(
くわんぼくりん
)
に風が騷いでゐる。私の
體
(
からだ
)
は、だん/\に石のやうに
冷
(
つめ
)
たくなつて來た。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
金泥
(
きんでい
)
を
空
(
そら
)
にながして
彩
(
いろど
)
つた
眞夏
(
まなつ
)
のその
壯麗
(
そうれい
)
なる
夕照
(
ゆうせふ
)
に
對
(
たい
)
してこころゆくまで、
銀鈴
(
ぎんれい
)
の
聲
(
こゑ
)
を
振
(
ふ
)
りしぼつて
唄
(
うた
)
ひつづけた
獨唱
(
ソロ
)
の
名手
(
めいしゅ
)
、
天
(
そら
)
飛
(
と
)
ぶ
鳥
(
とり
)
も
翼
(
はね
)
をとどめてその
耳
(
みゝ
)
を
傾
(
かたむ
)
けた、ああ
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
そのうちだんだん日が
傾
(
かたむ
)
きかけて、
短
(
みじか
)
い
秋
(
あき
)
の日は
暮
(
く
)
れそうになりました。
保名主従
(
やすなしゅじゅう
)
はそろそろ
帰
(
かえ
)
り
支度
(
じたく
)
をはじめますと、ふと
向
(
む
)
こうの
森
(
もり
)
の
奥
(
おく
)
で大ぜいわいわいさわぐ
声
(
こえ
)
がしました。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
指図役
(
さしづやく
)
のお
方
(
かた
)
でございますか、
馬乗
(
ばじよう
)
で
令
(
れい
)
を
下
(
くだ
)
して
居
(
を
)
られます。四ツ
辻
(
つぢ
)
の
処
(
ところ
)
に
点
(
とも
)
つて
居
(
を
)
りました
電気燈
(
でんきとう
)
が、
段々
(
だん/\
)
明
(
あか
)
るくなつて
来
(
く
)
ると、
従
(
した
)
がつて
日
(
ひ
)
は西に
傾
(
かたむ
)
きましたやうでございます。
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
妻は心持ち首を左に
傾
(
かたむ
)
けたまま、かすかな寝息を立てて眠っていたが、その横に、産れ出る女の赤ん坊のために用意してつくった
友禅
(
ゆうぜん
)
模様の小さい
蒲団
(
ふとん
)
が敷いてあって、その中には
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
『
玄竹
(
げんちく
)
。
今夜
(
こんや
)
は
折
(
お
)
り
入
(
い
)
つて
其方
(
そち
)
に
相談
(
さうだん
)
したいことがある。
怜悧
(
りこう
)
な
其方
(
そち
)
の
智慧
(
ちゑ
)
を
借
(
か
)
りたいのぢや。…まあ一
盞
(
さん
)
傾
(
かたむ
)
けよ。
盃
(
さかづき
)
取
(
と
)
らせよう。』と
言
(
い
)
つて、
但馬守
(
たじまのかみ
)
は
持
(
も
)
つてゐた
盃
(
さかづき
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
した。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
晩餐
(
ばんさん
)
の時、ヘルンはいつも二三本の日本酒を
盃
(
さかずき
)
で
傾
(
かたむ
)
けながら、甚だ上機嫌に朗かだった。夫人や家族の者たちは、彼の左右に
侍
(
はべ
)
って
酌
(
しゃく
)
をしながら、その日の日本新聞を読んできかせた。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
傾
常用漢字
中学
部首:⼈
13画
“傾”を含む語句
傾斜
引傾
傾向
傾覆
傾城買
傾斜地
男傾城
傾城
打傾
傾聴
傾注
傾城遊女
緩傾斜
傾倒
傾斜面
傾蓋
傾城町
傾国
笑傾
傾聽
...