はこ)” の例文
女房にょうぼうは、にこにことして、なにかぼんにのせて、あちらへはこんでいました。こちらには、びっこのむすめが、さびしそうにしてっている。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
爐端ろばたもちいたゞくあとへ、そろへ、あたまをならべて、幾百いくひやくれつをなしたのが、一息ひといきに、やまひとはこんだのであるとふ。洒落しやれれたもので。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「その腰掛を持つて來なさい。」ブロクルハースト氏は、ちやうど級長が立ち上つたばかりの高い腰掛をして云つた。それははこばれた。
勘次かんじ開墾かいこん手間賃てまちん比較的ひかくてき餘計よけいあたへられるかはりにはくぬぎは一つもはこばないはずであつた。彼等かれら伴侶なかまはさういふことをもつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
仕舞しまひにはあしいたんでこしたなくなつて、かはやのぼをりなどは、やつとのこと壁傳かべづたひに身體からだはこんだのである。その時分じぶんかれ彫刻家てうこくかであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
原稿げんかうく、もちよくふではこぶので夢中むちうになつた、その夢中むちうましたこゑねこである、あら座蒲團ざぶとんすはつて、すましてゐる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
大ぜいの人びとの手をかけて、やっとのことでここまではこばれてきたとおとい品物しなものがだれにもたべてもらえずにくさっていく。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
わたしあがつて、をりからはこばれて金盥かなだらひのあたゝな湯氣ゆげなかに、くさからゆるちたやうななみだしづかにおとしたのであつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
おりから下坐敷したざしきより杯盤はいばんはこびきしおんななにやらおりき耳打みゝうちしてかくしたまでおいでよといふ、いやたくないからよしてお
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまのは勝負しょうぶなしにすんだので、また、四五にんのお役人やくにんが、大きなお三方さんぽうなにせて、その上にあつぬのをかけてはこんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それゆえせめてのこころから、あたしがいつもゆめるおまえのお七を、由斎ゆうさいさんに仕上しあげてもらって、ここまで内緒ないしょはこんだ始末しまつ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いま珈琲カツヒーはこんで小間使こまづかひかほにもそのいそがしさがへるので、しや、今日けふ不時ふじ混雜中こんざつちうではあるまいかと氣付きづいたから、わたくしきふかほ
綺麗きれいつくつてからかへると、つま不図ふと茶道具ちやだうぐともなかとをわたしそばはこんで、れいしとやかに、落着おちついたふうで、ちやなどれて、四方八方よもやまはなしはじめる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「むろんすてやしないよ、ぼくらが上陸してからだれかひとり、ボートをここへこぎもどして、つぎの人をはこぶつもりだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「心得ました。すぐさま、自分がお迎えにまいって、御案内に立ちましょう。主君景勝も、望外なるおはこびと、非常によろこばれておりまする」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たれもがからだをぐらつかせながら、まるで出來できわる機械人形きかいにんぎやうのやうなあしはこんでゐたのだつた。隊列たいれつ可成かなみだれてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「へエ、——まだよひのうちでしたが、今夜はイヤな事があるから、氣の毒だが此處へ泊めてくれと言つて、自分の夜具と布團をはこんで來ましたよ」
これをとまり山といふ。(山にとまりゐて㕝をなすゆゑ也)さて夏秋にいたればつみおきたるたきゞかわくゆゑ、牛馬ぎうばつかひてたきゞを家にはこびて用にあつる也。
うつたへるわけゆゑいは裁許さいきよ破毀やぶりの願ひなれば一ト通りのはこびにては貫徹つらぬくむづからんされば長庵とやらが大雨おほあめふるかさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下男共げなんどもて、かれ手足てあしり、小聖堂こせいだうはこつたが、かれいまめいせずして、死骸むくろだいうへ横臥よこたはつてゐる。つてつき影暗かげくらかれてらした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
車つきはこ寢臺ねだいの上に乘せられ、魔睡劑の利き目がまだ殘つてゐるのが運び去られる。母らしい老人に負ぶさり、足のさきに繃帶された娘が出て行く。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
鎔岩ようがん無數むすう泡末ほうまつふくまれたものは輕石かるいしあるひはそれに類似るいじのものとなるのであるが、その小片しようへんはらぴりとづけられ、火山灰かざんばひとも遠方えんぽうにまではこばれる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それで狩獵しゆりようでとつてけだものにくは、つぼなか鹽漬しほづけとして保存ほぞんされるし、みづやその流動物りゆうどうぶつかめれて、自由じゆうはこぶことも出來できるようになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いくつものとうげえて海藻かいそうの〔数文字空白〕をせた馬にはこばれて来たてんぐさも四角に切られておぼろにひかった。嘉吉かきち子供こどものようにはしをとりはじめた。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
A  それやきみすこしは薄氣味うすぎみわるくなるだらうぢやないか。つた十八まん五千七百九十九まい年始状ねんしじやう大隈邸おほくまていはこびこまれてさへ新聞種しんぶんだねになるんだもの。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
たん以上いじやうかひつてはこしてある。其跡そのあとからは清水しみづ湧出ゆうしゆつして、たゞちにほどひくくなつてる。此所こゝ貝塚かひづかがあらうとは、今日けふまでらなかつた。
そのおひな井戸ゐどから石段いしだんあがり、土藏どざうよことほり、桑畠くはばたけあひだとほつて、おうち臺所だいどころまでづゝみづはこびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
馬車屋ばしゃやのフィアレンサイドは、黒馬旅館くろうまりょかんにきみょうなきゃく荷物にもつはこんだ日の夜おそく、アイピング村のはずれのちいさなビヤホールで、一ぱいかたむけながら
美女は、しずかに歩をはこんで、博士の人形をゆわえている綱に、空いている方の手をかけた。彼女はその綱をひいて、博士の人形を室外に持出す様子を示した。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あと十日とうかてばいよいよ鎮座祭ちんざさいはこびになる。かたちこそちいさいが、普請ふしんはなかなかんでるぞ……。』
然しながら都会を養い、都会のあらゆる不浄をはこび去り、新しい生命いのちと元気を都会にそそぐ大自然の役目を勤むる田舎は、都会に貢献する所がないであろう乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そうでしょう、みちがあるおかげで、方々ほうぼう土地とちに出来る品物しなものがどんどんわたしたちのところへはこばれて来ますし、おともだち同士どうしらくったりたりすることが出来ます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
おまえはおかあさんから、牛乳ぎゅうにゅうのしぼりだいを、なんどもなんどもひったくったな。それから、おかあさんが牛乳桶ぎゅうにゅうおけはこんでいるときに、いろんないたずらをしたっけな。
またうみのつよいかぜ濱邊はまべすなばして、砂丘さきゆうつくつたり、その砂丘さきゆうすなをまた方々ほう/″\はこんで、大事だいじはたや、ときによると人家じんかまでもうづめてしまふことがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
すると母親ははおやは、おおきな、おおきな、おさらくろいスープをって、はこんでました。マリちゃんはまだかなしくって、あたまもあげずに、おいおいいていました。すると父親ちちおやは、もう一
かつく沼岸には岩代上野の県道即ち会津あいづ街道かいどうありて、かたはらに一小屋あり、会津檜枝岐村と利根とね戸倉村とくらむらとの交易品を蔵する所にして、檜枝岐村より会津の名酒を此処にはこけば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
支那しなおそろしい道の悪いところきまして木石ぼくせきんではこびますのが、中々なかなか骨の折れた事で容易よういではございません、勿論もちろん牛は力のあるのが性質うまれつきゆゑつまりはくにめだから仕方しかたがございませんが
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そしていつもの癖をむき出しに紙をなめる様にしてペンをはこばして居た。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ロミオ あ、これ、おち。やがて、あのてら塀外へいそとへ、おぬしにわたために、繩梯子なはばしごのやうにあはせたものを家來けらいたせてりませう。それこそはしの夜半やはうれしいこと頂點ちゃうてん此身このみはこえんつな
駕籠かごつてかうかとおもつたけれど、それも大層たいそうだし、長閑のどか春日和はるびよりを、麥畑むぎばたけうへ雲雀ひばりうたきつゝ、ひさりで旅人たびびとらしい脚絆きやはんあしはこぶのも面白おもしろからう、んの六ぐらゐの田舍路ゐなかみち
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
原料の儘にもせよ、又は製造品せいぞうひんとしてにもせよ、是等の黒曜石は他地方、おそらくは信濃地方より此地方にはこばれしものたる事明かなり。他の地方に於ける他の石質せきしつに付いても同樣の事を云ふを得べし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
たのしみは、わらはすみするかたはらに、ふではこびをおもひをるとき
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
と言って、細君のはこんで来た茶を一杯ついで出して
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
せはしげにに入る子らが身のはこび、太皷ぞ鳴れる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あとの家来は荷物をはこびながら、つづいて行った。
あら トマトをはこび出したわ
はこばれるぶた
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「どうぞ、これをくださいな。」といって、これをいました。こうのアネモネがはこられるとき、あとの二つのアネモネは
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それそばてはあぶさうもとで幾度いくたびはりはこびやうを間違まちがつていたこともあつたが、しまひには身體からだにしつくりふやうにつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わかひと人形にんぎやうはこんであとになりさきになり、天守てんしゆはいつて四階目しかいめのぼつた、ところはしら木像もくざう抱緊だきしめて、んだやうにねむつてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)