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世に越後の七不思議なゝふしぎしようする其一ツ蒲原郡かんばらこほり妙法寺村の農家のうか炉中ろちゆうすみ石臼いしうすあなよりいづる火、人みな也として口碑かうひにつたへ諸書しよしよ散見さんけんす。
はりに、青柳あをやぎ女郎花をみなへし松風まつかぜ羽衣はごろも夕顏ゆふがほ日中ひなか日暮ひぐれほたるひかる。(太公望たいこうばう)はふうするごとくで、殺生道具せつしやうだうぐ阿彌陀あみだなり。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
江戸の開城かいじょうその事はなはにして当局者の心事しんじかいすべからずといえども、かくその出来上できあがりたる結果けっかを見れば大成功だいせいこうと認めざるを得ず。
肉の足らぬ細面ほそおもてに予期のじょうみなぎらして、重きに過ぐる唇の、ぐうかを疑がいつつも、手答てごたえのあれかしと念ずる様子である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さうするどくもなく敢へて妙策めうさくろうせずしづかにおだやかにもみ合つてゐる光けいたるやたしかに「さくらかざして」のかんなくもない。
甚麼話どんなはなしるのでらうか、彼處かしこつても處方書しよはうがきしめさぬではいかと、彼方あつちでも、此方こつちでも、かれ近頃ちかごろなる擧動きよどう評判ひやうばん持切もちきつてゐる始末しまつ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
せふかさね/″\りようえんあるをとして、それにちなめる名をばけつ、ひ先きのさち多かれといのれるなりき。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
四方の壁に幾十の小さな額がかゝつて居るが、見渡した所すべてが近頃の親しい作家の絵ばかりであるのは一だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その次第しだいは前にいえるごとく、氏の尽力じんりょくを以ておだやかに旧政府をき、よっもって殺人散財さんざいわざわいまぬかれたるその功はにして大なりといえども、一方より観察をくだすときは
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
飛離とびはなれて面白いでもなくそろへどもほかの事の仕方しかたがないにくらべそろへばいくらか面白かりしものと存候ぞんじそろたゞ其頃そのころ小生せうせいの一致候いたしそろ萬場ばんじやう観客かんかくの面白げなるべきにかゝわらず
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
いそがしぶる乙女おとめのなまじいに紅染べにぞめのゆもじしたるもおかしきに、いとかわゆき小女のかね黒々とそめぬるものおおきも、むかしかたぎの残れるなるべしとおぼしくてなり。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
主人孫右衞門の抗議のくわいさに、平次も暫らくたじろぎましたが、やがて陣を立て直すと
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
げんにしてへば、此貝塚このかひづか彌生式やよひしきのでもい、石器時代せききじだいのでもい、一しゆ特別とくべつ貝塚かひづかに、彌生式やよひしき混入こんにふした。土器どき混入こんにふしたと——まアひたいくらゐゐ、んにもぬ。
写楽が女形おんながたの肖像は奇中きちゅう傑作中の傑作ならんか。岩井半四郎、松本米三郎よねさぶろうの如き肖像を見れば余はただちに劇場の楽屋においてのあたり男子の女子に扮したる容貌を連想す。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それからひととおりのことを教わったのですが、私には、みょうにを好む性癖がありまして、今でしたら飛行機にも乗ったでしょう、珍らしい遊戯とか、興業物こうぎょうものとかがあると
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かたはらに直下数丈の瀑布ばくふありてはばすこぶひろし其地のいうにして其景のなる、真に好仙境こうせんきようと謂つべし、ちなみに云ふ此文珠岩はみな花崗岩みがけいわよりりて、雨水のくは水蝕すゐいつしたるなり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
せい。こう二態は、軍隊の性格で怪しむに足りません。しかし要心は必要でしょう」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君子の信ずるところは小人の疑うところとなり、老婆のやすんずる所は少年の笑うところとなる。新をむさぼる者はちんきらい、古を好む者はあやしむ。人心のおなじからざる、なおその面のごとし。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
「司馬の道場では、挨拶にやった門之丞を、無礼にも追いかえしましたぞ。先には、あなた様を萩乃さまのお婿に……などという気は、今になって、すこしもないらしい。かい至極しごく——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
程なく夜明けぬるに一六五いき出でて、急ぎ彦六が方の壁をたたきてよべの事をかたる。彦六もはじめて陰陽師が詞を一六六なりとして、おのれも其の夜はねずして三更のころを待ちくれける。
いつのにもを好むのは人情である。里の人々はすぐに松明たいまつを照して出た。亭主が案内に立つてゆくと、女の影が消えたらしいところに大きい松の木があつた。赤児の啼く声はまだきこえた。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
問題の初音の鼓は、皮はなくて、ただどうばかりがきりはこに収まっていた。これもよくは分らないが、うるしが比較的新しいようで、蒔絵まきえ模様もようなどもなく、見たところ何のもない黒無地の胴である。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孫臏そんびん(二〇)刑徒けいともつひそかせい使つかひく。せい使つかひもつし、ひそかせてともせいく。せいしやう田忌でんき(二一)よみしてこれ(二二)客待かくたいす。數〻しばしばせい諸公子しよこうし(二三)驅逐重射くちくちようせきす。
この大河の水は岩礁をいた水道のコンクリートのせきと赤さびた鉄の扉の上をわずかに越えて、流れ注いで、外には濁った白い水沫すいまつ塵埃じんあいとを平らかに溜めているばかりだ。何のもなくのどけさである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
これにはにしてせいなる一場の物語がある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
訴へにおよびし事かろき身分には特の心底なり只今聞通きくとほり人殺夜盜は勘太郎に相違之なし然樣心得よと云はれしかば彦三郎は云ふに及ばず八右衞門權三助十等みな有難ありがたき仕合なりと喜びけり時に大岡殿福井町家主勘兵衞と呼上よびあげられ其方家主の身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はなかほなる
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
太綱ふとづな一端いつたん前齒まへばくはへてする/\と竿さをのぼりてたゞち龍頭りうづいたる。蒼空あをぞらひとてんあり、飄々へう/\としてかぜかる。これとするにらず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
我国に大小の川々幾流いくすぢもあるなかに、此渋海川しぶみがはにのみかぎりて毎年まいねんたがはず此事あるもとすべし。しかるに天明の洪水こうずゐ以来此事たえてなし。
どんなはなしをするのであろうか、彼処かしこっても処方書しょほうがきしめさぬではいかと、彼方あっちでも、此方こっちでも、かれ近頃ちかごろなる挙動きょどう評判ひょうばん持切もちきっている始末しまつ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ことごとく尋常以上になあるものを、マントの裏かコートのそでに忍ばしていはしないだろうかと考える。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ロセツが横須賀造船所よこすかぞうせんじょ設立の計画けいかく関係かんけいしたるがごとき、その謀計ぼうけいすこぶなる者あり。
急峻きゅうしゅんで、大樹たいじゅ岩層がんそうが、天工てんこうをきわめているから、岳中がくちゅう自然しぜん瀑布ばくふ渓流けいりゅうがおおい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文珠岩の如きはじつに奇中のたるものなり、要するに人跡未到のなるを以て、動植物及鉱物共におほいに得る所あらんとするをせしなれ共、右の如く別に珍奇ちんきなる者を発見はつけんせざりき
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
所がここな事は、その塾で蒙求もうぎゅうとか孟子とか論語とかの会読かいどく講義をすると云うことになると、私は天禀てんりん、少し文才があったのか知らん、の意味をして、朝の素読に教えてれた人と
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
話のくわいさに、平次もツイ吐月峰を叩いて膝を進めました。
波羅葦僧はらいそそらをものぞちゞなる眼鏡めがねを。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかれども白晝はくちう横行わうぎやう惡魔あくまは、四時しじつねものにはあらず。あるひしうへだててかへり、あるひつきをおきてきたる。そのとききたとき進退しんたいつねすこぶなり。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主人あやしみ人をして是をとらへしめしに、全身ぜんしんからすにして白く、くちばしまなこあしは赤きからすひななり、人々としてあつまる。
いまかんがへるとすべてがあきらかであつた。したがつて何等なんらもなかつた。二人ふたり土塀どべいかげからふたゝあらはれた安井やすゐはして、まちはうあるいた。あるときをとこ同志どうしかたならべた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
岩穴に入りておわる、衆初めて其伏流ふくりうなるをり之をとす、山霊はだして尚一行をあざむくの意乎、将又たはむれに利根水源の深奥はかるべからざるをよさふの意乎、此日の午後尾瀬がはらいたるの途中
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かいな笑い声、咲耶子さくやこ、心をゆるすまいぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人あやしみ人をして是をとらへしめしに、全身ぜんしんからすにして白く、くちばしまなこあしは赤きからすひななり、人々としてあつまる。
なるかなさら一時間いちじかんいくらとふ……三保みほ天女てんによ羽衣はごろもならねど、におたからのかゝるねえさんが、世話せわになつたれいかた/″\、親類しんるゐようたしもしたいから、お差支さしつかへなくば御一所ごいつしよ
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鼻高きが故にたっとからず、なるがために貴しとはこの故でもございましょうか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「うぬッ、かいな女め」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此一おしにて男女とも元結もとゆひおのづからきれてかみみだす㕝甚なり。七間四面の堂の内にはだかなる人こみいりてあげたる手もおろす事ならぬほどなれば、人の多さはかりしるべし。
宗室そうしつくわいして、長夜ちやうやえんるにあたりては、金瓶きんべい銀榼ぎんかふ百餘ひやくよつらね、瑪瑙めなう酒盞しゆさん水晶すゐしやうはち瑠璃るりわん琥珀こはくさら、いづれもこうなる中國ちうごくいまかつてこれあらず、みな西域せいゐきよりもたらところ
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかれどもはなひらいて絢爛けんらんたり。昌黎しやうれいうるところ牡丹ぼたんもとむらさきいま白紅はくこうにしてふちおの/\みどりに、月界げつかい採虹さいこう玲瓏れいろうとしてかをる。はなびらごとに一聯いちれんあり。なるかないろ分明ぶんみやうにしてむらさきなり。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その準備じゆんびいても取々とり/″\ことがあるが、それはまあ、おあづかまをすとして、帳場ちやうばゑて算盤そろばんく、乃至ないし帳面ちやうめんでもつけようといふ、むすめはこれを(お帳場ちやうば/\)とつてるが、えうするに卓子テエブルだ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)