土地とち)” の例文
「わたしは新羅しらぎくにからはるばるわたって天日矛命あまのひぼこのみことというものです。どうぞこのくにの中で、わたしの土地とちしていただきたい。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と、海蔵かいぞうさんがいいました。そばにてみると、それはこの附近ふきん土地とちっている、まちとしとった地主じぬしであることがわかりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
土地とちにて、いなだは生魚なまうをにあらず、ぶりひらきたるものなり。夏中なつぢういゝ下物さかなぼん贈答ぞうたふもちふること東京とうきやうけるお歳暮せいぼさけごとし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さうして東隣ひがしどなりからりてござが五六まいかれた。それから土地とち習慣しふくわん勘次かんじきよめてやつたおしな死體したいは一さい近所きんじよまかせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これはつまり土地とち御守護ごしゅごあたらるる神様かみさまでございまして、その御本体ごほんたい最初はじめからどおしの自然霊しぜんれい……つまり竜神様りゅうじんさまでございます。
あるかれは、停車場ていしゃばで、うつくしいおんなひとました。ようすつきから、この土地とちひとでなく、たびひとだということがわかりました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまがたといひして、土地とち樣子ようすからその性質せいしつべて、そこに青々あを/\した野菜やさいいろを、印象深いんしようぶかくつかんで、しめしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
樹木じゆもくには、それ/″\日陰地ひかげちにもよくそだや、また日陰ひかげ日陽ひなた中間ちゆうかんのところをこのなど種類しゆるいによつて、土地とちてき不適ふてきがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「ははは、ききかたが まちがって いる。ぼうずには うまれた 土地とちが ないものじゃ。むりに いえば てんじくからか。」
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
ボズさんの本名ほんみやう權十ごんじふとか五郎兵衞ろべゑとかいふのだらうけれど、この土地とちものだボズさんとび、本人ほんにん平氣へいき返事へんじをしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
子供こども片足かたあしづゝげてあそぶことを、東京とうきやうでは『ちん/\まご/\』とひませう。土地とちによつては『足拳あしけん』とふところもるさうです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それからすこのちのヨーロッパの鐵器時代てつきじだいを、私共わたしどもはラテーヌ時代じだいんでゐますが、これはスヰスのある土地とちでありまして
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
土地とちが狭いだけに反響が早い、る事成す事直ぐ目に付く。私が編輯の方針を改めてから、間もなく「日報」の評判が急によくなつて来た。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
オーラのおとうさんとしては、じぶんがおやからもらった土地とちを、子どもには、ばいにしてのこしてやりたいと思っていたからです。
ばけものがくにによりそれ/″\ことなるのは、各國かくこく民族みんぞく先天性せんてんせいにもよるが、また土地とち地理的關係ちりてきくわんけいによること非常ひぜうだいである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
此方こつちから算盤そろばんはじいて、この土地とち人間にんげん根性こんじやうかぞへてやると泥棒どろぼう乞食こじきくはへて、それをふたつにつたやうなものだなう。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
金魚屋きんぎょやは、その住宅じゅうたく土地とちとを抵当ていとうにして老人ろうじんられて、さいさい立退たちのきをせまられている。怨恨えんこんがあるはずだと、当局とうきょくにらんだのであつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
其他そのたあらたに温泉おんせん冷泉れいせんはじめることもあり、また炭酸瓦斯たんさんがす其他そのた瓦斯がす土地とちからして、とり地獄じごくむし地獄じごくつくることもある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その取始とつぱじめつかまつたのはわたくしだが、いくら蒙古王もうこわうだつて、いくらひろ土地とち抵當ていたうにするつたつて、蒙古もうこ東京とうきやうぢや催促さいそくさへ出來できやしませんもの。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勝手かつてばたらきの女子をんなども可笑をかしがりて、東京とうきやうおにところでもなきを、土地とちなれねばのやうにこはきものかと、美事みごと田舍ゐなかものにしてのけられぬ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのころの日本にっぽんは、どの土地とちも、このふるいおきてでおさめられていましたが、とりわけ、九州きゅうしゅうのいなかである中津なかつは、それがつよいのでした。
何處いづこにも土地とちめづらしき話一つはある物ぞ、いづれ名にしはば、哀れも一入ひとしほ深草の里と覺ゆるに、話して聞かせずや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
この土地とちにたいへんえらいぼうさまがいられるということをいて、二人は、今まで自分たちをやしなってくれた人形のため、そのぼうさまにおいのりをしていただいて
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
はなしくと、なんでも韃靼人だったんじんむらに、その夫人ふじんと、土地とち某公爵ぼうこうしゃくとのあいだ小説しょうせつがあったとのことだ、とかと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
老女に土地とち風俗ふうぞくなどたづねしが心かよはざればさらにわからず、物をとらせてやがて立さりけり。
そうでしょう、みちがあるおかげで、方々ほうぼう土地とちに出来る品物しなものがどんどんわたしたちのところへはこばれて来ますし、おともだち同士どうしらくったりたりすることが出来ます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
歐米諸國をうべいしよこく寸尺すんしやく土地とちいへど自己じこ領分りようぶんとなさんときそひあらそひ、こゝに、一個いつこ無人島むじんとうでもあつて
もしも二人ふたりがはなればなれのらない土地とちつたとしたらどうであつたらう。まちは、そんなことを、またふとかんがへると、幸福しあはせなやうながすることもあつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
彼女かのぢよはすぐに自分自身じぶんじしんのために、また子供達こどもたちためめにはたらかなければならなかつた。彼女かのぢよもなく親戚しんせき子供こどもあづけて土地とち病院びやうゐんつとめるとなつた。彼女かのぢよ脇目わきめらなかつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
失ひ花見といへば上野か隅田すみだ又は日暮里飛鳥山人の出盛でさか面白おもしろき所へ行が本統ほんとうなるに如何常より偏屈へんくつなる若旦那とは言ながらとほき王子へ態々行夫もにぎはふ日暮里をばきらひて見榮みばえなき土地とちの音羽を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あいするおまへちゝ、おまへはゝ、おまへつま、おまへ、そしておほくのおまへ兄妹きやうだいたちが、土地とちはれ職場しょくばこばまれ、えにやつれ、しばり、こぶしにぎって、とほきたそらげるにくしみの
「どうもたいした土地とちもちでおいでだな。」
浴室よくしつまどからもこれえて、うつすりと湯氣ゆげすかすと、ほかの土地とちにはあまりあるまい、海市かいしたいする、山谷さんこく蜃氣樓しんきろうつた風情ふぜいがある。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この土地とちのものではありませんが、みんなの気持きもちは、よくわかっています。お役人やくにんや、金持かねもちや、学者がくしゃは、自分じぶんらの仲間なかまでない。
托児所のある村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ですから、われ/\が、あるひとつの土地とちにはえたを、やたらにわきへつてったつて、それが一々いち/\つくわけのものではありません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「このくにはわたしのおさめている土地とちで、あなたにしてげる場所ばしょといって、ほかにありません。ではうみの中をしましょう。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
もしってみずなかったら、どこにでもおまえさんのきなところにらしてあげよう。あのへんは、みな、わしの土地とちだから。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ある友伯父ともをじさんはうら木小屋きごやちかくにあるふるいけかへるをつかまへました。土地とちのものが地蜂ぢばちつけるには、かへるにくにします。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そんなこといまして、途中とちゅうわたくしとすれちがときなどは、土地とちおとこおんなみななみだぐんで、いつまでもいつまでもわたくし後姿うしろすがた見送みおくるのでございました。
轡蟲くつわむしくらいなかへはなたれゝば、たゞちこゑそろへてく。土地とちれが一ぱんにがしや/\といふ名稱めいしようあたへられてるだけやかましくたゞがしや/\とく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此陸界このりくかい水界中すいかいちゆうおいとくふかうみ部分ぶぶんとは、土地とち構造こうぞうとく其地震學上そのぢしんがくじようから性質せいしつおいなりな相違そういがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
百石ひやくこくでも別當べつたうはこの土地とち領主りやうしゆで、御前ごぜんばれてゐた。した代官だいくわんがあつて、領所りやうしよ三ヶそん政治せいぢつてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それが學年がくねんはじまりだつたので、京都きやうとのまだあさ宗助そうすけには大分だいぶん便宜べんぎであつた。かれ安井やすゐ案内あんないあたらしい土地とち印象いんしやうさけごとんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
八十やそみなとといふのは、ひょっとすると、土地とち名前なまへで、いま野洲川やすかは川口かはぐちをいつたのかもれません。さうすると、うた意味いみが、しぜんかはつてます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「ここは、ほんとうにめぐまれた土地とちだね。」と、ニールスは言いました。「きみたちは、まったくいいところに住んでいるんだね、ひつじのおじさん。」
れが實際問題じつさいもんだいになると、土地とち状態じやうたい風土ふうど關係くわんけい住者ぢうしや身分みぶん境遇きやうぐう趣味しゆみ性癖せいへき資産しさん家族かぞく職業しよくげふその種々雜多しゆ/″\ざつた素因そいん混亂こんらんしてたがひあい交渉かうせうするので
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
こんなときに、ひろい土地とちい、おおきないえをたてようとするのですから、人々ひとびとはおどろいてしまいました。
さて鴨緑江おうりよつこうをわたりきたほうきますと、支那しな領地りようち南滿洲みなみまんしゆうでありますが、こゝは日清戰爭につしんせんそう日露戰爭にちろせんそうなどがあつて以來いらい日本につぽんえんふか土地とちであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それに方々の土地とちも見つくしてしまいました。だんだん年もとってきました。人形もこわれかけました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
はなしくと、なんでも韃靼人だつたんじんむらに、其夫人そのふじんと、土地とち某公爵ぼうこうしやくとのあひだ小説せうせつがあつたとのことだ、とかと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)