“毛(け)” の例文
また、小川(おがわ)に連(つ)れていって、ボンを水(みず)の中(なか)に入(い)れて毛(け)を洗(あら)ってやったりして、ボンを喜(よろこ)ばせるのをも楽(たの)しみの一つとしているのです。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ほんとうに髪(かみ)の毛(け)が長(なが)くおなりだこと。せめてもう二、三年(ねん)長生(ながい)きをして、あなたのすっかり大人(おとな)になったところを見(み)たかった。」
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし下人にとつては、この雨(あめ)の夜(よ)に、この羅生門の上で、死人の髮の毛(け)を拔くと云ふ事が、それ丈で既に許(ゆる)す可らざる惡であつた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「その金は、いったいどこに使うのです?」と、マイダーノフは、平べったい髪(かみ)の毛(け)を後ろへ払(はら)いながら、鼻の穴をひろげて訊(き)いた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
伊那丸(いなまる)の一党(とう)が立てこもる小太郎山(こたろうざん)の砦(とりで)が、いま、立っている真上(まうえ)だとは、夢(ゆめ)にも知らずにいただけに、身の毛(け)を寒(さむ)くしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
籠(かご)は上(うへ)に、棚(たな)の丈(たけ)稍(やゝ)高(たか)ければ、打仰(うちあふ)ぐやうにした、眉(まゆ)の優(やさ)しさ。鬢(びん)の毛(け)はひた/\と、羽織(はおり)の襟(えり)に着(つ)きながら、肩(かた)も頸(うなじ)も細(ほそ)かつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
或(ある)ひはまた廷臣(ていしん)の鼻(はな)の上(うへ)を走(はし)る、と叙任(ぢょにん)を嗅出(かぎだ)す夢(ゆめ)を見(み)る、或(ある)ひは獻納豚(をさめぶた)の尻尾(しっぽ)の毛(け)で牧師(ぼくし)の鼻(はな)を擽(こそぐ)ると、僧(ばうず)め、寺領(じりゃう)が殖(ふ)えたと見(み)る。
大体(だいたい)に於(おい)て申(もう)しますと、天狗(てんぐ)の正体(しょうたい)は人間(にんげん)よりは少(すこ)し大(おお)きく、そして人間(にんげん)よりは寧(むし)ろ獣(けもの)に似(に)て居(お)り、普通(ふつう)全身(ぜんしん)が毛(け)だらけでございます。
又(また)そつと戸(と)を閉(た)てゝ出(で)る時(とき)頸筋(くびすぢ)の髮(かみ)の毛(け)をこそつぱい手(て)で一攫(ひとつか)みにされるやうに感(かん)じた。おつぎは外(そと)の壁際(かべぎは)の草刈籠(くさかりかご)を脊負(せお)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其(その)頸(くび)から上(うへ)が、嚴肅(げんしゆく)と緊張(きんちやう)の極度(きよくど)に安(やす)んじて、何時(いつ)迄(まで)經(た)つても變(かは)る恐(おそれ)を有(いう)せざる如(ごと)くに人(ひと)を魅(み)した。さうして頭(あたま)には一本(ぽん)の毛(け)もなかつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おばあさんは、腹(はら)だちまぎれに、ラプンツェルの美しい髪(かみ)の毛(け)をひっつかむと、それを二巻(ふたま)き三巻(みま)き左の手にまきつけました。
出し呉よと云に下男(げなん)彌助(やすけ)は此體を見て大いに驚きハツと思ひながら猶(なほ)もよく/\見るに身の毛(け)も彌立(よだつ)ばかりに恐ろしき長(なが)大小を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
野猪(ゐのしゝ)は形(かたち)が豚(ぶた)に似(に)て全身(ぜんしん)黒褐色(こつかつしよく)のあらい毛(け)でおほはれてをり、頸(くび)が短(みじか)いので駈(か)けだすと急(きゆう)には方向(ほうこう)を變(か)へられない動物(どうぶつ)です。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ふん、物(もの)の値打(ねうち)のわからねえ奴(やつ)にゃかなわねえの。女(おんな)の身体(からだ)についてるもんで、年(ねん)が年中(ねんじゅう)、休(やす)みなしに伸(の)びてるもなァ、髪(かみ)の毛(け)と爪(つめ)だけだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
手入れなどめったにしない乱れた髪(かみ)の毛(け)を、うしろでだんごにしている女の子もいるし、いがぐりが耳の上までのびほうだいの男の子もあった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
身長(みのたけ)七尺(しやく)に近(ちか)く、灰色(はいいろ)の毛(け)は針(はり)の如(ごと)く逆立(さかだ)ち、鋭(するど)き爪(つめ)を現(あら)はして、スツと屹立(つゝた)つた有樣(ありさま)は、幾百十年(いくひやくじふねん)の星霜(せいさう)を此(この)深林(しんりん)に棲暮(すみくら)したものやら分(わか)らぬ。
黒(くろ)く多(おほ)き髮(かみ)の毛(け)を最惜(いとを)しげもなく引(ひき)つめて、銀杏返(いてうがへ)しのこはれたるやうに折返(をりかへ)し折返(をりかへ)し髷形(まげなり)に疊(たゝ)みこみたるが、大方(おほかた)横(よこ)に成(な)りて狼藉(らうぜき)の姿(すがた)なれども
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その風雪(ふうせつ)の一握(にぎ)りのつぶては、時々(とき/″\)毛(け)のやうな欄間(らんま)の隙(すき)や戸障子(としやうじ)の仲(なか)を盜(ぬす)み入(い)つて、目(め)に見(み)えぬ冷(つめ)たいものをハラ/\と私(わたし)の寢顏(ねがほ)にふりかけてゆく。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
わたしたちが通ったつぎの村で、わたしは美しい髪(かみ)の毛(け)と、青い目をしたかわいらしい人形をかの女のために買った。
「何(なん)てまあ、いい毛(け)だらう」と、それを第(だい)一に見(み)つけた猫(ねこ)が羨(うらや)ましさうに、まづ賞(ほ)めました。犬(いぬ)も狐(きつね)も野鼠(のねづみ)も、みな
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
其(その)音(おと)が寂寞(せきばく)を破(やぶ)つてざわ/\と鳴(な)ると、閭(りよ)は髮(かみ)の毛(け)の根(ね)を締(し)め附(つ)けられるやうに感(かん)じて、全身(ぜんしん)の肌(はだ)に粟(あは)を生(しやう)じた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
頭(かしら)の毛(け)長く脊(せ)にたれたるが半(なかば)はしろし、丈(たけ)は常並(つねなみ)の人よりたかく、顔(かほ)は猿に似て赤からず、眼(まなこ)大にして光りあり。
三十八年の春(はる)に一家が東京(けう)へ住(す)み移(うつ)るやうになつてから、やがて二度(ど)目に買つてもらつたのが、前のにちよつと毛(け)のは※たくらゐの五円ばかりの箱形寫眞器(はこかたしやしんき)
師走(しはす)の中頃(なかごろ)で、淀川堤(よどがはづつみ)には冬枯(ふゆが)れの草(くさ)が羊(ひつじ)の毛(け)のやうでところ/″\に圓(まる)く燒(や)いた痕(あと)が黒(くろ)く見(み)えてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
成程(なるほど)先刻(さつき)店(みせ)へ来(き)た田舎者(ゐなかもの)の土左衛門(どざゑもん)だから、悪人(あくにん)ながらも宜(よ)い心持(こゝろもち)はしない、身(み)の毛(け)慄立(よだ)つたが、土左衛門(どざゑもん)突出(つきだ)してしまへと云(い)ふので、仕事師(しごとし)が手鍵(てかぎ)を持(も)つて来(き)たり
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
妻(つま)は三つになる次男(じなん)を、さもかわいらしそうに胸(むね)に抱(だ)きよせ子どものもじゃもじゃした髪(かみ)の毛(け)に、白くふっくらした髪をひつけてなんの苦(く)もない面持(おもも)ちに眠っている。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
今度(こんど)は鼠(ねずみ)が全身(ぜんしん)の毛(け)を逆立(さかだ)つて居(ゐ)たので、愛(あい)ちやんは屹度(きつと)鼠(ねずみ)が甚(ひど)く怒(おこ)つたに違(ちが)ひないと思(おも)ひました。『そんなにお前(まへ)が嫌(きら)ひなら、もう玉(たま)ちやんのことは話(はな)さないわ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さういふ人達(ひとたち)は生(い)きて居(ゐ)る鬪鷄(しやも)の毛(け)をむしりまして、煮(に)て食(く)ふ前(まへ)に追(お)ひ廻(まは)して面白(おもしろ)がつたものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「真理」なんて云うものは、「約束」に毛(け)の生(は)えたもので、或る一時代の人間社会や自然現象を、支配し、若しくは支配するように見える、間に合わせの規則に過ぎない。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
歴史(れきし)のどこかに毛(け)を降(ふ)らした記事(きじ)があるが、その中(なか)の或場合(あるばあひ)は火山毛(かざんもう)であつたらしく思(おも)はれる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そしてきょうこそ子(こ)どもらがみんないっしょに旅(たび)にたつのです。おかあさんはそれをあんまり悲(かな)しんでおうぎ形(がた)の黄金(きん)の髪(かみ)の毛(け)をきのうまでにみんな落(お)としてしまいました。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彫刻(てうこく)は怪奇を極めて、唐草模樣(からくさもやう)と鬼のやうな縮(ちゞれ)つ毛(け)の人間の首と、それから得體の知れない髯文字(ひげもじ)がベタ一面に彫(ほ)つてあつたのを、暢氣(のんき)なガラツ八は、自分の煙草入れに附けて
この帶止(おびど)めは細(ほそ)い毛(け)のような金絲(きんし)と金(きん)の粒(つぶ)でもつて獅子(しゝ)の形(かたち)をつくり、それに寶石(ほうせき)をちりばめた細(こま)かい細工(さいく)は、今日(こんにち)でもたやすく出來(でき)ないと思(おも)はれるほど優(すぐ)れたものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
卯(う)の毛(け)も入れない厳しいところに情けがあるんだそうでございます、また世間普通の人情から申しますと、楽翁公のなされたように融通をつけるのが道理だと申すものもございます。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
幼児(をさなご)は黙(だま)つて、あたしを見(み)つめてくれた。この森蔭(もりかげ)の端(はづれ)まであたしは一緒(いつしよ)に行(い)つてやつた。此児(このこ)は顫(ふる)へもしずに歩(ある)いて行(ゆ)く。終(つひ)にその赤(あか)い髪(かみ)の毛(け)が、遠(とほ)く日(ひ)の光(ひかり)に消(き)えるまで見送(みおく)つた。
「その家(いえ)の軒下(のきした)に、頭(あたま)の毛(け)も眉毛(まゆげ)もあごひげもまっしろな爺(じい)さんがいました。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
大臣(だいじん)は喜(よろこ)んで品物(しなもの)を見(み)ると、皮衣(かはごろも)は紺青色(こんじよういろ)で毛(け)のさきは黄金色(おうごんしよく)をしてゐます。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
と、呼(よ)ばれ、大(だい)の御(ご)ひいき者(もの)でした。それは背中(せなか)をぐいと高(たか)くしたり、喉(のど)をごろごろ鳴(な)らしたり逆(ぎゃく)に撫(な)でられると毛(け)から火(ひ)の子(こ)を出(だ)す事(こと)まで出来(でき)ました。牝鶏(めんどり)はというと、足(あし)がばかに短(みじか)いので
見ると怪物は第二弾発射の、兎(う)の毛(け)程の隙もない身構えだ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「元よりそちも一緒じゃ。今になって怖(お)じ毛(け)ついたか」
上(かみ)つ毛(け)や赤城はふるき牧にして牛馬はなつ春かぜの山
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
鈍(にぶ)き毛(け)の絨氈(じゆうたん)に甘き蜜(みつ)の闇(やみ)
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一本(いつぽん)毛(け)のないももんがあ
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
あっちの しらない 子(こ)は、白(しろ)い 毛(け)の えりまきを して いました。ほかにも 男(おとこ)の 子(こ)や 女(おんな)の 子(こ)が おおぜい いました。
はつゆめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
此(こ)の髮(かみ)の毛(け)を引拔(ひきぬ)かれますやうに……骨身(ほねみ)に應(こた)へるやうなんです……蟲(むし)には濟(す)まないと存(ぞん)じながら……眞個(ほんと)に因果(いんぐわ)なんですわねえ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
玄妙(げんみょう)きわまる槍と、精妙無比(せいみょうむひ)な太刀はここにたがいの呼吸をはかり、たがいに、兎(う)の毛(け)のすきをねらい合って一瞬一瞬、にじりよった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おかあさんはその夕方(ゆうがた)、姫(ひい)さんをそっとまくら元(もと)に呼(よ)び寄(よ)せて、やせ衰(おとろ)えた手で、姫(ひい)さんのふさふさした髪(かみ)の毛(け)をさすりながら
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ハチはキツネの穴(あな)へとんでいって、毛(け)をそられて、つるつるしているヤギの頭の上にとまって、いやっというほどさしました。
成程、死人の髮(かみ)の毛(け)を拔くと云ふ事は、惡い事かも知(し)れぬ。しかし、かう云ふ死人の多くは、皆、その位な事(こと)を、されてもいゝ人間(にんげん)ばかりである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さうして西風(にしかぜ)は後(うしろ)で括(くゝ)つた穢(きたな)い手拭(てぬぐひ)の端(はし)を捲(まく)つて、油(あぶら)の切(き)れた埃(ほこり)だらけの赤(あか)い髮(かみ)の毛(け)を扱(こ)きあげるやうにして其(その)垢(あか)だらけの首筋(くびすぢ)を剥出(むきだし)にさせて居(ゐ)る。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)