引返ひきかへ)” の例文
湯治たうぢ幾日いくにち往復わうふく旅錢りよせんと、切詰きりつめた懷中ふところだし、あひりませうことならば、のうちに修善寺しゆぜんじまで引返ひきかへして、一旅籠ひとはたごかすりたい。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれとらへられていへ引返ひきかへされたが、女主人をんなあるじ醫師いしやびにられ、ドクトル、アンドレイ、エヒミチはかれ診察しんさつしたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
出して渡し何れ妻を尋ね出して後其方へまゐらんにより其節はよきに頼むとやくしつゝ安五郎は又々後の方へ引返ひきかへしける九助は彼の手紙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勘次かんじ萬能まんのうをぶつりとんではぐつとおほきなつちかたまり引返ひきかへす。おつぎはやうやちひさなかたまりおこす。勘次かんじすみやかに運動うんどうしてずん/\とさきすゝむ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何時いつまでつてゐても音沙汰おとさたがないので、宗助そうすけ不思議ふしぎおもひをして、また庫裡こりもんはう引返ひきかへした。すると石段いしだんしたから剃立そりたてあたまあをひからしたばうさんがあがつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんとせんみち間違まちがへたり引返ひきかへしてとまた跡戻あともどり、大路おほぢいづれば小路こうぢらせ小路こうぢぬひては大路おほぢそう幾走いくそうてん幾轉いくてんたつゆきわだちのあとながひきてめぐりいづればまた以前いぜんみちなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
看上みあぐるばかりの大熊手おほくまでかつぎて、れい革羽織かはばおり両国橋りやうごくばしの中央に差懸さしかゝ候処そろところ一葬儀いちさうぎ行列ぎやうれつ前方ぜんほうよりきたそろくるによしなくたちまちこれ河中かちう投棄なげすて、買直かいなほしだ/\と引返ひきかへそろ小生せうせい目撃致候もくげきいたしそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
すゝまれもせず、引返ひきかへせばふたゝ石臼いしうすだの、まつだの、屋根やねにもひさしにもにらまれる、あの、此上このうへもないいやおもひをしなければならぬのと、それもならず。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
代助は固よりそれよりさきすゝんでも、猶素知そしらぬかほ引返ひきかへる、会話の方を心得こゝろえてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何なりと片付かたづけて置れよ私しは江戸の用事すみ次第引返ひきかへ古郷こきやう御同道ごどうだう致しませうと一宿しゆくして申合せ翌朝よくてう江戸へ赴きける九郎兵衞は跡にて村役人はじめ親類へも委細ゐさい話せば皆々は厄病神やくびやうがみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
地蔵尊ぢざうそんが、まへはうから錫杖しやくぢやういたなりで、うしろつゞいたわたし擦違すれちがつて、だまつてさかはうもどつてかるゝ……と案山子かゝしもぞろ/\と引返ひきかへすんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とき明荷あけにの中に在りし金四百五十兩并びに幸之進が胴卷どうまきの中にありし二十兩餘りの金と大小だいせう衣類迄いるゐまで奪取うばひとり行衞も知れず迯去にげさりける依て彼の供人は江尻宿へ引返ひきかへし宿役人へことわおき死骸しがいを改め飛脚ひきやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
て、よくはわからぬ、其処等そこらふか、ほこらふか、こゑつたへる生暖なまぬる夜風よかぜもサテぼやけたが、……かへみちなれば引返ひきかへして、うか/\と漫歩行そゞろあるきのきびすかへす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
老爺ぢいいてこして、さて、かはる/″\ひもし、きもして、嶮岨けんそ難処なんしよ引返ひきかへす。と二時ふたときほどいた双六谷すごろくだにを、城址しろあとまでに、一夜ひとよ山中さんちゆう野宿のじゆくした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
内證ないしようでそのみち達者たつしやにたゞすと、いはく、なべ一杯いつぱいやるくらゐの餘裕よゆうがあれば、土手どて大門おほもんとやらへ引返ひきかへす。第一だいいちかへりはしない、とつた。格言かくげんださうである。みなわかかつた。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引返ひきかへして、木戸口きどぐちから露地ろぢのぞくと、羽目はめ羽目はめとのあひだる。こゝには一疋いつぴきんでない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丁度ちやうどわし修行しゆぎやうるのをして孤家ひとつや引返ひきかへして、婦人をんなと一しよ生涯しやうがいおくらうとおもつてところで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
んで、ト引返ひきかへした、鳥打とりうちかぶつたをとこは、高足駄たかあしだで、ステツキいためうあつらへ。みちかわいたのに、爪皮つまかはどろでもれる、あめあがりの朝早あさはや泥濘ぬかるみなかたらしい。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるひかたむき、また俯向うつむき、さてふえあふいでいた、が、やがて、みちなかば、あとへ引返ひきかへしたところで、あらためてつかるごと下駄げたとゞめると、一方いつぱう鎭守ちんじゆやしろまへで、ついたつゑ
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……島へ渡した細綱ほそづな手繰たぐつて、立ちながらあやつるのだが、れたもので、あとを二押ふたおし三押みおし屋形船やかたぶねへ来ると、よしを聞き、うおを視て、「まあ、」と目をみはつたきりあわただしく引返ひきかへした。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よた/\と引返ひきかへし「おつけのなんとかいつたね。さう、大根だいこんか。大根だいこん大根だいこん大根だいこんでセー」とはなうたで、ひとつおいた隣座敷となりざしきの、をとこ一人客ひとりきやくところへ、どしどしどしん、すわんだ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まゝよ、一分いつぷんでも乘後のりおくれたら停車場ステエシヨンから引返ひきかへさう、それがい、と目指めざ大阪おほさかかたきつて、うもうはじめから豫定よてい退却たいきやく畫策くわくさくするとふのは、あんずるに懷中くわいちうのためではない。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此路このみち眞直まつすぐまゐりますと、左樣さやう三河島みかはしまと、みちひとをしへられて、おや/\と、引返ひきかへし、白壁しらかべゆる土藏どざうをあてにあぜ突切つツきるに、ちよろ/\みづのあるなかむらさきはないたるくさあり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
矢張やつぱ当日たうじつこゝろざした奥州路おうしうぢたびするのに、一たん引返ひきかへして、はきものをへて、洋杖すてつきと、たゞ一つバスケツトをつて出直でなほしたのであるが、くるま途中とちうも、そではしめやかで、上野うへのいたとき
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これ禁厭まじなひるのとえます。まどとほしてのやうにひろがります、黒雲くろくもが、じり/\とては、引返ひきかへし、じり/\とては、引返ひきかへし、仙人せんにん波打なみうつやうに、進退かけひきするのがえました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝは阪地かみがた自慢じまんする(……はしつわたりけり)のおもむきがあるのであるが、講釋かうしやく芝居しばゐで、いづれも御存ごぞんじの閻魔堂橋えんまだうばしから、娑婆しやば引返ひきかへすのが三途さんづまよつたことになつて——面白おもしろい……いや
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
靜岡しづをかから、すぐに江尻えじり引返ひきかへして、三保みほ松原まつばら飛込とびこんで、天人てんにん見參けんざんし、きものをしがるつれをんなに、羽衣はごろも瓔珞えうらくをがませて、小濱こはま金紗きんしやのだらしなさを思知おもひしらさう、ついでに萬葉まんえふいんむすんで
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もはや、……少々せう/\なりとももつをと、きよと/\と引返ひきかへした。が、わづかにたのみなのは、火先ひさきわづかばかり、なゝめにふれて、しもなかかみ番町ばんちやうを、みなみはづれに、ひがしへ……五番町ごばんちやうはう燃進もえすゝことであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やまくつがへしたやうに大畝おほうねりたとばかりで、——跣足はだし一文字いちもんじ引返ひきかへしたが、吐息といきもならず——てらもんはひると、其處そこまで隙間すきまもなく追縋おひすがつた、灰汁あくかへしたやうなうみは、自分じぶんせなかからはなれてつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
繰返くりかへすやうだが、それが二日ふつかで、三日みつかひるすぎ、大雨おほあめよわてて、まだ不安ふあんながら、破家やぶれや引返ひきかへしてから、うす味噌汁みそしる蘇生よみがへるやうなあぢおぼえたばかりで、くわんづめの海苔のり梅干うめぼしのほかなんにもない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ハツといきして、つて、引返ひきかへとき、……今度こんどそのつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はてしいからきもゑた、もとより引返ひきかへぶんではない。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「——娑婆しやば引返ひきかへことにいたしませうかね。」
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少年せうねん引返ひきかへした。が、おほいよわつたかほをした
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
可厭いやつたら引返ひきかへさう。」
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)