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迯去
盡させ
度私しは
出家遁世の
身故母や弟を
助け候事なれば
身命を
捨候ても
救はんと
存じ其盜賊なりと申
僞り候其夜全くの盜賊は
迯去たり
其譯は私事
母や弟を
尋んと所々方々を
解明荷の中に在りし金四百五十兩并びに幸之進が
胴卷の中にありし二十兩餘りの金と
大小衣類迄も
奪取行衞も知れず
迯去ける依て彼の供人は江尻宿へ
引返し宿役人へ
斷り
置死骸を改め
飛脚を
貸呉候
樣申に付
旅籠屋に
非ずと
斷りし
處其後は音も
仕つらず候故何方へか參りしやと存じ
休み候に
夜丑刻過頃忍び入金子五百兩盜み
迯出る時家内の者目を
覺し
追駈候へども此僧足早に
迯去り候を