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迯歸
起しも
立ず突殺す故
馬士は
仰天なし
迯んと爲すを一人の旅人
飛蒐て是をも切殺すに供の男は
周章狼狽後をも見ずして
迯歸りける故
頓て盜賊は
荷繩を
逃亡致されよ我も
辯解なければ是より宿へ歸る
可三十六
計走るに
如じ我が
宿は
牛込改代町芋屋六兵衞と
云者なり用事有らば
云越給へと兩人
云合せ早々に
支度して七助は牛込お梅は平兵衞方へ
迯歸りしなり
然ば委細の
譯を
申
掛られ
承知せぬとて
刄物三昧致しゝに
付其
節私し中へ入て
取鎭め候へば金三兩呉られ候て
取持候
樣申付られ候へども梅事は
貞節の
女ゆゑとても
叶はぬ事と
存じ私しは申
譯なきにより
宿へ
迯歸り候と
具に申
立る
廉々粂之進は
面目青くなり
赤くなりしが
差俯向て
控へ
居るを